ドラマとは一味違う映画『ファンジニ』レビュー
映画の幕が閉じ会場が明るくなったとき、私は映画を見たというよりは美術館に行って来た気持ちになりました。全体的に幻想的な映像が美しく描かれ、それが語りかけてくる絵のように視聴者の見解に委ねる映画だという印象を受けました。
特にドラマと違うところを挙げると「色」だと思います。
ドラマが「極彩色」なら映画は「ワビサビ」。
かつての日本は特にワビサビの世界を重んじていたのでこの心理描写はどこか日本人にも伝わってくるものがあると思います。
そして、最高の妓生(キーセン)にもかかわらず衣装を黒や紫で統一していたところが印象的であり、映画として見せたかった「ファンジニ」の姿、妓生でありながらも一人の女性として愛する男性を思う切ない気持ちを色で表現していたのではないかと感じました。
主演のソン・ヘギョはこの映画版の主役が決まる前から、主役の座を得るために長い時間をかけ古典的作法や楽器など、全てにおいて習得する努力を重ねたそうです。候補の女優が数名いた中でも一番の情熱を買われ大抜擢されたわけです。
その意志の強さと情熱がまさにこの作品に反映されています。
相手役ユ・ジテの作品を私は今まで見たことが無く、演技派俳優といわれているくらいしか知りませんでしたが、ファンジニへの気持ちを胸に秘め、やるせなさとセクシーさを出した今回の役は、ユ・ジテの魅力を最大限に生かし視聴者を世界へ引き込みました。
そして最後にファンジニが心の中で語る言葉
「風になって吹き、雨になって降り、あなたの胸で眠り目覚めたい。愛しています。」
この言葉がドラマとは違う「ファンジニ」の、内面の心情を中心に描いた監督の描写
だと感じました。
ソン・ヘギョが新たな挑戦として選んだこの映画、美しくあり、いつも物憂げな表情
の魅力に引き込まれること間違いなしです。
ブロコリスタッフ YUMI
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