「朝月夜」(アサヅクヨ)№23・・・こちらは戯言創作の部屋
妄想モードまだ、続いてます。
「四月の雪」のインスのイメージを壊したくない方、ここで引き返してくださいね。
「続きは、あとで・・・」なんて言葉を残して、インスはあっさりと私から離れて行った。
シャワーを浴びているインスの後姿を見ながら、私はひとり取り残されたような気分を味わっていた。
「外で待ってる」
と、言って、インスは浴室から出て行った。
私も湯から出て、シャワーのコックを開けた。
壁に取り付けられた小さな鏡を覗くと、熱いお湯と汗で化粧のはがれた私が映った。
近くにあった洗顔フォームで残った化粧を落としながら、インスに抱かれたのが背後からで、顔を見られなくてよかった・・・と思った。
脱衣場にもインスの姿はなく、ここでも私は取り残された気分になった。
着替えの浴衣の上に鍵が置いてあるのは、「鍵を閉めて」ということなのだろうと、私は手早く着替えを済ませると、入り口の木戸の鍵を閉めて、インスの姿を探した。
大浴場の前は、くつろぎのスペースのようになっていて、数台の自動販売機と、大型テレビが置かれていた。
男女別々に入浴した人たちはここで待ち合わせをして、部屋に戻るのだろう。
その一角にタバコを吸いながら、缶ビールを飲んでいるインスを見つけた。
取り残された不満を隠しつつ、私は、「待たせてごめんなさい」と、形ばかりの侘びを言った。
インスの前のテーブルには、自動販売機で買ったと思われる2個のカップ麺と、2本の缶ビール、それとジュースの缶が1本置かれていた。
「これ・・・食べるの?」
私は、カップ麺を指さして言った。
「ユキの分も買っておいた。決戦前の腹ごしらえ」
と、インスは、笑いながらわけのわからないことを言った。
缶ビールを飲み干すと、残りの2本の缶ビールを片手で掴んで、インスは立ち上がった。
「まだ、飲んでないのに・・・」
私は飲みかけの缶ジュースと、2個のカップ麺を抱えると、インスの後を追った。
エレベーターに乗ると浴衣を着たふたりの姿が鏡に映った。
着慣れない浴衣を着たインスの姿がなぜかおかしくて、私は笑いを堪えていた。
それでも、鏡に映るインスはとてもステキだった。
それは、濡れた髪のせいかもしれないと私は思った。
以前、テレビの番組内で、「どんな男性に魅力を感じますか?」と尋ねられた女優が、「濡れ髪の似合う男」と、言っていたことを思い出した。
部屋に戻ると、私はインスが買ったビールを冷蔵庫に入れて、カップ麺を作るために電気ポットに水を入れ、スイッチを入れた。
それだけの動作なのに、やはり浴衣は動きづらい。
私は「着替えをします」と言って、寝室に入った。
いつものスウェットの方がリラックスできると思ったからだ。
クローゼットの中から、スウェットを取り出そうとした時、いきなり後ろからインスに抱きすくめられた。
「着替えなんてしなくていい・・・」
インスはそう言うと、浴衣の胸元に手を差し入れて、私の乳房を掴んだ。
インスの人差し指と中指に挟まれた乳房の先端がたちまち硬く変化した。
リビングでは、沸騰した電気ポットが音を立てていた。
「ラーメン・・・食べるんじゃなかったの・・・?」
インスは私の問いかけには答えず、浴衣の紐の結び目を解くと、するすると引き抜いた。
肩から剥がされた浴衣が、はらりと床に落ちた。
インスは、下半身に下着を着けただけの格好になった私を自分の方に向かせると、大きな手のひらで私の頬を覆い、唇を寄せた。
立ったままの姿勢で長いキスを交わしているうちに、私は初めてインスを「ほしい」と思った。
「さっきは堪えるのに必死だった。今度は我慢しなくていいよね」
そう言うと、インスは受け入れる準備の整った私の中にそっと体を沈めた。
雪に反射した朝日がまぶしい。
まだ眠っているインスを起こさないように、私はそっとベッドから抜け出すと、ルームサービスの朝食の注文をして、シャワーを浴びた。
本来なら、朝食は最上階のレストランで、と言うことになっている。
朝食を運んで来てくれた従業員の男性に「わがままを言ってごめんなさいね」と私は言った。
彼は、にこやかに「どういたしまして」と言うと、手際よく朝食をテーブルに並べて出て行った。
入れ違いにインスが起きて来て、テーブルの上のプチトマトを口に放り込むと「おいしい」と言い、コーヒーの準備をしている私の顔を覗き込むようにして、「ユキ、疲れてない?」と意味あり気に言った。
一瞬、夕べのことが脳裏をよぎった。
全身を貫く快感に思わず声を上げてしまったこと・・・。
その唇をインスに塞がれたこと・・・。
私は、インスと目を合わせたくなくて、うつむいたまま「早く顔を洗って、朝ごはんが冷めてしまうわ」と言った。
シャワー室から戻ったインスに、冷たいトマトジュースを差し出すと、インスはおいしそうに一気に飲み干すと、バスローブ一枚のまま、イスに座った。
「その格好で、朝ごはんを食べるの?」
「ダメ?」
「別に・・・ダメじゃないけど・・・」
「食べてから着替える」
私はインスのカップにコーヒーを注いだ。
「ユキ・・・ベッドルームに眼鏡を忘れた。取って来てくれる?」
私は言われたとおりに寝室に行き、ベッドサイドを探したけれど、インスの眼鏡はどこにもなかった。
あきらめて戻ろうとした時、背後で扉のしまる音がした。
振り向くと、眼鏡をかけたインスが立っていた。
どういうこと?と、尋ねる間もなく、私たちは縺れるようにベッドの上に転がった。
眼鏡をはずしたインスが、少年のような眼差しで「作戦成功」と言って笑った。
柔らか素材のスウェットは、簡単に首から抜かれ、捲り上げられたブラから、乳房が溢れた。
すかさず先端を捉えるインスの唇。
「夕べ、したのに・・・」
私は、本音を言った。
「ユキを見てると、したくなる・・・」
そう言いながら、インスの手はすでに私の下着にかかっていた。
インスは、バスローブを脱ぎ捨てると私に体を重ねた。
「待って・・・まだ・・・」
「嫌だ・・・待てない」
インスは私の言うことなど聞き入れることなく、侵入して来た。
「あ・・・」
いつもとは別の私の声を聞いて、「痛い?」と真上から私の顔を見て言った。
「痛いと言ったらやめてくれるの?」
「やめない・・・やめられない」
インスの動きと調和して揺れる私の肩と両の胸のふくらみ。
私は、インスと体を重ねるごとに、確実にインスを好きになっていく自分を感じていた。
「ユキは・・・きついんだ。男にとっては最高だよ・・・」
インスがまた、真上で呟いた。
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