創作の部屋~朝月夜~<62話>
★幸せに暮らしているユキの姿を見て、ユキへの思いにけじめをつけようと決めたインス。
ですが、「星降」の町が近づくにつれて心が揺らぎます。
そんなインスを、「恋愛は時には潔さも必要」とタケルが後押しします。
(今回はめずらしく(?)長文です。お時間がある時に読んで下さればうれしいです)
「ここまで来て、いまさら何を言ってるんですか?」
タケルは呆れた・・・と言うよりもむしろ怒ったような言い方をした。
「なんだか急に怖くなった」
「怖くなったって・・・」
「幸せに暮らしている姿を見たい、そんな思いでここまで来た。けれど・・・それを確認す
ることが怖くなった」
それは僕の本音だった。
「情けないこと言わないでください。恋愛は時には潔さも必要だと・・・僕は思います。
現実を見て、これからのことを考える・・・≪黄色いハンカチ≫があるかないかを確か
めることが今の監督には必要なことだと思います。年下の僕が、偉そうなことを言って
すみません。」
謝る必要なんてなかった。
タケルの言うことは正しいと僕は思った。
「臆病になって、つい弱気なことを言ってしまった。悪かった。撤回するよ」
「僕の方こそ、生意気なことを言ってすみません」
タケルは、僕に向かって小さく頭を下げた。
「お客さん、着きましたよ」
バスの運転手が、「星降」に到着したことを教えてくれた。
「ここから先は、誰かに聞けって言ったって、誰もいないじゃないか」
バスを降りる時、僕たちの背中に向かって運転手が叫んだことは、そういうことだった
のか。
タケルが言うように、辺りを見回しても誰もいない。
休憩時間なのだろうか。
それとも、山の日暮れは早いから、すでに家路に着いてしまったのだろうか。
農作業をしている人の姿も見当たらなかった。
その時、僕たちの左前方の草が揺れた。
バスの停留所付近で獣と遭遇するとも思えなかったが、一瞬「子狐か?」と思った。
現われたのは幼い男の子だった。
だが、その子の切れ長の・・・涼やかな目を見た時、本当に子狐の化身か・・・と、僕は
思った。
同時に遠い昔、似たような目を見たような・・・そんな気がした。
タケルも僕と同じことを感じたのだろうか。
「なんだ子供か」と言った。
男の子は、僕たちをちらっと見ただけで、坂道を上に向かって走って行った。
「お~い!ちょっと待って!」
自分を呼ぶ声だと気付いたのか、男の子は坂道の途中で振り返った。
タケルは小走りでその子に近づくと、「神門さんと言う家を知ってる?」と聞いた。
「みかど・・・?」
「うん、神の門と書いてみかど。漢字を言っても解らないか・・・」
「みかどってうちはたくさんあるよ」
「そうなんだよな」
日本語が解らない僕は、ふたりの会話が理解できない。
神門と言う名だけが、唯一理解できる言葉だった。
「田舎は、その地域全部が同じ苗字ってことがあるですよ」
と、タケルが教えてくれた。
「みかど・・・だれ?」
男の子がタケルを見上げて言った。
「そうか、下の名前が解ればいいんだよな」
「監督、下の名前、何と言いますか?監督が会いたい人の名前です」
「ユ・・・キ。神門ユキ」
「神門ユキさん、知ってる?」
「みかどゆきは、ぼくのおかあさんのなまえだけど・・・」
「ホントかよ!」
タケルは絶望的・・・とつぶやきながら、僕に韓国語でおおよその説明をしてくれた。
「やっぱり結婚してたんですね。そして子供もいた。だけど・・・」
「だけど・・・?」
「苗字が旧姓のままって言うのが気になるなあ。相手の男が神門姓になったってことで
しょうか?」
苗字のことなど、どうでもよかった。
それよりも、もっと大事なことが僕の心に広がっていた。
「年は・・・?その子の年」
「キミ、いくつ?」
「6さい。もうすぐ1ねんせいだよ」
「6歳だそうです」と、タケルが言った。
6歳・・・あの時の子が生きていたら、ちょうどこのくらいの年になっているはずだ。
もしかして、この子は・・・。
僕は、心臓が大きく高鳴るのを感じた。
「どうしました?」
「いや、なんでもない」
確証がないことを口にできないと思った。
ましてや子供に父親のことを尋ねるなどできないことだった。
「会いますよね?ユキさんに」
それは僕の承諾を得ると言うより、念を押す口ぶりだった。
「おかあさんに会わせてくれるかなあ?」
「いいけど・・・。おじさんはだれ?」
男の子は僕とタケルを交互に見つめながら言った。
「おじさんじゃなくて、お兄さんと言いなさい」
タケルが子供の頭を人差し指で突きながら言った。
「お兄さんたちは、キミのおかあさんに会うために遠くから来たんだ。お家まで連れて行
ってくれるとうれしいんだけどなあ」
「うん、ぼくのおうちはこのさかみちをのぼったところ。すぐだよ」
男の子はそう言いながら、すでに数歩先を歩き始めていた。
「キミ、名前は?」
「じゅん・・・みかどじゅん」
「ジュン君か・・・」
「じゅんゆうしょうのじゅんだよ」
「難しい漢字を知ってるんだなあ」
「だれかにきかれたらそういいなさいって、おかあさんにいわれた」
「準優勝は2番目だぞ。2番より1番の方がよかったのに」
「いちばんはおとうさんだから」
「え・・・?」
「おかあさんがせかいでいちばんすきなのは、おとうさん。つぎがぼく」
「ジュン君が負けるくらいだから、お父さんはかっこいい人なんだ」
子供は、小さな声で「・・・うん」と言った。
「かっこいいって認めてないのか?あ~!やきもち焼いてるんだな」
僕は、ふたりの会話を黙って聞いていた。
「監督、敵はなかなか手強いみたいですよ」
「敵・・・?」
「ユキさんのご主人。かなりのイケメンみたいです」
「イケメン・・・」
こう言う時にも流行りの言葉を交えて会話ができるタケルを若いな・・・と思った。
その若い感性がうらやましくもあった。
男の子は、ジュンと言う名であること。
夫を世界で一番好きだとユキが言っていることから、言いにくいけれど夫婦円満な生活
をしているようだと、タケルが話してくれた。
ジュンの顔つきから、端正な面立ちの父親を僕は思い描いた。
「こっちのおじさんはかんこくのひと?」
「よく解ったなあ」
「いま、かんこくのことばをしゃべったでしょ」
「韓国語解るのか?」
「ちょっとだけ。ぼくのおかあさんが、おばさんたちにかんこくごをおしえてるから」
「アンニョンハセヨ」
タケルと話していたジュンが、僕を見ていきなり韓国語で挨拶をした。
僕は、驚いてタケルの顔を見た。
「母親が韓国語を教えてるらしいです。ユキさん・・・は、韓国語が話せましたか?」
「ああ、韓国語の通訳の仕事をしていた」
「ビンゴ~!決定ですね。この子の母親は、間違いなく監督が会いたがってるユキさん
ですよ!」
すっかりハイテンションになってしゃべるタケルの横で、ジュンは何か言いたげな様子
だった。
視線が重なったと思ったら、ジュンは僕に向かって言葉を発した。
「おじさんのおうちはかんこく?」
だが、僕にはジュンが何を言っているのか解らない。
助けを求めるように僕はタケルを見た。
「監督の家は韓国にあるのかって、聞いてます」
僕に代わってタケルが答えた。
「このおじさんは、子供の時からずっと韓国で暮らしているんだよ」
「じゃあ、おともだちもたくさんいる?」
「いると思うけど」
「ぼくのおとうさんのこと、しってるかなあ?」
「ジュン君のお父さん?」
「ぼくがもっとおとなになってからって、おかあさんはおしえてくれないけど、ぼく・・・しっ
てるんだ。ぼくのおとうさんはかんこくにいる」
さっきまでのハイテンションな表情とは一変した顔つきで、タケルが僕を見た。
「ほんとはおかあさんもおとうさんにあいたいんだ。でもがまんしてる。だから・・・」
「だから・・・?」
「あわせてあげたい」
「監督!なんだかおかしな展開になってきました」
「おかしな展開って・・・?」
「父親は韓国にいるって。母親がそう言ったみたいで・・・」
いままで隠れていた「あり得ないもの」が、突然僕の中で姿を現した気がした。
「父親の名前は・・・?」
僕は、通じるはずもない韓国語でジュンに問いかけた。
「ジュン、お父さんの名前、解るか?」
やや乱暴な口ぶりから、タケルが興奮していることが解った。
「う~ん・・・え・・・と・・・」
ジュンは必死に思い出そうとしているようだった。
「ジュ~ン!」
坂道の上から、ジュンを呼ぶ男の声が聞こえた。
久しぶりのブログ更新。
治まったと思った熱がまた再発して。
これはマズイ・・・と、さすがに感じて。
日曜日でも平常診療している総合病院に行ったのが、18日。
CTと採血。
結果は、入院を要する肺炎でした。
仕事の方はどうにでもなるけど、家のことが心配で、
「入院はできない」と言い張った。
入院に代って出された条件は、毎日点滴に通うことと、
自宅で安静にしていること・・・だった。
点滴を始めてからは、熱は平熱に戻り、ずいぶんと楽になった。
病院に行く以外は外出をせず、「タムドク」をひたすら観続けた。
タムドクはもはや神々しいほどの美しさ。
今更ながら、ヨンジュンの努力の集大成と言う気がして、
久々に感動した。
食事は、「ホットモット」「コンビニ」「マック」
他にはスーパーのお寿司やサンドイッチ。
高カロリーのものばかり食べていて、病気療養中だと言うのに、
やつれるどころか体重が増えた気がする。
点滴をするための通院は、日曜日(25日)で終了して、
今は飲み薬のみになりました。
月曜日から仕事にも行っています。
ブログを休んでいる間、コメントを寄せてくださった方々、
お返事もせずにすみませんでした。
ブログを休んでいる間に、「choa」という雑誌?にヨンジュンが掲載されたり、
ファミマからは驚くべき企画が発表された。
先々週、熱にうなされながら見た夢。
ヨンジュンがガイド役でソウルめぐりをすると言う夢…。
ヨンジュンを間近で見て、すっかり有頂天になった夢・・・。
それが、現実になる・・・?
来週から、昼ごはんにはファミマの≪ビビンバ弁当≫や≪キンパ≫を食べよう。
「のり(海苔)嫌い」なんて、言ってられない。
友人が話していたオム・テウンのファンミ。
ソウルの同じホテルに泊まって、一緒にバーベキューして。
「おやすみ」と「おはよう」の挨拶付き。
それで料金は17万円。
ヨンジュンにそこまでやって・・・とは、言わないけれど。
5000円分のレシートひと口で1回の応募。
10回応募したって、50000円。
安いもんだ・・・と、すでに頭の中でそろばんをはじいた。
職場の同僚には、コンビニは≪ファミマ≫と、PR済み。
地域の友人も、妹家族も総動員して、トライしよう。
当選した暁には、迷うことなくソウルに行けるように。
まずは、健康。
元気でいなくちゃ・・・と思う。
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