2012/12/24 20:16
テーマ:創作の部屋 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

創作の部屋~朝月夜~<最終話>

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ぼくが突然いなくなって、あの夜は大騒ぎになった。

ぼくは、どうしても確かめたいことがあった。

おじさんが、韓国に帰ってしまう前に。

だから、真っ暗な道も全然怖くなかった。

必死で、おじさんの車を追いかけたんだ。




「お父さん、ジュンの姿が見えないんだけど・・・?」

私は父の部屋をのぞき込みながら言った。

「寝たんじゃないのか?」

「部屋にもいないの」

「いないって・・・こんな時間に外に出るわけはないだろう」


私は玄関に走るとジュンの靴を確かめた。

いつもそこにあるはずの青色のスニーカーが消えていた。

「靴がない・・・」

振り向くと父が後ろに立っていた。


「さっき、俺の部屋に来て変なことを言っていた」

「変なこと?」

「ああ・・・あのおじさんは自分と似ているかと聞かれたよ」

「なんて答えたの?」

「解らないと答えた」

私は全身から血の気が引いていくような感覚に襲われた。


「ジュンの父親なんだろう?」

「お父さん・・・」

「大人のお前たちが選択した道だ。俺は何も言わずにいようと思った」


それらしい会話は何もなく、

ただ他愛のない話だけで済んだインスとの食事だった。

ジュンが気づくはずはないのに。


「コウジに連絡しなさい。もしかしたら一緒かもしれない」

父にそう言われて、私は震える指で携帯を開いた。


 


「とりあえず今夜は空港近くのホテルに泊まって、

明日のソウル便に乗ってください。ボクは、実家に向かいますから」

「いろいろと面倒をかけて悪かったな」

「そうですよ、今夜はユキさんの家に監督を置いて、

ボクは実家に・・・と思っていたのに。こんな結果になるなんて」

言いながらタケルはため息をついた。


僕とは別の道を歩むと言うユキの意思は固かった。

それを翻すだけの言葉は、見つからなかった。


車窓から見えるのは、漆黒の闇。

静けさだけがそこにあった。

住み慣れたこの地に、ユキとジュンを置いていくことが、

僕にできる最後の思いやりのように思えた。


「愛」なんて言葉を振りかざして、

ふたりをソウルに連れて行くことが幸せに繋がるだろうか・・・。

繋がると言い切る自信も勇気も、

長い間の無責任さの前に影をひそめてしまっていた。


父親だと名乗ることもせず、抱きしめてやることもできず、

別れてしまったことに悔いは残るけれども、

むしろその方がジュンのためになるかもしれないと思った。


 


不意に運転中のコウジの携帯が鳴って、車が急停車した。

「ジュン君がいなくなったようですよ」

タケルが僕に向かってささやいた。

「すみません。ジュンがどこかへ行ったらしくて・・・引き返します」

コウジは車をUターンさせた。


「いないって・・・どこへ?」

まさかと思いながらも、

車を追いかけて暗闇を彷徨うジュンの姿が脳裏に浮かんだ。


半分くらい引き返した地点で、

車のヘッドライトにジュンの姿が浮かび上がった。

車を止めてジュンに駆け寄るコウジに続いて、

僕もタケルも車外に飛び出した。


「ジュン!何をやってるんだ!危ないじゃないか!」

コウジに大声で怒鳴られて、ジュンは一瞬泣きそうな顔をした。

「おじさんにどうしてもいいたいことがあって、おいかけてきたんだ」

と、まっすぐに僕を見上げた。

「タケル」

通訳してくれ・・・と言う意味で僕はタケルを呼んだ。


「おかあさんはいまでもぼくのおとうさんのことがすきなんだ。

わすれたふりをしているだけで、ほんとうはわすれてなんかいない」

ジュンは僕の目を見て話し始めた。


「ぼくもおとうさんにあいたい。

でもがまんしてる。おかあさんががまんしてるから」

通訳するタケルの声が震えていた。


「かんこくにかえったらキム・インスというひとをさがして。

そして、ぼくたちはげんきでいるってつたえて・・・ください」

「お父さんの名前がキム・インスだって思い出したんだな!偉いぞ!」

タケルが涙声になりながら、ジュンの頭を撫ぜた。


ここまで来る間に、転んでできた傷だろうか。

ジュンの膝からは血が流れていた。

そんなことは全く気にせず、

必死に僕を追いかけて来たジュンの気持ちを思うと、

胸が張り裂けそうだった。


「伝えたいことはそれだけ?」

タケルが問いかけると、

ジュンは、僕とタケルの顔を交互に見た。

「言いたいこと・・・あるんじゃないのか?」

「ほんとうは・・・」

ジュンが何か言いかけた時、車のライトが光った。


「おかあさんだ・・・」

ユキが慌てた様子で車から降りて来た。

「こんな時間にひとりで家を出るなんて。何かあったらどうするの!」

厳しい口調で言いながらも、

ジュンの無事な姿を見てユキは安心したようだった。


「ごめんなさい」

ジュンが小さな声で言った。

「足止めさせてしまってすみません。行ってください」

ユキは僕を見ながら、ひどく他人行儀な言い方をした。


「おかあさん・・・。ぼく、おとなになるまでまたないとだめ?

いま、しりたいとおもったらだめ?」

ジュンは、掴まれた腕を振り払いながら言った。

「何を言ってるの?」

「ほんとうは、このひとがぼくのおとうさん・・・

キム・インスってひとだよね?そうでしょ?そうだよね」


 


あの日の夜。

暗闇の中でぼくのことを抱きしめて震えていた父の背中を

ぼくは一生忘れないだろう。


幼心に思い描いた父の姿。

写真でさえ知らなかった父の顔。

優しい笑顔。

たくましい腕。

広い大きな背中。

記憶も面影も何もない父であったけれど、

憧れにも似た想像力に、

いつもぼくは勇気づけられ、いつの日か会える日を夢見ていた。



今日は、クリスマス・イブ。

そして、妹のユイの誕生日。

懸命に父を追いかけて、暗い夜道を走った日から、

7年の時が経った。


韓国の祖父母から届いたプレゼントに大喜びのユイは、

来年から小学生に、ぼくは中学生になる。


さっきも電話口で半分涙声になりながら、

「愛しているよ」

と、言ってくれた韓国のおじいちゃんとおばあちゃん。

「夏休みになったら、また会いに行く」と約束をした。


最近ますます元気になったおじいちゃん。

「若いもんに負けてたまるか!」が口癖だ。

卑屈にならずにいられたのは、

おじいちゃんのおかげと思っている。


アメリカで頑張っているコウジおじさんからは、

クリスマスカードが届いた。

父親代わりとなり幼いぼくの面倒を見てくれたおじさん、

ありがとう。

金髪で美人の奥さんといつか会いたいなあ。


そして僕の大好きな両親。

途中、離れていた時期があっても、

お互いのことを忘れずそれぞれの思いを大事にして、

結ばれた父と母。


子供のぼくにはまだまだ解らないことがたくさんあるけれど。

ぼくも父と母のような素敵な大人になりたいと思う。


みんなが幸せな夜を過ごせていますように。

メリークリスマス。


 


「一緒にクリスマスを過ごせてよかったわ」

「新年の仕事を済ませたら、すぐ戻って来る」

「こういうの遠距離恋愛じゃなくて、遠距離・・・婚、とでも言うのかしら」

そう言ってユキは小さく笑った。


ふと、窓辺に目を向けると白いものが横切るのが見えた。

「ユキ見てごらん、ホワイトクリスマスになったよ」

僕達はしばらくの間、無言で舞い降りる雪を見ていた。



「こうして窓辺に立ってふたりで空を見上げたことがあったわね。

覚えてる?朝月夜のこと」

「アサ…ツキ…ヨ?」

「明け方の空にほのかに残るミルク色の月。

あなたがソウルに帰る日の朝、私の部屋から見たわよね」

「ああ・・・そんなことがあったな」

「ずいぶん昔のことのようにも感じるし、

昨日のことのようにも感じるわ」


ユキと出会ってからの出来事が、

走馬灯のように甦っては通り過ぎて行った。

「忘れずにいてくれてありがとう」

ユキが隣でぽつりと言った。


「こう見えて意外と執念深いんだ。

良く言えば粘り強く、辛抱強いってことかな」

冗談を言いながら、僕の胸には熱いものが込み上げていた。


目の前にある幸せを大切にしよう。

もう二度と離れることなく、家族と一緒に生きて行こうと思った。



見守ってくれたすべての人たちに感謝をこめて。

「メリークリスマス」

僕は心の中でつぶやいた。




★本当に長い間、お付き合いくださってありがとうございました。

深く、深く感謝申し上げます。

ひとつでもコメントを寄せてくださる方がいらしたら・・・。

ひとりでも読んでくださる方がいらしたら・・・。

そんな思いで、書き続けてきました。


私の「インス」は今日をもちまして完結です。

大好きなペ・ヨンジュンもいつの日か愛する人にめぐり会って、

家庭を築くことになるでしょう。

その時は、私たち≪家族≫に、

いちばん最初に教えてくれるとうれしいですね。


お付き合いくださったすべての方に、

感謝をこめて。

≪メリークリスマス!≫




                              



2012/04/10 18:25
テーマ:創作の部屋 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

桜よりペ・ヨンジュン。

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友人が、「ソウルの桜はまだかしらね?」って。

すると、もうひとりが、

「日本の桜、見せてあげたいわね」って。


あ~心優しきヨンジュン家族。

私は、ソウルのお天気は気になるけど。

桜の開花まで思いは及ばない・・・。


花見をするより、

≪ペ・ヨンジュン≫が見たい(笑)


こちらは、桜が今を盛りと、

風に揺れながら咲いています。


ヨンジュンの新しい情報がないまま、

ブログネタにも苦慮して(笑)

自分の過去ブログを見ていたら。


2年前のこの時期、

錦糸町の高矢禮・火がオープンで。

前日、「ヨンジュン来るかもよ~」

と、遠方の友人からメールをもらっていたのに。

錦糸町にペ・ヨンジュン?

と、全く信じず。

普通通りに出勤して、

あとで、ものすご~く悔やんだことを思い出しました。



その時に、書いたお話がこれ。

再掲ですし、長いですから、

お急ぎの方は、ここまでで。


そうだった・・・。

2年前は、あの「アニソナツアー」があって。

直後に、ヨンジュンが来日したんだわ・・・。

なんて、思い出話しを語ってください。









彼が来日してから、8回目の朝が来た。

窓を開けるとすっきりとした青空が広がっていた。

今日は土曜日で、仕事は休み。

簡単な朝食と身支度を済ませて空港に向かった。


すでに彼のファンと思われる何人かが、空港ロビーに佇んでいた。

13:30・・・。

この便に乗って彼は帰国する。


何の根拠もない。

いわゆる≪勘≫というヤツ。

私だけじゃなく、みんな≪勘≫を頼りにここに来ているのだ。


真の情報を知っている人など、ほんのひとかけらに過ぎず。

そういう人は、けして大勢の人間が集まる所へは来ない。


突然、ざわめきが起こった。

入り口に向かって人波が動いた。

彼が来た・・・!

私も、そう思って急いで同じ方向に移動した。


しかし、姿を現したのは彼のスタッフだった。

出国ロビーにぞろぞろと向かうグループの中に、彼の姿はなかった。


           

  「キミはカレがいるから、ひとりでも大丈夫だよね」

新しい赴任地に向かう朝、夫がぽつりと言った。


外国の俳優に夢中になっていることを夫が快く思っていないことは、

うすうす感じていた。

けれど、言葉に出して言われたことは一度もなかった。

だからこそ、その日の朝のひと言は意外だった。


子供がいないから夫に着いていくことは、難しいことではなかった。

それをしなかったのは、仕事を辞めたくないと言うこともあったが。

心のどこかに、ひとりの時間を作りたいと言う願望があった。


誰にも邪魔されずに、彼に浸れる時間がほしかった。

仕事をしている時以外は彼のことを考え、

数週間に1回夫が帰宅する時は、優しい妻に徹した。

気ままな日々は、瞬くうちに過ぎて行った。


 
そんな中、彼が極秘来日をした。

「極秘」とは名ばかりで、

入国情報はその日の内にネット上を駆け巡った。


プライベート旅行と言うことで、

公式行事はなく、彼がファンの前に姿を現すことはない。

会えるチャンスは、出国の時・・・その時しかない。


ソウル行きの便は、あと3便。

最終便の搭乗手続きが終わるまで、

彼の到着を待ったがとうとう彼は姿を現さなかった。




無性に煙草が吸いたくなった。

出口から左に数メートル行った所に、

硝子張りの喫煙スペースがあった。


煙草に火を着ける。

メンソールが舌を心地よく刺激した。


禁じられていた煙草をまた始めたことを夫は知らない。

硝子越しに月が見えた。

やや太めの三日月だった。


今回の日本滞在は長くなる・・・そんな気がした。

彼を残してスタッフが先に帰国したことが、

何よりの証拠のように思えた。



2007年春。

彼は、映画のプロモーションのため共演女優と来日した。


記者会見でのひとコマ・・・。

『おいしいうなぎの店を知ってるって、先輩が言ったんです。

連れて行ってあげるって約束したのに・・・ふられましたぁ~』

女優は、おどけた表情とは裏腹に、どこか棘のある言い方をした。


意地悪な記者が問いかけた。

『こんな美人を残して、≪先輩≫はどこへ行ったんでしょうねェ?』


『さぁ・・・ね。多分・・・オンニ・・・』

言いながら、女優は、横にいる彼の様子を窺った。

彼は、顔色ひとつ変えず、視線を合わせることもなかった。


字幕スーパーでは、

「多分、他の先輩と出かけたんだろうと思います」

と、訳された女優の言葉。

だが、熱心なファンは「オンニ」の言葉を聞き逃さなかった。


その後、数日間、

彼の「空白の一夜」は、ネット上の話題となった。


日本でのイベントを終えた彼は、

プロモーションの最後の目的地香港へと向かった。


そして、

自国に帰国することなく、

また日本に逆戻りし、約2週間日本に滞在した。



かつての共演女優と日本で逢瀬を重ねていた・・・などと。

多種多様な噂が流れたが、

彼自身はひと言も語らなかった。




「すみません、火を・・・貸してもらえませんか?」

2本目の煙草に火を着けようとした時、横から声をかけられた。

私は黙ってライターを差し出した。


「どこかに落としてしまったようで・・・禁煙しろってことでしょうかね」

男は、ライターを返しながら軽く頭を下げた。


「禁煙できたら、苦労しない・・・?」

「そう言うことです」

男は、照れ笑いを浮かべた。


不意に男の携帯電話が鳴った。

「生まれた~?明日になりそうだって言ってたのに!

それで・・・どっち?男?男か~!」

辺りをはばからず、叫ぶような話し振りだった。


男は灰皿で煙草を揉み消すと、

「子供・・・生まれたんです」と、言った。


見ず知らずの私にも言いたくなるほどの喜びだったのだろう。

「ライター、ありがとうございました!」

大きな声でそう言って、颯爽と喫煙室を出て行った。



本来なら彼も、

今の男と同じように我が子の誕生に歓喜する年なのだ。

恋愛も思うようにできない彼が、不憫になった。


多くの人間から愛されるスターだって、

その人生はその人のものなのだ。

誰も、そこに立ち入る権利はない。



折りしも2007年のあの時と同じように、

日本は桜の季節。

「あの日の桜をもう一度見たいわ」と、

彼女にせがまれ。

日本のどこかで、

寄り添って夜桜を見上げているかもしれない。

ふと、そんな気がした。



明日、もう一度空港に来よう。

それは、彼の姿を追い求めるためではなく。

夫の赴任先に飛ぶ飛行機に乗るために・・・。


私は、煙草とライターを喫煙室のベンチに残し外に出た。


『地酒うまいぞ』

昨夜届きながら、

返信もせずにいた夫からのメール。


『全部飲まないで、取って置いて』

私は、夫に返信メールを送ると、

もう一度三日月を見上げた。




                              




                     


2012/02/13 08:54
テーマ:創作の部屋 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

創作の部屋~朝月夜~<63話>

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★すでに「完結」したのだと、

思っていた方もいらっしゃいますよね。

まだ、終わっていなかったんです・・・。

完全に私の自己満足的創作活動(?)になってます。

ので・・・。

読んでくださいとは言いません。

言えません(苦笑)



★「星降町」でバスを降りたインスとタケル。

辺りは人影もなくひっそりとしています。

途中、幼い頃の自分によく似た子供に出会います。

ジュンと名乗ったその子に導かれて、ユキの家へとたどり着きます。




 



「会った瞬間から、ジュンの父親だって分かりました」

コウジと名乗った青年は、僕を見てそう言った。

あの子が・・・僕の子?

ユキと僕の子供・・・?

草むらの中から不意に飛び出してきた子の目元に、

懐かしいものを感じたのは幼い時の自分に似ていたからだ。


「ユキちゃんは今、親父さんに付き添って町の病院に行ってます。

血圧の具合が悪くて、定期的に診てもらっているんです。」

もう間もなく戻ると思いますと、コウジは柱の時計を見上げて言った。


「監督の≪黄色いハンカチ≫見つかりましたね」

コウジに促されて2階に上がって行くジュンの後姿を見ながら、

タケルが僕の耳元でささやいた。


 



ユキのおなかに宿った子は、

僕の知らないところでこの世に生を受け育っていた。

その事実を目の当たりにしても、まだ実感が湧かない。


「僕はジュンを我が子のように思って暮らしてきました。

これからもそのつもりでいます」

コウジは、きっぱりとした言い方をした。

「ジュンが小学校に入学する前には、きちんと籍も入れたいと思っています」


籍を入れるということは、

ユキと結婚するという意味だと僕は受け取った。

コウジは韓国語がわからず、僕は日本語がわからない。

全ての会話は、タケルを介してのこととなった。

言葉の壁にもどかしさがつのる。


僕は、コウジから視線をそらし、室内を見渡した。

木のぬくもりが感じられる家からは温かさが伝わり、

ジュンが愛情に包まれて育てられたことが想像できた。


僕は、ジュンを育ててくれた礼を言うべきなのか。

それとも、今まで放っておいた謝罪をすべきなのか、

どちらが正しいのか解らなかった。


解っていることは、

知らなかったでは済まされないということだった。

同時に、この地に根付いて堅実に暮らしているコウジの方が、

自分よりもユキにふさわしいような気がした。

それはユキの夫としてだけでなく、

ジュンの父親としても言えることだった。


感謝も・・・謝罪も・・・。

無責任な男に選択肢はないと思った。

許される選択肢があるとしたら、黙ってこの場を辞することだけだ。
                       
                                                                       

 



「帰ろう」

僕は、タケルに言った。

「え・・・帰るんですか?ユキさんに会わずに?」

「ああ、そう決めた」

「待ってください!」

コウジが身を乗り出すようにして言った。

「さっき言ったことは、僕の考えで・・・

ユキちゃんと確認し合ったわけではありませんから」


「ここに来るまで僕もずいぶん迷いました。

ちょっとでもユキの顔が見られたらと・・・そう思って来ました」

「だったら、ユキちゃんが戻るまで待ってください」

「ここなら、ユキも・・・そしてあの子も幸せに暮らせそうな気がします」

そう言いながら僕は立ち上がった。


・・・と、その時。

「ただいま」

玄関の方からユキの声が聞こえた。

振り返えるとそこには、

父親の体を支えながら立っているユキの姿があった。


ユキは僕の顔を見て明らかに驚きの表情を浮かべた。

驚きの表情はすぐに戸惑いの表情に変わり、

なぜここにあなたがいるの?と言いたげだった。


再会の挨拶をすることも忘れて立ち尽くす僕を見て、

ユキより先に父親が口を開いた。

「この人たちは・・・?」


「以前、韓国語の仕事をしている時にお世話になった・・・方たち」

と、ユキが答えた。

「何の用でこんな田舎に?」

タケルが僕の耳元で「ユキさんとお父さんに挨拶を・・・」

と、言った。


僕はユキと父親に向かって頭を下げ、挨拶の言葉を口にした。

「韓国人か・・・」

「カンコク」と言う言葉だけを僕は聞き取ることができた。



 




「お父さん、疲れたでしょ。少し横になった方がいいわ」

ユキの言葉にうなずくと、父親は僕と視線を合わせることもなく、

自室へと入って行った。


「夕食のしたくをしなくちゃ・・・」

「夕食のしたくより、話しをしたら?こんな遠くまで来てくれたんだ」

「最終のバスに間に合うように急いでしたくします」

コウジの言葉を無視して、ユキはエプロンを掴みながら僕に言った。


「ユキちゃん!この数年間考えていたこと、思っていたこと、

すべて話した方がいいよ。

そうしないと今の状態から前に進めない。

食事のしたくは僕がするから」


ユキの手からエプロンを奪うと、コウジはキッチンに入って行った。

タケルが「僕も何か手伝います」

と、言いながらコウジの後を追った。



 


僕とユキは、ダイニングテーブルから少し離れた場所にあるソファに

向かい合って座った。


「元気そうでよかった」

「あなたも」


聞きたいことや確かめたいことは山ほどあるのに、

胸に詰まって言葉が出ない。

それでも聞かなければならない大事なことがあった。


「ジュンは、あの時の・・・僕たちの子・・・なんだね?」

「ええ・・・」

「どうして・・・子供は死んだと・・・嘘を言った?」

「あなたとは住む世界が違うと分かったからです」


「だからって、ひとりで決める問題ではなかったはずだ」

「ひとりで決めたかったの。

その方が、強く生きていけそうな気がしたから」

「僕と一緒にジュンを育てようとは思わなかった?

それが自然だろう?」

興奮してつい強い口調で言いそうになるのを僕は堪えた。


「そうね・・・何もかも捨ててソウルに行く勇気が私にあったら、

そうしていたかもしれません」

「ソウルで再会した時、君は大切な人と一緒にいると言った」

「ええ・・・確かにそう言いいました」


あの時、僕はユキからその言葉を聞いて、

ユキは結婚したのだと思い込んだ。

「大切な人とは・・・ジュンのことだったのか?」

「ジュンも含めて、ここに住むみんなが私の大切な人です」

ユキは室内を見まわしながらそう言った。


 



「彼は君と結婚すると言ってる」

「そういうことになるかもしれません」

「愛しているのか?」

「答えないといけない?」

「答えてくれ」


「ジュンのいい父親になってくれると思うわ。

それが私の答えです」

「僕の出番はないと・・・そういうことなのか?」

選択肢はないと自分に言い聞かせたつもりなのに、

やはり聞いてみたかった。


「ジュンを授かったことに今は、とても感謝しています。

今までもそうだったし・・・これからも、

あなたのお世話になるつもりはありません。

あなたは韓国で、

私はここで、暮らしていくことが、

みんなの幸せに繋がると・・・そう思っています」


キッチンからはほのかに夕餉の香りが漂い、

ジュンが階段を駆け下りてくる気配がした。



 



                           


2011/09/28 09:14
テーマ:創作の部屋 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

創作の部屋~朝月夜~<62話>

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★幸せに暮らしているユキの姿を見て、ユキへの思いにけじめをつけようと決めたインス。

ですが、「星降」の町が近づくにつれて心が揺らぎます。

そんなインスを、「恋愛は時には潔さも必要」とタケルが後押しします。

(今回はめずらしく(?)長文です。お時間がある時に読んで下さればうれしいです)




                      





「ここまで来て、いまさら何を言ってるんですか?」

タケルは呆れた・・・と言うよりもむしろ怒ったような言い方をした。

「なんだか急に怖くなった」

「怖くなったって・・・」

「幸せに暮らしている姿を見たい、そんな思いでここまで来た。けれど・・・それを確認す

ることが怖くなった」

それは僕の本音だった。


「情けないこと言わないでください。恋愛は時には潔さも必要だと・・・僕は思います。

現実を見て、これからのことを考える・・・≪黄色いハンカチ≫があるかないかを確か

めることが今の監督には必要なことだと思います。年下の僕が、偉そうなことを言って

すみません。」

謝る必要なんてなかった。

タケルの言うことは正しいと僕は思った。


「臆病になって、つい弱気なことを言ってしまった。悪かった。撤回するよ」

「僕の方こそ、生意気なことを言ってすみません」

タケルは、僕に向かって小さく頭を下げた。

「お客さん、着きましたよ」

バスの運転手が、「星降」に到着したことを教えてくれた。



                    


「ここから先は、誰かに聞けって言ったって、誰もいないじゃないか」

バスを降りる時、僕たちの背中に向かって運転手が叫んだことは、そういうことだった

のか。


タケルが言うように、辺りを見回しても誰もいない。

休憩時間なのだろうか。

それとも、山の日暮れは早いから、すでに家路に着いてしまったのだろうか。

農作業をしている人の姿も見当たらなかった。


その時、僕たちの左前方の草が揺れた。

バスの停留所付近で獣と遭遇するとも思えなかったが、一瞬「子狐か?」と思った。

現われたのは幼い男の子だった。

だが、その子の切れ長の・・・涼やかな目を見た時、本当に子狐の化身か・・・と、僕は

思った。


同時に遠い昔、似たような目を見たような・・・そんな気がした。

タケルも僕と同じことを感じたのだろうか。

「なんだ子供か」と言った。


男の子は、僕たちをちらっと見ただけで、坂道を上に向かって走って行った。

「お~い!ちょっと待って!」

自分を呼ぶ声だと気付いたのか、男の子は坂道の途中で振り返った。


タケルは小走りでその子に近づくと、「神門さんと言う家を知ってる?」と聞いた。

「みかど・・・?」

「うん、神の門と書いてみかど。漢字を言っても解らないか・・・」

「みかどってうちはたくさんあるよ」

「そうなんだよな」


日本語が解らない僕は、ふたりの会話が理解できない。

神門と言う名だけが、唯一理解できる言葉だった。

「田舎は、その地域全部が同じ苗字ってことがあるですよ」

と、タケルが教えてくれた。



                   


「みかど・・・だれ?」

男の子がタケルを見上げて言った。

「そうか、下の名前が解ればいいんだよな」


「監督、下の名前、何と言いますか?監督が会いたい人の名前です」

「ユ・・・キ。神門ユキ」

「神門ユキさん、知ってる?」

「みかどゆきは、ぼくのおかあさんのなまえだけど・・・」

「ホントかよ!」

タケルは絶望的・・・とつぶやきながら、僕に韓国語でおおよその説明をしてくれた。


「やっぱり結婚してたんですね。そして子供もいた。だけど・・・」

「だけど・・・?」

「苗字が旧姓のままって言うのが気になるなあ。相手の男が神門姓になったってことで

しょうか?」


苗字のことなど、どうでもよかった。

それよりも、もっと大事なことが僕の心に広がっていた。

「年は・・・?その子の年」

「キミ、いくつ?」

「6さい。もうすぐ1ねんせいだよ」

「6歳だそうです」と、タケルが言った。


6歳・・・あの時の子が生きていたら、ちょうどこのくらいの年になっているはずだ。

もしかして、この子は・・・。

僕は、心臓が大きく高鳴るのを感じた。


「どうしました?」

「いや、なんでもない」

確証がないことを口にできないと思った。

ましてや子供に父親のことを尋ねるなどできないことだった。


                   
                   


「会いますよね?ユキさんに」

それは僕の承諾を得ると言うより、念を押す口ぶりだった。


「おかあさんに会わせてくれるかなあ?」

「いいけど・・・。おじさんはだれ?」

男の子は僕とタケルを交互に見つめながら言った。

「おじさんじゃなくて、お兄さんと言いなさい」

タケルが子供の頭を人差し指で突きながら言った。


「お兄さんたちは、キミのおかあさんに会うために遠くから来たんだ。お家まで連れて行

ってくれるとうれしいんだけどなあ」

「うん、ぼくのおうちはこのさかみちをのぼったところ。すぐだよ」

男の子はそう言いながら、すでに数歩先を歩き始めていた。


「キミ、名前は?」

「じゅん・・・みかどじゅん」

「ジュン君か・・・」

「じゅんゆうしょうのじゅんだよ」

「難しい漢字を知ってるんだなあ」

「だれかにきかれたらそういいなさいって、おかあさんにいわれた」


「準優勝は2番目だぞ。2番より1番の方がよかったのに」

「いちばんはおとうさんだから」

「え・・・?」

「おかあさんがせかいでいちばんすきなのは、おとうさん。つぎがぼく」


「ジュン君が負けるくらいだから、お父さんはかっこいい人なんだ」

子供は、小さな声で「・・・うん」と言った。

「かっこいいって認めてないのか?あ~!やきもち焼いてるんだな」

僕は、ふたりの会話を黙って聞いていた。



                   



「監督、敵はなかなか手強いみたいですよ」

「敵・・・?」

「ユキさんのご主人。かなりのイケメンみたいです」

「イケメン・・・」

こう言う時にも流行りの言葉を交えて会話ができるタケルを若いな・・・と思った。

その若い感性がうらやましくもあった。


男の子は、ジュンと言う名であること。

夫を世界で一番好きだとユキが言っていることから、言いにくいけれど夫婦円満な生活

をしているようだと、タケルが話してくれた。

ジュンの顔つきから、端正な面立ちの父親を僕は思い描いた。


「こっちのおじさんはかんこくのひと?」

「よく解ったなあ」

「いま、かんこくのことばをしゃべったでしょ」

「韓国語解るのか?」

「ちょっとだけ。ぼくのおかあさんが、おばさんたちにかんこくごをおしえてるから」


「アンニョンハセヨ」

タケルと話していたジュンが、僕を見ていきなり韓国語で挨拶をした。

僕は、驚いてタケルの顔を見た。


「母親が韓国語を教えてるらしいです。ユキさん・・・は、韓国語が話せましたか?」

「ああ、韓国語の通訳の仕事をしていた」

「ビンゴ~!決定ですね。この子の母親は、間違いなく監督が会いたがってるユキさん

ですよ!」



                     



すっかりハイテンションになってしゃべるタケルの横で、ジュンは何か言いたげな様子

だった。

視線が重なったと思ったら、ジュンは僕に向かって言葉を発した。


「おじさんのおうちはかんこく?」

だが、僕にはジュンが何を言っているのか解らない。

助けを求めるように僕はタケルを見た。


「監督の家は韓国にあるのかって、聞いてます」

僕に代わってタケルが答えた。

「このおじさんは、子供の時からずっと韓国で暮らしているんだよ」

「じゃあ、おともだちもたくさんいる?」

「いると思うけど」

「ぼくのおとうさんのこと、しってるかなあ?」

「ジュン君のお父さん?」


「ぼくがもっとおとなになってからって、おかあさんはおしえてくれないけど、ぼく・・・しっ

てるんだ。ぼくのおとうさんはかんこくにいる」

さっきまでのハイテンションな表情とは一変した顔つきで、タケルが僕を見た。


「ほんとはおかあさんもおとうさんにあいたいんだ。でもがまんしてる。だから・・・」

「だから・・・?」

「あわせてあげたい」


「監督!なんだかおかしな展開になってきました」

「おかしな展開って・・・?」

「父親は韓国にいるって。母親がそう言ったみたいで・・・」

いままで隠れていた「あり得ないもの」が、突然僕の中で姿を現した気がした。


「父親の名前は・・・?」

僕は、通じるはずもない韓国語でジュンに問いかけた。

「ジュン、お父さんの名前、解るか?」

やや乱暴な口ぶりから、タケルが興奮していることが解った。

「う~ん・・・え・・・と・・・」

ジュンは必死に思い出そうとしているようだった。


「ジュ~ン!」

坂道の上から、ジュンを呼ぶ男の声が聞こえた。





                                 




2011/06/07 18:45
テーマ:創作の部屋 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

創作の部屋~朝月夜~<61話>

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☆BGM「四月の雪OSTより~呼吸」













☆。。。インスはタケルとの会話の中で、タケルが静岡出身
だと言うことを知ります。

消えかけていたユキへの思いが、「静岡」と言う地名によってよみがえります。

タケルを伴って、静岡空港に降り立ったインス。

バスに乗って、ユキがいるはずの「星降」を目指します。。。。☆








緩やかな稜線を描いて連なる山々。

山間の茶畑。

点在する民家。

バスの窓から見える風景は、遠い昔の僕の記憶を呼び覚ました。


まだ学生だった頃、父親の車を持ち出した友人とポソンを目指した。

行先はどこでもよかったような気がする。

おぼつかない友人のハンドルさばきに不安を感じながらも、仲間とのドライブは楽しかった。

将来の目標も定まらず、誰かを愛すると言うことの意味も解らず、友人たちと楽しく過ごしていた日々。


あの頃、一緒に笑い転げ、同じ時を共有した仲間たちは、穏やかな日々を過ごしているだろうか。

家庭を持ち、父親となっているだろうか・・・。
 

                 

               
「本当になんにもなくて、驚いてます?」

外の景色を無言で眺めていた僕に、タケルが話しかけた。

「昔見た景色を思い出してた」

「韓国の茶畑ですか?」

「ああ・・・ポソンの茶畑とよく似てる」

「デートの記憶ですか?」

タケルは興味津々と言った様子で、僕の顔を覗き込んだ。


「いや、学生時代・・・男4人で・・・」

「男4人で茶畑見物?味気ないなあ」

「期待に沿えなくて悪かったな」

「別に・・・悪くはないですけど。なんか、スカッとするような恋の話しないんですか?」


「僕の恋愛に興味があるってこと・・・?」

「そりゃあ、ありますよ。世界に名の知れた照明監督の恋・・・誰だって、興味あるでしょ!」

「タケルが期待してるような恋愛話はできそうにないな」

そう言いながら、僕は再び視線を窓の外に移した。


                


「監督、≪幸せの黄色いリボン≫って曲、知ってますか?」

タケルに尋ねられたが、思い当たる曲が浮かばなかった。

「70年代にアメリカでヒットした曲なんですけどね」

「70年代?タケルはまだ生まれてないだろう?」

「ええ、もちろん生まれてません」

タケルがメロディーを口ずさんだが、やはり、僕の記憶にはない曲だった。


「日本で、その曲をヒントに映画ができたんですよ。≪幸せの黄色いハンカチ≫って言うタイトルで・・・それも、ずいぶん昔のことですけどね」

僕は、映画は好きだが日本の映画はほとんど観たことがなかった。


刑期を終えて、故郷に帰る男がいた。

男は、出所が決まった時、妻に手紙を書いていた。

『もしも、お前が今でも独りで暮らしているなら、庭先の鯉のぼりの竿の先に、黄色いハンカチをつけておいてくれ。

ハンカチがあったら、俺は家に帰る。

でも、ハンカチがなかったら、俺はそのまま去り、二度と戻らない』と。


                  


「ハンカチがあったか、なかったか・・・どっちだったと思います?」

「あった」

「ずいぶんあっさり答えますね」

「当たり・・・?」

「当たりです。」

「だろうな・・・」


「小さな家の狭い庭先に、不釣り合いなほど高い鯉のぼりの竿があって。そこに何10枚もの黄色いハンカチが並んでいたんです」

「1枚だと、見落とす可能性がある」

「監督~!もっとロマンチックに考えられませんか?ハンカチの数は夫を思う妻の気持ちの表れですよ」

感動的な場面なのになあ・・・と、タケルが残念そうにつぶやいた。


ゆっくりとバスが停車して、前方の座席に座っていた乗客が下車すると、バスの中は運転手と僕たちだけになった。


                   


「あっさり答えた理由は何です?」

「映画の結末としては、その方がいい」

「現実的すぎませんか?本当にそれだけの理由で?」

「ああ、そうだよ」


「かすかな期待と、淡い願望の表れとか・・・?」

「それで、映画の話しをしたのか?かすかな願望も、淡い期待もないさ」

僕はわざと無愛想な言い方をした。


「例えばですよ・・・。監督のことを思って、愛しているけど別れた。
でも、別れるからにはそれなりの理由が必要です。そこで・・・結婚していると言った。つまり嘘を言った・・・いつか必ず、訪ねて来てくれると待っているかもしれない・・・」

「たいした想像力だな、小説家になったら?」

僕は、嫌味を言った。

「ええ、小説家志望でした」

「ホントか?」

「嘘です」

タケルは笑いながら、星降まで、あとどのくらいかかるのか聞いてきますと、揺れる車内を運転席の方に向かって歩いて行った。


                  

「3つ目のバス停で降りるように言われました」

あと3つ・・・。

バスは急斜面の山道を登り始めた。


車窓から見える規則正しく並んだ段々畑。

垂直に立つ白い風車。

丹精込めた緑の茶畑は地平線の彼方まで続き、空の青さとの境界線が鮮やかだった。


「≪黄色いハンカチ≫ありませんかねえ・・・」

タケルが小さな声で言った。


タケルの旺盛な想像力と推理力を借りても、僕の脳裏には、風にたなびく≪黄色いハンカチ≫が浮かぶことはなかった。

≪黄色いハンカチ≫の男は、時を経ても変わらず、愛されている自信があったのだ。

だからこそ、手紙を送ることができたのだと思った。


それに比べて自信のかけらもなく、ただ未練だけを引きずってここまで来た自分が、実に情けない男に思えた。

「このまま降りずに、引き返そうか・・・」

つい、そんな言葉が口をついて出た。


「はぁ?いまさら何を言ってるんですか」

タケルの呆れた顔がそこにあった。







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