2008/11/18 00:25
テーマ:天才演出家 木島直人の憂鬱 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

天才演出家 木島直人の憂鬱

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これは、「いつか、あの光の中に」の続編の前説(笑)として書いたものです。

劇団宇宙の我らが代表、木島直人。彼と瞳の親友、相原萌とのお話。

木島さん、結構大変です・・ボヤキの直人^^萌ちゃんにタジタジ!



まったく、俺はツイてない。

 

 

確かに、仕事の面では恵まれていた。


15周年記念公演は、あんな事件こそあったが大成功に終わり、

おかげで立派な賞も取った。


劇団の知名度は上がり、

もうすぐNY公演も控えてる。

演出家として、まさに順風満帆ってところだ。

 


俺は苦労を知らない。


生まれた家は裕福だったし、親父が死んで財産も相当額相続した。

 

・・・何か、やりたかったんだ。

 

金持ちのボンボンの遊びと思われるかもしれないが、

俺は自分が、心底打ち込める物を求めていた。

 

大学で友人に誘われ、芝居の世界に足を突っ込んでからは、

もう抜け出せないほど夢中になった。

 

演じるのも、もちろん面白かったが、

役者を通して自分の絵が描ける“演出”に興味を持った。

 

“芝居、芝居、芝居・・”

来る日も来る日もそればかり。

おかげで、大学は1年留年。


卒業後、大学の仲間といきなり劇団を立ち上げた。

親父の遺産で立派な稽古場も作った。

 

分不相応だと人は笑ったが、

人間、形から入るのも悪くはないだろう?

 

仁と出逢ったのは、その稽古場が出来て間もない頃。

まさに運命の出逢い。

 

ある日、噂を聞いたんだ。


池袋の路上で変った奴が1人で踊ってるって。

殆ど笑わず、客と話さず、ただ木戸銭入れ代わりの帽子を前に、

激しいリズムを刻んでいると。

・・・それも“タップ”を。

 


俺はその時、劇団の群舞をどうしようかと悩んでいた。

 

ミュージカル劇団など、この東京には数え切れないくらいある。

大手に対抗しようとは思わないが、何か大きな特色を出さなけ

れば、こんな小さな劇団、すぐに消えてしまう。

 

他劇団に無いもの・・そう簡単にマネの出来ないもの。

“これが「宇宙(そら)だ!」”という何か・・

 


仁を見た時、俺の中で何かが弾けた。

そして、そのダンスから目が離せなかった。

 

あの時のあいつの目のせいかも知れない。

ギラギラと周囲を威圧する目。

しかもあいつは俺と目が合った途端、

客である俺を睨みつけたんだ。

 


出逢いの不思議を感じるよ。

そんな目で睨まれたのに、俺は仁と芝居をすることしか

考えられなくなっていた。

 

真夜中、帰ろうとするあいつを強引に飲みに誘って、

朝まで飲み明かした。

 

「久しぶりだ」という酒。

 

文字通り、あいつは浴びるほど飲んだ。

飲んで・・飲んで・・いつしか妹の事を話し出したあいつ。

 

その辛い愛の話は俺のあいつを見る目を少し変えた。

本気で愛していたんだろう。

最後は名前を呟きながら、眠りに落ちていった。

 

翌日、まだ二日酔いのあいつを(殆ど荷物もなかった)

“劇団管理人”と称して、あの部屋に住まわせた。

どこの誰かもよく判らない男を。

今から考えれば、あれは博打だったな、殆ど・・

 


女って生き物は、何故か影のある男に惹かれるらしい。


あいつの部屋は、いつも違う女がドアを叩いていた。

あいつにその気はなくとも・・だ。

 

咲乃と付き合いだしたのはいつからだったか。

 

仁にしてみれば、こんな都合のいい女はいなかったろう。

 

相手の行動を干渉しない。

結婚を口にしない。

 

驚いたことに最初にこの冷めた関係を望んだのは、

咲乃の方だったらしい。

 

咲乃の仁を見る目が変化しているのに気付いたのは、

決して俺だけじゃないだろう。


仁はそれでも咲乃を見なかった。

あえて見ようとしてなかったのか・・

あいつには、感情がない・・そう思った事もあったくらいだ。

 


・・そうだ!仁の話はいい。あいつは瞳と出逢って愛を知った。

あんな締まらない仁の顔を見る日が来るとは、

まったく想像もしなかったぜ!

あのギラギラした目が今じゃ優しいカーブを描いてるなんて。

悔しい事に、いい男はどんな顔も絵になっちまうがな。

 


問題はこの俺さ!!

 

何だ!あの女は!

 

あの・・相原 萌って女は・・

 

あんな女、いままでお目にかかったことがない。

 

俺だって、仁ほどじゃないがそれなりにモテた方だ。

去年離婚した女房とは上手くいかなかったが。

 

女房に言わせれば、“結婚生活を省みない夫”の俺に

非があるらしい。


朝帰り、そこそこの浮気。

役者や演出家の女房なら笑って許すくらいの

度量がなけりゃ・・・


冷え切っていた夫婦関係。

そんな時、突然俺の目の前に現れた萌。

 


何であんな女に惚れたのか。


しかもあいつは23、俺は38・・15も違う。

仁と瞳の上をいく年齢差だ。

 


萌はあの時、怒鳴り込んできたんだ。

まだ研究生だったくせに、いきなり劇団代表の俺のところへ。

「卒公の瞳の配役に納得がいかない!」・・と。

 

こんなことは前代未聞だ。

 

自分の役についての不満は聞いたことあるが、

友人の、しかも自分のライバルになる位置の人間の役の為に、

劇団代表の俺に直接文句を言いに来るなんて。

 

しかも萌は、初めから俺に向かってタメ口だった。


「代表は、人を見る目がないの?」


「瞳は絶対伸びる娘だって代表には分からないの?」


「瞳を取らなかったら、後悔するわ。

これからの宇宙には必要なのに・・」


「お前はどうなんだ?」 「え?」

 

「相原・・それはお前の本心か?はっきり言うぞ。

さっきのオーディション。お前は2番だ。このままいけばお前は残れる。

が、微妙な位置でもあるな。

お前のダンスはパワフルだ、しかも芝居もうまい。

今後のウチに俺はぜひ欲しい。

だが、木村は5番だ。何も好き好んでそんな位置のライバルに・・」

 

「5番?・・そう、瞳、5番だったの。そうよね、あの娘この所、

急激に伸びたもの。タップだって、芝居だって。

さっきのタップ、見たでしょ?私だって驚いた。

そうだ!それならハーミアがあるじゃない!何で5番が辛子の種なのよ!」

 

「それはだな、俺じゃなくて仁が」

 

「あたしは残ります!あたしだってそこまでお人好しじゃないわ!

でも瞳も残すべきだって言ってんの!

それにはあんな役じゃ無理だって、分かるでしょ?

それとも、そんなことも分かんないの?・・もしかして、バカなの?」


「バカだ~?今、俺をバカだって言ったのか?相原、俺を誰だと」


「劇団代表、天才演出家、木島 直人さんでしょ?

知ってるわよ。当たり前じゃない!

私だってココの芝居が好きで、あなたの演出が好きで、

影山 仁が好きで入ってきたんだから。

・・でもそれが、何?年上だろうと、地位が高かろうと

人を見る目の無い人に、そんな気使わないの、私。

バカにバカって言って何が悪いの?本当のことじゃない!

だって。信じられないもの。誰が見たってさっきのオーディションで

あの配役はないわ。

ああ~~頭来た!お疲れ様でした!!

・・・きっと瞳、今頃落ち込んでるわ。

あの娘、さっき飛び出していったまんまよ。今頃何してるんだか・・

私の言いたいことはそれだけ。ね!明日までに考え直しといてね!」

 

「あっ!・・ぉぃ・・相・・原・・・・」

 

 

俺を睨みつけ、啖呵を切るだけ切って、さっさと部屋を出て行った萌。

 

俺はカウンターパンチを喰らった気分だった。

そしてその瞬間・・俺は完全にノックアウトされた。

 


この俺が、目で女を追うなんて・・

それからの俺の目には、萌しか映らなかった。

 

萌が笑う。

萌が怒る。

萌が踊る。

萌が・・・泣く。

 


そうだ・・俺は萌を泣かせた。

 

俺は、待てなかったんだ。仁のようには待てなかった。

毎日、萌の顔を見ているのが苦しくて、

萌をこの腕に抱きたくて・・

 


ある日、“ダメ出しがある”と、萌を事務所に呼びつけた。

深夜の事務所。

俺は、無意識に・・・ドアに鍵をかけた。

 


そんなつもりじゃなかったんだ。

ただ、俺の気持ちを伝えたかった。

でも、萌と言い合っているうちに・・・・・・・・・

 

 

終わった後、萌は泣いた。

大きなあの瞳から、たった1粒の涙を・・

 

「こんなこと・・こんなことしなくても私はいるのに。

“傍にいろ”と言われたら、私はいるわよ」

 

「知ってたのか?俺がお前を」

 

「私は瞳みたいに鈍感じゃない。この何週間か私を見る視線に

気付いてた。それがあなただって分かった時は、正直驚いたけど。

あなたの目は真剣だった。真っ直ぐ私だけを見てくれてた。

言ったでしょ?私は人を見る目はあるって。

あなたの事は嫌いじゃない・・ううん、好きよ。

・・バカね、嫌いだったら、いくら代表に呼ばれたからって

こんな時間に1人で来たりしないわ。

あの時だって、相手があなただったから文句言いに言ったの。

あなたなら分かってくれると思ったから・・


だから。もうこんな事しないで。

無理矢理じゃなくても私は傍にいるから・・」

 


「ごめん、萌。悪かった・・ごめん・・限界だったんだ。

苦しかった。こんな想い初めてなんだ。こんな気持ちになるなんて。

それに俺には妻が・・別れるよ。ちゃんとする。

もう俺達夫婦はダメだったんだ。お互いに分かっていたのに

きっかけがなくて・・・萌、俺を、待っててくれるか?」

 

「待たないわ」

「えっ?」

 

「待たない。私はそんなこと望んでないから。

それに私をきっかけにするのはやめて。

ただ、傍にいるだけじゃだめなの?離婚もしなくていい」


「萌!」


「代表。ううん、直人さん。私はね、恋をしたいの。

結婚なんてしたくない」


「いいのか?お前はそれで」


「頼むから何度も言わせないで。

でもね、私、焼きもちは妬くわよ。そのくらいさせてね」

 


あぁ・・初めから俺たちは、萌が主導権を握っていたんだ。


俺は心地よかったんだ。萌と付き合ったこの2年。

 

萌は俺を自由にさせてくれた。

 

こんなに自由にさせられるのは、俺にもう関心がないのかと、

他の劇団員に少しちょっかいを出す度、あの大きな目でギロリと

睨まれた。その焼きもちまでが愛おしかった。

 

いつも萌と居たかった。

だから、きちんと離婚したのに。

 

ウエストサイドの初日の夜。

俺は指輪を用意し、雰囲気のいい店を予約し、

一世一代のプロポーズをした。


ところが・・・


パーン!!!


いきなりのビンタ。

しかも公衆の面前で、おもいっきり・・30台のいい大人が、だ!

 

「直人!!(15歳年上をつかまえて、萌はこう呼ぶ)

言ったでしょ?私は結婚なんかしたくないの!!

どうしてもしたいって言うなら、別れるわよ」

 

「萌・・どうしてだ?もういいだろ?俺はちゃんと離婚した。

いつまでもお前に、惨めな想いをさせたくないんだ。

・・俺のことが嫌いになったのか?他の男が出来たのか?」

 

「相変わらずバカね、直人は・・愛してるわ。他の男なんて・・

私の気持ち分かってくれないのね。そう、分かった。別れる。」

 

「萌!!」

 

「ねぇ、少し時間くれる?あなたじゃなきゃダメなのか、

もう少し考えたいの。それまで別れて。

直人も考えた方がいいわよ。他にいっぱいイイ女いるじゃない」

 

「お前、焼きもち妬くくせに。そんなこと・・出来るわけないよ」

 

どうして、萌にはもっと強く出られないのか。

コレはもう恐妻家の域・・だな。

 


別れてからもう8ヶ月だ。

仁も瞳も帰ってきた。

 

な?もういいだろ?

これ以上待たせるな。

俺はお前じゃなけりゃ駄目なんだ。

 

でも、

また殴られたら?

 

ああ~~!!!どうすりゃいいんだ!!

 

仁。

助けてくれ・・親友だろ?

しかもお前の女房は、萌の親友だ。

 

年下の女の扱い、教えてくれよ。

もっとも、瞳は萌と違って殴らないだろうが・・

 

ちっ!自分だけ幸せになりやがって。

目尻が下がりっぱなしだぞ!

 

なぁ・・仁、なんとかしてくれよ。


お前、いったい何て言ってプロポーズした?

 

 


天才演出家 木島直人。

 

今日も彼のタメ息は、長く、

 


       そして深い・・・・

 


 


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