2010-05-30 22:23:51.0
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory-Reymond-3

Photo


  

Reymond

      

「ジニョン・・・泣くのはお止め・・・」

あの時私はフランクがジニョンの元に向かったことを配下の者からの連絡で確認すると、
時間を見計らってジニョンに言葉を掛けた。

案の定タイミング良くその場に現れたフランクが、私のジニョンへのちょっかいに
怒りを露にし、私の背中に鋭い刃のような視線を突き刺してきた。

   そう・・・その調子だ

   もっと・・・怒れ・・・フランク・・・


それが私の目的・・・


しかし彼女の涙が・・・何故なんだろう・・・今度は私を正面から突き刺す


   泣かないで・・・


彼女の俯き濡れたまつげが私の胸を切なく疼かせていた

   いったい・・・どうしたと言うんだ
   彼女に近づいたのは手段に過ぎないはず・・・


それなのに何故か・・・


彼らを乗せた車が走り去るのを私は妙に複雑な気持ちで見送っていた。

   何をそんなに動揺することがある

   レイモンド・・・お前は目的を果たしているだけだ


しかしいつまでも私の脳裏から、彼女の涙顔が離れてくれなかった。

 

 

 

      『フランク?!』

私の電話に出たジニョンが相手も確認しないで、飛びつくような声でフランクの名を口にした。

      「ジニョン・・・どうした?」

      『レイ?・・・先生・・・』

      「フランクと一緒なんじゃないのか?」

 

私が思わずそう言ったのは、彼女のそばにフランクの気配を感じられなかったからだった。

      『・・あ・・一緒です・・
      今・・彼は・・ちょっと出かけていて・・その・・』

 

   そうなんだ・・・

君達ふたりが立ち去った後、君の声を探さずにいられなかった

きっとふたりが一緒だろうとわかっていながら私はこうして君の声を追った

 

      「そう・・」

      『あの・・何か・・』

      「いや・・今日のこと・・謝ろうと思って」

      『何を謝るんですか?』

      「何を・・・そうだね・・何を謝るんだろう」

   そうだ・・・いったい私は何がしたい
   彼女に何を求める

 

      『先生・・・大丈夫です・・・
       私のこと、気になさらないで』

      「それは・・どういう意味?・・
       君に構うなと・・近づくなと?・・忠告かな・・」

私は十歳も下の彼女に向かって、何故だか子供のように絡んでいた。

 

      『忠告だなんて・・・』

      「でも悪いけど・・・それはできない」

      『・・・・・レイ・・・どうして・・』

      「どうして・・それは君が・・」

 

   彼女が何だというんだ・・・
   彼女は・・・ターゲットに過ぎないはず


      『えっ?』

      「いや・・・止めておこう・・それじゃ」

      『あ・・』

      「何?・・」

      『いえ・・何でも・・ありません』

 

   ジニョン?・・・フランクと一緒じゃなかったのか・・・

   今・・ひとりなのか?・・・

 

      「・・・・ジニョン・・・今どこ?
       本当にフランクと一緒?」

      『一緒・・です・・・それじゃ・・おやすみなさい』

彼女は私の言葉を遮るように電話を切った。

 

   ジニョン・・・心細そうな震えた声だった・・・

 

私は直ぐにフランクに電話を入れたが彼の声を聞くことができなかった。

私は思わずその握った電話に向かって、思いに任せて怒鳴っていた。  

 

      「フランク!ジニョンと一緒じゃないのか!
       返事をしろ!」

 

彼の留守番電話にそう残してしまった後、私は一瞬にして後悔していた。

 

    レイモンド・・・

    お前が興奮する理由が何処にある

それでも私は


ジニョンの行き先を必死に探し歩いた

自分の配下にもスパイが存在することを察知して、自分ひとりで動いた。

唯一信用できるソニーにすら打ち明けなかったのは、私自身がきっとこの気持ちを
持て余していたからだろう。

 

数時間かけてやっと
フランクの隠れ家を見つけた時は正直ほっとした

 

    ジニョンがいるとすればここしかない

 

そう信じた私は、夜間にも係らず、そこに向かって無意識に車を走らせていた。

 

あの電話の後から連絡が取れなくなったジニョンの姿を見つけるまでは
私は止まる訳にはいかなかった。

   いや自分を止めることが出来なかった・・・

   しかし・・・それでどうしようというのだろう


    彼女を探して・・・

    彼女を見つけて・・・

       いったい・・・私は・・・

 

        ・・・何がしたいんだ・・・


 


      


 

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