2010-06-25 09:13:46.0
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage-儚い夢-37.開眼

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レイモンドはその手が既にソウルホテルに届いていることをフランクに執拗に誇示した。

ソウルホテルの債権が徐々に思わぬ所に集められ、昨日まで明光指していた経営に
突如暗い影が差し込むと、その影は経営陣の力を瞬く間に封じ込めていった。

彼らは未だ正体を隠すその影に怯えながら、暗闇の中で打開策を模索していた。

ジニョンの父ソ・ヨンスもまたそのひとりだった。

ソウルホテルの顧問弁護士でもあるヨンスにとっても、この状況に対する改善策は
暗中にあった。

そんなある日、ヨンスの元にひとりの男が訪ねて来た。

    《あなたの持つソウルホテルの債権をお譲り願いたい》

その男はヨンスに向かって唐突にそう言った。ヨンスは当然その申し入れを断った。
するとその男はひとつの封筒をヨンスの前に差し出してこう言った。

    《それをご覧になれば、あなたのお気持ちも変わるはず》

ヨンスはその封筒から取り出した書類にひと通り目を通すと突然激しく音を立てて
目の前のテーブルにそれを叩き付けた。
その拍子に書類の間から、学校らしき場所で友人達と、語り合いながら歩く
愛しい娘ジニョンの笑顔が舞い落ちた。

    《ソニー・・・あんたという男は・・・
     旧友だと思っていたのに・・・》
     

 


ジニョンの父上がアメリカに渡るまで一週間、僕は次第に自分が成すべきことが
何なのか理解しつつあった。
そして、それが生み出すだろう嵐に呑まれる覚悟も・・・


そして・・
レイモンドの言動はソウルホテルを潰すことが決して見せかけでないことを日に日に
僕に思い知らしめた。

彼はたとえ彼のジニョンに向けた愛情が真実であったとしても、彼女にさえ
容赦することはないだろう。

まるでそうすることが全てでもあるかのように、彼の目が僕を追い詰めてくる。


僕は親に捨てられたことをバネに生きてきた
いつの日か、父を見返すその時が来た時、僕は自分を捨てたその父を遥か上から
蔑む立場の人間でなければならない。


そのためにも・・・
このアメリカに生きていく上で、マフィアなどと手を組むことなど、僕には
あってはならないことだった。

それは僕の唯一の信念とも言えた

僕自身がその信念を曲げることなく

ソウルホテルも・・・

彼女も・・・守ることは出来ないのか

もし・・・それを叶える方法があるとしたら

それはひとつしかない・・・

食うか・・・食われるか・・・

「ボス・・・言われた通り調べたぞ。これをどうするつもりだ」
レオが、片手に書類を翳しながら、そう言った。

「・・・・・」 僕は無言でその書類を手にした。

「・・・お前・・・何を考えている?
 まさか・・・可笑しなことを考えてないだろうな」
僕の神妙な様子を怪訝な顔で見上げながら、レオは声を少し震わせた。

「可笑しなこと?」

「・・・・殺されるぞ」

レオの表情が決して冗談ではないと語っていた。

「ふっ・・」

僕はそんなレオの真剣な顔が急に滑稽に思えて、口先で笑ってしまった。

「笑い事じゃないぞ!
 お前・・・マフィアの本当の姿を知らないから
 いいか・・よく聞け・・
 世の中には必要悪というのがある」

「奴らも必要悪だとでも?」 僕はレオを下から睨みつけるように言った。

「そう・・とは言わないが、もうずっと昔から
 彼らと世の中は共存してきたんだ」

「だから?」

「お前も触るな」

「おい・・レオ間違うな・・向こうから触ってきてる
 僕は振り払うだけだ」

僕は敢えてレオの真剣な忠告を冗談のように交わしていた。

「面倒はごめんだぞ。」

「だったらお前は逃げればいい」

「お前!・・・俺に向かってそんな口をきくのか!
 今まで俺がどれくらいお前の為に・・・」 
レオは激高して拳を振り上げんばかりだった。

「とにかく!、マフィアには触れるな!
 これは忠告だ 
 俺はお前に賭けた
 お前もこれからこの業界でのし上がっていく
 そう決めたんだろ?      
 だったら!目をつぶることも必要なんだ
 よく覚えておけ!」

レオはそう言い放つと、乱暴にドアを閉めて部屋を出て行った。


   レオ・・・

   お前の言いたいことはわかっている

   しかし僕には守りたいものがある

   命を掛けてでも・・・

   どうしても守りぬきたいものがある

   それは僕自身の信念と・・・

   ただひとりの・・・

 

   ああ・・

   よく・・・覚えておくよ・・・レオ

   しかし

   いったいいつまで

   このままでいられるというんだ    

   つぶった目は・・・

   いつかは開かなきゃならない

   歩くために・・・開かなきゃならない

   まっすぐに歩くために・・・

   そうだろ?レオ・・・

   
   そして僕は・・・この目で

   この世でただひとりの大切な人を・・・愛しく・・・

 

         愛しく・・・
         

        ・・・見つめるんだ・・・
      








 

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