2010-07-18 13:00:23.0
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirageside-Reymond-15

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   その人を・・・守ってやりなさい・・・

   愛する人は・・・ 何としても・・・

      守らなくてはならん・・

   お前には・・・
   私のような後悔をさせたくはない

 
父は背を向けた私にそれだけ言い残して部屋を出た。


        守ってやりなさい・・・

 

「フッ・・
 あなたにそんなことを言われるとは・・・思わなかった・・・」

私は父が出て行ってしまった後にひとり月に向かって呟いた。
「あなたに何がわかる」 そう続けた私の心の中は不思議と穏やかだった。

 

   しかし父さん・・・
   残念ながら僕にはその資格がない

 

   自分の思惑の為に愛した女すらも陥れる
   ・・・そんな男です

 

   それに彼女には・・・
   きっと命がけで彼女を守もりぬく
   最強の男がいる


   父さん、教えてあげましょうか・・・

 

   愛することと・・・愛されること・・・

   その違いはあまりに大き過ぎるということを・・・

   フッ・・・


   ソニーがそう言ったんです

   もしかしたら・・・あなたよりもずっと深く
   母さんを愛していたかもしれない・・・

   ソニーが・・・そう言ったんです

   父さん・・・あなたは知ってますか?

   母さんはあなたをとても愛していた・・・

 

   あなたは母さんに愛されていた

   そうです・・・それならば・・・

 

   僕よりもあなたの方が・・・遥かに幸せだ・・・


   あなたは自分の人生に価値がなかったと言った・・・

   本当にそう思いますか?

 

   あぁ・・・そうでした・・・

   あなたのことを言葉にする時の
   母さんの美しく優しい笑顔・・・

   あの笑顔を今・・思い出してしまった

   その笑顔がとても好きで・・僕は良く
   母さんにあなたのことを尋ねたりしたものです


   そうなんですね・・・

   あなたの存在の価値は・・・


   きっとそうだ・・・

   僕の母さんに愛を教えたこと・・・

   今の僕には・・・それがよくわかる・・・

 

   父さん・・・

   あなたはそれだけでは・・・


       ・・・不足ですか・・・

 

 

「若・・・フランク・シンが動き出しました」

「ん・・・上手く情報が伝わったんだな」

「おそらく・・」

「それで彼らには辿り着けそうか」

「いえ・・それはまだわかりません・・
 どうもフランク・シンはひとりで動いているようです」

「ひとりで?」

「その方が情報が漏れる可能性が少ない・・そう考えてのことだと・・」

「危険だな・・・ライアンの動きは?」

「相変わらず、張り付いています」

「ソニー」

「はい」

「フランクが彼らと接触しそうな動きがあった時は・・・」

「・・・・・」

「もしもそれを邪魔するような奴がいたら・・」

「承知しています・・・あなたはそれ以上何もおっしゃらなくていい・・・」
    
  フランクは私の思う通りに動いてくれるだろうか

  思うところへ辿り着いてくれるだろうか・・・

私はソニーからの電話を切った後、父が残したワインを眺めながら、
私の最後の戦いがきっと、父を追い詰めることになるだろうことを心の中で詫びていた。

 

   でも、父さん・・・

   その戦いが終わったら・・・あなたを・・・

   母さんの元へ送れそうな気がする・・・

   その時こそあなたを・・・

   許せそうな気がするんです

 


私は机の引き出しから小さな木箱を取り出すと、その中から焼けかけた一枚の写真を
手に取った。

   私の手元に残るたった一枚の母の写真・・・

   少し伏目がちに想いにふけったような・・・

   美しい横顔・・・

   これは・・・僕があなたに内緒で
   そっと撮ったものだ・・・

   シャッターを押した瞬間に・・
   あなたが僕に「何でもないのよ」と言いたげに
   笑顔を向けた・・・
   それが却って・・悲しかったのを覚えています

   今こうして改めて見ると

   きっとあなたは静かに
   心の隅に父さんを刻んでいたんですね

 
母が一人で逝ってしまった後、その行為が許せなくて、私は感情のまま
母の写真を残らず燃やしてしまっていた。

その時、慌てたソニーがその火を消し、燃えかかった最後の一枚を取り上げて
私を睨みつけながら黙って持ち去ってしまった。


それから随分長いこと、私がこの写真を目にすることはなかった。

あれは私が二十歳になったころだったろうか・・・
ソニーが何も言わずこの木箱を私に差し出した。

私は最初不思議な顔をしながら蓋を開け、その中にこの写真を見つけると、
思わず苦笑いを浮かべながら彼からこれを受け取った。
 

   母さん・・・
   本当はあの時のことを凄く後悔しています
   あなたとの思い出を消してしまおうなんてこと・・・
   するんじゃなかった

   僕の大好きだったあなたの美しい笑顔
   それが一枚も残っていない

   このたった一枚の写真の中のあなたは
   余りに悲しげで・・・

   まるで僕を責めているようだ

   
   忘れてしまいそうだったんです

   あなたの幸せそうな笑顔を・・・

   それを彼女が思い出させてくれた
      

   だから余計に彼女に惹かれるのかもしれない・・・

   僕の記憶の中の・・・

   あなたの笑顔に・・・惹かれるのかもしれない・・・


       母さん・・・

 

          それもまた・・・

 

        あなたの・・・僕への・・・

 


 

            ・・・罰ですか?・・・

 

 



 

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