2010-09-19 00:43:29.0
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirageside-Reymond-18

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「逃げられた?・・・」

「はい・・申し訳ありません」

「フッ・・・相手はフランクだぞ・・・甘く見るなと言っただろ?」

「邪魔者がいたようでして」

「邪魔者?ま・・心配するな・・さっき、彼から連絡が入った」

「奴本人からですか?」

「ああ・・“あいにくでしたね”とのたまった」
そう言いながら、レイモンドは口元だけで笑った

「それで・・」

「明日、会う」

「では私もご一緒に・・」

「いや・・私ひとり・・・彼の条件だ」

「しかし・・向こうには夫人がいます。彼女の周辺には用心なさらないと・・
 奴らは間違いなくあなたを狙っているんですぞ。

 それにフランクもあなたを敵だと思ってる。彼が突然向かってくることも有り得ます」

「はは・・誰よりフランクの方が私は恐ろしい」

「若・・楽しんでる場合じゃないですぞ・・」

「楽しんでなどないさ」

「そうでしょうか・・私にはあなたがどこか
 フランクとの戦いを楽しんでいるように見えますな」


   そうだな・・そうかもしれない・・・しかし・・

 

   もう直ぐ・・それも終わる・・・


「フッ・・・生死を賭けてるんだ
 少しばかり楽しんだところで罰は当たるまい」

「若・・・」

「はは・・冗談だ・・・」

「・・しかし・・若・・決して無茶をなさらないように・・・」
ソニーは本心から、彼の無謀とも言える行動を案じた。

「ん・・」

   しかし・・・彼女が戻って来るとは・・・

 


私は義母・・ローザ・パーキンがフランクと一緒にNYに戻ることを想像していなかった。

   この地に足を踏み入れることがどれほど危険なことなのか

   様々な危機を掻い潜って来たあの人が察しないわけがない

 

   いったい・・・

 

   目的は何なんだ・・・まさか・・・

 

   母上・・・あなたは・・・

 

 

 


「ジニョン」

「レイ!お久しぶりです・・偶然ですね
 このところお見かけしませんでしたがお元気でしたか?」


   決して・・偶然ではないけどね・・・
  

「ああ・・君こそ・・元気だったかい?」

「えっ?ええ・・・」

「どうした?とても元気そうだとは言えないね」

「・・・・」

 


   ごめん・・・理由はわかっているよ・・・

 

「少しその公園まで歩かないかい?」

「え・・ええ・・」

「元気が無いのは・・・フランクに会ってないからかな?」

「・・・・」

「図星か・・・」

「どうして?」

「・・君の顔を見ればわかる」

「本当に?」

「ほら・・そこに書いてる」

そう言いながら私は彼女の頬に指先を触れた。


   大の大人が・・・


そうした瞬間に心を疼かせた。


   フッ・・何を・・・
  
   笑ってしまうな・・・

 

 

「また~レイ・・冗談」

「いや・・冗談じゃないさ・・本当だ・・
 あー君の顔にはいつもフランクが見える!」


   本当に・・・そうだね・・・


「君が嬉しそうに輝いている時はフランクもきっと元気なんだろう

 君が寂しげに沈んでいる時はフランクが病気か・・んー彼と喧嘩したか・・
 君のそばにいない時・・・」


   このまま彼を何処かに隠してしまったら・・・

   忘れてくれるかい?・・・彼を・・・


「それ以外何も無いな・・きっと君はわかりやすいから・・」

とても早口にフランクの話を続けた私の顔を覗いていた君が驚いたように口を開けていた。

「まあ・・まるで私ってバカみたい」

「はは・・いいさ・・バカで・・・んー名づけて・・“フランクバカ”とでも?」

「レイ!」

「はは・・ごめん・・」

「レイ・・・何だか・・変わりましたね」

「何が?」

「いいえ、変わったんじゃないわ・・・出逢った頃のレイに戻った感じ」

「出逢った頃?・・最近・・違ってたかい?」

「ええ・・違ってました・・・とても・・・」

「どう違った?」

「・・・・・」

「いいよ・・言ってごらん?」

「・・・・何だか・・怖かった・・・」

 

「怖かった・・・そう・・・悪かったね・・・怖い思いをさせて・・・」

「でも・・良かった・・だって・・“レイ”って、呼べるもの」

「さっきから呼んでたけど」

「いいえ・・最近はちょっと苦しかったんです、本当は・・そう呼ぶの・・・」

「そうなの?・・・そうか・・・良かった・・・」

「最初にレイが教壇に上がった時、 みんなに言ったでしょう?
 “レイ”・・そう呼んで下さいって・・・」

「ああ・・」

「あの時はみんな、驚いたんですよ~ホントは・・・
 特にアジア系の人たちはね。私もなかなかそう呼べなくて・・」


   そうだったね・・・君が一番遅かった・・・


「どうして?」

「だって・・先生だもの・・
 韓国では・・年上の人を呼び捨てになどする習慣・・無いし・・」

「そうか・・」

「でもレイが・・あなたが・・
 “ずっとみんなからそう呼ばれて来たからそう呼べ”って・・」

「そうだったね・・」

「ほぼ強制的だったわ」


   ああ・・君には特にね・・・


「韓国では・・・オッパ・・だったね。だから、ジョルジュはオッパなんだ」

「ええ・・だから、ちょっと変だったのレイを・・その・・“レイ”って呼ぶでしょ?
 ジョルジュを“オッパ”・・ちょっとちぐはぐ」

「フランクはフランクだったじゃない」

「だって・・フランクは・・」

「恋人だから?・・・」

「いいえ・・韓国では恋人もオッパと呼ぶことが多いです・・」

「そうなの?」

「でも・・フランクは・・・
 最初から・・フランクでしかありませんでした」

「そう・・・何故だろうね」

「・・・・・・・・・・・
 初めて出逢った時・・彼・・自分の名前だけを私に残したんです・・
 “フランク”って・・・
 次に・・いつ逢えるのか・・それすらわからない・・
 そんな出逢いでした・・・

 もう逢えないかもしれない・・
     
 でも私信じてました・・必ず逢える・・・そう信じてた・・・

 そして・・探したんです・・
 彼の名前を・・心の中でフランクを叫びながら・・・
 “フランク・・フランク・・フランク・・・”
 逢いたい・・逢いたい・・逢いたい・・
      
 そうやって・・やっと・・見つけたんです・・だから・・・」

「・・・・・・」

「・・・フランクは・・最初からフランクでしかなかった・・」


「・・・・・・・・・・・・
 実はね・・・今だから話すけど・・・
 君達に出逢うまで誰からも呼ばれたことなんて無いんだ
 “レイ”って・・・」

「えっ?そうなんですか?・・・・・だったら・・どうして・・」

「・・・・たったひとりの人を除いてね・・・」

「たったひとりの人?」

「ああ・・」

「その人は・・」

「今度も・・たったひとりの人にそう呼んで欲しくて・・・
 みんなに強制したのかも・・・」

「?・・・・・・」

  きっとそうなんだ・・・
  初めて君に会った時・・・母が戻ってきたかと驚いた

   ・・・レイ・・・

  まるで幼い頃そう呼ばれた
  その声が聞こえるようだった

  母と別れてからそれまで・・・
  僕は人にそう呼ばれるのが異常なほど嫌だった

  だから・・
  親しくなった人間が僕をついそう呼ぼうとしたときでさえ
  睨みを利かせてまで阻止していたくらいなんだ

  それなのに、君に会った瞬間・・・
  どうしても君にそう呼んで欲しくて・・・

  でも突然出会ったばかりの教師をそう呼べとは言えない

  だから・・・
  教壇に立った時、生徒達全員にそう呼ぶよう強制したんだ


  そうすれば君の口から・・・
 
  その声が聞こえるから・・・

  

「・・レイ?・・・」

「あ・・・何でもないよ・・・ジニョン・・・」

「・・・・・」

「そろそろ・・午後の授業が始まるね」

「ええ・・」

「じゃあ・・行って?・・それから心配しないで・・・
 もう直ぐ・・戻るよ・・フランクも・・・」

「えっ?」

「あ、それと、ジニョン・・今日でお別れだ」

私はできるだけ、“ついでに”を装って別れを告げた。


「えっ?」

「学校・・もう辞めた・・さっき、届けを出してきた」

「どうして?」

「家業が忙しくなるんだ」

「家業?」

「ああ・・これでも・・御曹司なんでね・・ジニョン・・今からでも遅くないぞ
 フランクから乗り換えるか?」

「レイ・・・」

「冗談だよ・・君達はその・・何だっけ?半身、というのだろう?」

「えっ?私・・レイにそんなこと話ましたか?」

「ああ・・話したよ・・・さっきも・・そうだ・・・
 君がどれだけフランクという男を想っているか・・
 うんざりするほど・・話した・・・」

そう言って、レイモンドはジニョンを優しく睨んだ。

「・・・・・・」

「あー・・そうだ・・ジョルジュは可哀想だけど・・
 僕が可愛がって・・諦めさせてあげよう」

「ふふ・・ジョルジュ・・あなたのこと好きです」

「おい・・そんな趣味は無い」

「きゃはは・・」

 
   ジニョン・・・

 

   その調子だ・・・

   君にはそのくったくのない笑顔が良く似合う

 

   今まで・・・

   悲しい顔をさせてしまってごめんよ・・


   でも・・・私もフランクと同じなんだ・・・

   君の悲しい顔を見るのは辛い

 
   だから・・・君にはもうお別れを言おう


   このまま君のそばにいると

   フランクから本当に奪いたくなってしまう・・・

   そうしたら・・また・・君を辛くさせてしまうだろう?


   君も感じているね・・・

   僕が離れていく・・そのわけを・・・

   だから・・さっきの答えを聞かないんだろ?

 

   ね・・ジニョン・・・安心おし・・

  
   もう直ぐフランクを君の元へ返す・・・


   それまで・・もう少しの・・・

 

 

      ・・・辛抱だよ・・僕の・・・

 

             ・・・ジニョン・・・

 

 


 

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