2010-11-16 11:14:55.0
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-10.天使の微笑み

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collage & music by tomtommama

 

story by kurumi

 






   あなたを愛しています・・・どうか・・・

   愚かだった僕を許して下さい・・僕は・・・

   僕はあなたがいないと・・・

   生きていけません

   だから・・・僕の半身を・・・

     ・・・迎えに来ました・・・



「・・・離して・・・」

「離したくない・・・」

「・・・・・」

「・・・もう少し・・こうしていて・・・
 このままもう少し・・君と・・・」

「・・でも・・・」

「わかってるよ・・・
 まだ君に許されていないことも・・・わかってる・・・
 でも今だけは・・・こうしていて・・・
 こうして・・・僕を抱いていて・・・お願い・・・」

フランクはまるで子供のようにジニョンに請うた。

≪前にも・・・こんなことがあった・・・
 彼がこんな風に言う時は
 それは彼が・・・彼の心が・・・とても傷ついている時≫
ジニョンは心の中でそう思った。

ジニョンには悲しいことに、そんな彼の心の叫びが聞こえる。
どんなに拒絶しようとしても、彼の心は執拗なまでに彼女を離さない。
そして彼女の心は無意識の内に彼に寄り添ってしまう。

≪こんなにも・・・息が掛かりそうなほど近くに
 あなたがいる・・・
 これは現実?・・・それともまやかし?
 あぁ・・・でもこの匂いは・・・あなた・・・≫

彼女は目を閉じ、まだ消えぬ戸惑いと懸命に戦いながら
それでもいつしか彼の胸に我が身を委ねる心地良さに揺れていた。

あれほどに愛しかった彼の心が今自分の腕の中で泣いている。
彼女の心は知らず知らず彼の涙を優しく拭っていた。

館内を流れる淡いセレナーデが彼女に時を遡らせる勇気を与えるかのように、
優しくそして切なかった。


そんなふたりを引き裂くように、彼女の手の中でまたも無機質な邪魔が入る。
ジニョンは放心した自分を懸命に取り繕い、それに応答する為に自分の呼吸を
数回意識して数えた。

「出ないと・・・」 ジニョンがフランクから体を少し離し、そう言うと、
ドンヒョクは寂しげな笑みを浮かべゆっくりと頷いた。

「は・・はい・・・ソ・ジニョ・・えっ?」
突然言葉を切ったジニョンが慌てて入り口の方に視線を移した。

そこに警戒した様子も無くヴィラに入ろうとしているテジュンが見えた。
「ジニョン・・・ダイヤモンドヴィラの見回りは警備の仕事じゃ・・」

テジュンが言い終わらない内に、フランクは彼の視界に入った。
「あ、失礼しました・・・サファイアの・・・お客様・・ですね」

「シン・ドンヒョクです・・・総支配人ハン・テジュンssi・・・」 
彼とは今まで何度か遭遇していながら、こうしてフランクが名乗るのは
初めてのことだった。
フランクはテジュンに、柔らかい口調とは裏腹の攻撃的な視線を向けた。

「申し訳ございません、お客様・・・ここは立ち入り禁止区域です・・・
 従業員が手違いを起こしたようですね・・・」
テジュンもまた、ホテルの客に対するそれとは思えない厳しい目を
彼に放っている自分をしっかりと自覚していた。

「いえ、僕がソ支配人に案内を頼んだんです。
 ソ・ジニョンssi・・・ご迷惑をお掛けしました・・・
 今日は、これで失礼します」
フランクは儀礼的な挨拶の後、ジニョンに対して熱い視線を残して
ふたりの前から去って行った。

ジニョンはその間、自分の動揺した心を落ち着かせていた。
そして落ち着きを取り戻した時、テジュンが恐ろしい程に
険しい視線を自分に向けていることに気が付いた。

「お前!いったい何やってるんだ!」
「お客様がおっしゃった通りよ、案内してたの」
「こんな遅くに、ふたりっきりでか!
 誤解を招くことも考えられない馬鹿なのか、お前は!」

「馬鹿?・・そうね、馬鹿だわ・・でも!」
「でも何だ!」
「・・・誤解・・・じゃない・・・きっと・・・」
「どういうことだ」

「彼は・・・私の・・・」
「いや、いい!・・それ以上言うな」
「どうして?気になっていたでしょ?」
「気になってない」 
テジュンはジニョンの視線から逃れるように暗闇に顔を向けた。

「ごめんなさい・・テジュンssi・・・
  ・・・・・私も・・・言わなくていいと思ってた・・・
 その必要は無いと思ってた・・・
 終わったこと・・・そう思ってたから」

「思ってた?」

「そう・・・でも・・・違ってた・・・
 終わってなかったの・・いいえ、とっくにわかってたのかも・・
 そうなのよ・・私がただ・・そう思い込もうとしていただけ・・・
 それが・・・今・・・わかったの・・・」

「あいつを?」

「愛してる・・・昔も・・・今も・・・」≪さっきフランクに言うべきだった≫
ジニョンは心の中で後悔していた。

「・・・・・!」

「だから・・・」 ジニョンはテジュンに詫びるように彼を見上げた。

「社長が俺とお前との結婚の話を進めたいとおっしゃってる」
テジュンはジニョンの言葉とその眼差しを遮るように言った。「えっ?」

「俺が話した・・・」

「そんな・・だって、あなた・・
 そんな話、私と一度もしたこと・・ない・・」

「言っただろ?お前からプロポーズされたあの日から
 決めていたと」

「勝手なこと言わないで。逃げたくせに」

「・・・社長は喜んで下さっている・・先代の社長もそれを望まれていた。
 お前と俺で、このホテルを盛り立ててくれること
 それはお前も知っていただろ?」

「駄目よ」
「何が駄目だ」

「私・・今、言ったでしょ?・・彼を愛してるの・・・」

「それがどうかしたか?」 
テジュンの目はジニョンを、ぎっと睨みつけていたが、
その声は怖いほどに冷静だった。

「テジュンssi・・・」
「俺は認めない。」

「テジュンssi!」
「もう帰って寝ろ・・それじゃ」
テジュンはジニョンの言葉を無視して彼女を一度も振り返えることなく、
その場から性急に立ち去った。

≪テジュンssi・・・≫





「さっきは・・・悪かったね・・・彼は・・・怒っていただろうね」
ジニョンはその夜、フランクからの電話を受け取った。

彼女はテジュンのことを浮かべて、思わず声が上ずった。
「え・・ええ・・大丈夫よ・・・」

「本当に?大丈夫?・・・」

「ええ・・本当に大丈夫。」

「ごめん・・・今日は
 どうしてもふたりだけになりたかったんだ・・・」

「ええ・・・」 ≪わかってるわ≫

「怒ってる?」

「いいえ・・・」

「僕が言ったこと・・・嘘じゃないことも・・・信じてる?」

「・・・・・」 ジニョンは一瞬だけ、言葉を詰まらせた。

「信じてる?」 フランクは再度確認するように聞いた。

「ええ」

「本当に?」

「ええ・・・信じるわ」

「あー気分のいい言葉を聞けた・・・
 これでゆっくり眠ることができる」

「あの・・・でも・・まだ・・」

「わかってるよ・・・急がない・・・
 君が本当に僕を受け入れられるようになるまで・・・
 待ってる・・・もう強引なこともしない・・・
 ゆっくり考えて・・」

「ええ」

「母の墓にお花を・・・ありがとう・・・
 さっき言い忘れていた」 

「勝手にしたことだもの」

「僕はどんな償いをしたらいいだろう」 フランクはポツリと言った。

「償い?」

「ああ」

「それって・・何だか・・」 

「変?・・・」

「ええ・・言っておくけど・・うぬぼれないで欲しいわ・・・
 私毎日泣いて暮らしたわけじゃない」

「そうだね」

「・・・・・・」「・・・・・・」

「あの・・・」

「何?・・」

「もう切りましょうか?疲れたでしょ?
 今日遠くまでお出掛け・・」
「切らないで・・・」 フランクは追い駆ける様に言った。

「だって・・・」

「あ、いや・・ごめん・・・君の方こそ疲れているよね
 そろそろ・・・休まないと・・・」

「ええ・・・」≪本当は・・・≫

「・・・・・・・」

「それじゃ、おやすみなさい・・・」 ≪こう言いたいんじゃない≫

「ジニョン」

「えっ?」

「いや・・・おやすみ・・・」

≪愛してる・・・≫そう言いたかった。
しかし、その言葉は今のふたりにとって、まだ簡単ではなかった。

ふたりの間にはまだ大きな壁が立ちはだかっているようだった。
それでも、互いの心が共にあったその時が愛しくてたまらなかった。

ジニョンは電話を切った後、締まり無く緩む自分の顔に気が付いて
自分で自分の頬に緩くパンチした。

そしてそのままベッドの上に横倒しに倒れ込み、ブランケットを
首まで掛けると体を丸くして、浮かれ過ぎている自分を嗜めるように、
首を大きく振った。≪私ったら・・・≫

そしてジニョンは浮かれ過ぎた心を静めるようにテジュンのことを考えた。
≪彼ときちんと話さなければ・・・≫




ドンヒョクは、今日を境に本当の自分を取り戻したことを自覚していた。
≪彼女さえいれば・・・この世に・・・彼女さえいればいい・・・≫
結局到達するところはそれだった。
≪わかりきっていたことじゃないか≫

しかしその前にやらなければならないことがある
ジニョンの為に・・・ソウルホテルの建て直しを図る為にも
このホテルをハンガン流通の手に渡すべく、事を進めなければならない。
ジニョンの幼い頃からの夢、ソウルホテルを潰してしまわないように・・・。


「レオ・・・起きろ」

ソウルホテルの買収は水面下でフランクの思うように事が運んでいた。
債券取得の駆け引きの駒も、難なくフランクに転がって来た。
≪しかし、ジニョンはきっとこの事実を喜びはしないだろう≫
結果的にホテルを救うこととなることを、彼女がどれくらい理解してくれるか、
フランクにはわからなかった。それでも
いつの日かこれが正しい選択であることを、彼女もきっとわかってくれる。


フランクは真夜中の戦いを優勢に収めた後、朝もやの漢江を
ベランダから眺めながら、昨夜、この腕に抱いていたジニョンの温もりを
思い出していた。

≪やはり、彼女に何もかも打ち明けよう≫
フランクはそう思った。

「レオ・・・その結論、一週間待ってくれ」
フランクはレオの手に握られていた勝利に向かう書類に向けて言った。

「一週間?ウォール街じゃ、一年の長さに等しいぞ」

「わかってる・・・」

「わかってないだろう・・どうしてだ?急に。
 お前らしくもない・・これだけ揃った駒をどうして振らない・・・
 俺達の勝利は目の前に座って待ってるんだぞ」

「いいから!言う通りにしろ!・・ちょっと出掛けて来る」
レオの尤もな意見に後ろめたさを抱きながら、フランクは彼を睨んだ。

「おい!フランク!」
フランクはレオから逃げるように、車のKEYを手に取り、部屋を出た。




「おはよう」
フランクからの電話でジニョンは目が覚めた。
「あ・・フランク・・・いったいどうしたの?今何時?」

「6時・・・」
「6時?私、今日・・遅番なのよ・・まだ眠い・・・」
≪もう・・強引なことはしないんじゃなかったの?≫

「寝不足かい?いつまでも起きてたんだろう?」
「誰のせいだと・・」≪あなたのことが気になって眠れなかったのよ≫
「えっ?」
「何でもないわ!」

「いいから・・・直ぐに出ておいで」
ジニョンは膨れながら電話を切った後に、「もう!」と口を尖らせた。
しかしその直ぐ後には“仕方ないわね”と口元を緩ませた。

顔だけを大急ぎで洗ってアパートの下へ降りると、フランクは
清々しい顔で待っていた。

「速かったね」
ドンヒョクは微笑みながら、ジニョンの手を取ると、彼女を車に乗せた。


フランクがジニョンを連れて来た場所は、ホテルの近隣に建つ教会だった。

教会には既に数人の信仰者がミサに訪れていた。

「何をするの?」

「シー」 フランクは指を口に立てた。

フランクはジニョンの手を引いて、礼拝堂の中央を前に進むと
あまり人が座っていない場所に彼女を誘導し、座らせた。

「NYの教会、よく行ったわね・・ふたりで・・」 
ジニョンはこそこそと彼に耳打ちした。

「ああ・・いっぱい君に懺悔させられに」

「意地悪ばかりしてたからよ・・・」

「そうだったね・・・」

「ふふ」

「君に話さなければならないことがあるんだ」

「今までよりも罪深いこと?ふぁ・・・」 ジニョンは余りに眠くて、
あくびを一生懸命堪えていた。

「そうかもしれない・・・」

「じゃあ、また・・ざん・・げ・・ね・・・」

「そうだね・・・」

「・・・・・・・・」 ジニョンの声が聞こえなくなったかと思うと、
彼女はとっくに彼の肩の上で眠りに落ちていた。
≪・・・・まったく・・・少しも変わらないね・・・ジニョン・・・
 君は昔から僕といると、直ぐに眠ってしまう≫

フランクはジニョンが寝心地良いように、頭の位置を直して
彼女のひとときの眠りを妨げないようにした。

≪あの日・・・君と初めて会ったあの日・・・
 こうして僕の肩で眠り込んでしまった君に僕は口づけをした。
 そして僕は・・・間違いなくあの時君に恋に落ちたんだ・・・≫

フランクはかなり疲れているらしい彼女を起こさないように
それでもどうしても触れたくて、彼女のまぶたにそっと口づけた。


しばらくの静寂の後、突然電話のベルが教会に鳴り響き、
彼女が飛び起きた。「きゃ・・あなたの?・・・」
鳴っている携帯が自分のものだと気が付いたジニョンは、
慌てて応答した。

「はい・・はい・・わかりました・・今行きます」 
ジニョンは小声でその電話の主に答えながら、フランクを見た。

「仕事?」

「ええ・・緊急ですって・・・あ・・
 あなたの懺悔、聞けなかったわ」

「したけど・・」

「駄目よ・・今度またちゃんと聞かせて」

「ああ・・」≪そうしよう≫

「指きり」
ジニョンとの久しぶりの指きりに、フランクは≪もう若くないんだよ≫と
思いながら、笑って応じた。そして・・・

フランクはジニョンの手を取り、目で合図すると、
彼女も直ぐに理解したように、掌を広げた。

「ジー」「ジー」ふたり同時に掌を合わせて思わず笑った。

「ふふ」
「忘れて無かったね」

「ええ・・・あなたの職業病だもの・・・」
ふたりは10年前に戻ったように、徐々に心を通わせ始めていた。

「そうだわ・・忘れてた」
そう言いながらジニョンがシャツのポケットをまさぐった。

「何?」

「・・プレゼント・・ネックレスのお礼にと思って・・・」

「僕に?・・開けてもいい?」

「ちょっと前に用意してたんだけど、
 つい・・渡しそびれちゃって・・・」
フランクが急いで包みを解いている様子をジニョンは嬉しそうに
眺めながら言った。
「万年筆よ・・さっきみたいに、契約した時に使って?
 昔はあなたにプレゼントなんて出来なかったし・・
 初めてのプレゼント」

「ああ・・嬉しいよ、ジニョン・・」
フランクは包みの中からその万年筆を取り出すとそう言って、
ジニョンをぎゅっと強く抱きしめた。

ジニョンは彼の突然の行為に思わず周りを見渡して、
恥ずかしそうに、“人が見てる”と慌てて彼を嗜めた。

≪そんなこと構うもんか・・・≫

フランクはそれでも彼女の言うことを聞いて、
歓喜の声を低く静かに上げた。


     ジニョン・・・

       神様が返してくれた・・・僕の・・・


           ・・・天使・・・

















 


 

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