2010-11-21 08:36:44.0
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-13.こいびと

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collage & music by tomtommama

 

story by kurumi

 











フランクが韓国に渡って来た真の理由をレオにまで隠したことが、
レオの心に疑心暗鬼を生じさせることとなっていたのは事実だった。
レオは、フランクがソウルホテル買収工作に二の足を踏んでいると
誤解していた。

レオが、フランクの指示を無視して取引を独自に進めようとしたのは
彼なりにフランクのことを思ってのことだったのだ。

しかしフランクとしてもレオに本心を隠したのは理由があった。
フランクが画策していることは、ハンガン流通に対しての契約違反を
免れはしないだろう。
その時、レオが事実を知らなければ、自分に加担した容疑も薄くなる。
彼は事のすべては、「フランク・シンの独断であった」という証拠だけを
残しておきたかったのだ。
フランクはただレオを守りたかっただけだった。

 

今ソウルホテルには、キム会長のソウルホテルの持ち株と彼の莫大な資金が
必要不可欠である。
そしてホテルの経営権をそのままホテル側が握る契約を結ぶ為には何より
ホテル自体の揺るがない経営力が必要だった。
しかし、今のソウルホテルにはそれがない。

ホテルの負債は既に30億を超えていた。

それほどに緊迫した経営状態の中、フランクはたったひとりで
ソウルホテル自体の存続を企てなければならなかった。

しかしキム会長はホテル運営への興味は薄いように思われた。
今のままだと彼はホテルを手に入れたら最後、直ぐにも何処かへの売却を企て、
利益優先を図るだろう。

それは、長年続いたソウルホテルの名前すらも失う結果を生む。
彼にはどうしても「ソウルホテル」を存続させてもらわなければならない。

キム会長が事を急ぐ余り、直々に銀行へ手を回し、ホテルの資金面を
立ち行かなくさせたり、ホテルに対して数々の圧力を仕掛けていることも
フランクを苛立たせた。

とにかく今はそれをも、食い止めなければならない。


フランクはレオやエリック達の意見を頭の端で聞きながら
今後の策を思案していた。

「とにかく、まだサインはしない。後一週間、待ってくれ」


会議の席上、フランクの考えは変わらなかった。
レオは渋い顔を見せ、エリックは首をかしげた。
しかし、フランクはそのどちらも見なかった。

 

フランク達の会議の終了時間が近づいた頃、ジニョンは会議室の手配が
遅れたことの詫びを再度伝えようと会議室へと向かった。

しかし会議は既に終了していて、フランクの姿もそこになかった。

ジニョンは仕方なく、持ち場へと戻って行った。

 

結局その日フランクはホテルの何処にも現れなかった。
ジニョンはそのことに酷くがっかりしている自分が可笑しかった。

気がつくと、仕事の合間に彼を探している自分がいた。

つい先日まで、自分に逢おうと画策するフランクがホテルのそこここに現れ、
体面上、少なからず迷惑にも思っていた。

ジニョンは自分の心の変化に驚きながらも、フランクを思う度、
幸せな気分になっていることに心がくすぐられる思いだった。

 

とうとうその日終日、フランクに逢うことはできなかった。
就業時間が終わっても彼からの連絡さえなかった。

≪後で連絡する≫

≪あの会議の前に彼はそう言って私に微笑んでいた。
  それなのに・・・≫

退社時間になって、ジニョンは急いで私服に着替えた。
もしかしたら従業員通用口で≪彼が待っているかもしれない≫
そう思ったからだった。

でも彼はいなかった。

ジニョンは一度は駅へと向かったものの、突然引き返し
サファイアヴィラに走って向かった。しかし・・・
フランクの部屋の前には車もなく、明かりさえも灯っていなかった。

肩を落としたジニョンは、今度こそ諦めて帰宅の路に着いた。


足取りも重くアパートに辿り着いたジニョンは、何かする気力さえ
失せてしまい、早々にベッドに入った。
そして彼女はベッドの上で寝付かれないまま、彼からの電話を待った。

寝返り打っては、ベッドサイドに置いた携帯電話を指ではじき
長い溜息をついた。

しかしそれは一度も音を立てることはなかった。

≪フランク・・・

 昨日のあなたは・・・本物だった?・・・≫

 

 

翌日、ジニョンの仕事はOFFだった。

≪じゃあ、デートができるね≫
昨日フランクはあんなに目を輝かせて喜んでいた。
それなのに・・・

≪どうしちゃったの?・・・フランク≫

ジニョンの頭の中は悔しいほどにフランクでいっぱいだった。

今まで抑えていたはずのフランクへの感情が溢れんばかりに押寄せ、
胸を締め付けた。

彼女は壁に掛かった時計の針にぼんやりと視線を向けていた
そしてさっき見た時と余り変わっていない針の形に溜息を漏らし、
今しがたベッドで寝転んでいたはずの自分が、気がつくと
いつの間にか鏡の前の椅子に腰掛けている。
そんな自分にまた溜息をついた。

何時間経ってもジニョンは少しも落ち着かなくて、気晴らしにと外へ出た。
近くの本屋で雑誌を捲ってみたり、商店街の街路樹をのんびりと歩いてみたり・・・ 
しかしブティックのウインドウを眺めても、見えるのはそのガラスに映る
覇気のない自分の顔だけだった。

結局少しも心を晴らすことができなくて、ジニョンはアパートへと引き返した。

俯き加減に歩いていたジニョンが自宅近くまで来て顔を上げた時、
アパートの前で止めた車にもたれかかり、携帯電話を片手に
そのアパートを見上げているフランクの姿が見えた。

ジニョンは一瞬心を躍らせたが、直ぐに彼に対して腹が立ってきた。

フランクは向こうから近づいて来る彼女に気がついて満面の笑顔を向けたが
ジニョンはそれを無視して、わざと彼の直ぐ横を通り過ぎた。

「ジニョン!」 フランクは慌てて彼女の腕を掴んで呼び止めた。

「今、丁度君に電話・・」 フランクが言いかけると、ジニョンは彼を睨んだ。

フランクは彼女の様子に少しだけたじろいで、言葉をよどませた。
「ど・・何処に行ってたの?・・・待ってたんだ」


「それはこっちが聞きたい!」

「えっ?」

「何処へ行ってたの!」

「僕?・・ああ・・アメリカ」

「アメリカ?」

「ああ、急用ができて・・つい一時間ほど前に空港に着いたとこなんだ。
 君に逢いたくて、ここに飛んで来た・・今日は仕事休みだっただろ?」

「呆れた。」 ジニョンは本当に呆れたように言った。

「ん?」

「それならそうと連絡してくれたっていいでしょ?」

「ごめん・・忙しくて・・」

「忙しくて?・・」

「ああ・・連絡できる状態になったのが
 こっちの夜中だったんだ・・君はもう寝てると思って」

≪寝れなかったなんて、絶対に言ってやらない!≫

「一分もなかった?連絡する時間・・」

「えっ?」 
フランクは怒ったジニョンの顔を覗き込みながら、顔を緩ませた。

「な・・何よ・・」 ジニョンは思わず顎を引いた。

「怒ってたの?ジニョン・・僕がいなかったから?・・
 僕が君に連絡しなかったから?」

「何、嬉しそうな顔して・・るの・・よ・・」
フランクに突然抱きしめられたジニョンは、不意をつかれて動転した。
「ちょっ・・フラ・・ンク・・何する・・の」

「・・・・・」

「フランク!・・離して・・」

「・・・・・」

「フランク?・・」

ずっと無言のまま、彼女を抱きしめて離さないフランクに、いつしかジニョンは
さっきまで抱えていた怒りを忘れ、顔を少しだけ緩ませながらちょっとだけ
頬を彼の肩に落とした。

「・・・・嬉しいよ・・ジニョン・・・」

「わかったから・・フランク・・・もう離して・・
 ここは・・その・・家の前だし・・人に見られると恥ずかしい・・」

「あ・・そうだね、じゃ行こう・・」 フランクは“そうだ”と言わんばかりに、
彼女の両の腕を掴んで、一旦顔を見合わせると

ジニョンが言葉を挟む間もなく彼女を助手席に押し込み、
自分は急いで運転席に回ると素早くエンジンを掛け、車を走らせた。

「・・何処へ?」

「デート。・・約束したでしょ?」

「だって、私、こんな格好・・」ジニョンはTシャツにジーパン姿の自分と、
ビシッと高級スーツに身を包んだフランクとを見比べて、顔をしかめた。

「いいじゃない。」 フランクはにこやかに言った。

「良くない!着替えてくる」

「時間がもったいない」

「デリカシーがないのね、あなたって」

「僕は君がどんな服を着ていようと構わないけど」

「ふん!」 
ジニョンはフランクが一向に自分の言うことを聞いてくれそうに無くて
助手席で腕組をして口を尖らせた。


「そんなに怒らないで・・」 フランクは優しく言った。

「だって!・・・・・」

口を尖らせていたジニョンが、次第に頬を緩ませ、俯いた。
いつの間にか、運転席のフランクの右手が、ジニョンの左の手を
しっかりと握っていたからだった。

「もう怒らないで・・・」 彼は更に優しく言った。

ジニョンは尖らせた口を元に戻せないまま、黙ってコクリと頷いた。

「何処に行きたい?」

ジニョンは結局、フランクとのアンバランスな格好を我慢するしかなかった。
しかしそれでも、幸せな気分になるのは、やはり
≪フランクのそばにいるからだろう≫と素直に思えた。


少しおしゃれなcaféでお茶を飲み、他愛の無いおしゃべりをして・・・

こうして手を繋ぎ公園を歩いて、恋人らしい時間を共に過ごし心を通わせていると、
10年前ふたりで過ごしたNYでの月日が互いの胸に去来した。

突然フランクが公園の中央に造られた噴水を眺めながら
ジニョンの方を向いて意味有りげに微笑んだ。

  ≪昼間の・・・太陽の光に反射してる噴水って・・・・
   まぶしいくらいに・・・綺麗なんだな・・・≫

  ≪フフッ≫

  ≪何が可笑しい?≫

  ≪いいえ・・・フランクが言うと・・・もの凄く綺麗に感じて・・・
   不思議だなあ、と思って・・・でも・・・≫

  ≪でも?・・・≫

  ≪綺麗に見えるのはきっと・・・私といて幸せだからよ≫

そして彼は前振りも無くポツリと言った。「そうだな・・・」
フランクの脳裏には10年前のふたりの会話が浮かんでいて、
胸を熱くしていたのだった。

「えっ?」 何の返事だったのかわからなかったジニョンは首をかしげた。

「ん?いや・・何でもない」 フランクが含み笑いをして歩き出した。

「嫌な感じ!・・」

「悔しかったら思い出してごらん?そしたら・・
 僕の言った意味がわかる」 フランクは楽しそうにそう言った。

「えー!意地悪ね・・あなたって、いつもそうなのよ!
 だから・・」

フランクの隣で彼と手を繋いだままのジニョンが文句を続ける。
彼はそんな彼女を笑顔で見つめ、その頬に不意をつくように
キスの音を立てた。

「何よ~!」 彼女もまた笑顔を返しながら、彼の背中を叩いた。



ジニョンの「フランク」と呼ぶ声が柔らかく耳に届く幸せを噛み締めながら
フランクは彼女の肩を抱いて、何度も何度も彼女の髪に唇を落とした。

そしてふたりの幸せな時間は瞬く間に過ぎていった。

「そろそろ、帰らないと・・・明日早番なの・・」

「そう・・だね・・」 

 

アパートに着くと、ふたりは互いに無言でしばらく正面を見据えていた。
別れ難い互いの気持ちが言葉を失わせて車のエンジン音だけが
耳に響いていた。

ジニョンは自分を納得させたように、一度頷いてドアに手を掛けた。
いつもなら、直ぐに運転席から車を降りて助手席のドアに回るフランクが
フロントガラスを見つめたまま車を降りようとしなかった。

結局ジニョンは自分で助手席のドアを開けて車を降りた。
そして外から車の中のフランクに振り返った。
フランクもやっと笑みを作って、彼女に手を差し伸べた。

「それじゃ、おやすみ」 ジニョンは差し出された彼の手を握った。
「ええ・・おやすみなさい」
「・・・・・」 「・・・・・」

「フランク・・・あの・・・手・・」
フランクは別れの挨拶をしながらも、彼女を見つめたままその手を
離さなかった。

「何?」

「だから・・手・・離してくれないと、行けないわ・・」

「ああ・・そうだね・・・」
口ではそう言いながら、彼はそれでも彼女の手を離そうとしなかった。

「フランク・・・」

「離れたくないんだって・・僕の手」

「ふふ・・駄目よ」 
ジニョンはフランクの言葉を冗談に捉えて、思わず噴出しそうになった。

「僕の手に言って・・僕は離してもいいんだけど」
彼の表情は真剣だった。

「フランク・・・」

「ごめん・・・君を離したくないのは、
 僕の手だけじゃなさそうだ・・・」

「えっ?」

「・・・ここも・・」
そう言って、フランクは彼女の手を握っていないもう片方の手で
自分の胸を押さえた。

ジニョンは彼のその仕草に優しく微笑むと、小さく溜息をついて、
彼の手を握ったまま助手席に戻った。

「もう少しだけ・・・」
そして彼女はフロントガラスの方を見て、そう言った。

フランクもまた前方に視線を移して微笑んだ。
「ああ・・・もう少しだけ・・・」

ふたりは時間というものがこの世に存在しなければいいと思った。

そうすれば離れ離れだった10年の永い時の重さも消えてしまうだろう。

しかし時間という空気がこの世に存在する以上
愛し合う者達は耐えなければならない
そして互いへの想いを胸に溢れさせ、この刹那にさえ押さえ切れず
狂おしいほどに求め合い、見つめ合うしかない

  こうしていつまでも感じていたい・・・

  触れていたい・・・

ふたりは互いの心の中で同じようにそう思い、互いの指を絡めていた。

「ジニョン・・・」 フランクはジニョンの方に視線を移した。

「なに?」 ジニョンもまた彼の方を向いた。

「愛してる」

「・・・・・」

「君は?」

「・・・んーどうかな~」 ジニョンがふざけたようにそう言ったので
フランクもわざと彼女を睨んだ。

「昔・・あなたによくこう言われたわ」

「そうだった?」

「あの頃は私子供だったから、結構本気で傷ついてた」

「そうなの?ごめん・・」

「あ・・それって本気で謝ってないわ」

「本気だよ」

「だったら言って。」

「何を?」

「噴水が綺麗に見えたのは、私といて幸せだからって・・」

「・・・・・・」
ふたりは互いの顔を見合わせて、声を上げて笑った。

そして互いに呼吸を整えるようにひとつだけ深呼吸をして
ふたりは改めて向き合った。

「ジニョン・・僕は君といて幸せです・・
 君がそばにいてくれるから・・何もかもが・・・美しく見える
 あー噴水も。」 

「ふふ」

「これでいい?」

「ちょっとふざけてる」

「君がそう言えって・・」
フランクがジニョンを笑いながら小さく睨んでいると、
たった今まで笑っていた彼女が真剣な表情に変えていた。

「私も・・愛してます・・あなたを」 彼女は頬を真っ赤に染め告白した。
そんな彼女にフランクは胸を熱くして、目を閉じ俯き微笑んだ。

そしてフランクは少し考え込むようにして俯いたまま、口を開いた。
「本当に・・・ごめんね・・・君を・・・」

「もういいわ・・・何も言わなくて・・・本当は・・・
 わかってたはずなの・・・あなたが私の前から消えた理由も・・・
 わかっていたのに・・・」

「その方が君は幸せなんだ、と自分に言い聞かせてた・・でも・・・
 結局、僕は自分のことしか考えてなかったんだね・・・」

「そうね。」 ジニョンはフランクの言葉に追い討ちを掛けるように言いながら
それでもその瞳は優しく輝いていた。

フランクはまたいつものように、胸に手を当て、ジニョンの言葉が
そこに刺さったというジェスチャーをして見せた。

「ふふ・・」 ジニョンは愛らしく笑った。

「やっぱり・・・」 
フランクは彼女のくったくない笑顔を見つめながら、言い掛けて黙った。

「えっ?」

そして彼は突然車をジニョンのアパートからUターンさせると
そのままアクセルを踏んだ。

「何処へ行くの?」

彼は前方に視線を向けたまま微笑み、小さく呟くようにさっきの言葉を続けた。


   「やっぱり・・・


       ・・・一緒にいたい・・・」・・・















 

 


 

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