2011/07/12 19:33
テーマ:ラビリンス-過去への旅- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

ラビリンス-17.写真に隠された謎

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「いつか・・必ず。
 あいつをこの世界から抹殺してやる。そう決めた。
 ずっと・・この機会を狙っていたんだ。
 邪魔をするなら、僕の目の前から・・・消えろ。」

エマはドンヒョクの怒りに震わせた言葉を、彼の目を真っ直ぐに
見つめながら聞いた。
そして、その怒りに立ち向かうかのようにゆっくりと口を開いた。

「・・・・愛しているの。」 

「・・・・・・」 予測していなかったエマの告白にドンヒョクは一瞬言葉を失った。

「あなたを愛してる。」 彼女は決して彼から目を逸らさなかった。

「・・・・邪魔をするなら消えろ。・・そう言ったんだ。」 
ドンヒョクは気を取り直して彼女の不意打ちの告白に反撃した。
しかしエマは話し続けた。
彼に再会してからずっと胸にしまっていたことを。

「あの時のことを許してとは言わないわ。ただ・・聞いて欲しい」
「・・・・・・」

「あなたが一度も聞いてくれなかった・・・あの日のこと・・
 私があなたを裏切った理由。」
「・・・・・・」

「わかってるわ・・あなたはあの瞬間から・・私に心を閉ざしてしまった」
「・・・・・・」

「でもあれは仕方なかったことなの。そうしないわけにはいかなかった・・・」

「そうしないわけにいかなかった?」 
それまで無言だったドンヒョクがやっと口を開き、彼女の言葉を繰り返した。
その言葉には長年拭えなかった激しい怒りが見えた。

「ええ。あなたを守るために。」 

「僕のために?」 

「ええ。」

「僕のために・・・・あの家族を犠牲にしたというのか。」

「ええ。」 エマは敢えて力強く答えた。

「何故・・・」 その瞬間、ドンヒョクの怒りの眼差しに悲しい光が差した。

「何故?・・・私が・・あなたのためなら何だってできるから。
 ・・・いつだって。あなたを守るためなら・・・何でもできるから。
 あの時も・・・あの後も・・たった今も・・・・
 この5年間・・その為に、その為だけに私は・・
 ここで・・会長のそばで生きていたんですもの。」
エマは自分が言いたかったことは、正にこのことだと言わんばかりに、
彼に向かって胸を張った。

「・・・・・・」 
ドンヒョクは自分の思いを伝えるエマの必死な様子に言葉を詰まらせた。

「あなたを守れるのはこの私しかいないのよ。」





その頃ジニョンはローマ行きの列車に乗っていた。

20分程前だった。
≪ジニョンssi・・・起きて下さい≫
ジニョンがその声に気がついて目を開けると、目の前にルカの顔があった。

≪どうしたの?・・・ルカ・・・≫

≪私と一緒にここを出て欲しいんです≫

≪・・・・どういうこと?≫

≪何も言わず、私の言う通りにして下さい。そうしないと・・・≫

≪そうしないと?≫

≪手荒なことをしたくありません≫ 
ルカはそう言ってジニョンの目の前に小型の銃を突き付けた。
ジニョンは目を大きく見開き彼女を凝視した。
そして、彼女のその行動が決して冗談ではないことを知った。

ジョアンに気づかれぬようにホテルの部屋を出る時、ルカは
ジニョンから携帯を取り上げ、ベッドの上に置いた。
その携帯にはGPS機能が付いていることを認識していたからだった。

ルカはホテルを出るとタクシーを拾い、「ミラノ中央駅」と言った。
ジニョンは隣に座るルカの顔を覗いた。
その目は遠くを見ているようで、自分が連れ出して来たにも係わらず
ジニョンに対して神経が行き届いているふうには見られなかった。
「何処へ?」 ジニョンは彼女の横顔にそれだけを聞いた。

「ローマへ」

「目的は?」

「今は言えません。」 短い言葉だけでジニョンに答えるルカは
ジニョンの腕だけをしっかりと掴んで正面を見据えていた。

ルカの行動は常軌を逸していたが、ジニョンには不思議なことに
彼女に対して緊迫した恐怖心は生まれていなかった。

それよりも彼女のことが気掛かりだった。
≪いったい何があなたにこんなことをさせているの?≫
ルカの横顔を見つめながら、ジニョンは胸の内で呟いた。





「あなたを守れるのはこの私しかいない。」 エマはドンヒョクを睨み、
そう言った。

ドンヒョクも彼女を睨み返していたが、彼は直ぐに視線を逸らし、
机に向かった。
今、彼には何よりも先に解決しなければならないことがあったからだ。
「出て行ってくれないか。」
言葉だけをエマに投げるとドンヒョクはパソコン前に座り、手早くKeyを叩いた。
そして現れたログイン画面にPWを打ち込んだ。

「今聞いて。」 しかしエマは彼の机に叩きつけるように両手を付いた。
この時彼女は、彼の注意が何処にあるのか、誰に向かっているのか
本能でわかっていたのかもしれない。

一方ドンヒョクは、自分が計り知れない癇癪を起こしかけていると自覚していた。
「いいから。・・・出て行け。」 彼はありったけの自制の力をもって静かに言った。

エマは彼の静かな口調に、逆に切羽詰ったものを察した。
「何かあったのね」

ドンヒョクは答えなかった。

「奥様のこと?」
エマがそう言うと、ドンヒョクは彼女を下から睨み上げて、冷たく威嚇した。
結局エマは黙ってその場を退き、彼の部屋から出て行かねばならなかった。

「どうして?・・・」 エマはたった今出て来た扉に背中を押し付け呟いた。

いつもそうだった。
どんな言葉を持ってしても、彼に対し揺るがない愛を曝け出し、
その想いを惜しげなく捧げようとも・・・
その瞬間に、彼の心が決して自分に無いことを思い知る。
「どうして・・・私じゃいけなかったの?・・フランク・・・」




ジニョンとルカを乗せた列車は、夜遅くにローマテルミノ駅に着いた。
ルカはタクシーを拾い、目的の場所を運転手に告げた。
その時、ジニョンは驚いた。ルカの口から出たホテルの名は
先日ジニョンも一緒に滞在したフランクのホテルだったからだ。

「どうして?・・・」
ジニョンがそう言うと、ルカは一度目を閉じて口元だけで笑った。

「あなたのホテルだからです」 

「・・・・・・」




レイモンド、ミンア、ジョアンの三人は車でフィレンツェに向かった。
街に着いた時には夜もかなり更けていた。
階段の明かりだけが灯る古いオフィスビルには、まるで中世の亡霊が
何世紀にも渡り宿り続けているようで、身震いがする。

三人は誰しも無言で事務所まで駆け上がった。
事務所の鍵をジョアンが開け、壁のスイッチに手を伸ばし明かりを点けた。
そして、ルカが置いていった荷物をレイモンド達に示した。「これです」

レイモンドは大きなスーツケースを受け取り、ミンアはボストンバックを手にした。
スーツケースには鍵がかかっていたが、レイモンドは迷うことなく
それを壊し、ケースを開けた。

開けた瞬間、レイモンドは妙だと思った。
中にはジーパンとTシャツが数枚ずつ無造作に入れられただけで、
生活の匂いも無く、決して就職する為に詰められた荷物とは言い難かったからだ。

ミンアが開けたボストンも同じだった。
彼女が諦めかけた時、何気なく手を差し込んだボストンの底板の下から
二枚の写真が出てきた。
「ボス?」 一枚はドンヒョクの写真だった。

「どうしてルカがボスの写真を?」 ジョアンが不思議そうに言った。
「これって、結構前の写真ですよね」 彼は続けて言った。
「ええ、きっと5~6年前。
 私がボスの仕事をするようになって直ぐの頃だわ」 ミンアが答えた。

そしてもう一枚は・・・
「・・・これは・・・エマ?・・・それと・・・」
その写真には、エマと十歳前後と思われるふたりの子供が写っていた。

「!・・・この子達は・・確か・・・」 ミンアが驚いた顔をした。
「どうした?」 レイモンドが直ぐに気がついて、彼女の顔を覗いた。

「あれ?」 すると今度はジョアンが不思議そうな顔をした。

「どうした」 レイモンドはふたりの顔を交互に見ていた。

「この子・・・何だかルカに似てる・・・でもこの子は・・・
 あ・・日付が書いてあります・・・2008.12.24・・・3年前か・・・」
ジョアンが写真の裏の日付を読み上げている間、ミンアは無言で
その写真を見つめていた。そして・・・
「3年前?・・・そんな馬鹿な・・・」 ミンアが呟いた。

「ミンア・・・知ってるのか?この子達を」

「・・・・・・」

レイモンドはミンアが何かを知っているのだと理解した。
しかし、それは彼女の表情から、簡単なことではないようだった。
彼はミンアの顔を見つめたまま、彼女の口が開くのを待っていた。




タクシーがホテルに到着すると、ルカはジニョンに部屋のKeyを
フロントで受け取らせるべく、指示を出した。

ジニョンはフロントへと向かった。

「おかえりなさいませ、ジニョン様・・・」 
ジニョンがフロントの受付嬢に声を掛けようとした瞬間、脇から
ひとりの男が進み出て、ジニョンに向かって声を掛けた。
一週間程前フランクに紹介されたばかりのホテル総支配人だった。
もしもこういう状況下でなければ、ジニョンはホテリアーとしての彼の誠意に
感動を覚えたことだろう。
それほど、今の自分は疲れ切っていて、決して先日滞在していた時の
顔付きとは思えないと、ガラスに映った自分の顔を見てそう思ったからだ。

「遅くにごめんなさい。あ・・ベルナンド・・さん?だったかしら・・・」

「はい、さようでございます」

「お友達とお出掛けしていて遅くなってしまったの
 今夜はここに泊めてくださる?」 
ジニョンは自分でも上出来と思えるほど、落ち着いてそう言った。

「もちろんでございます。いつでもおふたりがお泊りできるように
 お部屋は整っております。
 ご友人の方には別室をご用意いたしましょうか」
ベルナンドは、誠意を笑顔に乗せてルカに視線を向けるとそう言った。
ルカも満面の笑顔で彼に会釈した。

「ありがとう・・・でもいいの・・・彼女も一緒で・・・ 
 私の部屋のkeyをお願いします」 
ジニョンはドンヒョクが用意してくれた自分の部屋のkeyだけを受け取った。

「かしこまりました。・・・ご案内は・・・」 

「結構よ・・・大丈夫。」 ジニョンはそう言って微笑んだ。
ジニョンがフロントマネージャーと話している間、ルカはジニョンに
ピタリと付いていた。 


ふたりは直ぐに最上階へ上がり、ジニョンはルカを部屋に招き入れた。
「どうぞ・・・」

「素敵な部屋ですね・・・・ミセス.シン」 
ルカが部屋に入るなり、ベッドに腰掛ながら、ジニョンに向かって言った。
当然このホテルに向かったルカがそれを知らないわけは無かった。
「・・・・いつ・・知ったの?」 ジニョンがルカに聞いた。

「直ぐに。・・・だってジニョンssi・・
 フランクのこと“愛してる”って・・いつも顔に書いてありましたよ」
ルカは笑顔を作ってそう言った。

「それより・・・どうしてここが私達のホテルだと知ってたの?」 
ジニョンは一番の疑問を投げかけた。ドンヒョクから、このホテルが
自分達の所有であることは、殆ど知られていない、と聞かされていたからだ。

「・・・明日の朝にはここを出ます。」
ルカはジニョンの質問には答えずそう言った。

「・・・・・・」

「きっと直ぐにここも知れるでしょうから、長居はできません
 ・・・・とにかく、今夜だけは休みましょう
 ジニョンssiもお疲れでしょう?途中で起こしてしまいましたから」

「何をするつもりなの?ルカ。お願い、話して。
 どんな理由があってこんなことを?」
ジニョンは知りたかった。≪いったいこの子は何者なの?≫

「・・・・・理由ですか?」

「ええ、聞かせて」

「気になって眠れませんか?」

「ええ。眠れないわ。」

「そうですよね。」 ルカは笑ったが、目は笑っていなかった。
「・・・・実は・・・あなたにお願いがあるんです。」

「お願い?」

「ええ。簡単なことです、とても。」

「・・・・・・」

「フランクと・・・」

「・・・・・・」

「別れて欲しいだけです」 ルカは真顔でそう言った。

「えっ?」

「フッ・・そんなに驚かないで?ジニョンssi」

「どういうこと?」

「返して欲しいんです」
ジニョンは更に驚いて、一瞬言葉を失った。

「・・・・・返す・・って?」

「ええ。」

「どういう意味?」

「さっき・・・このホテルをどうして知ってるかって・・・・
 おっしゃったでしょ?」

「・・・・・・」

「ここで・・・過ごしたことがあるからです・・・彼とふたりで・・・」

「・・・・・・」
 
「あ、いいえ、ここじゃない・・・もっと広い部屋だったな・・・
 あーそうだ、ラファエロの大きな絵が掛かってた」
ルカは部屋を見回しながらそう言った。ジニョンはメインスイートの
部屋のことを言っているのだと、直ぐにわかった。

「とっても素敵な部屋ですよね、あの部屋。」

「いつ?」 ジニョンは聞いた。

「5年前です」

「5年前って・・・あなたまだ・・17?」

「ティーンエイジャーでも熱烈な恋愛できますよ、そうでしょ?」 
ルカはそう言って、意味有りげに笑った。

「・・・・・・」

「ジニョンssi・・知らないんですか?
 フランクって・・・女が放っておかないんです・・・」
ルカの言葉を聞きながら、彼女のような子の台詞には似合わないと、
ジニョンは漠然と思っていた。

「アメリカにも恋人はいたようだし・・Ms.グレイス?
 彼女も・・・そうでしょ?この国にもいったい何人の女がいたのか・・・
 ねぇ、ジニョンssi・・・彼があなたのこと・・ずっと愛してたなんて
 まさか・・思ってませんよね」 ルカはまたもニヤリと笑った。

「・・・・・・」 ジニョンは言葉に詰まった。
ジニョンは今日数時間前に、「フランクの5年前の恋人」だという女を見かけた。
大人の知的な美しい女性だった。

そしてまた、彼との関係を仄めかす若い女が目の前に現れ、笑っている。


「フランクを・・・


     ・・・返してください」・・・
 







GPS=米国による衛星測位システム、欧州の衛星測位システムはガリレオといい
現在はまだ利用されていない。今回は創作の便宜上GPSを利用していますが
EUはアメリカのGPSを利用するのを拒否し、独自に衛星測位システムを計画しているとか^^


















 




 


 

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