2011/12/29 12:06
テーマ:ラビリンス-過去への旅- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

ラビリンス-22.僕の天使

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助けてくれた船頭は、オープンカフェに食材を運ぶ業者の男だった。
再び彼のボートに乗り込んだジニョンとルカは、念のために
船内にあったホロシートを借りて身を隠した。

そして、20分程して戻った城下のオープンカフェでは
既に数名の店員達が開店準備に追われていた。

「おじさん!困るじゃないか!食材待ってたんだぞ!」
店員のひとりがボートに向かってがなり声を上げた。

慌しくボートが岸に横付けされる中、ジニョンとルカは、
店員達に紛れるようにして陸に降り立った。

そしてふたりは、船頭に済まなさそうに頭を下げた。
船頭はふたりに“早く行け”というように手の甲を振った。

その頃、橋の上は既に観光客で賑わいを見せ始めていたが
ふたりにとってはその方が都合が良かった。

それでもあの男達の待ち伏せを警戒しながら階段を上がり、
留めてあったバイクへと向かった。
何者かによって倒されたと思われるバイクを素早く立ち上げて、
ルカはエンジンを掛けて、壊れていないか確認した。
「大丈夫のようですね」

「ルカ・・早くここを出ましょう」 
ジニョンは直ぐにもバイクに乗ろうと構えた。

「はい・・・あ、でもちょっと待ってください・・」
ルカは一度掛けたエンジンを切ると、ジニョンの手を掴んだ。

「えっ?・・な・・何?」

「・・こっちへ」
彼はジニョンの困惑を無視して彼女の手を引き、橋を渡った。

「何処に行くの?ルカ」

「ジニョンssiに見せたいものが・・・」
そう言いながらルカは観光客が行き交う橋を、城の方へと向かった。

ジニョンも困惑しながらも彼の歩調に合わせ、小走りに歩いた。

「あの城、別名天使の城というんです・・・
 橋の両側に、天使の像が並んでるでしょ?」
歩きながらルカは前方の城を指差して言った。

「ええ、そうね」

「フランクが好きだった城なんです」

「そうなの?」

城に近い端の袂まで来た時、ルカは欄干に聳え立つ
ひとつの像の前でやっと立ち止まり、言った。

「この像・・」

ルカが目の前の像を見上げたので、ジニョンも倣って
それを見上げた。

「フランクがよく見上げていた天使。」

それは十字架を抱いた、美しい天使の像だった。

「僕は・・・勘違いしていました。」

「・・・勘違いって?」

「エマのことだと思っていたんです。つい最近まで」
ルカはその像を見上げながら続けて言った。

「え?」

「“僕の天使”」

「・・・・・・」

「いいえ、そうじゃないんです・・・僕がそう思いたかっただけ・・
 フランクの大事な人がエマであって欲しかっただけなんです
 きっと・・・きっとそうだったんだ。」
ルカの言葉は次第に確信したように聞こえた。

「実際・・・そうじゃないこともわかっていました
 消してしまっていたんです・・自分の記憶の中の事実を・・
 僕自身で・・・消してしまっていたんです」
ルカは遠い自分の記憶を辿るように続けた。

ジニョンはルカが言わんとしていることがまだ理解できないまま
彼の言葉を黙って聞いていた。

「・・・僕はあの時・・はっきりと聞いていたんですから。」

「えっ?」

「一度だけ・・・
 僕がフランクにあのホテルに連れて行ってもらった時のことでした」

「本当にあそこに行ったことがあったのね」

「ええ・・・その時、フランクはこう言いました。

 “ここは僕の天使の部屋だと。

 この世にひとりしかいない僕の天使だけが・・・
 入ることが許される部屋。

  今日君の11歳の誕生日に・・・特別に招待したんだ”と」

「天・・使?」

「ええ・・・フランクはあの時、確かに言いました。

 “ここは僕の天使の部屋・・・

 僕の・・・
ジニョンの部屋だ”と」

ルカはそう言って、ジニョンを優しい笑顔で見つめた。

 

 

 

ドンヒョクに少し遅れてローマに向かっていた4人は、
車中殆ど無言だった。
しかし、何も語らずとも、それぞれが思いを巡らせジニョンを案じていた。

それはエマとて同じことだった。
フランクのホテルに近づいたその時だった。

「ジニョンさん・・・どんな方?」 エマは静かにミンアに聞いた。

「・・・可愛い方です、とても・・・」

「・・・僕の天使」 エマがそう呟いた。

「えっ?」

「何年か前に、ルーフィーが・・いえ、ルカがそう言ったの。
 あの子・・フランクが言ったその言葉を私のことだと思って・・
 私を喜ばせたくて・・こう言ったわ
 “フランクはエマの為に天使の部屋を作ってるんだよ
 ≪僕の天使の部屋≫フランクがそう言ってた”って・・・」

「天使・・・」

「可笑しいでしょ?私のことじゃないって、直ぐにわかったわ・・
 でも・・ルカには言えなかった
 いいえ・・・私自身がきっと否定してたのね・・・
 その事実を・・信じたくなかったから・・・」
エマは自嘲しながら車窓から外を眺めると、隠すように
一筋の涙を流した。
ミンアはエマの手を包み込むように、自分の手をその上に置いた。

レイモンドはそんなふたりの様子をバックミラーから垣間見ていた。





「ルカ・・・これからどうするつもり?」

「トマゾを呼び出します」

「それで?・・私達は何処へ行くの?」

「ひとまず、ヴェネチアへ・・・そこなら安全ですから
 それで、トマゾにひとりで来てもらえるよう話します」

「そんなことして・・大丈夫?」

「トマゾがジュリアーノの部下だから?」

「・・ええ」

「僕はトマゾを信じたいんです。
 彼が僕を騙すなんて、信じられない。
 彼が・・
 僕の父の敵だなんて・・今でも信じられないんです
 だって・・彼もエマと同じで
 僕達をとても可愛がってくれてました
 
 エマだって・・・
 そりゃあ、フランクのことを考えれば、あなたのこと
 快く思ってないかもしれないけど・・・
 彼女だって僕を騙すとは思えない」

「信じてるのね」

「・・・・・信じたい」

「なら・・信じるべきよ」

「ジニョンssi・・・」

「信じたいものは信じるべき」

「あなたを・・捕まえようとしている人間でも?」

「私は捕まらないわ。」

「・・・・・・」

「あなたが守ってくれるもの」

「だって、僕は・・・」

「いっぱしの大人の男でしょ?」

「・・・・ジニョンssi・・・」

「それにあなたは・・・ドンヒョクssiが・・いいえフランクが
 大切に思っていた子・・
 だから・・フランクにあなたを会わせてあげたい」

「そうかな・・・」

「ん?・・」 ルカの寂しげな顔を見て、ジニョンは小首を傾げた。

「フランクにとって僕はもう・・僕たちはもう・・・
 どうでもいい人間じゃないかな・・・
 もう忘れられている・・と思う・・・」
ルカはうなだれたようにそう言った。

「いいえ。あなたの話を聞いて、私思ったわ。
 フランクもあなた達をとても大切に思っていた。
 それはきっと今も変わらないって。」

「・・・本当に?」 ルカの目が一瞬子供のように輝いた。

「ええ。フランクを・・・見くびらないで、ルカ」

そう言ったジニョンをルカは目をまるくして見つめた。

「な~に?私の顔に何か付いてる?」

「いいえ。本当だなと思って。」

「何が?」

「フランクの言ったこと」

「何て言ったの?フランク」

「僕の天使は・・・すごく強くて・・」

「強くて?」

「怖いって」

「えっ?嘘・・」

「嘘」

「ルカ」 ジニョンはルカを横目で優しく睨んだ。


  ルカ・・・僕の天使はね・・・

  すごく強くて・・・すごく優しくて・・・

  いつも・・・どんなときも・・・

  僕を守ってくれるんだ



       へ~守護神みたいだね



  守護神?

  ああ、そうだな・・・守護神だ


フランクはあの時、そう言って遠い空の彼方を見上げていた

今ならわかります

きっとあの時、このローマの地から遥か遠い空の下の
あなたを思っていたんですね、ジニョンssi

「必ず、守ります」
ルカが突然そう言って、ジニョンの手をしっかりと掴んだ。

「えっ?」

「必ず。僕が、あなたをフランクのところへ」

「ええ」

「行きましょう」

「ええ。」

ルカは掴んだジニョンの手を引いて、渡って来た橋を走って戻った。


     あなたは・・・フランクの天使

     フランクの守護神

     そしてきっと・・・僕の守護神だ


           ・・・きっと・・・







 











 

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