2012/03/18 17:43
テーマ:ラビリンス-過去への旅- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

ラビリンス24.ジニョンの行方

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「どうして・・・」
ルカが目の前に立ちはだかったその男に向かって言った。
ジニョンはその男とルカの顔を交互に伺いながら、
緊張した面持ちでルカの手を掴んでいた。
背後には別にふたりの男がルカとジニョンの行く手を阻んでいた。

「約束が違うな・・ルーフィー・・・その方を・・・
 こちらに渡してくれないか」
男はジニョンに視線を向けながら、ルカにそう言った。
その瞬間、ルカはジニョンを自分の後ろに隠すように
彼女の腕を引いた。

「渡せない。」 
ルカは力強くそう言って、ジニョンの腕をしっかりと掴んでいた。

「ルーフィー・・・」 男はルカを困ったように見つめた。

「トマゾ・・」 ルカはその男をそう呼んだ。

ジニョンも彼に見覚えがあった。
イタリアに降り立った日、自分達を出迎えてくれたその男だった。

「約束って何?彼女を連れて何処へ行くつもり?」
ルカは探るような物言いで言った。

「君は知らなくていい」 トマゾという男は終始落ち着いた様子で、
その声は興奮気味のルカを宥めているようにも聞こえた。

「教えて。・・・・5年前のことを。」
ルカが知りたいこと。そして今ではジニョンも知りたいことだった。

「・・・・・・」 
トマゾは無言のまま一瞬目を見開いて、ひとつだけ溜め息を吐いた。

「僕の両親を殺したの?」 

「・・・・・・」 トマゾは尚も答えなかった。

「教えて。・・・父さんと母さんを殺したのは誰?」

「・・・・・・」

「どうして黙ってるの?トマゾ・・」

「・・・・・・」
トマゾは口を開かないまま、ルカを見つめていた。

「エマ・・」 
「エマは関係ない。」 ルカの口からエマの名前が発せられた瞬間、
トマゾはそれを打ち消すようにやっと口を開いた。

「トマゾは関係があるということ?」
ルカはその疑いをも打ち消して欲しいと言いたげに、彼を見つめた。

「・・・・否定はしない。」 トマゾは溜め息混じりにそう答えた。
その時、ルカは胸が閊えるような息苦しさを覚えた。

「僕を騙してたの?・・・もう五年になるよ・・・トマゾ?・・
 エマと一緒にいつも僕達に会いに来てくれてた・・・
 父さんと昔からの友達だって言ってた」

「・・・・・・」
「それもみんな嘘?」

「・・・・・・」
「ただエマのためだけに・・ジニョンssiを・・・
 ジニョンssiにフランクを諦めてもらう
 そう説得するんだ、って!」

「・・・・・・」
「そう言ってた・・それも嘘?
 ジニョンssiをジュリアーノのところへ連れて行くつもり?
 そうしてどうするの?」
ルカは零れ落ちそうになる涙を必至に堪え、トマゾを睨み続けた。
そしてルカは肝心なことには何も答えないトマゾに向かって
怒りをぶつけた。
「そこをどけ!」
「駄目だ。」 
トマゾが初めて強い口調で言った。

「どけ!」
ルカが更に怒鳴った瞬間、トマゾの拳がルカのみぞおちを抉った。
「ルカ!」
ジニョンはトマゾの腕に倒れこんだルカに駆け寄ろうとした。
しかし後ろにいた男達に腕を掴まれ、無理やり車に押込まれると、
白い布で乱暴に口を塞がれた。

ジニョンは、次第に意識を失ってしまった。





「ここは何処なんですか?」
ミンアがエマに渡された住所を見ながら言った。

「ヴェネチアの島のひとつ・・・そこに古い教会があるの・・・」
エマが答えた。

「ここにルカという子が?」

「あの子達は・・5年前の事件直後から、そこで暮らしていたわ。
 或る人物から逃れるために匿われていた・・・
 そう言った方が正しいわね・・・」 エマは苦笑しながら言った。

「ジュリアーノから・・・ですね」

「ええ。でもいつかは。・・・そう思ってた・・・恐れてたわ・・・
 ジュリアーノに知られてしまう日がいつかは来る。
 それも時間の問題だとわかっていた。
 もしもそんなことになったら・・・」

「知られてしまったと思ってるんですか?」

「・・・・・・トマゾが伝えるなんて思えない・・でも・・・」
エマは信じたかった。ルカのことも、トマゾのことも、
そして自分自身のしてきた事実をも。

「でも?」

「・・・・・・わからないわ」
エマ自身、何がどうなっているのか、本当に困惑しているようだった。

「・・・もし・・・もしもジュリアーノにルカのことが知れていたら・・・
 どうなると?」

「両親の運命を辿るわ」 
そう呟いたエマの表情はとても悲しげだった。

「そんな・・・」

「そんな男。あの男は・・・
 マフィアに生きる人間の冷酷さを絵に描いたような男。」
エマは冷たくそう言った。
その言葉を聞いていたレイモンドは黙したまま目を閉じた。

エマは尚も続けた。
「だから。
 絶対にあの子達の存在を知られるわけにはいかなかった。
 だから。あの子達は・・・
 ヴェネチアから一歩も外に出てはならなかった。」

「それなのにどうして出たんでしょう」 ミンアは訊ねた。

「・・・・わからない・・・」 エマは消え入るような声で呟いた。




「フランクの女を連れてくることになっていた奴ですが・・・」
ジュリアーノの執務室で、部下の男が神妙な顔つきで言った。
「その男が、というよりまだ十代の餓鬼ですが、実は・・・」

部下が言いかけると、彼の言葉の先を読んだジュリアーノが
不適な笑みを浮かべた。
「その餓鬼が?・・・あの時の子供・・・5年前の。」

「ご存知だったんですか?ボス」 
手下の男が驚きの表情を見せると、ジュリアーノは更に
冷たい笑みを浮かべ言った。「だから奴にやらせたんだ」

「・・・トマゾはそのことを?」

「知っている。
 とにかく・・・一刻も早く奴らをここへ連れて来い。
 フランクに渡してはならない、女も。餓鬼も。決して。
 トマゾと連絡を取れ。」

「はい。」





「ボス、ここからは水上タクシーです・・・」

ヴェネチアに到着して、駅近くの駐車場に車を停めると
ジョアンは言った。
ドンヒョクは彼の言葉に返事もせず、無言のまま車を降りた。

ドンヒョクとジョアンが水上タクシーの乗り場に向かうと、
レイモンド、ミンア、そしてエマがドンヒョクを待ち構えていた。
ここに来るまでに、ジョアンとレイモンドが蜜に示し合わせ
落ち合うよう、時間調整していたらしいことも間違い無かった。
ドンヒョクは彼らに皮肉った笑みを向けたが、何も言わなかった。

一行は水上タクシーに乗り込み、目的地へと向かった。




ルカが目を覚ますと、目の前に羽根を広げた天使の姿があった。

朦朧としていた意識が次第にはっきりとしてくるに連れて、
それは、ジニョンの背後に見える天使の絵画の羽根が
まるで彼女の背中から生えているように見えたのだとわかった。

ルカはその時広いベッドに寝かされていた。
部屋を見渡すとそこは、美しい絵画や、品のある調度品が
程よく施されたシンプルな寝室だった。
開放された窓が見当たらず、地下室のようにも思えたが、
壁面に施された幾つものステンドガラス
明り取りの役割を
果たしているようで、決して窮屈な空間ではなかった。

「ここは?」 
ルカは自分の頭を撫でているジニョンの手を握って言った。

「わからないわ」
不思議なことに、答えたジニョンの声に恐怖の色は見えなかった。

「ぁ・・・トマゾ!」 突然ルカが先刻起きた出来事を思い出して、
彼の名を叫び起き上がった。

「今はいないわ」
ジニョンがそう答えた時、背後の扉が開き、そのトマゾが現れた。

ルカはその瞬間身構えて、ジニョンの前に立ちはだかった。
トマゾはルカのその様子に、小さく笑みを浮かべると、
ゆっくりと近づいて来た。

ルカは彼のその様子を目で追い、鋭い眼差しで睨みつけていた。

 

「腹・・すいてないか」 トマゾが部屋に入る時に抱えていたトレイを
ルカのそばに置きながら言った。

「ここは何処?」 ルカは彼の言葉を無視して聞いた。

「いずれわかる」 トマゾはそう言いながら椅子に腰を下ろした。

「何故こんなことを?」 ルカは更に聞いた。

「・・・・・・」
「まただんまり?」 ルカは嘲るように口角を上げた。

「私達を助けるためですね」 傍らにいたジニョンが突然そう言った。
ルカは彼女の言葉に驚いて、問いかけるような眼差しを向けた。

トマゾはそんなジニョンに優しげな眼差しで応えていた。
そしてゆっくりと口を開いた。
「・・・・はい。奥様。
 手荒なまねをして申し訳ございませんでした。」

「ジニョンでいいわ」 
ジニョンは、自分の勘が正しかったことにホッとして答えた。

「いいえ、奥様。しかし今しばらくご辛抱を・・・
 窮屈な思いをさせて申し訳ございませんが、
 しばらくここで身をお隠しいただきたい」

「何故?」 それでもジニョンには理由がわからず訊ねた。

ジニョンは車の中で薄れ行く意識の中、自分達を乱暴に扱う
男達をきつくたしなめているトマゾの声が聞こえた。
そして次に意識が戻りかけた時、彼はまず自分を抱えて運び
丁寧にベッドに降ろした。
次にルカを運んで来た彼の姿がおぼろげに見えた。
彼はルカをベットに降ろした後、その髪を優しく撫でていた。
その眼差しは優しげで、自分達に危害を加える人間とは
到底思えなかった。

「あなた達を狙う者が既にヴェネチアに。」 トマゾが言った。

「それは・・・あなたではない、ということですね」
ジニョンは少しばかり愉快そうに言って、優しく微笑んだ。
トマゾは両方の口角を上げ、静かな瞬きで答えた。


数時間前のことだった。
トマゾはルカとジニョンの居場所の報告を、彼らを追い
列車に同乗していた手下の男から受けた。
車でヴェネチアに向かっている途中のことだった。

報告を受けたトマゾは焦った。
ふたりがジュリアーノの手に落ちる前に、自分がヴェネチアに
辿り着かなければと。
そうしなければ間違いなくルカもジニョンも、命の保障は
無かっただろう。

トマゾには時間が無かった。
彼はアクセルを最大限に踏み込んだ。



「ところで・・ここには私達だけ?」 
さっき自分を車に押し込んだ男達の姿も見えないことを
不思議に思ってジニョンは聞いた。

すると、その意味を理解したトマゾが表情を変えず答えた。

「はい。あの男達は海で泳いでもらいました。
 奴らに・・・いいえジュリアーノに
 この場所を知られるわけにはいきませんでしたので」

「泳いで?こんなに寒いのに?大丈夫かしら」
ジニョンが真顔でそう言うと、トマゾは突然笑い出した。

「あ・・失礼・・・いや、きっと大丈夫です。
 今頃は濡れた服も乾いているでしょう。」

「ホントに?」

「ええ、本当です」

トマゾは可笑しかった。
自分がヴェネチアに到着する前に、男達に捕まっていたら
ふたりは間違いなく今頃ジュリアーノの前に差し出されていた。
それなのに、この女性は川に落とされた男達の安否を
本気で気遣っている。

「どうして・・・」 状況を理解したルカがやっと言葉を挟んだ。

「あの方にはまだ時間が必要でしたので」

「あの方?・・時間?」 ジニョンがその意味を訊ねた。

「今はまだ何もお聞きにならず、ここで静かにしていただきたい」
トマゾはそう言うと、トレイに綺麗に盛られた果物やパンと飲み物を
改めてふたりに差し出し、部屋を出て行った。

ルカはとっさにドアへと向かったが、外から鍵をかける音が聞こえた。




その島に降り立ち、少し歩くと、教会らしい建物が見えた。
それは赤いレンガの塀に囲まれていた。
ミンア、ジョアンそしてレイモンドが警戒するように辺りを見回す中、
ドンヒョクは迷うことなく教会の入口へと向かった。

その様子を見つめていたエマは、ドンヒョクがここに
初めて訪れたのではないことを改めて確信した。

ドンヒョクは玄関に立つなり、呼び鈴を乱暴に数回鳴らした。
すると直ぐに建物の奥から慌てた様子の人の気配が伺えた。

「お・・お待ちしておりました。フランク様」
その言葉と共に中から男が現れ、ドンヒョクに向かって頭を下げた。
この教会に仕えるカーディナル、シュベールだった。

一方ドンヒョクは彼に挨拶も返さず中へと突き進んだ。
一行も彼の後に続いて建物の中へと入った。

「何処にいる?」
ドンヒョクの鋭い第一声がシュベールを攻撃した。

「まだ戻っておりません」

「戻ってない?」 ドンヒョクは振り向きざまにシュベールを睨んだ。

「はい、サンタ・ルチア駅に着く前にも一度連絡があったんです。
 それからすると、もうとっくに着いていなければならないんですが・・」

シュベールの言葉を聞くや否や、ドンヒョクはそばにあった
テーブルを力の限り叩いた。
「いったい何をやっていたんだ。
 ヴェネチアを出すなとあれほど念を押したはずだ!
 そのために、あの子達に持たせる金をも管理させたはず。」

「はい。そのように・・しておりました。しかし手紙を残して・・・」
シュベールは目を閉じて、自分の至らなさを悔やんだ。

「見せろ。」 ドンヒョクはぶっきらぼうに言って手を出した。

「これです」
そう言いながらシュベールは一枚の紙をドンヒョクに渡した。
それはルカが残して行った置手紙だった。

ドンヒョクはそれを目で追った後、エマを一瞥した。
エマはそれに気が付いて、その紙をドンヒョクから奪い取った。

《エマの幸せを掴み取ったら、戻ります
 心配しないで。僕は大丈夫です。妹を頼みます。
                       ルーフィー》

その紙にはそれだけが書かれていた。
エマは読み終わった後もその文字を凝視したまま、
しばらく動かなかった。
ドンヒョクは腕を組み、人々に背を向けた。

「連絡があった時はどのようなことを?」 ミンアが聞いた。

「はい、5年前の真相を知っていたのか、と聞かれました

 最初はとぼけたのですが、あの子の声にただならないものを・・・
 それで、戻って来てくれたらすべて話す、そう言いました。」

「ルーフィーは知ってしまったのね」 エマが言った。

「あなたのことも言ってました。エマも知っていたのかと。」

「・・・・・・」

「他に行くところは?」 レイモンドが堪り兼ねて声を上げた。

「いいえ、あの子はここ以外には何処にも行くところは。」
シュベールはそう言いながらドンヒョクを見たが、彼は
終始無言で厳しい表情をしていた。

「待つしかないのか」 レイモンドは歯軋りをした。




「ジニョンssi・・・
 どうしてわかったんですか?
 トマゾが僕達を助けるためにこんなことをしたと」

「さあ・・・勘かな」 ジニョンは首を傾げて言った。

「ジニョンssi・・」

「ふふ・・・さっきね・・・目が覚めたとき・・・
 彼があなたの髪をそうっと撫でていたの・・・とても優しく・・・」

「だからって・・・」

「あんな目をしている人に悪い人はいないわ」
ジニョンは自信たっぷりな眼差しを向けた。

「でも・・トマゾはどうしてこんなことを?
 フランクに時間が必要って、何のこと?」

「それは・・・わからないけど」
そう言ったジニョンにルカは呆れたように笑った。

「ジニョンssiって・・・」

「ん?」

「不思議な人ですね」 
さっきトマゾが笑った意味がルカにもわかって、顔を綻ばせた。

「えっ?」

「どうしてそんなに人を信じることができるんです?」

「誰でも信じるわけじゃないわ・・・でも・・・」

「でも?」

「ふふ・・・」

ジニョンはルカを見つめて屈託のない笑顔を見せた。



    ・・・「その方が幸せじゃない?」・・・ 





















 

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