イベントでのつぶやき
タムドクに会いに、ドームに行くのだと、ず~っと思っていました。なのに、そうではありませんでした。そこで出会ったのは、長髪をなびかせ、口元に微笑を浮かべたヨンジュンさんでした。
いいえ、けっしてそれが不満だというのではないのです。
ただ、鎧を着たタムドクの姿をしっかりとこの目に焼き付けたかっただけ・・・。
ある方から譲っていただいたその席は、ステージからはそう遠いものではありませんでした。でも、そこは、正面から左半分は見えにくい位置にありました。
ああ、これは見逃したら大変かも・・、そう思っていたときでした。
いつのまにか、ステージ上には四神が居並んでいました。
はっとした時、中央あたりの壁がするすると開いたような気がして、そこから見覚えのある鎧姿が!
あっ!そう思ったとき、彼はすでにそこに立っていました。
再び、ああ~っと、私は小さな悲鳴を上げました。
ひとつはその圧倒的な存在感に。
そして、心の準備が不十分なまま、すごく大事な瞬間に出会ってしまったことに・・・。
テサギの世界は、私からは遠いところにありました。それは、ドライアイスの作り出した魔法の霧のかなたにかすんでいるように見えました。
いや、そんなものではないのでしょう。
テサギの世界はちゃんとそこにあったのですから。
タイムトラベルしようとして、時空間が少し斜めに傾いていたためにそこに到達できなかったのは、この私のほうなのですから、たぶん・・・。
ヨンジュンさんは長髪を切らないまま、足の痛みをこらえながら20キロの鎧を身につけていたというのに・・。
でも・・、それでも、彼は確かにそこにいました。
タムドクではなく、ぺ・ヨンジュンその人として。
車に乗って場内一周する彼は、思いがけないほどすぐ近くにいました。
あちらこちらに手を振り、にこやかな笑顔を向け、会釈し、なにごとかを話しかけ、カメラでパチリパチリと・・。
そして、くるりとふり向いたその瞬間、眼鏡の奥の視線がこちらを向いたような気がして・・・。
小首を傾げてにっこりと笑ったような気がして・・・。
ああ~っと思ったのは、私だけじゃありませんでした。
周囲数メートルがどっと沸き、今、目と目が合ったわ!と口々に。
しあわせな一瞬、しあわせな数メートルの輪。
ほんわかとしながらも、やっぱり私よ、とひそかにつぶやいたりして・・。
そして、ステージ上で彼が最後に残した言葉は、『皆さん、愛してます』でした。
愛してます・・、そんな深い言葉を、いとも簡単に口にしてしまうなんて!
そう思ったとたん、それはすごく自然な理のように、すーっと心に染み込んできて、私は、う~むとうなったのでした。
『皆さん』と語りかけているのだから、それは確かに、そこにいる35000人、いえ、全国から熱いまなざしを注いでいる人たちを入れれば40000人に、いえいえ、もっともっと多くの人たちに向けられたものなのです。
でも、それを耳にしたとたん、つい、個としての自分自身を感じてしまって・・・。
そんなはずはないと思いながら・・・。
そう、そんなはずはないと思いながら、私がぼ~っとしている間に、ヨンジュンさんはテサギの世界を締めくくったのでした。
コメント作成するにはログインが必要になります。