2006-12-11 20:56:06.0
テーマ:【創作】高句麗王の恋 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

海翔ける~高句麗王の恋 初めて

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 初めて触れた唇はやわらかく、そして熱かった。
その瞬間、タシラカの感性は、タムトクという人間を形作っているものを感じ取っていた。

コノ方ハ、特別ナ人。
信ジルコトノデキル人・・・。


今はもう、百済王の言葉も、敵国の王という彼の立場も、正妃のことも、
何もなかった。

私ハ、コノ方ヲ愛シテイル。
コノ方モ、タブン・・・。


タシラカの中にある固く凝り固まったものが、溶け出していく。

私、お待ちしていたんです・・・

おずおずと、タシラカはその思いを伝えた。
が、タムトクは、激しく熱い思いをストレートに返してきた。

そなたを抱きたかったのだ。
私のそばにいよ・・・。


タムトクさま、
ちょっと待って・・


タシラカの心の声を聞きつけたかのように、彼は唇を離すと、
ふっと笑った。
それから、大きな手のひらで、
やわらかい布で素肌をやさしく包み込むように、
タシラカの髪をなでる。

「タシラカ、こわがらなくともよい。
ほら、こんなに愛している。
私はそなたを傷つけはしない。」

耳元でささやく声・・・
魔法のようなその声音!

つられるように、タシラカはうなずく。
それを待ちわびていたかのように、
彼は首すじに顔をうずめた。


タムトクさま?

点々と首すじをなぞっていく彼の熱い唇・・。

タムトクさま・・・?

ああ・・、タムトクさま!


それは不思議な感覚だった。
今まで知らなかったタシラカの内なる部分に、
強く甘い世界を、次々によびさましていくかのような・・。


気がついたときは
タシラカは鍛え上げられた身体に抱きとめられていた。

すべては、あるがままの姿で・・。
すべては、あるがままの通りに。


タシラカの胸のあたりに顔をうずめる彼・・。
閉じたまぶたはちょっとかげりを帯び、
口元にはかすかな笑みを浮かべ、
うっとりと動かないでいるその横顔。

「タムトクさま・・・?
眠っていらっしゃるの?」

タシラカは笑みを浮かべる。
胸のあたりにある少しクセのある長い髪、
それを、タシラカはそっとつまんで、細い指にからめる。

その瞬間、
なに?というふうに、彼は顔を上げる。
だが、すぐに自分の望んだもののほうに顔を伏せて・・・、
そして・・・、
今度は、動かないということはなかった。

まあ、まるで赤子のような・・・。

だが、そんな手白香の微笑みは、すぐに消えてなくなる。
それは、さらに鋭い甘さとなって、彼女の指の先まで貫いていった・・・・。


やがて、彼女は彼の胸におさまった。
すべては、
この世の始まりのときに、
神のさだめたものの、
あるがままの通りに、
あるべき姿、あるべきかたちのままに・・・。


「タシラカ、今、はっきりとわかった。
やはりそなたは、私のタシラカだ。
私の・・・・・」


涙に濡れたタシラカのまぶたに、ひとつ口づけを落とすと、
彼はゆっくりと眠りに落ちていった。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 サトが長老屋敷に到着したのは、昼近くになってからのことだった。

北の砦が破られたらしい・・・・、緊急の、そして極秘の知らせがもたらされたのは、もうとっぷりと日が暮れた後のことだった。
すぐに、城内では、王を中心に側近や武官たち数名での、極秘の協議が始められたのだった。

北の砦が破られれば、騎馬なら王都まで数日で到達できる。
まして、侵入したのが獰猛なセンピということなら、すぐに王が出陣する必要があるかもしれなかった。

砦に、それから、今は半島の西の砦近くの近海に停泊中の数隻の軍船に、また、王直属の『かげの者たち』とやらにも、つぎつぎに急使が派遣された。
センピと同じように東の海にある倭の動向にも、気を配らねばならなかったからだ。

夜通しの協議が終わり、とりあえず打てる手はうち、砦からの使者が帰るのを待つということで、ひとまず解散ということになったのは、明け方近くのことだった。


 夜通しの忍耐と緊張を強いられて、サトはくたくたに疲れていた。
だが、もうひとつ気がかりな事があったから、王から目を離してはいけないと思っていたのだった。
なのに、サトはついうとうととしてしまった。
そして、気がついたときには、日は高くのぼり、王はどこかへ出かけた後だったというわけなのだ。


「タムトク様がここにおいでだということは、わかってます。
隠し立てすると、国益にかかわります!」

サトは押し殺した声で言った。

ジョフンは、ふんと鼻先で笑った。

「国益だなんてねえ、サト、あんた、大げさなんだよ。
子供の頃から、どうもあんたは杓子定規なところがあったよねえ・・。
ま、それがあんたのいいところでもあるんだけどね。
・・にしても、真面目なあんたが、今朝王子と一緒じゃなかったって言うのは、
いったいどうしたわけ?」

ジョフンの問いに、思わず、サトはいやな顔をしてしまった。

「それは・・、ちょっとうたたねしてしまいまして・・、
い、いや、ちょっと目を話したすきに、いつのまにかお出かけになったあとで・・・。」

サトがそう言うと、ジョフンはおもしろそうな顔をした。
思わず、顔が赤くなる。

「俺だって、なにも好きこのんで、あの方の行動に目をひからせてるわけじゃないんです!
そんなこと、もうわかっておられると思っていたのに・・・。
なのに、王は・・・。」

ちょっと目がうるうるしてしまう。
ジョフンは、あはは・・と笑った。

「まあ、まあ、そんな顔しないのよ!
それがあんたの仕事なんだからさ。
王子だって、あんたのことはちゃんとわかってるんだよ。
ちっちゃい時からいつもいっしょだったじゃないか。
あんたがいっつもちゃんと見ていてくれるってわかってるからこそ、だよ。

だから、一番たいせつなことは、ちゃんとあんたの意見を容れるだろう?
あんたのことを、それだけ信頼してるってことだよ。」

それから、真顔になって続けた。

「お察しどおり、王子は今ここに来ているよ。
タシラカ様のところだよ。

・・すこ~し、お疲れかしらね?
昨日は寝てないんだろう?
だからってわけじゃないけどさ、
いくら側近のあんたでも、ジャマをさせるわけには行かないね。
このジョフン、お城の仕事とは、もうなあんにも関係ないけど、
タムトク様の乳母だってことは変わりないんだからね。
あの方のためなら、私は何でもするよ。」

「しかしながら・・、しかしながら・・・、かの姫は問題です。
それに、ご婚儀のこともあります。
何が王のためかは、一目瞭然ではないですか!」

サトはあせって言ったが、ジョフンの表情は変わらなかった。

「あんたね、すこし固い頭をやわらかくしたほうがいいよ。
ハン家から正妃を迎えるなんていうのも、この際だから、もう少し考え直したほうがいいと、私は思うよ。
いくらなんでも、7歳の姫じゃ、お世継ぎをすぐに作るってわけにもいかないじゃないの!
たとえば、あの姫なら、すぐにでも・・・。」

何をいってるんだ!とサトは思った。
わかってるくせに、そういう過激なことを無責任に・・・、と。

「敵国の姫では妃にはできません!
ここは正統なハン家の姫でないと・・・」

「だから、もう少し頭をつかいなさいって、言ってるんじゃないの!
たとえば、どうしても正妃はハンの家からって、あんたが思うのなら、

ハン・スジムにいってやりなさいよ、
もっとタムトク様にふさわしい姫は、おまえんとこにはいないのかってね。
直系じゃなくったって、いいじゃない。
それに、ハン家じゃなくったってさ、他の貴族の娘だっていいんじゃないの?
せっかく、タムトク様が正妃を娶ってもいいっていう気になったんだからさ。


・・・今までだって、タムトク様のお目にとまりたいっていう貴族の娘は大勢いたんだよ。

ただ、王子がその気にならなかっただけでさ・・・。
倭の娘はだめだっていうのなら、

タムトク様を納得できるような高句麗の娘をつれてきなさいっていうのよ!」


サトはなおも反論しようとした。
が、ジョフンの言う事も一理あるかもしれなかった。
あとでよく考えてみなければ、そう思い直すと、口調を改めて言った。

「わかりました、
・・それはそれとして、タムトク様にお取次ぎを願いたい。
いや、それがだめなら、せめて、ご伝言を・・。
昼には城にお戻り願いたいと。
それならいいでしょう?」



[コメント]

1.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-11 22:08:45.0 runri

天の青様、 今回はつたない私のコメントは残さず失礼します。ごっつぁんですm(__)m


2.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-12 11:14:19.0 りんごママ

ジョフン姉さんが(もしかして私より年下?)すっごい女傑に見えるのは私だけ? 頼りになるジョフン姉さんがいてくれてよかったこと(^^) 続きが楽しみです。


3.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-12 11:41:56.0 キヨリン

流石海千山千のジョフンだわ。そうそう、なんでも杓子定規に考えていると、何事も行き詰まっちゃうわ。この際、ジョフンからサトへ世の中の裏道理を伝授して貰ってはどうだろう。


4.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-13 19:31:32.0 天の青

runriさん、ごっつあんですっていうのが、何よりうれしいレスです。ありがとう。


5.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-13 19:33:10.0 天の青

りんごママさん、ジョフンは女傑ですね。言葉はちょっと乱暴だけど、さすがタムトクの乳母です。彼女に育てられたからこそ、タムトクも度量の大きな男になったのでは?


6.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-13 19:34:54.0 天の青

キヨリンさん、サトは若いから融通のきかないところがありますね。物事を別の角度からみたら、また違うものも見えてくることを教えてあげたい。でも、まあ、私もね、そういうところがあったんですよ、実は。


7.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-13 20:31:50.0 やしち

あぁ、そうなった途端に運命を感じられる人・・・・青様、私はいつめぐり合えるのでしょうか??なんて、愚痴はおいといて・・・甘い二人をありがとうございました。 サトは、若いからこれからですね。だって、一国の王の側近ですから、こなさなければならない事、多すぎるでしょうし、気負いもあるだろうし・・・やっぱりある程度、年齢を重ねた熟女が一番ですよね~~フフフ・・・


8.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-13 23:02:41.0 りーふぐりーん

ごっつあんです2&おかわり~~~~(* ̄q ̄*)


9.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-16 01:50:20.0 天の青

やしちさん、いらっしゃいませ。これからでも、『運命の人』って遅くないと思いますか?あなたがそうなら、私だって・・・。でも、まあ、うちにもサンヒョクがひとりいますので。で、やしちさんって、サトのこと、けっこうお好きでしたよね。じゃ、運命の彼は・・ってことで・・・。


10.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-16 01:52:38.0 天の青

りーふぐりーんさん、今回の甘いシーンは、私、けっこうはずかしいです。こういう情景は浮かぶのに、表現力がイマイチなんだよな~。最近恋らしい恋してないから、しょうがないですよね。でも、みんなすごくうまいんだよね。


11.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-18 23:29:51.0 pocha♪

かなり出遅れの訪問になってしまいました(汗) タムトクとタシラカ・・・ん~~若いっていいわね~~♪ ジョフンがまたまたいい味だしてる・・・。タムトクが納得する娘は、今や見つけることは皆無になってしまったでしょうね~@^^@


12.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-27 23:36:26.0 天の青

pochaさん、お返事遅くなってごめんなさい。サークルのほうで忙しくて気がつきませんでした。若い二人は、もう周りが見えていないところもあるでしょうね。それを補佐するのがジョフンということなのでしょう。それに、今は気がついていないけど、サトも、ね。


13.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-31 00:52:59.0 まるごん

ああ、ようやくコチラに伺う余裕ができました…(感涙)。 草原の後がずっとずっと気になっていたのですが、ようやく二人の夜(朝?)が訪れたのですね。青さんの柔らかい表現が想像力をかきたててよりいっそう甘い世界を形作ってくれるみたい…。ジョフンも相変わらずいい味出してますね^^


14.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2006-12-31 01:07:14.0 まるごん

ヨンジュンさんの誕生日祭りで青さんの作品を出会って以来、すっかりタムドクにハマってしまいました。素晴らしい作品を本当にありがとう。来年も楽しみにしています。お体に気をつけて良いお年をお迎えください^^


15.Re:海翔ける~高句麗王の恋 初めて

2007-01-03 23:28:12.0 天の青

まるごんさん、あけましておめでとうございます。すっかりお返事が遅くなってごめんなさい。私、こういう場面、とっても苦手なんですよ。こちらではジョフンを早々と登場させてみました。でも、キャラはあんまり変わっていないでしょう?私のタムトクを読んでくださってありがとうございます。今年もよろしくお願いします。


 
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