2007-02-24 23:15:39.0
テーマ:【創作】短編 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

タムトクの母⑤~復讐

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 ☆失礼します。サークルの創作の続きです。

 なぜかわかりませんが、あちらにアップしようとしたら、「禁止語句」とやらではねられてしまいました。何度も直したのですが、だめでした。

 で、こちらでアップさせていただきます。この続きもこの後に入れます。

どうぞ、よろしくお願いします。

 なお、ここまでがつらいお話です。次回のラストは、あま~い部分もでてきますヨン。

 

      ~~~~~~~~~~~~~

 

 高句麗王の火のような思いが兵たちに乗り移ったのか、契丹の城は十日で落ちた。

 父王の仇というだけならば、それほどの激しいものはなかったかもしれない。
だが、少年の日に刻み込まれた母への思いは、何年たってもくっきりとあざやかに消えることはなかった。

家臣の止めるのも聞かず、まだあちこち火の燃えている城内に先頭に立って乗り込んでいった高句麗王は、その人の痕跡を探した。

だが、わかっていた。
どんなに周囲を見渡しても、もはやその人の髪一筋残ってなどいないことを・・・。

 タムトクは城の大広間らしき場所に立ちつくした。
珊瑚のかんざしを懐にしのばせたまま・・・。
じゅうたんは切り刻まれ、座卓や椅子は倒れたまま、そこここに、飛び散った血のりや泥だらけの足跡が見える。
思わず、ため息が出る。

そのとき、兵のひとりが思ってもみないことを伝えにきた。

「契丹王をとらえました!」

 なに!
どこだ?
どこにいる!

激しい足取りでその後についていく。
そこは、城の中庭だった。
集められた10人ばかりの女たちの間に、後ろ手に縛られ老いさらばえた男の姿がひとつ・・・。
女人の衣装に身を包み、太った体を二つに折らんばかりに縮め、おびえた様子でその場にしゃがみこんでいる。
 

知らず知らずのうちに、タムトクは叫んでいた。

おのれ!

女たちのかまびすしい悲鳴が、中庭に響き渡る。


その声を聞いて、自分の中に、何か黒いものがむくむくと沸き起こるのを感じた。
すらりと腰の剣を抜く。
制止しようとした側近の腕をなぎはらい、駆け寄ろうとしたサトを突き飛ばす。

異民族の王の二つの目が恐怖に見開かれる。
腰をぬかしたらしく尻を地面につけたまま、こちらを仰ぎ見ている。

それにじっと目をあて、ひとこと、

「そいつに剣を渡してやれ!」

家臣たちの間に動揺が広がる。
その中からひとり、サトがつかつかと歩み寄ると、手に持った剣を、『そいつ』の前に置く。

だが、それは、『そいつ』をおびえさせるに十分なものだった。
置かれた剣など手に取ろうともしないまま、口をだらしなく開けたまま、首を小刻みに振る。

このような男が、母上に!
怒りがいっそう燃え上がる。

「戦え!
私は、高句麗王タムトク!
その方がもてあそんだ女の息子!」

ぎりぎりと歯を食いしばり、
剣をふりかざす。

「立て!
契丹王ならば、立って戦え!」

憤怒の声は限りなく低く、中庭の隅々まで響き渡る。
それは、龍のうなり声とも咆哮とも見紛うようなものだった。
女たちはもちろん、高句麗の男たちも、固唾を呑んで呆然と見る。

相手の口から、情けない悲鳴がもれたが、ためらう気持ちは微塵もなかった。
手に持ったそれを振り下ろすと、それは狙いすましたように相手の右腕に!

あざやかに血が飛び散る!
ぎゃあっという男の叫び声!

逃げ惑う、床の上をはいずりまわる音。
女たちの悲鳴。

ふん、一度で死ねると思うなよ!
今度は左だ!

もう一度、ふりおろす。

ぎゃあっ!

一度でとどめをさす気にはなれなかった。
少しずつ少しずつ、母上が味わった苦しみの、ほんの断片でもいい、
そのブタに味あわせてやるのだ!

家臣たちに新たな動揺が走ったのを、タムトクは心の片隅でとらえていた。

「寄るなよ!」

そちらに冷たい声をかける。
が、今や龍の化身とも見紛う主君と、血を流しながら這いずり回るおいぼれた契丹王に近寄るものはいなかった。
ただ遠巻きにしてながめている。

「そこへ、なおれ!
この卑怯者めが!」

そのとき、呪縛を解き放つような大声が・・・。

「タムトク様!」

声とともに、後ろから羽交い絞めにされる。
それが誰のものか、瞬時にわかった。

「サト!はなせ!
王の命だ!」

が、サトの力は思いのほか強かった。

「タムトク様!
もう、そのへんでよいでしょう。
相手は剣も持つ気力もないような男だ。
そのような下劣な男のために、自ら手をけがすことはありませぬ!
あとは、この私におまかせを!」

「ならぬ!
そなた、王の命にそむくつもりか!」

「どうか、お静まりを!
なにとぞ!」

「サト!はなさねば、そなたとて容赦はせぬ!」

「私のことならいかようにも、ご存分に!」

サトは、なおも強い調子で続ける。

「しかしながら・・、しかしながら、タムトク様!
そのようなお姿、王妃様が、・・・お母上が目にされたら、
なんと思われるでしょうか!」

急に力が抜ける。
ふところにしのばせた珊瑚のかんざしが熱くなったような気がして・・・。

「・・・・・」

「そのような下劣なこと、
王と呼ばれる方のなさることではない、
そう、悲しんでおられます。」

そうだろうか・・・。

 タムトクは、手の中にあるものに、ぼんやりと目をやる。
そこに、血のしたたり落ちる剣があるのを・・。

それから、それをぽいとその場に投げ捨てると、
高句麗王タムトクは、足音高くその場を立ち去った。
珊瑚のかんざしを懐にしのばせたまま・・・。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


サトは、床の上に無造作に投げ出された王の剣に目をやった。
大きくひとつ深呼吸する。
そして、血塗られた剣をこの上なく貴重なもののように拾い上げると、瀕死の男を一瞥する。

「あとはまかせたぞ。」

高句麗王の側近第一号は、周囲を取り巻いた同僚たちに軽く言ってのける。

それから、心に深手を負ったままの王のあとを追った。

 

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「どうなのだ?」

声をひそめて、ジャン将軍は言った。
サトも小声で答える。

「おやすみになられました。
かなり強い酒をお持ちしましたゆえ・・。」

ふうむ・・、とジャン将軍はうなる。

「かなりこたえておられるようだな?
ま、無理もないか・・。
ひとつずつ、龍のしるしの扱いを学んでいっていただかねば・・・。」

はあ、とサトはうなずく。

「それに、契丹がわが高句麗の手に転げ込んできたことは大きい。」

「まあ、そうですね。」

「それにだ、もうひとつ得たものがある。
これで、王が敵の女に手を出さなくなるかもしれないってことだ!」

これには、サトが目をむいて、抗議する。

「あの方は、これまでも、女人におかしなふるまいをしたことはありません!」

ちっちっち・・・、と将軍は人差し指を横にふる。

「あま~い。
今まではそうかもしれないが、これからはわからん。
なにしろ、あの男ぶりだ。
たとえば、人質にとった敵国の姫が妙な気持ちを起こして、王に色目でも使ってだな~、
王もその気になって、つい手を出したりしてみろ!
あのご気性だ、先々、面倒なことになるかもしれない。」

「面倒なこと?」

いぶかしげに、サトがジャン将軍を見る。

「そうだよ~。
たとえばだな~、ちょっとした美貌に目がくらんでだな~、

敵との交渉に使わずに、
そばにおきたいとか、
妃のひとりに迎えたいとか・・・」

 

 



[コメント]

1.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 01:09:02.0 HAHAです。

天の青さま、PCに不慣れな私・・・。ウロウロ・オロオロしていたらば、 我が娘が「この場所」を見つけてくれました・・・!  ここが有ったのですね・・・。  嬉しくて・嬉しくて・早速、お気に入りに登録。遡って読ませて頂きます。    喜びが、天にも昇る況・・・。。。


2.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 11:35:48.0 eikoada

青様 おはようございます。こちらで⑤を読むことが出来て良かった~。タムトクの蒼き怒り…涙が出そうになるくらい…辛いですね。この想いが、タシラカへと続くのですね。また、こちらでもゆっくり楽しませていただきます^^。


3.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 11:40:47.0 runri

天の青さま、おはようございます。タムトクの憎しみ、、、王とて人の子、、母とは純潔そのものでいたぶられたその憎しみは深いですよね、、、次に進ませていただきます。


4.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 13:56:31.0 天の青

HAHAHAさん、いらっしゃいませ。私からもお嬢さんにありがとうってお伝えください。この回はこちらにアップしましたが、ここは「ひとりごと」が多いんですよ。『タムトクの恋』の冒頭部分の別バージョンが置いてありますが、そちらも途中までですし・・。(そうそう、それも続きを書かないといけなかったんです!)でも、よろしかったらご覧ください。これからもよろしくお願いします。


5.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 13:58:40.0 天の青

eikoadaさん、いつも本当にありがとうございます。先日は不愉快な思いをさせてしまってごめんなさい。この『母』シリーズは悲しいお話の連続で、読んでいただく方には申し訳なく思っています。すべてラストへとつながる過程だと考えて我慢してくださいね(ちょっと笑)。


6.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 14:01:04.0 天の青

runriさん、読んでくださってありがとう。この『復讐』は、けっこうノリノリで書いたんですけど、内容が不穏当だったからでしょうかね、向こうでダメ出しされちゃいました。禁止語句らしきものを直したんですけどね、どうしても引っかかってしまいました。こちらはオーケーなのにね。でもよかった~、runriさんに読んでいただけて。


7.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 15:48:56.0 天の青

HAHAさん、私、HN間違えていましたね。別の方と勘違いしてました。失礼しました。ごめんなさい。でも、ホテファンにも入っていますよね。違うかな?


8.Re:入っています。

2007-02-25 17:59:28.0 HAHAです。

どこへでも・・・読みたい願望に釣られて・・・。 「さかぼうさまのお部屋」でも、御挨拶を・・・へへへへ。 天の青さまのHNを見かけると・・・止められません。by母です。


9.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 20:01:27.0 yonyon50

こんばんは青様、いろいろ難しいことがあるのですね。私としては全然平気なのに・・気性の激しい部分が出ましたね。普段大人しい人は時として龍や虎になるのよね。これで近隣の国もタムトクを高句麗の王と認めざるを得ないでしょうね。


10.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 23:04:25.0 天の青

HAHAさま、さかぼうさんのお部屋も?ご挨拶したんですね。ごめんなさい。私、覚えていなくて・・。あそこでもお会いしていたなんて・・・。ありがとうございます。よし、がんばるぞ!


11.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-25 23:07:21.0 天の青

yonyonさん、こんばんは。「禁止語句」のことは噂には聞いていたんだけど、自分がそういう場面になってみないとあまりぴんとこなかったんです。あわてました。『龍』とは高句麗王家の王たるものが持つとされる資質のようなものと考えています。ワタルの誕生のときにも出てきました。タムトクももちろん、これを持っているんです。


12.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-26 00:00:52.0 nashi

アップできない禁止語句、わかったよぉ~~ >高句麗王タムトクは、足音高くその場を立ち去った。 ここの「くそ」だよ(大爆) 高くの後に「、」を入れたらアップできるはずです。 できなかったらごめんね・・・ 試してみて~~ タムトクの怒り・・ステキなんて思うのはいけないことかしらぁ~~ でもこれが理由で人質には手をださなかったのね。 やっぱりいい男だわぁ~~ 私のタムトク様・・・


13.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-26 00:16:50.0 天の青

nashiさん、ありがとう。今トライしてみたけど、だめだったよ~。「、」を打ってもだめだったから、「その場」を消してみたんだけどそれでもだめだったの。やっぱり、内容が不穏当なんじゃないの?復讐だの、残酷シーンだのがでてくるからさ~。ボロコリがそんなに賢いって思わないけどね。あきらめるよ。でもって、そうなの、タムトク、母上のことがトラウマになってるから、人質、特に女性にはやさしいのね。わかっていただけたかしら~、タシラカさま~。


14.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-26 02:11:07.0 ナタデココ

あちらで読めないので、ここにきて正解でした。 禁句があるのですか。   大変ですね。 私はぶたという言葉かな、なんて思っちゃいました。 自身で手にかけたい気持ち、 タムトクの苛立ちがよくわかる。   でもそんなタムトクをいさめるサトはやっぱり忠臣ですね。   青さんのタムトクがますます魅力的になりますね


15.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-26 07:06:51.0 nashi

そうですか・・・これでもダメかぁ。 探してみたけど他にはないみたいで・・・ 誰も来ない創作ガイドあたりで、ちょっとずつアップしてみるんです。 そうしたらアップできないところが出てきて、そこを重点的に調べる・・・しかないかなぁ。 機械がはねてるだけだから、内容は関係ないと思うのですが・・・ あんまり役にたたなくてごめんね~~


16.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-26 21:55:57.0 天の青

ナタデココさん、来てくださってありがとう。「ぶた」ね~、そうなのかな?でも、もういいの。心配かけてごめんなさいね。このお話、悲しいものになると思ったんだけど、彼のアイデンティティにつながる部分なので、書いてみたかったんです。


17.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-26 21:58:32.0 天の青

nashiさん、とんでもございません。いろいろとありがとうね。


18.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-27 12:04:51.0 キヨリン

このときのタムトクは常軌を逸していましたよね。男の子のとっての母は格別なものですものね。それを絶妙なタイミングでいさめるサト。素晴らしいという言葉しか思いつきません。 それに呼応するかのように熱くなったように感じた珊瑚のかんざし・・・。もしかしたら母君がサトにのり移ってタムトクを諌めたのかもしれませんね。


19.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-02-27 22:26:38.0 天の青

キヨリンさん、タムトクの心情を思えば常軌を逸しても仕方がないような状況ですよね、そしてそうやって大王に成長していくわけですよ、・・・と一応彼をかばって見せる私。だってあのお顔を思い出すと、彼の味方しちゃいたくなるんです、ごめん。


20.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-03-03 21:32:43.0 やしち

青様のタムトクは王なんだけど、普通の人間で、 人を恨んだり、恋に目がくらんだり・・・・ そういう所がとても好き。そして周囲の人の温かい目も・・ 王としての自分と本来の自分・・・ヨンジュンssiに重なりますね。


21.Re:タムトクの母⑤~復讐

2007-03-03 22:27:48.0 天の青

やしちさん、こちらにまでありがとう。タムトクって大王だったけど、やっぱり泣いたり笑ったりする血の通った人間だったと思うんですね。王たるべく努力した人、ヨンジュンを重ねてみている私には、どうしてもそう思えてしまうんです。新作ではどんな王様になるんでしょうね。


 
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