前略 ブラッド・ピットさま
前略 ブラッド・ピットさま
今夜は、わたくし、あなたにお礼を申し上げたいと思い、ペンをとりました。
あなた主演のハリウッド映画『バベル』・・、わたくしも楽しみにしていたこの映画の上映をすることになっていたスクリーンのひとつを、わたくしの大事な方のためにお借りすることになったと、今日聞きました。
ありがとうございました。
実は、わたくし、ほんの数年前まであなたのファンでした。
主演映画を小まめにチェックし、それが上映されるたびに映画館に足を運んだものでございます。
たとえば、そうです、2004年に封切になった『トロイ』は、わたくしが最も楽しみにしていた歴史大スペクタルでした。
あれは忘れもしない大雨が降った日曜日のこと、わたくしは都心の映画館まで、ひとり傘をさしてるんるんと出かけたのでした。
電車を降りると、駅前には映画のチラシを配っているアルバイトらしい若い女の子がいて、かわいい笑顔でこんなことを言いながら、わたくしにチラシを手渡したのです。
『ヨンサマ主演のスキャンダル、まもなく始まりま~す。
お席の余裕がまだ少しありますよ~。』
ああ、これが話題のヨンサマかと、わたくし、受け取ったチラシをながめ、そこに映っていた時代物らしい衣装に身を包んだ男性にちらりと目をやりました。
でも、わたくし、そのときは、わたくしの『彼』とはあなたのことだとばかり思っていましたので、ごめんなさいね~とばかり、すぐにそのチラシをそばにあったゴミ箱に投げ捨てたものでございました。
実は、その数日前、美容院で手にとった女性週刊誌に、初来日したヨンサマなる韓国人俳優が、その一週間後にやってきたあなたよりもお出迎えのファンの数がはるかに多かったみたいなことが書いてあったので、そんなばかな、何かのまちがいよ~と、ヨンサマという方にちょっとばかりむかついていたからでございます。
だから、その方のゴミ箱行きは当然のことでした。
それなのに・・・でございます。
『日本人みたいな感じなのに、日本語を話すわけじゃないし、不思議な感覚なのよ。それにね、昔好きだった人に似てるみたいな感じがするの・・。顔がそっくりとかそういうんじゃないのにね。不思議なのよ、これが、とっても・・・・。』
ともかく、一話だけでも見てみなさいよと、半強制的に押し付けられたビデオが運命の第一の分かれ目でした。
それを最初から最後まで一通り見たあとで、まず、ふうん・・・と思ったわたくしは、次に手渡された別のビデオでずずず~んと堕ちてしまったのでございます。
そこに登場するえらくかっこいい、『シン・ドンヒョク』なるその方は、なんでもM&Aのハンターだということでしたが、今まで経験したこともないほど激しくわたくしの心をゆさぶったのでございます。
はい、あっという間の出来事でした。
それが、あなたの作品を上映するはずだったスクリーンのひとつをお借りすることになった『ホテリアー』でございます。
わたくしが深夜パソコンと格闘しても取れなかったチケットを、その後ネットのお友達のおかげでゲットし、わたくし、それほど誰もがあこがれるその方に、その日お会いすることになっています。
ブラッド・ピットさま、思えば、不思議なご縁でございました。
あなたとその方の度重なる接点に、わたくし、なにか運命的なものを感じずにはいられません。
ま、所詮はわたくし中心の、あなたも、それからあのお方も、とんとご存じない世界のご縁ではございますが・・・。
でも、近い将来、何かもっとくっきりとあざやかな、あの方との接点が生まれるかもしれません。将来どんなことが待ち構えているのか、ほんと、わかりませんものね・・・。
が、とりあえず今夜は、わたくしの現在の『彼』のために、あなたにお礼を申し上げておきたいと思います。
ほんと、ありがとね♪
草々
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