2007-06-02 01:08:33.0
テーマ:【創作】タムトクの恋・番外編 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】契丹の王子①

Photo

 城門のところに立つ警護兵が、直立不動の姿勢になった。
タシラカは軽く会釈すると、城内に足を踏み入れた。
五日ぶりの参内だった。


 高句麗に来て、一年以上がたとうとしていた。
タムトクの指示もあって、タシラカは城内の奥向きのことを取り仕切るようになっていたのだった。


 正妃スヨンは、出産後もう一年近くたつというのに、体調が思わしくなくて寝たり起きたりの状態が続いていた。
そして、彼女の元には、生まれて数ヶ月の嫡子チャヌスがいた。
 
  その上、城内を束ねるべき侍女頭の中にも適当な人物が見当たらなかった。
ジョフンはすでに引退して長老屋敷に引きこもってしまっていたし、アカネは身重の身体という状況だった。

 そんなこともあって、正妃に気兼ねしながらも、タシラカが城内のことを管理するようになっていたのである。
 

 そんな彼女も数日前から何となく身体がだるく、その日は正妃付きの侍女にスヨンの様子をたずねたらすぐに屋敷に帰ろうと思っていたのだった。


 ところが、城門近くにある植え込みの陰で、ひとりの初老の女が待ちかまえていた。
二人の警備兵たちの手をかいくぐり、女はタシラカに近寄ると、大きな声で言った。

「お願いでございます。
倭のお方様とお見受けいたします。
お聞き届けいただきたいことがあって、こちらで、お待ちしていました。」

侍女たちが顔色を変えてタシラカを守るように、その女の前に回りこんだ。
警護兵たちが駆けつける。

が、女はそんなものには目もくれずに、言った。

「あやしい者ではございませぬ。
今はこちらのお城の下働きをしていますが、
かつて、契丹王室で女官をしていた者です。」

十分あやしいではないか!
そんな警備兵の制止を物ともしない様子で、女は言った。

「お、お願いでございます、
お方様、私の話をお聞きくださいませ。」

女は警護兵ともみ合いながらも、叫び続ける。

「王子が・・、私どもの王子が、
処刑されてしまいます!
なにとぞ、なにとぞ・・・、
お方様のお力で、
王におとりなしを!」

王子?
タシラカは小首をかしげて、そちらを見た。

警護兵の声が、いっそう大きくなる。
何を無礼な、ずうずうしい!
もうひとりが、女の腕をつかむ。

「あ・・・、お願いです、
どうぞ、話をお聞きください。
王子は・・、悪いヤツにだまされたのです!
・・そんなことができるような方ではありません・・・」

 タシラカは手を上げて警護兵を止めた。

「なんのことです?」


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 女の語るところによれば、ひと月前のセンピとの戦いのときに、たまたまそこに身を寄せていた元契丹族の王子が、高句麗軍に捕らえられたというのだ。

「さきほども言いましたが、私はかつて、契丹の王宮で女官として仕えていたことがございました。

契丹をごぞんじでしょうか?10年以上も前のこと、まだ即位まもないタムトク様に攻められて、国は跡形もなくみんなちりじりばらばらになって、はるか北方の草原に追いやられた部族でございます。

 ・・・その10年前の戦のときに、何が起こったか・・・。
お方様はご存知かどうか知りませんが、
こちらのタムトク様は、お母上様のことで当時の契丹王を恨んでおいででした。・・・落城の際には、ひどく残忍な方法で契丹王を処刑されたのです。」


 その話は、いつだったか、タムトクから聞いたことがあった。

『そなたに出会うずっと以前のことだが、
私は、北の異民族の王を憎んだことがあった。
それで、残忍なワザで、殺害しようとしたのだ・・・。』

あのとき彼は、ひどくつらそうだった。

そして、そうだ、それは彼の母后に深く関係のあることだった。
捕虜として異国の王に連れさられたタムトクの母、
故国に残した子を思いながら、ついに帰ることもなく亡くなったタムトクの母に・・・。

 それは、同じような境遇のタシラカを愛したことへの、タムトクの複雑な思いでもあった。


 タシラカは首を横に振った。

「タムトク様は、降伏した捕虜に対して残忍なことをなさるような、
そんな方ではありません。」


 だが、そんな彼女の言葉には何も答えないまま、女は弱々しい笑みを浮かべると続けた。

「その王子とは、処刑された契丹王の孫にあたる方です。
たぶん、捕虜として城内で過ごすうちに高句麗とのことを誰かが面白おかしく話してきかせたのでしょう。
祖父の仇とばかりに、執政の間にいたタムトク様に刃を向けたのです。
もちろんすぐに取り押さえられ、タムトク様は何事もなかったのですが・・、
でも、みんな言っています、
王の命を狙うなどと大それたことをしでかしたんだから、これはどうやっても、死刑は免れないだろうって・・・。」


しわの深く刻まれた顔をゆがませて、その女は話し続ける。

「10年前の戦に敗れ王を殺されたとき、私もこちらに連れてこられました。最初のころは、それは、タムトク様を憎みましたけど、でも、それはもう、ずいぶん昔のことです。
私もほかの者も裕福というわけではないですけど、それなりに平和に暮らしています。
今は、王を恨むなんて、そんなことはけっして・・」

「王子は多感な年頃です、
顔も覚えていないような祖父王のカタキを討たねばなどと、
頭に血がのぼってしまったのです。
誰かにそそのかされたのです。
そうに違いありません!
深い考えがあったなんて、とても思えません!」

 

「まだほんのお小さいころ、私はおそばでお世話をしていたことがありますが、とてもやさしい方でした。
そんな恐ろしいことは、けっして、けっして・・・。

お願いでございます!
どうぞ、お助けくださいませ、
どうか、王におとりなしを!」



[コメント]

1.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 09:20:54.0 かなひな

きゃ~、今日は一番乗りです。毎日毎日何回も、ここを開いていました。続きが無いかと! タシラカと日常が垣間見られて、嬉しいです。 ワタルもそのうち登場させてください。 老女の願いをタシラカが、どのようにするのか楽しみです。


2.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 13:08:51.0 天の青

かなひなさん、ありがとうございます。このあと、タシラカの独白の形でお話、進めますので、またきてくださいね。


3.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 16:01:19.0 りんごママ

見つけましたわよ。  ここで続きと言うのかタシラカのお話が読めるなんて…最高ですわよ。  続きを楽しみにしていますね。


4.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 16:01:28.0 りんごママ

見つけましたわよ。  ここで続きと言うのかタシラカのお話が読めるなんて…最高ですわよ。  続きを楽しみにしていますね。


5.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 17:54:57.0 runri

天の青さま、こんにちは~(^0^)/ とうとう妻の試練の始まりですね(--。) どんなに愛し合っていても、上に立つもののそれぞれの立場、、、どんな試練が待っていようとお互いに信頼し合い、今までと違う深い愛で繋がっていて欲しいと願うばかりです(*--) 次回楽しみに待っておりますボォ~(  ̄‐ ̄)゚*。゚


6.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 21:41:18.0 風のように

天の青様見つけたー♪私も毎日お姿探しておりましたー ヤダ、まるでストーカー??いえいえ違いますヨン。タシラカファンです(^ ^)さてさて、これからのタシラカの采配が楽しみです。でもタシラカの体調もきになりますが・・・大丈夫ですよね・・(オネガイ)


7.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 21:53:15.0 やしち

正妃としての役割を果たし、タムトクと国をおさめていくタシラカの姿が見れてうれしいです。。 契丹の王に対しての複雑な想いも、ここで少し和らいでくれるといいですね。。 続きが楽しみです。


8.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-02 22:00:50.0 yonyon50

お忙しいのに、UPしてくれてコマヲ~~。 タシラカは王妃の様な風格、タムトクもさぞ嬉しいでしょう。スヨン様のことも気にかけているでしょうが、何しろ愛するのはタシラカだけですから。そして、タシラカは二人目を身ごもった? 契丹王子のこと、難しいけどタムトクは非道な人ではないですから。


9.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-03 12:30:39.0 pocha♪

青さん、こんにちは~! 素のタムトクをいつも感じてるタシラカ・・そんな彼女の心の行方は・・??タシラカファンとしては、とっても楽しみです!続きを静かに待ってますね♪


10.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-03 23:05:38.0 天の青

こんばんは。出かけていまして、失礼しました。読んでくださってありがとうございます。ごめんなさい。お一人ずつ、お返事できそうにありません。この続きを、今書いていますので、もう少しお待ちを。


11.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-03 23:53:48.0 天の青

こんばんは。出かけていまして、失礼しました。読んでくださってありがとうございます。ごめんなさい。お一人ずつ、お返事できそうにありません。この続きを、今書いていますので、もう少しお待ちを。


12.Re:青殿・・・。

2007-06-04 00:48:14.0 HAHAです。

おぉぉぉ・・・続きが「ドン!」とUP! なのに・身体がだるくて、遅れを取ってしまいマスタ。。。懐妊?「フンナ・アホなァ~」


13.Re:【創作】契丹の王子①

2007-06-04 07:54:39.0 gasse

ぐぐっ!こういうお話はわくわくします~。賢いタラシカはどう出るのか楽しみにしています。青さまワールドにまた浸れるとはなんと幸せ…。それにしてもタラシカの体調が気になりますな…あれ?ひょっとして?


 
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