2007-06-14 00:22:41.0
テーマ:【創作】タムトクの恋・番外編 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】契丹の王子④


 「あ、タムトク様!
ただいま、お方様にお取次ぎをいたしますので・・・」

 外からそんな声が聞こえたと思ったら、いきなり客間の扉が開けられて・・・・、つかつかと入っていらしたのはあの方でした。

 寝台に横になっていた私は、あわてて起き上がりました。

「ああ、そのままでよい!」

 タムトク様はそうおっしゃいましたが、そんなわけにはまいりません。
胸のむかむかした嫌な感じはほとんどおさまっていましたし、何よりも、あの方がひどく心配そうなお顔をされていましたから。

 タムトク様はそんな私のところまで近寄ってくると、いかにもさりげないふうに、私の頬に手を伸ばし、長い指でちょんと軽くつついて・・・、

「・・・心の臓が止まるかと思ったぞ!」

「タムトク様・・・」

「まったく・・。
大事な合議の最中に、そなたが倒れたとなどと聞かされたのだぞ!」

「申し訳ありません。
でも、私、倒れてなどいませんわ。」

 タムトク様の真剣なお顔がおかしくて、私はつい、クスリと笑ってしまいました。
そばにいた侍女たちも、笑いをこらえているようです。
タムトク様はそれに気がついたのか、ちょっとむっとした感じでおっしゃいました。

「ふん、おかしいか?
私は、死ぬほど心配したのだぞ!」

「ごめんなさい、タムトク様。
どこかで間違えて伝えられたのだと思いますわ。
ご心配かけました。」

「本当にだいじょうぶなのか。
まだ顔色が悪いようではないか!」

 はい、私はうなずきましたが、タムトク様は私の言っていることなど半分も信用できないというように、傍らに控えていた薬師の先生の方をふり向いて、どうなのだと詰め寄ります。

 このところずっとスヨン様のお部屋に詰めていた薬師の先生は、かすかに笑みを浮かべて、はい・・、と頭を下げました。


 と、タムトク様はいぶかしげな顔になって、こちらにお顔を向けました。

「だいたいだな、そなたには、控えの間で待つよう一時も前から言ってあったはずだ。」

今度は別の方向からだわと、私はちょっとあわてました。

「はい、そのように確かに承りました。
でも、私はスヨン様の様子をお伺いしてからと思ったんです。
この三日間お訪ねすることができなかったんですもの。」

「・・・・」

 タムトク様は一瞬黙ってしまいました。

 この方は、私が『スヨン様』の名前を口にするたびに、いつも困ったようなお顔をなさいます。
でも、このときはすぐに続けておっしゃいました。

「そうは言っても、怪しげな者がそなたに暴言を吐いたと聞いたぞ。
まして、先日から風邪気味だと言っていたではないか。
そんなときに、私の指示を無視するから、このようなことになるのだ!」

「暴言だなどと・・・、
そのような大げさなことではありません。
城で働いている者が話しかけてきただけですわ。」

私は笑いながらそう言いましたが、タムトク様は、ふん、どうだか・・・、とうつむきました。


 そのとき、私は気がついてしまったのです、
タムトク様の中に何があるのかを・・・。
その二つの目が悲しい色をしていましたから・・・。

 10年以上前の契丹で起こったこと、そこに隠されている母上様のこと、それが原因で15歳の少年が刃を向けたのだということ、そして、もしかしたら少年ゆかりの初老の女性が私に伝えようとしたことも・・・。

 タムトク様の内側に何かトゲのような痛いものが刺さっているのだと、私は思いました。


 やがて、タムトク様はほっとため息をつくと、おっしゃいました。

「では、ちょっと風邪気味なだけだとでもというのか?」

 私は複雑な思いのまま、薬師の先生にうなずくと、そばにいた侍女たちにしばらくの間席を外すよう申しました。

 侍女たちが出て行くのを、タムトク様は、ふうむというお顔でごらんになっていましたが、やがて、私と薬師の先生の顔を交互にながめながらおっしゃいました。

「なんだ?
もしかしたら・・・、なのか?」

こわいくらい真剣な顔に、かすかな期待の色!
まあ、さすがにおわかりになったのですね?
その直前にあったいろいろなことをどこかに追いやって、私はにっこりとしてしまいました。

「はい!
その、もしかしたら・・、ですわ。」

 タムトク様は切れ長の目をすっと細めて、そうか・・、とつぶやくようにおっしゃいました。
それから、ぐっと何かを飲み込んで、

「タシラカ、
・・・あの時の子だな?」

「・・・・・」

 私は何も答えられずに赤くなっていました。
あの方はふっと笑みを浮かべると、そのまま強い力で私を抱き寄せて・・・、

「そなたは最高だ・・・。」

そう、かすれたような声でおっしゃるのを、私は腕の中で夢のように聞いていました。

「最高なのはあなたですわ・・・」

 私はそうお返事したのですけど、それはタムトク様にちゃんと聞こえなかったかもしれません。
だって、私は、もう胸がいっぱいでしたから。


 やがて、こほんとひとつ咳払いが聞こえて、薬師の先生が重々しい声で言いました。

「ええ~、お二人でお喜びのところを失礼いたします、
とりあえずは、王家の伝統に基づいてことを進めさせていただきますぞ。
タシラカ様、ご懐妊でございます。
今、三月に入ったばかりでしょう。
あと六月もすれば、・・・そう、たぶん今年の冬には、
王子様か姫様がご誕生ということになります。」

 それから、薬師の先生は顔中に笑みを浮かべて宣言したのです。

「高句麗王タムトク様、タシラカ様、
まことに、おめでとうございます!」

 



[コメント]

1.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-14 16:16:36.0 HAHAです。

きゃ~~~ッ そうでございますか?王子かお姫様のご誕生なのね?「おめでとうございます。!」 dyラッキ~ 一番Get!


2.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-14 20:34:34.0 やしち

おめでとう!!おめでとう~~~~ 今度は、お腹の中にいる時から、パパとママ(←ちょっと時代に合わないけど・・)できますね♪ タムトクが抱えているものも、早くタシラカに話して、気持ちを軽くしてね。。 あ~、どっちが産まれるんだろう・・ たのしみだな~ それにしても、あの時の子って・・・・わかるのか???


3.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-14 21:29:10.0 pocha♪

あぁ~よかったぁ~!凄くうれしい・・♪ それにしてもタムトクは頬をツンツンするのがお好き?きっとタシラカを心から可愛いって思ってるのね。タムトクは幸せ者です、こんな素敵な女性と巡り会えて・・。いつもぶっきら棒のタムトクの言葉だけど、ストレート感に私まで撃沈しました^o^/ キャ♪


4.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-14 22:18:10.0 天の青

HAHAさん、一番、ありがとう。王子か姫?そうです、どちらかですね(笑)。


5.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-14 22:20:36.0 天の青

やしちさん、そう、ワタルのときは、タムトクがそばにいなかったからね。タムトクが抱えているものは、彼としては処理できないほど重すぎるんですね。そこにタシラカが登場したってことでしょうか。「あのときの子」ですか?うふふ・・、それは、ほら、タムトクは直前まで戦に行っていたから、だから・・・。


6.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-14 22:22:51.0 天の青

pochaさん、ぶっきらぼうのタムトクの言葉・・・、今回は特にそうだったかもしれませんね。ちょっと王様らしくなかったかな?頬をつんつんするのが好きかって?う~ん、そうかも。愛情表現が苦手なのかもね。


7.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-15 10:35:11.0 りんごママ

おめでとうございます。 タムトク様ってばはしゃいじゃって…。無理もないかな?だって、ワタルの時はお腹にいることも知らなかったんだものね。 わりと子煩悩でいらっしゃる?頬が緩みっぱなしの気がするんですけれど…。


8.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-15 18:04:12.0 風のように

そうそう「最高なのはあなたですわ・・・」タムトク様 よい知らせで良かった。タシラカも今回は、安心して お子が産めるといいですね。やっと肩の力を抜いて一人の女として・・・幸せの中で・・・(願望)天の青様ありがとうございます。


9.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-15 22:00:14.0 yonyon50

へへへ、隠しておくことはできなかったね^^ でも今度は誕生のその時も一緒に居られるのが嬉しいのでしょうね。 ワタルのときは産まれたことさえ知らなかったのだから・・ あの時、ってタムトク様ったら、もうそん事人前で言わないで、(/ω\)


10.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-15 23:56:19.0 天の青

りんごママさん、ありがとう。そうなんです、お腹にいるときから、そばにいるから、今回は大アマの父上になるでしょうか。じゃあ、ワタルがいじけるかな?いえいえ、ワタルは龍のしるしを受け継ぐもの。よりたくましく成長してくれるでしょう。


11.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-15 23:58:18.0 天の青

風のようにさん、タシラカは肩の力を抜いて、人並みなしあわせをつかむことができるのでしょうか。私ね、彼女には小さな波乱をもうひとつ用意するつもりです。だって、彼女ばっかり、ずるいじゃないですか~~。


12.Re:【創作】契丹の王子④

2007-06-16 00:00:36.0 天の青

yonyonさん、隠しておくことはできなかった・・?ああ、そうだったわ、意地悪して教えてあげないってことでしたね。う~~ん、そっちのほうがよかったかな。タムトクはちょっと独断専行的なところがあるから、ひとつここらあたりでしめておいたほうがよかったかしら?あ、タムトク様、私が言ったんじゃないんですよ、ヨンヨンさんです~♪


 
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