17話のないしょ話~青龍が目覚めるとき
☆怒涛のような17話。今までのひとつの帰着点。
もう胸がいっぱいで、何も言えないわと思ったのですけど、やっぱりひとつの区切りとしてちょっとだけないしょ話させてください。
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「あの・・、タムドク様?」
「なんだ、今日はやけにまとわりついてくるな。」
「はい、どうしてもお話しておきたいことがございますの。
あの、私・・、タムドク様って、なかなか素敵な方だと思っていましたけど・・」
「思っていたけど、なんだ?」
「びっくりしましたわ、
甘かったですわ、
まだまだ知らないことがたくさんあるんだなとつくづく思いましたわ。
あんな方だとは思ってもみませんでしたもの。」
「あんな方?」
「あ、だから・・・、
本当に、鬼神のような戦いぶりでございました。」
「・・・そのことか。」
「はい、そのことですわ。」
「・・今日は、その話はしたくない。」
「はい、そうでしょうとも、
お疲れですわね。
わかっていますわ。
どうぞ、私の話なんて、
吹きすぎていく風のようなものとでも思ってくださいませ。」
「・・・・」
「あのとき、・・・あの庭に立たれたとき、
タムドク様がどんな心もようでいらっしゃるのか、
私にはわかるような気がいたしましたわ。
家臣の命がいたずらに奪われるのを目の当たりにして、
ひどくお怒りになられていらっしゃると・・。
それも、水のように静かに、そして、激しく、
青白い炎をあげて燃えているような・・・。」
「・・・・・」
「・・ホゲ様との対決のときとはお顔が全然違って見えましたわ。
魔王のような敵をじっと見据えるまなざしも、
きりりと引き結んだ唇も・・。
闘志を内側に深く深く閉じ込めていらっしゃるのも、
触れれば切れそうなほど、静かなするどいものがただよっていらっしゃるのも!」
「・・・そなた、よくしゃべるな。」
「あら、これでもなんて言っていいか、わからないくらいなんですのよ。」
「・・・・」
「・・・タムドク様は白がねの刃で向っていらっしゃいましたわね。
それを、なんだかわからない黒い魔の力でぐるぐるととらえられそうになって、
それでも、少しもご自分を見失うこともなく、
跳ね返して、
宙を飛び、
しっかと大地を踏みしめて、
上体低く、背を傾けて、
こう、ぎりぎりと敵を見据えて・・。
すごい方なんだと思いましたわ。」
「・・・・・」
「戦っていらっしゃるうちに、
タムドクさまの心の内がぐんぐん澄んでいかれるのが感じられて、
やがて、青龍が目覚め戦い終わるそのときまで、
一心に駆けて行かれましたわね。」
「・・・・・・」
「ねえ、タムドク様、
お怪我をなさっていらっしゃるのに、
こんなことを申し上げてはどうかと思うんですけど・・、」
「なんだ?」
「静かな怒りに身をまかせて戦っていらっしゃるときの、
あなたのお顔、
私、けっこう好きですわ。」
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