mirageside-Reymond-22
「若!・・ライアンが直接動き出しました」 ライアンの元に進入させた配下の者から、私とソニーそれぞれに連絡が入っていた。 「一時間もすればそっちへ到着する」 「しかし・・」 「・・・わかった・・動け。」 そして私はソニーに彼らふたりの運命を託した。 私が現場に到着するとほぼ同時に、上空からヘリコプターが降り立った。 「どういうことだ」 私はモーガンに向かって怪訝に問うた。 「若・・」 「どうして・・」 「話は後で・・まずはライアンを食い止めましょう」 私は疑問をさておき、モーガンの言葉に従いフランクたちの元へと急いだ。 私が入り口に出向いた時には既に、先に到着していたモーガンの手のものと その時だった。私達が建物の中に入った瞬間、奥の方から一発の銃声が轟いた。 そして、やっと彼らの元に辿り着いた時、そこにはフランクとジニョンを狙い 私は迷わず胸ポケットから銃を取り出し、ライアンのその手に狙いを定めた。 私に右手を打ち抜かれたライアンが、私を睨みつけながらFBIに捕らえられた。 「止めて!」 ジニョンはうな垂れたまま私の腕に抱えられたフランクを、まるで奪い取るかのように 「ジニョン!離しなさい・・救急車に乗せるんだ!」 「怪我をしてるんだ!離しなさい!」 ジニョンは尋常ではない出来事を目の当たりにして、間違いなく錯乱していた。 「ソニーは・・」 「大丈夫です・・打たれていますが・・命に別状はありません」 「?・・・母さん・・・ですか・・・」 「ああ・・」 「しかし・・それは私がお預かりしましょう 「ボスが・・いえ・・ 「はい。これが・・最後の命令だと・・・ 「それで・・どうしてFBIに?・・・」 「あなたが望まれていたことですから。・・・そうではなかったですかな?」 「・・・そうだったな・・・」 「・・・・」 「モーガン・・・・」 「はい」 「どうか・・許してくれ・・ 「ああ・・必ず・・・私は・・・ 「はい」 ・・・無駄にはしません・・・
電話口のソニーの声は、現場でなければわからないだろう緊迫を伝えた。
そして機内から数人の男達が降りたかと思うと、その内の二人が私の車へと向かって来た。
身構えた私に向かっていたのは私と手を組んでいたFBI捜査官ユイ・コールドと
モーガンだった。
FBI捜査官らがライアンの配下たちを取り押さえていた。
私は胸騒ぎを押さえながらその音の発信源に向かって必死に走っていた。
銃を構えていたライアンが見えた。
「無傷で返す!
そういう約束じゃなかったか!ライアン!」
その傍らにいたフランクとジニョンが横たわり身動きしていなかった。
私は急いでふたりに駆け寄ると堅くジニョンを抱きしめていたフランクを彼女から
やっとの思いで離すことができた。
彼を抱きしめ離さなかった。
「いや・・いや・・連れて行かないで・・ランク・・フランク・・・私の・・フランク・・」
「ジニョン!しっかりしろ!」
君を・・・こんな目に遭わせてしまった私を・・・
許してくれ・・・ジニョン・・・
フランクは・・君の・・フランクは・・・
もう大丈夫だ・・だから・・・大丈夫だから・・
しっかりしろ・・・ジニョン・・・
お願いだ・・・・しっかりしてくれ、ジニョン・・・
そしてジニョンもまた、私の腕の中でフランクを抱いたまま、気を失ってしまった。
私はジニョンの髪に祈るようにくちづけた。
どうか・・・これ以上傷つかないでくれ・・・
ジニョン・・・私の・・・・・・
彼女の脈を取った救急隊員が、私に向かって“大丈夫”だと頷いて見せた。
私は脱力していく自分を辛うじて持ち堪えていた。
もうひとつの気掛かりをモーガンのその言葉に救われて、私は再度胸を撫で下ろした。
「若・・・決して銃を持たない・・あなたの信念はどうされました?」
モーガンが笑みを浮かべながら、私が今しがた、とっさに使った銃の出先を問うた。
私はそんな信念など、人に話したことなど一度も無かった。
「知っていたのか」 それでもモーガンは知っていた。
「ええ・・とっくに・・いつも胸ポケットに入れている振りをなさっていたことも・・・」
「フッ・・・・あれは・・母さんのだ・・・」
モーガンは、今現在レイモンドが母と呼べる人を想像して、ただ頷いた。
あなたがそういうものを持っていてはいけません」
そう言ってモーガンは手を差し出し、私の手から銃を受け取った。
「それより・・モーガン・・どうして・・ここへ?」
予測していなかった彼の出現を、レイモンドはやっと問うた。
あなたのお父上が私に命令を下されました」
「父が?」
レイモンドの思うように・・・レイモンドの指示に従えと・・・
・・ですから・・ずっと、我々はあなたの動きを追っておりました」
あれほど・・大義名分を掲げながら・・
お前達の意に反して・・・お前達を窮地に追い込むことなどに
何の迷いも無かった私が・・・
最後は・・・
たったひとつのものを救うことしか考えていなかった・・・
結局私は・・・それだけの男・・・
もしかしたら・・・
全てをライアンに奪われていたかもしれない・・」
事実そうなっていたかも知れない。
もしかしたら、その愛しいものさえ、失っていたかも知れない。
「いいえ大丈夫です・・・あなたはそんなことはなさらない。
たとえ・・一時的にそのようなことが起きたとしても・・・
必ず・・あなた自身の信念に立ち返る・・・あなたは・・そんなお方だ・・・
私は・・父上と同様に・・罪を償いましょう・・」
モーガンは潔い表情をまっすぐにレイモンドに向けた。
「モーガン・・・」
「そしていつしか許されるなら・・また・・あなたの元で・・・」
お前達が生きていける場所を必ず・・・築いてみせる」
モーガンの表情は清々しかった。
レイモンドの意に沿うということが、どのような結果をもたらすか、その全てを覚悟した
そんな顔だった。
父さん・・・
最後は・・・あなたが下したんですね
28年前・・・
本当はあなたがそうしたかったことを・・・
結局あなたが決断を下された
父さん・・・笑ってください・・・僕は・・・
たったひとりの愛しいもののために・・・
危うく信念すら曲げようとしていた・・・
あなたの決断がなかったら・・・
あなたの勇気がなかったら・・・
しかし、私は愛しいものを一に考える
そんな男でありたかった
それだけなんです
父さん・・・礼を言います
そして・・・力を貸してくださった
あなたの思い・・・決して・・・
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mirageside-Reymond-21
「レイ・・」
義母は不安げに私の顔を覗いていた。
私と判り合えた矢先に、自分の息子であるライアンが、私を・・そしてフランクを
追い詰めている。
たった今、フランクとソニーが部屋から走り去っていく姿を、彼女がどんな思いで見送ったか。
しかし今は私とてフランクと同じだった。
義母の思いにまで心を掛ける余裕など微塵も無かった。
「今は何も聞かないで下さい。あなたはここで待っていて欲しい。
心配するなとは言いません。ただ、私を信じてくれるなら、ここにいてください。」
私がそう言うと、義母は黙って頷いた。
私はホテルの非常出口を使って階下へ降りると誰にも尾行されないように
他の車を使って裏口から外へ出た。
ジニョンを助ける前に、あの書類を奴らに奪われるわけにはいかない。
「Mr.レオナルド・パク?レイモンド・パーキンです
フランクから連絡が入りましたか?・・」
「はい・・」
「では私が告げる場所まで・・その書類を」
「承知しました」
「ライアンを出せ」
私はレオナルド・パクと連絡を取った後でライアンに電話を掛けた。
「何のようだ・・・」
ライアンは少しだけ気を持たせるように私を待たせて、やっと電話に出てきた。
「取引をしないか」
「取引?」
「ああ・・今から私は例の書類を手に入れる」
「例の書類?何のことだ?」
「とぼけるな・・・私はお前に組織を譲る。
あの書類もだ・・
しかし・・この首謀者がお前でないとしたら」
「俺でないとしたら?」
「お前に渡す必要も無いだろう・・・予定通りFBIに渡す」
「FBI?お前・・それがどういうことか・・」
「ああ・・わかってるさ・・」
「お前・・最初からそのつもりで?組織を潰す気でいたのか?」
「そうだと言ったら?」
「そんなことが許されるとでも思ってるのか!」
「私が許した。」
「ふざけるな!・・あの女はどうなってもいいんだな」
「ふっ・・やはりお前の仕業か」≪馬鹿な奴≫
「・・・・」
「だったら・・話は早い・・本当言うと、そんなことはどうでもいいんだ
組織がはびころうが・・潰れようが・・私にはもう関係ない」
「どういうことだ」
「この前・・お前が言っただろ?この私がたかが女に手を焼いている、と・・
組織よりもそのたかが女の方が大事になった・・・
だから・・・このNYとももうさよならだ。
いいか・・
しかし本当に、彼女と引き換えでなければこの取引は成立しない。
お前の子分達にようく言い聞かせておけ
彼女にほんのわずかでも危害を加えることがあったら・・
組織も・・何もかも・・全滅だと・・」
「・・そんなことができるわけ・・」
「できないとでも?・・」
「・・・・」
「取引・・成立だな。」
「わかった・・書類と引き換えにあの女を無傷でお前に返えすと約束しよう
親父が組織の参謀にと望んだフランクはこっちがいただく」
「好きにしろ。」
ライアンにとって、私という存在は邪魔でしかない。
きっと彼は私を亡き者にしようと考えているだろう。
書類を持ってアジトへ出向いたとたん、彼の手の者に刃を向けられる
それは覚悟の上だった。
しかし、たった今彼と交わした取引が形の上だけでも成立した以上
ジニョンの安否は保障される可能性が高くなった。
少なくとも私がその場に到着するまでは・・・
ソニーにはフランクとジニョンに危害が及ばない限り、私が到着するまで待てと伝えた。
何としてもあのふたりだけは助け出さなければならない。
ソニーも同じ思いを抱いているはず。
旧友ソ・ヨンスの愛娘であるジニョンを救い出すこと、きっとそれだけを考えているだろう。
それだけに・・・
フランクと共に行かせるべきではなかったかもしれない。
ソニーという男は私に忠誠を誓いながらも、決して私の言いなりになる男ではない。
私は一刻でも早く彼らの元へ辿り着こうと
思い切りアクセルを吹かせた・・・
どうか・・・神よ・・・
もう二度と・・・
私の大切なものたちを・・・
・・・奪いたもうな・・・
mirage-儚い夢-46.永遠の微笑み
フランクはレイモンドに促がされてソニーの後に続き、部屋を出ようとした。 「フランク・・」 「どうか・・・許して下さい・・・」 しかし今のフランクには彼女のその思いを慮れる余裕など無かった。 「・・・・」 ソニーに連れて来られた場所はもう長い間使われなくなって久しいと思われる 「・・・・」 「私はしばらく外で様子を伺います・・・ いいですか?あなたは私が必ず・・お守りします 「本当に・・・」 「はい?」 「本当にレイモンドはここへ? 「信じられませんか?若を・・・だとしたら・・たった今あなたが・・ ソニーは正面を見据えたまま、静かにそう言った。 「・・・・」 「しかし・・・例え、あなたがそうなさったとしても若は必ずあれを手に入れる。 「・・・・」 「あなたが逆のお立場でもそうなさいませんか?」 「・・・・」 「今ジニョンさんの命が掛かっているとしたら・・・」 ソニーはそう言いながら、フランクに向かって温かな視線を向けた。 《よくご存知なんですね・・中の様子》 《フッ・・・人に知られたくない時に使うには・・・ 《あなたや・・レイモンドも・・こんなことを?》 部屋に入っていくと、そこには数人の男達が待ち構えていた。 「ジニョンは何処だ」 フランクは待ち受けていた男達の顔を確認するより先にそれを問うた。 「お待ちしていました・・・Mr.フランク」 「ジニョンは何処だと言ってる」 「あちらの部屋で寛いでいただいています・・ご安心を・・・」 「ふざけるな・・直ぐにジニョンを」 男達はこの部屋に六人いた。中央に腰掛けた兄貴分らしい男・・・ 「それはできません・・大事なものが届くまでは・・・」 「僕だけがここに残ればいい話じゃないのか?頼む。ジニョンは帰してくれ」 「それも無理な話です・・・わかりませんか? 「レイモンドは必ず持ってくる。」 レイモンドは必ず来る・・・ 僕は自分の口からその言葉が発せられた後で 「だったら・・僕をジニョンのそばに」 「・・・まあ・・いいでしょう・・・」 話をしていた男が周りの男達に目で合図をすると、男達はフランクの手を後ろ手に縛った。 ドアが開いた瞬間、椅子に縛り付けられ目隠しをされたジニョンの姿が目に入った。 「フランク?」 「ジニョン・・大丈夫か?」 「あぁ・・フランク・・やっぱりフランクだったのね フランクの両脇にはふたりの男がそれぞれに彼の腕を掴んでいた。 「フランク・・・」 「私は大丈夫・・・そう言ったでしょ?」 「酷いこと?・・こうして縛られてるけど・・十分・・酷いことだわ!」 ジニョンは口を尖らせて見せた。 「フッ・・君って・・・」 この非常時にきっと強がって見せているだろう君に救われる思いがした でも・・・ 「・・怖かっただろ?・・」 「・・・怖かったわ・・さっきまで・・・でも・・あなたの声が聞こえたとたん 「ごめんよ・・こんな思いをさせて」 「いや・・僕のせいだ・・」 「ごめんなさい・・・フランク・・・あなたがひとりで出歩いちゃ駄目だって・・ 「ごめん・・理由を言えなくて・・」 「でも・・レイが・・・あの人たちのボスなの?」 「いいや・・違うよ」 「違うの?」 「うん・・違う」 しかし今のジニョンにそう言いたくはなかった きっと捕まっている間 僕の言葉に少しばかり胸を撫で下ろす彼女が伺えた 大丈夫・・・ジニョン・・・ 「逢いたかった・・」 「僕も・・・」 「嘘・・」 「嘘?どうして?」 「ちっとも連絡くれなかった」 「ごめん」 「フランク・・・」 「ん?・・」 「あなたの・・顔が見たい」 「ちょっと待ってて・・」 フランクは少し離れた場所に置かれた椅子を少しずつ体で動かしながら 「ジニョン・・ここまでが限界だ・・少し左に顔を倒してみて?」 「うん・・こう?」 フランクはジニョンの目隠しに何んとか口を近づけ銜えると、彼女の頭から抜くように 辛うじて目隠しが取れたジニョンがフランクを見て、顔をほころばせた。 「髪の毛・・ボサボサじゃない?・・ふふ・・手・・これじゃあ、直せない・・」 フランクにずっと見つめられていたジニョンが我に帰って照れたように俯いた。 「綺麗だよ・・とても・・」 「また~フランク・・嘘つき・・」 「本当だよ・・だから・・お願い・・僕から目を逸らさないで」 自分達が置かれた普通ではない境遇に対しては諦めざる得ないことに、 「どうなるの?私たち・・」 「大丈夫・・君だけはきっと助けるから」 「君だけは?・・・駄目よ、フランク・・助かるのはあなたと一緒でなきゃ」 ジニョンは少し怒ったように目に力を入れて強い口調で言った。 「絶対よ」 ジニョンは今度はまるで哀願するようにフランクを見ていた。 「うん・・」 「フランク・・・」 「ん?」 「私に届く?」 「?・・・」 「キスして」 ジニョンはフランクに向かって、いつものくったくない笑顔を見せた。 ジニョンの笑顔を守りたいと言った、レイモンドの顔が浮かんだ 《あの子の笑顔は・・・ いいや・・・あなた以上にそう思ってる・・・ その笑顔のままで・・・ 僕に勇気を与えて ・・・永遠でありますように・・・
その時、パーキン夫人が申し訳なさそうな顔つきでフランクに声を掛けた。
この数分の時間の中で、夫人はきっと多くのことを把握しただろう。
そして、自分の血を分けた息子ライアンがたった今まで自分が頼りとしていたフランクと
その大事なひとを陥れようとしているらしいことも・・・。
結局彼女を振り向くこともせず沈黙のまま彼は急ぎ部屋を後にした。
「あそこです・・・」
何かの工場のような建物だった。
ソニーはそこから少し離れた所で車を止めフランクを見た。
「さあ・・行って下さい・・・ここから二つ目の建物です」
そしてあなた方の様子が伺える場所を探します
もちろん・・ジニョンさんもです
できれば若の到着を待ってあなた方を逃がす手段を講じたい・・
その方が危険が少ないかと。・・・若もその考えです
それまで決してご無理をなさらないように・・・」
本当のところ、僕達がどうなろうが・・彼には関係ないんじゃないか?
彼は今なら・・あの書類を手に入れて・・・そのままFBIへ向かうことができる
やっとここまで漕ぎ着けたんだ
自分の思惑通りに・・・事を進められるチャンスだ」
レオナルド・パクに伝えれば済むことだ。
まだ間に合いますよ・・
レイモンド・パーキンに決して書類を渡すなと・・・」
どんな手を使っても・・そう・・
例えレオナルド・パクに危害を加えてでも・・・」
そして彼はフランクに部屋の場所を教えると車を先に降りそこから離れた。
フランクはひとりで指定された場所へ向かい、入り口の前で一度目を閉じ深呼吸をすると
覚悟を決めてそこに足を踏み入れた。
《中へ入ったら・・右手に階段があります・・
そこを上がってください》
絶好の場所ですから・・》
《・・・・・必要があれば・・・》
フランクはソニーに指示されたように上階へと続く階段を上った。
指定された部屋までは二つの階段を上る必要があった。
静かな屋内にフランクが階段を上る足音だけが高く響いていた。
上階で待つ奴らはきっと、今近づいている足音が彼のものだと察しているだろう。
しかし彼は敢えて足音を忍ばせることをしなかった。
その両脇には二人の男が構えて立っていた。
彼女がいなければ・・レイモンド様が書類を持ってくる保証が無い」
自分自身もまた彼を信じていることに気がついた
「さあ・・それはどうでしょうか・・・とにかく・・彼女は書類と引き換えです」
そして一枚のドアで仕切られたもうひとつの部屋へフランクの肩を押しながら連れ立った。
「ジニョン!」
でも・・駄目よ・・フランク・・直ぐに逃げて・・」
目隠しで多分何も見えていないジニョンがフランクに向かって小声でそう言った。
僕は思わず苦笑してしまった
「フッ・・ジニョン・・・逃げられそうもないよ・・・」
「・・・そうなの?」
「おい! これじゃあ、逃げようにも逃げられないだろ!?
この仏頂面の奴ら・・部屋から出せよ!」
フランクはドアの向こうの兄貴分らしい男に向かって大声を張り上げた。
フランクの両脇にいた男達は部屋の向こうにいる男の指示で、彼をジニョンと同じように
椅子に括り付けた。
そうして・・・
奴らは僕を睨み返しながらしぶしぶ部屋を出て行った
「ジニョン・・・」
「・・良かった・・君が無事で・・・」
「奴らに酷いことはされなかったかい?」
何だか・・不思議に勇気が沸いてきた」
「あなたのせいじゃないわ・・・」
あんなに言ってたのに・・
ジョルジュにも・・レイにも・・言われてたのに・・
ごめんなさい・・ごめんなさい・・ 」
厳密に言えば・・・
あの男達のボスはレイモンドに他ならない
奴らの会話の中にレイモンドの名前が出ていることを
ジニョンがどれほど心配していたか・・・
レイモンドは君が思っているような男に・・・違いないよ・・・
ジニョンの近くへと移動させた。
それを引っ張った。
フランクもまた、彼女の瞳に逢えて胸が熱くなるのを感じていた。
ふたりはしばらく声も出さず、見つめ合ったまま苦笑いを浮かべていた。
互いに溜息をつきながらそれでも、今ここにふたりでいることに安堵を覚えていた。
「・・・そうだね・・」
ジニョン・・・君って人は・・・
何としても守らなきゃならない》
そう思っているのは僕も同じだ
《その笑顔の先には君が必ずいなければならない・・
それを忘れるなよ・・》
忘れるものか・・・
ジニョン・・・どうか・・・
フランクはさっき彼女の目隠しを取った時のように体を伸ばし、やっと届いた
ジニョンのまぶたに祈りを込めてそっとくちづけた。
君のこの笑顔が・・・
必ず僕の前に・・・
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mirageside-Reymond-20
mirage sidestory-Reymond-20
彼に殴られでもしたら・・・少しは心が軽くなっただろうか・・・
君達を利用した
ジニョンを・・・利用した・・・
君達に会うまでは本当にそれだけのものだった
そうなんだ・・・
最後までそうだったなら、どんなにか良かっただろう
「結果的に・・・君がソウルホテルを救ったことになる・・
だとしたら・・ジニョンの父上も文句はあるまい」
そんなこと・・・
君が望むはずもないこともわかっている
君という男が・・・
幼い頃に受けた大人の仕打ちに対して
どれほどの嫌悪を抱えているだろうこと・・・
誰にも負けまいと・・・
虚勢を張って生きてきただろうこと・・・
この私には痛いほどに理解できる
しかし
こうして私が君をわかった風に論じることも
きっと君は恥辱と感じるのだろう・・・
そんな君が愛おしい・・・
そう言ったら・・・余計に怒るか?・・・フランク・・・
しかし・・・これは・・・
どうしても君には飲んでもらわねばならない
君の・・愛するジニョンの為にも・・・
「若!大変です・・ジニョンさんが・・」
連打される部屋のチャイムと同時にソニーからの携帯電話から聞こえた彼の緊迫した声に
実際の私はかなり動揺していた。
しかし、フランクの尋常でない様子を前に、私は冷静にならざる得なかった。
私までもがうろたえるわけにはいかなかった。
私が・・・
彼らを必ず守りきらなければ・・・
「いいか・・決して逆上するな。これは大事なことだ・・よく聞け。」
君は決して手を血で染めてはいけない
それを恐れるほど、彼の目が怒りに震えていた。
頼む・・フランク・・
ジニョンの為にも冷静になれ・・・
あの子の笑顔は何としても守らなきゃならない
わかるな・・
その笑顔の先には君が必ずいなければならない・・
それを忘れるなよ・・
フランク・・忘れるな・・・
あの子の笑顔は君しか見ていないということを・・・
決して忘れるな・・・
いいな・・・
君はただジニョンを守れ
そして何があっても
ジニョンだけは逃がせ・・いいか!
「一人残らずお前達の息の根を止める・・
覚えておけ・・・
奴らだけじゃない・・・あんたもだ・・・
あんたも・・・決して・・・許さない・・・
何処へ逃げようが・・・必ず・・・」
ああ・・フランク・・そうしよう・・・
何処にも逃げはしない・・・
ジニョンにもしものことがあったなら・・・
その時は・・・
私は必ず君の手で・・・
・・・この世から姿を消そう・・・
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