2007/05/25 01:29
テーマ:【創作】タムトクの恋・番外編 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】高句麗王の休息

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☆お久しぶりでございます。
これは、先日書き終えた某サークルの創作の続きです。
この高句麗王タムトクを、私自身があきらめるために、あと少しここに書き続けることにしました。
ですので、これはひどく自分勝手なお話なのです。
ごめんなさい。
どうぞ、ご興味のある方、おつきあいくださいませ。

場面は、タムトクといっしょに高句麗に向かった倭の姫タシラカが、側室として城外に屋敷を与えられたところからです。
当時、タムトクには正室スヨンがいて、彼女との間に嫡子チャヌスが生まれたばかりでした。
一方、タシラカもタムトクとの間にワタルという8歳になる男の子がいるのです。
お家騒動の種まではらんじゃって、この先どうなるのかという感じのところから、お話は始まります。

★上の写真は、kkkf様からお借りした画像です。気持ちよさそうに寝ていらっしゃいますね。まさか、戦国時代みたいなものだから、これほどの安らかなお顔じゃなかったと思いますけどね・・・。

★少し手直ししました。

 

~~~~~~~~~~~~

 

 凱旋に酔いしれる沿道の人々、
歓呼の声、花びらの撒かれた街路・・・、
石畳の上を歩いたその足で、
お城に住まう正妃スヨン様とお子のお顔だけごらんになって、
あなたは、その日、まっすぐにこちらに来られたのでした。

『タシラカ、帰ったぞ!』

いつもよりも大きな声!

『はい、お帰りなさいませ。
ご無事で・・・。』

  私は、つい涙声になってしまったのです。
あなたは、私のほほを指でちょんとつつくと、
にっこりと白い歯を見せて、いたずらっぽくおっしゃいましたね。

『穢れたままなのだ!
腹も減っておるのだ!』

まあ、外遊びから帰ったワタルみたいに・・・。
はいはい・・、
私は涙をふいて、クスリと笑ったのでした。

 本当は、真っ先にお聞きしなければならないことがありました。

今日はお城でずっとお過ごしになるのだとばかり思っていましたわ。
スヨン様も、お帰りをお待ちだったのでは?
チャヌス様もかわいくおなりになったでしょうに・・。

でも、とても、そのようなことは口にできませんでした。
王としての務めを果たされた以外は、何をさておいてもここへ無事に帰ってきてくださったことがただうれしくて・・・。


私は自分勝手な女です、
タムトク様を独り占めしたいのです。

ごめんなさい、スヨン様、
ごめんなさい、タムトク様、
タシラカは冷たい女になってしまいました。

 心のうちをおし隠して、私はにこにこと笑っていいましたね。

『すでに、昼餉の用意は整っておりますわ。
でも、今、湯を沸かしておりますゆえ、
お食事はお体をさっぱりされてからということにされては?』

『いや、水がよい。』

『でも、お風邪をひきますわ。』

『よいのだ。』

『タムトク様、王たる方が井戸端で水を浴びるなど・・・』

 

 私はそんなふうに言いかけたけど、あなたはずんずん歩いていかれて、
井戸端で、白い長衣をさらっと脱がれましたね。
うしろに控えていた侍女たちが、剥き出しのあなたのお体にびっくりして、いっせいに小さな叫び声をあげました。

あわてて侍女たちに下がっているよう指示しましたが、
あなたはちょっと照れくさそうな顔をされて、おっしゃいましたね。

『どうも、戦陣から帰ったばかりで、勝手が違うな。』

白い歯を見せて、はははは・・・、と笑われましたね。

タムトク様ったら!

私は軽くにらみましたけど、そのすぐあとに、戦陣から帰るとはどんなことなのか、私ははっきりと思い知らされたのでした。


 引き連れてきた若いご家来を先に帰して、私があなたのお背中を流してさしあげたあのとき、そこに、まだ生々しいいくつかの矢傷を見つけて、私ははっとしたのです。
その上、あなたのお体全体に、まとわりつくような血の匂いも・・・。

『タムトク様・・』

それきり私はただ黙々と手を動かしていました。

そんな私に、向こうを向いたまま、

『・・・だいじない。』

あなたはぽつりとそうおっしゃいましたね。

薄く笑って・・・・。

 

 私は涙がこぼれそうでした。

 どちらに正義があっても、それは人と人とが殺しあうものなのだと、
そのむごたらしさ、残酷さを、そのきれいな目でご覧になって、
温かい手を血で汚して、
そうして、お帰りになったのだと・・・。
だからこそ、冷たい水で清めたかったのだと・・・。

 王であれ、私はひとりの戦士にはちがいない、いつだったか、そのようにおっしゃったことがありましたね。
そのとおり、私の愛するお方は、他の方々以上にすぐれて勇猛な戦士でございました。

 側室とはいえ、そんなお方の妻なれば、私は、その栄誉も罪も、ともに背負うものです。
いつぞや、倭で、あなたが私の罪をいっしょに背負ってやるとそうおっしゃったときのように・・・。

 
 いつしか手を止めたまま、私はまだ濡れているお背中にほほを寄せていました。
あなたは後ろに手を回して、私を抱きとめてくださって・・・、

『私が恐ろしいか?』

私は腕の中で、首を横に振りました。

『・・・恐ろしくとも、私はともに、あなたと行きます。』

そうか・・、あなたはふっと笑われて、

『そなたは、私の妻だ。』

はい、と私はうなずきました。


 そうですわ、タムトク様、あの時、私は正真正銘の、高句麗王タムトクの妻となったのだと思います。

 

 

 
 そして、今、あなたは、無遠慮に私の膝の上に頭を乗せて、つかの間の夢をごらんになっています。

秀でた眉、伏せたまぶたの下にはほのかに陰を作って、
くっきりと通った鼻梁、薄紅色の唇、その片端を心持ち上にあげて・・・。

やさしげなお顔だち、
なのに、あなたは勇猛果敢な高句麗王・・・。

 

久しぶりのセンピとの戦は、激しいものになったとか。

『捕らえた捕虜を、タムトク様自ら尋問されたんですって・・。』

目をきらきらとさせて、捕虜の尋問のむごたらしい様子を語ったアカネ殿・・・。

『協定を反古にしたのは向こうだ、そうタムトク様はお怒りになって、今回は容赦しないって感じだったみたいですよ・・・。ま、仕方がないですね。悪いのはあっちなんだから。』

 

 ・・・タムトク様、何があっても、私は、あなたとともに行きます。

 私はそう心の中でつぶやいてみたけど、今のあなたはそんな猛々しさはどこかに置き忘れたかのように、静かな安らぎの中にいらっしゃる・・・・。

かすかに聞こえる静かな寝息、いかにも心地よさそうなお顔で、
ようやく取り戻した静けさを身体の隅々まで楽しんでいるかのように。


 
 やがて、ちょっと寝返りを打とうとしたその拍子に、水を浴びたつややかな黒い前髪がひとひらはらりと額におちて・・・、
私は何気なく、手を伸ばしました。

あなたは、薄目を開けて、私をそっと見て、それから、ふっと笑みをもらすと、今度はごろんと盛大にお体を反転させて、それからまた夢の中に入り込んでいってしまいましたね。

まあ!タムトク様・・・、
どんな夢をごらんになっているの?
置いてきぼりにされて、ちょっとねたましいような、
それでいて、あなたのやさしい寝顔をもっと見つめてたいような、不思議な気持ち。


 あと一時もすれば、戦勝の儀式のために、お城からお迎えがやってくるでしょう。
そう、勇猛果敢な高句麗王に戻るまでのほんのわずかな時間が、
私に残されたタムトク様とのやすらぎのとき・・。

その間は、タムトク様、
あなたは私だけのもの、
そう思ってしまっても、いいですね?


 


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