2006/11/15 22:28
テーマ:【創作】短編 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

おしのび

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☆ちょっと噂を小耳に挟みまして、もうそわそわと落ち着かない日々を過ごしています。

それで、去年だったかな?『トウキョウの休日』っていうお話を書いたことを思い出しました。そうしたら、数日後、極秘来日っていうニュースがとびこんできて、それはもうびっくりしたものでした。

 

で、ここにその一部に新しく書き加えたものを追加して、アップしたってわけです。

 

そわそわしている方、よろしかったらおつきあいください。

なお、お断りしておきますが、これはフィクションです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 


チェジュ発の便が成田に着いた時、背の高いその人物に目を向けるものはほとんどいなかった。

 カジュアルというよりむしろくたびれたという表現に近いブルージーンズの上下、
穴が開いているのが目を引く真っ白いTシャツ、
帽子からはみだしたくしゃくしゃの長い髪、あごの辺りの無精ひげ・・・。
学生か、またはあやしい人物・・・、ともするとテロリストに間違えられてもおかしくない様子だ。
後ろを行く連れの男性は、さっきから笑いをかみ殺していた。
さすが、俳優だよな・・・、彼はそう思った。

 ともかく、そんなちょっとあやしい感じで『彼』は日本に潜入した。


 やがて『彼』は、入国手続きカウンターに歩み寄ると、パスポートを差し出した。

 担当の係官は、この道20年のベテランだ。
あやしい人物でも、彼は臆することなく無表情のまま目の前の人物をじろりと見た。
何となくひっかかるものを感じた彼は、パスポートに目をやる。

そこに書かれたハングルと英語表記のサイン、それから添付してある写真をたっぷり1分ほど見てから、顔を上げた。
目の前のあやしい男性をじっと見る。

 冗談だろう?もう少しましなウソをついてくれよ・・・。
彼はそう思ったが、もう一度パスポートの写真と目の前の顔を見比べた。
 
 と、目の前にいるあやしい『彼』はにっこり笑う。
それから右手の人差し指を唇にあてた。
シー・・・・。

 一瞬係官はあっけにとられた。が、彼もプロだ、ベテランだ。
元の表情に戻ると、なかなかの発音の英語で言った。
「疑うわけじゃないが、ちょっとここにサインをしてみてください。」
ぺらぺらの白い紙とペンを差し出す。

それから、さらに続けていう。
今度は、少し口ごもるのを抑えられなかった。
「・・・あ、サインのあとに、『ミチコさんへ』って書いてね・・・。
つまり、私の妻なんだけど・・。あ、よかったら、でいいから・・・。」
 
 その言葉を聞いて『彼』はうなずくと、後ろをふり返った。
連れの男性に何事か話しながら、手を差し出す。
相手の男性も心得た表情でうなずくと、手に持ったビジネスバッグの中から色紙らしいものを取り出し、
そのあやしい『彼』に渡した。

ラッキー♪ 色紙、もってるのね♪
係官は、ついうれしそうな顔をしてしまった。
その顔に、『彼』はにっこりと笑いかけると、日本語で言う。
「ナイショですよ・・・。」

さらさらというペンを走らせる音・・・・。
もう疑う余地もなかった。
ああ、ミチコが喜ぶだろうな、・・・あいつに、なんて言おう・・・。
係官はわくわくする気持ちを抑えて、いつもの顔を必死で作っていた・・・。

 やがて「入国審査」が終わり、係官は規定どおりの書類と、それから色紙を受け取った。
思わずにんまりとしてしまう。

今朝ちょっとまずいことになったが、これであいつの機嫌が直るな・・・。
それにしても、最後に「ナイショですよ」なんて・・。
係官はくすくす笑う。
隣の国の王子様なのよ、普通の人じゃないの・・、なんてあいつが騒いでいるわりには、
ぶっちゃけた、シャレのわかるおもしろい男じゃないか・・・。
まあ、これで当分の間、あいつに対して大きな顔ができるってもんだ・・。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「だから~、本物だったんだってば~。
君はそんなこと言うけどさ、これでも必死だったんだよ。
ミチコのためだって思ったからさ~。」

ヒロシは鼻の頭に汗を浮かべてそう言った。

「ふうん・・・、ほんとっぽいけど、でもうそくさいわ。
あなた、今朝の仕返しをしようとしてるんでしょう?」

「そんなんじゃないって!」

「確かに、今朝は私もわるかったって思ってるわ。
でもさ、うっかり寝坊して、朝ごはん作る時間がなかったくらいで、あんなに怒ることないじゃない・・・。
私だって、わるいな~って、ちょびっと思っていたのにさ。
それを根に持って、こんな手のこんだ仕返し考え付くなんて、インケン!」

「そんなんじゃないって・・・。
今朝は少しいいすぎたかもしれないと思っていたんだ、俺も。
そしたらさ、目の前に立っていたのが、ミチコの好きな『彼』だったから・・・・。」

ヒロシは鼻の頭の汗をぬぐった。

「ほんとは仕事中にそんなことしちゃ、いけないんだけど、でもミチコのためだって思ったからさ・・・。」

「でも、『彼』は今撮影中なんだよ。
やっぱり、あなたの勘違いじゃないの?
だいたい、あなた、思い込みの激しいところがあるからさ。」

「そんなんじゃないって・・。
ちゃんとパスポートで確認したって言っただろう?
そこに名前がちゃんとハングルと英語で書いてあったんだから・・・。」

最後のほうはだんだん小さな声になる。
もしかしたら、あれはにせものだったのかな?
いやいや、あれは本物だった!

「だから、それは同姓同名ってやつじゃないの?」

そこまで言われて、ヒロシもむかっときた。

「じゃ、なんで、サインしてみてっていったら、こんなふうにサインしてくれるわけ?」

「そこがあやしいんじゃない、いかにも本物らしく見せようとして、『ミチコさんへ』なんて書いちゃって・・・。
でも、残念だけど、本物の彼なら、『お元気で』とかなんとか書きそえてくれるものなのよ、あなたは知らないだろうけど・・・。」

そんなこと知っててたまるかよ、そう思いながら、だんだん自信がなくなってきたヒロシは、半分やけになって言い放ったのだった。

「いいよ、君がそういうことを言うのなら、兄貴んとこのミチコにあげるからさ。」

「あ、あら・・、ちょっと待ってよ。お兄さんとこのミチコちゃんは、『彼』の大ファンだけど、まだ幼稚園生じゃない!
・ ・あの、これ、ご近所のサエコさんに見せてみるからさ。
あの人、三年もカジョクやってるから、すぐにわかると思うのよね。」

その言葉に、ヒロシはキレてしまったのだった。
10年連れ添った夫よりも、近所のファン歴三年のオバサンのほうを信用するのかよ、と。

「もういい!ぜったいに、兄貴んとこのミチコにやることに決めた!」

「ええっ!そんなこと言わないでよ。
・ ・・私、一度も言ってないよ、偽者だなんてさ、
かもしれないって言っただけじゃないよ~。」

「いいや、言った!もう、やめた!だいたい、これは俺がもらってきたんだからな。
俺のプロとしてのメンツにかけて、本物だって思ったから、だから君のために頼んだんじゃないか!それを君は・・・・。」

「なによ!泣かなくったっていいでしょ!
いいわよ!そんなもの、私だっていらないわ!
幼稚園通ってるミチコちゃんなら、彼のよ、って言えば、喜ぶでしょうよ!
たとえ、にせものでも!」

おまえは~!
もう、知らないぞ、あとでぎゃーぎゃー言うなよな!

ヒロシは、妻に絶対に教えてやらないと思ったのだった。
『彼』がくしゃくしゃの長い髪をしていたとか、
くたびれたジーンズの上下に、インナーは穴あきの白いTシャツだったとか、
にっこりと笑った笑顔が「とびきりステキ」だったとか、
『ナイショですよ』と、シーっと口元に指をあてたとか・・・・。

それにしても、とヒロシは思った。
兄貴んとこのミチコにも、ほんものじゃないわよ、おじちゃん、なんて言われちゃったりして・・。

 

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☆このときのお話では、『彼』は、空港を出た後、「テツコさん」に会いに行くのですが、今回はどうなのでしょう?


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