タムドク、王の星を持つ者
タムドク様、
9話、拝見させていただきました。
わたくし、
何と申し上げていいかわかりません。
ひとことでは言い表せそうにない、
不可思議な気持ちでございました。
***********
小さな画面にあらわれた、
馬を駆けさせる精悍な鎧姿。
なびく赤い旗。
馬のいななき。
兵士たちの雄たけびの声。
切れ長の澄んだ目。
はらりと額にかかる前髪。
秀でた眉。
口元にかすかに浮かぶ笑み。
広い肩。
厚い胸。
宮中にあるときは、
すぐれた資質も激しい思いも奥深くとじこめ、
ひとり耐えて、何も語らず・・。
うつむいた孤独な横顔、
蝋燭の明かりほのかにかすかに揺れ、
黒々と陰を作る。
私は知っている。
あなたは、
確かに、王の星を持って生まれた方。
ひとたび城壁を飛び越えれば、
行き交う人々に親しくまじわり、
着飾った女たちをからかう。
酔いにまかせて吹く、澄んだ笛の音。
まなざしははるか遠くに、何を見つめている?
そう、まさに、
あなたは、
王の星を持って生まれた方。
けれども、いまだ、
王の道のけわしさを、
知らなかった方。
***********
9話、転換のとき。
危機に瀕したあなたは、若者たち数人を引き連れて、
援軍を求めて城にやってこられた。
城壁の上には、火矢で武装した兵士たち、
背後のうっそうとした林には、
ヨン・ホゲ率いる覆面軍団がうごめいている。
まさに挟み撃ちになりそうな、そんな危険な状況。
そして、タムドク様、
案の定、あなたは格好の標的となってしまわれた。
覆面軍団からがんがんと矢を射かけられ、
付き従う者たちはいとも簡単に倒されてしまった、
彼らの太子を守るために。
傷ついた仲間たちを助け起こしながら、
あなたは、
ああ・・、と、
そんな表情をされましたね。
それから、やおら、立ち上がり、
自分ひとりを殺せとばかりに
敵に向かって行かれた・・。
まさに正義感あふれる、勇気ある姿。
画面いっぱいに広がるすがすがしさ。
タムドク様、
そんなところ、大好きです。
でも、
わたくしは、大きな声で叫んでしまったのです。
何と、安易な!
おやめなさい!と。
結局、数人の若者が命を落としてしまいましたね、
彼らの太子を守ろうと・・。
そして、父王までも!
そう、
ただの父親の愛からというだけでなく、
星を持って生まれた息子を守るために!
息子の愛する人さえ、過酷な運命に巻き込んで・・・。
************
正義と勇気だけでは、人を守ることはできない、
王たる者は、何より自分自身の命の価値を知れ、
ひとつ間違えば、つき従う者たちが命を落とすこともある・・。
自らの命の重さ、
生きることの、
生きてあり続けることの価値、
それが、ひいては付き従う者たちを守ることになる・・、
そんなことを、あなたは思い知らされたことでしょう。
そう、文字通り、
身を切るような痛みとともに!
四神のひとつ玄武の目覚めも、
最後に見せた涙も、
そんな痛みの、当然の結末だったのだと。
9話。
まさに、分岐点。
タムドク様、
ここから、
あなたの高句麗王への道が始まるのですね。
ただのひとりのやさしい若者から、
王の星の元に生まれた者としての・・・。
愛と憎しみ。
別れと葛藤。
様々なものがないまぜになって、
あなたを『王』の座へと導いていくのでしょう。
その道程の険しさ、
流れる血の色のあざやかさ、
涙の深さ、
苦悩の重さ。
わたくしは、そのひとつひとつに
しっかり目をあてていこうと思います。
************
『スペシャル』で放送された中に、出陣前の兵士たちを前に、タムドクが檄をとばしているシーンがあったのを覚えていますか?
あのとき、彼は、居並ぶ兵士たちを前にこんな言葉を口にしていました。
「王として命じる、
誰も死んではならない!」
ひとりひとりを見据えたまなざしの強さ。
かけられた言葉の力。
まさに、王たる者でした。
それは、これまで目にしてきた愛すべき太子タムドクとは、
ちょっと違うように思えたのです。
[1] |