髪をぴっとつまんで・・
仕事の帰り、いつものようにちょっとけだるい気持ちで、私は電車に飛び乗ったのでした。
と、入り口付近に立った私の耳に、飛び込んできた会話が・・・。
「え?なに、それ?今、BSでやってるんでしょう?それをまた映画館でも見ようっていうわけ?」
「そうだよ。」
平然とした声に、あら?とふりかえれば、20代後半くらいのちょっとかっこいいOL風の女性が、お仲間らしき女性に淡々とした顔で答えているのが・・・。
「それが、髪をぴっとつまんでいてね、昔の人の格好してるの。」
「へえ~」
「かっこいいのよ!」
「へえ~。・・・あの、撮影中に怪我したっていってたのでしょう?」
「そうそう。それでね、そのロケ地に行くツアーがあるんだけどね、それが・・・・」
私がどんな思いで、その話を聞いていたか、おわかりでしょうか。
バッグの中から携帯を取り出して、髪をつまんだかっこいいタムドクの待受け画面を彼女たちに見せたいなどという衝動と、私は必死に戦っていたのでした。
さぞ、あやしいおばさんがいると思ったでしょう。いやいや、もしかしたら、同じカゾクの匂いがしたでしょうか?
ともかく、私は耳ダンボ状態でそこに立っていたんですけど、残念ながら、やがて電車は乗り換えの駅に着いてしまい、私は心惹かれながらも電車から降りなければなりませんでした。
このドラマを見て、若いファンが増えているという話を時々聞いてはいましたが、正直言うとそれってどうなのかなあ・・、なんて私は思っていました。
だって、まだハイビジョンなんてシロモノで、日本のほんの一部の人たち向けに放送されてるだけじゃないですか。私は会社で広報宣伝活動にいそしんでいますが、みんながみんな、そのドラマのことに興味を持ってくれてるわけじゃないし、ドラマのタイトルもそれほど広まっているわけじゃないと思っていました。
だから、思わぬところで、思わぬ会話を耳にして、なんだかすごくすごくうれしかったのです。若い人の中にも、ちゃんと見る目のある人はいるんだなと。当たり前ですけどね。
当たり前のものを、素直に、『いい!』と言える時代じゃなくなってきたような気がして、いろんな意味でこのごろどうなってるのかしらねえ・・、なんて思っていたんです。
4月になったら、春になったら・・、そう思っているのは、きっと私だけじゃないですよね。
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