2008/10/08 12:03
テーマ:歳月 カテゴリ:趣味・特技(その他)

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もう25年も前の話です。私は看護専門学校に通うかわいい(?)学生でした。

学校の授業には病院の医師によるものがいくつかありました。しかし、臨床で働く医師たちは忙しく、休講が時々ありました。授業がなくなるというのは学生にとってうれしいことです。

私には待ち焦がれていた医師の授業がありました。その医師の授業は2回に1回は休講になっていましたので、授業前の休み時間になると教室の窓から校門を眺めて、今日はいらっしゃるかと車の出入りを見ていたものです。
病理医でした。顕微鏡で細胞を覗いて診断をする方です。
容姿がかっこよいわけでなく、当時36歳でしたから、学生の私からみるとかなりおじさん(大人)でした。なのになぜ、その方に憧れたのか・・・今でもよくわかりません。ただ会いたかった、話をしたかったのです。


結局、その医師の授業は予定の半分ほどで終了になってしまいました。私は一大決心をし、友を誘って病院まで医師を訪ねて行きました。授業中に「訪ねて来てもいい」とおっしゃったその言葉を信じて!
連絡をせず勢いで出かけてしまいました。
実習をほとんどしていないころのことで、どこに行けばいいのかもわかりません。とりあえず病院の玄関でここに来た理由を話すと、総務に行くように言われ、またそこで説明して・・・。
しばし待っていると、事務の方が病理検査科の場所を案内してくれました。

恐る恐る入ると医師は顕微鏡を覗いていた顔をこちらに向けてくれました。でも、忙しそう・・・。今考えると無謀な学生でしたね。病理医は手術中の迅速診断をしていたと思います。その診断によっては手術中の患者の術式さえかえてしまう仕事です。


私は会いたかった人を目の前にして、何を話していいやらわかりませんでした。部屋の椅子でしばらく座ることになった私たち。
部屋を見渡すとたくさんの本がありました。診断に必要な難しそうなものばかりでしたが、そうでもないものもちらほら。その中の一冊を手にとって見ていると・・・
「もう、整理しなくてはいけないからあげるよ。」と言ってくれました。

医師はアフリカに行くつもりであることを話してくれました。実現までようやくこぎつけた彼の夢のようでした。野口英世かシュバイツァーか。早く行きたいのだが、後継者がなかなか決まらずに行けないとか。



その医師が病院を去って2ヶ月ほど経ったある日、私の二十歳の誕生日のことです。私と友は新しい病理医の元を訪ねていました。その時、医師に電話がはいりました。
アフリカであの医師が亡くなったと。うそ!
マラリアに罹患したとのことでした。病理解剖をしたら脳まで原虫が入っていたとか。
ようやく行けることができたのになんてことでしょう。あわてて出かけて予防接種をしなかったのでしょうか。わかりません。


先生にもらった本が形見のようになってしまいました。

デズモンド・モリス著(石川弘義訳)の『ふれあい―愛のコミュニケーション』という本です。
タッチングの大切さについて書かれています。人は誰かに触れてもらいたい動物のようです。

D・モリスは動物の行動学を研究した方で、「裸のサル」という本が有名だそうです。


本をいただく時、先生にサインをお願いしました。そうしたら、表紙裏に左のような言葉を書いてくれました。

当時の先生の年齢を超えた今の私ですが、まだ意味がわかりません。

    ひとにさわられることと
    ひとからさらわられることとのあいだで
    ひとは自分を「愛」にもって行くこと。
    自分に「愛」がないのではなくて
    「愛」に居て、自分をひとの中の「愛」にもって行くこと。


人は誰かにふれられることやふれることを求めているそうです。
触れることは人間のコミュニケーション手段で、親密度によって触れ方がちがってくるようです。
また、触れられることは成長にかかせせず、心身の癒しにもなるようです。もし、触れられる機会のない場合、代替としてリフレクソロジーとか美容院とかタッチのプロにふれてもらうこともあるようです。(よく読み込んでいないのでうまく説明ができません。)

私の仕事は病気の人にたくさん触れる仕事です。きっと先生の言葉には看護師になろうとしていた私へのメッセージが入っているのだと思います。いつか解けるでしょうか。。。



タイトル下の写真は生まれたばかりの姪の手です。いろんな人に触れてもらって大きくなりました。お姉ちゃんになった彼女は弟の手を引いてあげられるようになりました。



突然昔のことを思い出したのは、さだまさしさんの♪風に立つライオン♪を久しぶりに聴いたからです。

http://www.youtube.com/watch?v=VyaWPCojkpk

この歌は宮崎の外科医・柴田紘一郎氏の実話から作られたそうです。機器に囲まれてバタバタと仕事をしていると、時々自分の足元がわからなくなることがあります。これを聴いてまたがんばろうと思いました。


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