2010/12/21 15:57
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-22.熱いくちづけ

Photo


      

    

  

 

collage & music by tomtommama

 

story by kurumi

 






フランクは自分が、ジニョンとテジュンの前からまるで逃げるように
立ち去ってしまったようで、情けなく思っていた。

自分の部屋の前に車を戻した後、部屋には戻らず、今来た途に歩いて引き返した。
ユンヒの部屋へとゆっくりと坂を下りながら、幾度もため息を吐く自分を
フランクは寂しく笑った。

彼が寝室に入ると、彼女はまだ静かに眠っていた。
彼はユンヒとの約束通り、そばにいるつもりで彼女が眠るベッドの横に
小さな椅子を運び、座った。

しかしフランクはユンヒを気遣いながらも、つい今しがたジニョンと
激しく言い争ったことが頭を離れず、心穏やかでいられなかった。
彼女の態度に思わず大人気なく感情をぶつけた自分にも、ほとほとうんざりだった。

≪どうして僕は彼女にあんなにも腹を立ててしまうんだろう
 どうしてああいう言い方しかできないんだ?
 いつもそうだった・・・
 最初からそうだった・・・出逢ったあの日からずっと・・・
 彼女の一途さに、彼女の奔放さに、
 彼女の全てに腹を立てて・・・僕はいつも怒っていた・・・
 本当はいつも・・どこでも・・・愛しくてたまらなかったのに・・・≫
 
フランクは仕事の時や、他の人間に対する時と違って、
ジニョンへの感情が上手くコントロールできなくなる自分が
情けなくて仕方なかった。




夜が明けて、出窓から差し込む日差しに誘われるように、
フランクは閉じていたまぶたをゆっくりと開いた。
そしてベッドに視線を移すと、ユンヒがこちらを黙って見つめていた。

「起きてたの?」 

「ええ・・・」

「いつから?」

「少し前から」

「いつの間にか寝てしまったんだな・・・
 起こしてくれれば良かったのに」

「見ていたかったから・・」

「何を?」

「美しいものを・・・」 ユンヒはフランクをしっかり見つめて言った。

「それは光栄だな・・」 フランクはふっと小さく笑った。

「昨日は・・・ごめんなさい」

「また謝るの?」

「それしか・・あなたに言える言葉がありません・・恥ずかしくて・・」

「気持ちは落ち着いた?」

「・・・どうして」 ユンヒは頷きながら、そう聞いた。

「ん?」

「どうして、
 こんなに優しくして下さるんですか?」

「どうしてって?」

「あなたって・・・凄く怖いかと思うと優しくて・・
 優しかったかと思うと・・」

「そんなに怖いの?・・僕は・・」 フランクはそう言って眉を下げた。

「・・・・もう怖くありませんけど」

「そう?」

「でも・・あなたが朝までいて下さっているとは思わなかった・・・
 さっき目が覚めて、どんなに驚いたかわかります?」
ユンヒは少しおどけたように笑って言った。

「・・・そばにいると、約束したから・・君と・・」
フランクはユンヒを温かい眼差しで包み込んで、そう言った。

「・・・・・」

「ふっ・・昨日君にオッパと呼ばれて、少しだけ、
 お兄さんというものに戻ってみたくなったのかも・・・」

彼は遠くを見つめるようにしてそう言った。

「お兄さんに・・戻る?」

「ああ、僕にはね・・君と同じ年位の妹がいるんだ」

「そうですか・・・妹さんは今どちらに?」

ユンヒがそう訊ねると、フランクは一瞬寂しそうな顔をした。

「あ・・何か、いけないこと聞きましたか?」

「あ、いや・・・何処にいるのか、わからないんだ・・・
 生きているのか・・死んでいるのか・・・それさえわからない
 君を見てるとね・・・いつも思ってしまう・・・
 元気にしてるだろうかって・・
 君のように傷ついてないだろうか
 寂しい思いをしていないだろうか・・・そう思ってた
 そうだな・・君と出会ってから・・・
 余計にそんなことを思うようになった気がする」

「あ・・ごめんなさい・・」
少し俯き加減に、ゆっくりと妹のことを語るフランクが余りに寂しげで
ユンヒは適当な言葉を探せないまま、また彼に謝っていた。

「はは・・また、ごめんなさいか・・」

「ふふ・・・」




その時、部屋の玄関から呼び鈴が鳴り、鍵が開けられる音と共に
ジニョンの声が聞こえた。
「失礼致します、ホテル支配人です・・入っても宜しいでしょうか」

「どうぞ・・」 ユンヒが答えた。

ジニョンはメインルームのドアをゆっくり開けて、ワゴンを引きながら現れた。

「お客様・・・お邪魔致します」

部屋に入ったジニョンは、その部屋から開かれた寝室のドアの向こうに
こちらを振り向いたフランクを見つけて一瞬驚いた顔をした。

フランクは表情を変えることなく、ジニョンからゆっくりと顔を背けた。

「あ・・あの・・・朝食をお持ち致しました。」

「ああ、ありがとうございます」 
ユンヒはベッドの上で座ったまま答えた。

「でも・・あの・・おひとり分だけしか・・その・・
 お客様の分も直ぐにお持ち致しますので
 しばらくお待ち願えますでしょうか」
ジニョンはフランクに向かってそう言いながら、テーブルの上に
料理を並べ始めた。

「あ、いや・・僕は結構です・・心配には及びません」
フランクはジニョンの顔を見ないままそう答えた。

「そうですか・・・あの・・
 お食事はこちらのテーブルに並べさせて頂きましたので
 ごゆっくりお召し上がり下さい・・
 後でまた食器を下げに参ります
 では、これで失礼致します・・
 何かございましたら何なりとフロントの方へ・・
 のちほど、総支配人がご挨拶に参りますので」
ジニョンは今度は少し気持ちを落ち着けて、支配人然と頭を下げた。

「ありがとうございます・・
 ご心配お掛けして申し訳ございませんでした」
ユンヒはジニョンに向かってそう言いながら、フランクとジニョンの
互いを意識したように無視する様子がとても気になっていた。


フランクはというと、ジニョンが部屋を出て行く姿に背を向けたままだったが
心は間違いなく彼女に研ぎ澄まされていた。

そして彼女が閉めたドアの音に、目を閉じ一度俯いた彼が、
次の瞬間、おもむろに席を立ちドアの方へと急いで向かった。


フランクが部屋から外へ出ると、ジニョンはまだその場所にいた。
互いに言葉を探せず、しばらくは睨み合うように見詰めていた。

ジニョンの方が先に彼の強い眼差しに耐えられなくなって、
逃げるように彼の元を離れた。
フランクは彼女のその態度にどうしようもない苛立ちを覚えながらも、
心の赴くまま逃げる彼女を追いかけた。


建物の中に逃げ込んだジニョンが行き止まりまで追い込まれ
結局逃げた相手のフランクと対峙する結果となった。

「驚いてないわ。」 
ジニョンは行き止まりに背を向けてフランクに向き直ると
突然そう言った。

「・・・・・・」 フランクは無言で彼女に近づいていた。

「あなたが彼女のお世話をしていること昨日聞いてたし・・」

「だから?」

「だから・・・さっきは驚いたわけじゃない・・
 ただ・・朝もいるとは思わなかったけど・・」 
ジニョンの最後の言葉は殆ど聞き取れないほどに小さくなった。

「昨日・・」

「昨日のことごめんなさい!行けなかったこと・・」 彼女は彼の言葉を
強い口調で遮ったが彼はそのことにお構い無しに続けた。

「どうして待っててくれなかった?」

「だから・・最初から行かなかったって・・」

「僕が必ず行くこと・・わかってたでしょ?」

「だから・・」

「わかってたでしょ!」 フランクはジニョンに対して一歩も引かなかった。

「何よ!あなたっていつだって・・横暴!」

「君が正直じゃないからだ」

「正直って?」

「行ったでしょ?」 フランクはジニョンを射るような目で見た。
「約束通りに・・・君は来てくれたんでしょ?あの教会に」

「・・・・・」
「言ってごらん?正直に。」

フランクの諭すように問う眼差しに圧されて、ジニョンは観念した様に口を開いた。

「ええ!行ったわよ!だから何なの!あなたは来なかったくせに!
 私より、彼女の方を・・」

「だから・・嘘を言ったの?」

「・・・・・」

「彼女とのこと・・誤解はしてないだろ?」

「誤解?」

「ああ・・彼女は・・」
「彼女・・・ユンヒさん・・キム会長のお嬢様だそうね」

「調べたの?」

「ええ、昨日の事件の後、テジュンssiが・・・」

「そう・・」

「彼女もこのホテルを調べてるの?
 彼女・・すごい子ね・・
 ホテルの御曹司のヨンジェに近づいて
 父親が買収しようとしているホテルに泊まって・・
 あなたと一緒に内部調査?
 彼女がヨンジェで・・あなたが私・・そういうこと?」


    ・・・だめ・・・


「彼女をそんな風に言うな・・・」

「庇うの?・・それとも同じムジナだから?」


    ・・・こんなこと・・・言ってはだめ・・・


「あの子は、父親の仕事とは関係ない
 ただ傷ついているだけだ」

「そう・・・随分と彼女がわかるのね」


    ・・・こんなこと言いたいんじゃない・・・



「何が言いたいの?」

「何も?」

「そんなことより、僕が何故、ホテルを買収しようとしているか
 その理由は聞かないの?」

「その買収で数千ドル、いえ数億ドル?
 とにかく莫大な利益が入るのよね。」


    ・・・違うわ・・・


「本当にそう思ってるの?」
「じゃあ、何だって言うの!」

    ・・・そうじゃなかった・・・本当は・・・

    あなたを信じる何かが欲しくて・・・

    あなたに逢いに行ったのに・・・


「僕が!何の意味も無く、このソウルに来たと・・
 ただこんなホテルの為だけに来たと・・
 本気で思ってるのか!」
フランクの声が荒々しくなって、ジニョンは一瞬びくりと縮み上がったが、
決して怯むまいと胸を張った。

「ええ!あなたは有能な狩人だもの・・
 狙った獲物は逃がさないんでしょ?
 ホテルも!・・・ユンヒssi・・も?」

ふたりは互いの言いようのない怒りをコントロールできないまま
睨み合うしかなかった。


「もういい」フランクは吐き捨てるように言った。

「何がいいのよ・・はっきり言ったらいいじゃない!」


    ・・・私って・・・本当に素直じゃない・・・


「もういい!」
彼は大声で彼女を怒鳴りつけながら彼女ににじり寄った。

そして彼女を突然壁に押し付けると、彼女の髪を両手で鷲掴みにして
その頭を壁にグイと乱暴に押し付けた。
その勢いで彼女の顎が上がり、フランクとの視線が無理やり交わった。

「いいか・・・良く聞け・・・
 ホテルは・・必ず僕のものにする
 誰が何と言おうと・・・君がどんなに僕を非難しようとだ
 どんな手を使っても・・・
 僕は必ず・・自分の思うように肩をつける」

そして彼はそのまま彼女の唇を自分の唇で強く塞いだ。
深く重なった彼の唇が、彼女の心までも奪い取るかのように
彼女の呼吸を執拗に混乱させた。
彼女は彼の有無を言わせぬ行動にたじろぎ、彼の胸を押し返しながらも
その激しく熱いくちづけに脱力していく自分を感じていた。
次第に彼に酔っていく自分を確認していた。


そして彼の唇は彼女が彼に落ちたことを見計らったかのように
その瞬間にあっけなく離された。
その時彼女は“離れたくない”と叫ぶ自分の声を心の中に聞いた。

フランクは彼女の髪に押し入れた長い指をそのままに
彼女の鼻先でその目を睨み付けたまま言った。
「いいか・・必ず・・必ずだ。
 君はそこで・・・待っていればいい。
 僕が行くまで・・・待っていればいい。」

そう残してフランクはきびすを返し、彼女の前から冷たく立ち去った。


ひとりそこに残されたジニョンはしばし呆然と立ち尽くしていた。
激しいまでの彼のくちづけに、小刻みに呼吸を繰り返して、
その息苦しさから自分を救い出そうと懸命だった。

ジニョンは彼の手によって乱された髪の先で辛うじて止まっていた
リボンを乱暴に引き抜き、黒髪を肩に落とした。



      「何よ!


          ・・・何よ・・・」・・・


























[1]

TODAY 331
TOTAL 597276
カレンダー

2010年12月

1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
スポンサードサーチ
ブロコリblog