2007/09/24 19:12
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

チュンサンとタムドクに見るもの(一部ネタバレ?)

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急に思いついて、『冬のソナタ』を観にひとり映画館に出かけた。
いつものようになじみの深い音楽、大スクリーンいっぱいに広がる雪景色と若い恋人たち。
すぐに引き込まれた。
同じように『ホテリアー』を大スクリーンで観たときの感動とはまったく違う種類のものが、むくむくと沸き起こった。
まるで、魂の底から揺さぶられているような気がした。


 『僕のお父さんはだれ?』
 ご存知、1話に出てくる、母ミヒへのチュンサンの問いかけである。
その真剣なまなざしに、若者らしい苦悩の深さが十分うかがえるのに、何もかもわかってるはずの母は、亡くなったのよ、としか答えようとしない。

父らしき人の姿を追い求める中で出会ったユジン。
思いがけなくも見つけた初恋。
それは、まだ運命の出会いなどと知るはずもない、あわいものではあったけれど、
彼の中にくっきりとあざやかなものを残す。
同じように、ユジンの中にも。

やがて訪れるいくつかの悲劇のあとで、ともかくもひとつの結論が出ることになるのだが、それはまだ遠い先のことだ。
冬景色の透明な空気の中で展開する、ふたりのしあわせな、思い出深い、いくつもの美しいシーン・・。

 それでも、運命は不可思議な仕掛けを用意する。
その流れの中で、彼、チュンサンは問いかける。
『僕のお父さんはだれ?』と。

そして、それは、若い彼の、自分自身への問いかけでもある。
『僕は何者なのか?』という・・・。

 

 チュンサンと同じ年頃のタムドクもまた、心の中に葛藤を抱えている。
 チュンサンとは異なり、タムドクの側にいるのは王である父だ。
その父に、幼いころからかたく命じられていることが、彼にはある。
王たる証である出生の秘密も秀でた能力も、すべてを封印して弱き者としてふるまえ、と。

 それは、息子の命を守るという愛情のためだけでなく、現王としての使命感から生まれたものである。
言い伝えの通り、この息子が選ばれた者であるなら、国のために何としてでも王位につけなければという・・・。

 だが、この父には、息子の心の中のさびしさまで見て取る余裕はない。
父のこの言葉は、タムドクの手足を縛めるものでしかない。
だから、タムドクは微笑むしかない。


 実は、彼にはわかっている。
この王宮には、自分の本当の姿を理解している人間がひとりもいないのだと。

たったひとりの友達だったホゲは、王位をめぐる争いから敵対する関係になってしまった。
幼いころから身近な存在だったキハは、なぜかはわからないが、消極的な反応しか見せない。
武道の師である将軍は、打ち解けて話をするという存在にはなりえない・・・。


自分のもって生まれた力を外に向かって示すことの許されない彼、タムドク。

孤独な王子は、城を抜け出して市井の人々に交わることで、さびしさを紛らわせるようになる。
猥雑で雑多な人々が行き交う場所、命のやりとりなど日常茶飯事な世界。
でも、少なくともそこには本音で生きている人々の暮らしが確かにある。

そして、そこで、運命に導かれるように、タムドクもまたスジニに出会う・・・。


その過程で、タムドクもまた、『自分とは何者か?』ということを繰り返し問いかけているのではないか。
今までも、これからも。


そして、チュンサンとは異なる方法で、見事、タムドクは彼らしい決着をつけるのだと思う。
父による縛めを自らの手で解き放ち、その向こう側に大王としてゆくという選択を・・・。

 

大スクリーンに映し出されたチュンサンの姿の中にタムドクを見たのは、『目がねなし』という点が共通で、その面差しが似ていたからにほかならない。
だから、たとえば、ウォンを、ドンヒョクを、チャヌを思い起こしてみれば、どの若者も自分が何者なのかということを繰り返し問いかけていたのだという気がする。


思えば、ぺ・ヨンジュンという俳優は、自分自身にもそんなことを問いかけながら、ずっとそれぞれのキャラを演じようとしているのかもしれない。

 

 映画館を出てからふらりと立ち寄ったカフェで飲んだオレンジジュースは、果汁100パーセントだとのことだった。
最初から最後まで引き込まれるように観た映画のあとだったからか、または、チュンサンという若者のみずみずしい感性に触れたせいか、そのフレッシュな色も香も、まさしく混じりけのない南カリフォルニアの果実そのものだった。


 たぶん、ぺ・ヨンジュンという俳優も・・・。


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