野良猫のサッカー本能
クリーニング屋が自分たちにくれたエサをサッカーボールと勘違いしているのか、
暇さえあればドリブルの練習だ。
どうもヒボンとカムニャンには、生まれ持ったドリブルの才能があるのかも知れない。
でなければ、昨夜テレビでやっていたサッカーの試合を
窓の外からこっそりのぞいていたのかも。 #1 じゃあ、そろそろ始めるかな~。 #2:右足でこうやってけって…
#3:どけどけ~いくぞぉぉ
#4:キャッチ!(これは何だって?ゴールキーパーですよ…) #5:(カムニャンが横からみながら)あのゴールキーパー、ボールを食べようとしてる!
#6:くっそぉ、あいつのせいで、こぼれちゃった! #7:あっ、すきまに落ちて、と…とれにゃい… #8:どうやってとりだそう…? #9:もう一回チャレンジだ。手を伸ばしてぇ…やっぱりだめかにゃぁ。
#10:えーい、知らないや!どうにでもにゃれ! #11:(カムニャンがさっきからずっと見ている)ヒボンは何をしてるのかにゃ?
サッカーやる気あるのか? #12:ったく、僕がドリブルの真髄を見せてやる! #13:こうして右足でゆっくりとポンッとけって… #14:もういちど左足で受けて…キック! #15:前にすすすっと!ボールを追いかけて… #16:背を向けてディフェンスを一匹かわして…華麗なるフェイント! #17:(カムニャンが)見たか?
(ヒボン)いや、見てなかった。じゃあ、ボク、忙しいから…
-イ・ヨンハン氏ブログ「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/02/24の記事より-
-大きい写真でご覧になりたい方はこちらへどうぞ。F2C「野良猫報告書」-
かわいいビッコ引きの野良の1日
路地の向こうから野良猫が1匹、足を引きずって歩いてきます。
住宅街の一角の斜面に作られた畑をひょこりひょこりと横切り、
やっとのことで畑のまわりを取り囲んだ木の柵を乗り越えています。
遠目から見ても、生まれて間もない赤ちゃん猫です。 ビッコを引いた猫はしばらく、住宅街の道路に出てまごついていました。
1台のトラックがブーン!と通りすぎると、
ビッコ引きの猫はぎょっとして後ずさりをしました。
車にひかれて足を悪くしたのかどうかはわかりませんが、
左側の前足と後足の両方をケガしているのを見ると、
通りがかりの車にひかれてしまったと思われます。 しばらく戸惑っていたビッコ引きの猫が、また
ひょこり、ひょこりと道路を渡っていきます。
足をけがした彼女には、この狭い道路も運動場ほど広く感じられます。
やっとのことで道路を渡り終えた猫は、クリーニング屋の前へと歩いていきました。
クリーニング屋の前には今日も、野良猫のために
エサの皿と飲み水の皿が用意されています。 クリーニング屋の階段までたどり着いた猫は、
道に落ちていたエサを口にくわえてみました。
でも、すぐに吐き出してしまいました。
どうやらこの赤ちゃん猫には、まだ歯が生えていないようです。
しかたなく猫は皿の水でおなかを満たしました。 このビッコ引きの猫にクリーニング屋の前で会ったのは、今日が初めてでした。
もともとここはヒボンとカムニャンのなわばりですが、
優しい彼らは、足をケガした猫が現れるとすぐに
一歩下がって場所を譲ってあげたのです。
その気も知らず、ビッコ引きの猫は水を少し飲むとすぐに
またひょこり、ひょこりと道を渡っていきました。 野良猫として生きていくこと、 それも、足も耳もケガをして歯も生えそろっていない
野良猫として生きていくのは、どんなに苦しいことでしょう。
その姿が哀れで、僕は200ウォンのソーセージを2本買ってきて
ビッコ引きの猫のところへ駆けつけました。 幸い、僕が食べ物を持っているとわかったビッコは、
自分から僕に近寄ってきました。
野良猫が初対面の人間に、こんなに警戒心もなく近づくなんて、
よっぽどお腹が空いていたのでしょう。
ソーセージ2つを小さくちぎってビッコに投げてあげます。
歯が生えていないので、小さくちぎったソーセージを飲み込むのすら、ひどく辛そう。 それでもソーセージ2本をむしゃむしゃと平らげたビッコは、
畑のまわりの草むらにはって行きました。
どうやら昼寝でもしに行くようです。
ビッコがやっとのことで腰を落ち着かせ、うとうと居眠りをしていると、
どこからかともなくグレーの猫がやってきて、 幼いビッコをいじめ始めました。
ビッコが逃げると、ついて来てまた攻撃を加えるのです。 この様子を遠くから見ていたヒボンとカムニャンが、慌てて駆けつけてきました。
そして2匹で力を合わせ、グレーの猫を追い払いました。
今まで僕が一生懸命に缶詰やいりこをあげたかいがあったというものです。
ヒボンはまるでケガをした猫の様子を確認するかのように
近づいていって顔をのぞき、ほおずりをしました。 ところがビッコはここも安全ではないと思ったのか、
またひょこりひょこりと歩いて畑のほうに下りていきました。
体が傷ついただけでも辛いのに、心まで傷ついてしまっているようです。
ともすれば彼女には、安全な場所などこの世に存在しないのかもしれません。
安全なところがあるならば、はじめからケガなんかしなかったのですから。 でも、ビッコがもっとも耐えられないのは、 おそらく空腹でしょう。
道の上に食べものが落ちていたとしても、
それは健康ですばしっこい野良猫のもの。
ビッコに返ってくるのはいつも、ビュンという風とやるせなさ、そして孤独だけなのです。 あの、小さくか弱い子猫の足取りが重い。
あんなに傷つき疲れた体で、ビッコはこの辛く苦しみに満ちた世の中を生きています。
冬の寒さは少し和らいだけれども、赤ちゃん猫の心の中はまだ厳しい寒さの中・・・。
冬を生きるビッコに、春ははたして来るのでしょうか?
春が来たからって、彼女が幸せになることはできるのでしょうか?
この記事に出てくるビッコひきの猫は、昨日(2月20日)午後5時頃、
1時間の捜索の末、劇的に救助され、 現在獣医師の治療を受けています。
-イ・ヨンハン氏ブログ「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/02/20の記事より-
チュニャンがママから教わったこと
ママはいつもこういいます。
「この世で一番怖いのは人間よ。
自動車よりも、チキン屋のバカ犬よりももっと恐ろしいのが人間なの。
人間が猫に優しくしてくれるだろうなんて考えは捨てなさい。
彼らが優しくするときはいつも理由があるの。
人間たちは私たちが真夜中に鳴いていると縁起が悪いと言い、
家の前にゴミ袋が散らかっていたら、真っ先に私たち猫を疑う。
だから人間に頼るのは、道路に飛び出すことよりも危険なことなの。
どうせ生きるってことはひとりぼっちなの。
お前もすぐに独立するだろう、
そうすればそのときはお前だけのなわばりを持たなければいけない。
なわばりは、領土ではなく、領域だということを心しなさい。
領土の概念は不動産投機に目がない人間の概念なのだから。
私たちは土地に対する所有権なんて主張しない。
それが懸命よ。
大切なことはただ生存すること。生き残ること。
生の定義なんてものは、死ぬ頃に考えれば十分。
偉そうにしているのはこの世で人間だけ。
ご覧なさい。そんなに偉そうにしている人間たちが、
世界をこんなふうにだめにしてしまった。
これが人間たちの言う、いい世の中だっていうの?」
わたしはママの言うことがどういう意味なのかわかりません。
ただ、世の中で一番怖いのが人間だという言葉は
肝に銘じています。
そしてだれもが一人で生きていかないといけない、ということ。
それを理解するにはきっと、ママぐらい年をとらないといけないでしょう。
それでもたまには兄妹の群れを離れて、遠いところへ出かけたりします。
1か所にとどまっているのはとても退屈だから。
座ってうたた寝をして、顔を洗って、ふざけたりするのは
退屈さを忘れるための行動です。
もちろんまだあまり遠くに行くのは危険です。
そこはわたしのなわばりではないから。
今は冬で、冬は寒くて長い。
そして何よりも冬はお腹が空く季節です。
わたしみたいな野良猫にはよっぽどね。
身を切るような寒さの吹雪の日には、コンテナの下に身を隠し
少し陽が当たりはじめると、やっとのことで外へ出てきます。
よりによって厳しい冬に生まれ、
こんなにも寒い世の中を生きています。
それでも世の中には、
ママの言う怖い人間ばかりではないようです。
いつもわたしたちを心配してエサの皿を外に
出しておいてくれるクリーニング屋のおばさん!
ありがとう。
たまに酢豚に出汁を取ったいりこに缶詰をくれる
写真の猫のおじさんはまあ写真を撮らせてあげてるからいいとして、
ある日学校帰りの小学生たちが
かわいいと言ってわたしに300ウォンのソーセージを
買ってくれたことも忘れることができません。
おかげでわたしはゴミ袋をあさって人間に
怒られることがずいぶん少なくなりました。
でも、人間に頼った瞬間、
野良猫としての存在感を失ってしまうもの。
わたしにもそのくらいはわかります。
生まれてから3か月しかたっていないけれども、
うしろを振り返ると気が遠くなります。
ママはこうも言います。
「前にいる敵よりも怖いのは、後ろにいる敵なの。
生きるということは複雑だけど、生き残ることは単純なこと。
危険にぶち当たったら、逃げるのよ。
面と向かって戦おうとする正義派たちだけがいつも損をするものよ。
避けることは悪いことじゃない。
それは代々、弱い者たちのもっとも強い武器なのよ。
勝てないけんかからは逃げることも大事。
それは卑屈なことではないわ。
わたしは手ぶらで、あっちはナイフを持ってるんだから。
もちろんナイフを持ったやつも、いつかは銃を持ったやつにやられるんだから。
ママが言いたいのは、むだに前に出る必要はないってこと。
でしゃばって相手とののしりあったところで、あごが疲れるだけよ。
現実には、勧善懲悪なんて通じない。
現実では逆に悪者が勝つことがもっと多いの。
でも、人間がいう善なんて
偽善であることが多いのよ。
人間は、権力とお金と美貌が善だと言うんだから。
わたしたちみたいな路上者は、ただ、静かに縮こまっていなければいけないの。
それが不老長寿の世界の知恵なのよ。
ママの言うこと、わかるでしょう?」
まだ小さくてその言葉の意味は全部はわからないけれど、
ただ一度ぐらいは後ろを振り返ってみることが必要だと言うことは感じます。
そうすれば、自分がどのくらい歩いてきたのかわかるから。
とにかく、こうして自分の棲みかを離れて雪の中や通りを歩いていると、
ずいぶんとすがすがしい気分です。
風はまだ冷たく厳しいけれども、
明日はもう少し遠いところまで行ってみようかと思います。
-イ・ヨンハン氏ブログ「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/02/13の記事より-
-大きい写真でご覧になりたい方はこちらへどうぞ。F2C「野良猫報告書」-
F2C、日本ブログ村のブログランキングに参加中!
たくさんの方に見ていただきたいので、ぜひ、下記バナーをポチっとお願いします!
野良猫フォト劇場2 『チュニャンのお正月』
#1:私の名前は、チュニャン。(うふふ!)
いつも前で写真を撮ってくれる人が言うんだけど、
このあたりで私がいちばんかわいいんだって。
清純派でしょ?
年は3才。性別はヒ・ミ・ツ。
趣味は写真のモデル、特技はTell Meダンス(注1)を踊ること・・・自己紹介は以上!
#2:(ふわぁ・・・あくびをする)日陰から日の当たるところに出てきたら、なんだか眠いな。
ふわぁ・・・なにか楽しいことないかな。もうすぐお正月なのに、たいくつだぁ。
#3:(木の板につかまり立ちをして)よいしょ!
これもおもしろくないなぁ・・・
おじさんも楽しくないでしょ?
#4:じゃあ、しっぽ遊びでもしようかな・・・
こうやってしっぽを丸めて口でくわえて、
♪ね~こはこたつで、まあるく・・・
#5:なる~(注2)・・・うわああ!
(あおむけにバタッと倒れ、ゴツン!とコンテナに頭をぶつける。しばしぼう然・・・)
#6:(すっくと起き上がり、まわりをキョロキョロと見回す)
誰も見てなかったよね?おじさんも見てなかったでしょ?
もうはずかしい!痛いからって泣くのは野良猫のプライドが許さないし
カメラの前でこんなドジふむなんて!
#7:(舌をぺろっと出して)
見なかったことにしてね~。見てなかったら結構よっ
#8:くぅぅ!
それでも、そうそう、このあたりでわたしが一番カワイイ猫なんだから。
わたしがこの町のワンダーキャット(注3)よ・・・ねぇ、みてみて!
#9:(肩をすぼませて、Tell Meダンスを踊る)
Tell Me~ Tell Me~ テッテテッテテ~(注4)(実は足がついていかない・・・)
#10:(ソヒ(注5)の真似をして)オモナ!
(恥ずかしくてやってしまったが、どんびきされたのに気づき)
ちっとも似てない? 似てたらいいけど!
#11:じゃあこれはどう?猫のびっくりショー。
(カニと鰹の缶詰を持ち上げ)こんなツナ缶マスク、見たことないでしょ?
じつは、写真撮ってるおじさんがお正月だからってくれたんだけど・・・
これじゃぁ、お雑煮にもならないよね!
#12:(えらそうに)ツナ缶たったひとつでモデル料のつもりかしら・・・
それも、この前は演技がうまかったからって、
ヒボン兄ちゃんに半分もあげてたし・・・ったく!
#13:でも昨日、酢豚のあまったの持ってきてくれたから許してあげる。
まえもって猫の新年のあいさつ(注6)をたぁ~っぷりしてあげるから、
お正月に家に戻ったらおいしいものたくさん持ってきてね
!(ところでこれ、猫の新年のあいさつ、あってる?)
エヘン!今日のモデルはこれでおしまい!
THE END.ニャオ~ン!
※出演:真のモデル、チュニャン ※演出/撮影/台本:dall-lee
※OST:ワンダーガールズ「Tell Me」(もしくはナ・フナの「故郷の駅」?)
-イ・ヨンハン氏ブログ「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/02/05の記事より-
野良猫フォト劇場1 『挫折禁止』
#1:生きていくのはどうしてこんなに大変なんだ!(首をうなだれ挫折)
野良猫として日々を生きていくこと。
人生、いや、猫生(びょうせい)ってやつは、まったく・・・。
#2:寒いし、
おなかは空いたし、
ママは帰ってこないし、
(苦悩に満ちた表情で)今日はまたどこで食べるものを探しているんだか!
#3:うううっ!(涙をぬぐいながら)
ママ!どうして僕を野良猫に生んだの?
これが野良猫の運命なの?
地球に生を受けた一つの生命として、これは過酷すぎるよ。
#4:う、う、う!
こうやって毎日僕らは生ゴミをあさって生きていかなきゃいけないの?
僕も人間の子どもたちみたいに、鞄を肩に提げて幼稚園に通いたいよぅ。
#5:いつまでもこうしてちゃダメだ。
(拳をぎゅっとにぎり)よし、決めた。
野良猫には野良猫の人生があるんだ。
野良猫らしく、道の上で生まれ、道上で死ぬ。
それが野良猫の運命じゃないか!
#6:これ以上、人間の捨てるゴミに頼ってちゃだめだ。
いつなくなるかわからないからな。
それに最近は、ゴミの分別回収も始まった。
人間はなんて、利己的な動物だ。
(チャイルド・プレイのチャッキーの真似をして、ちぇっ!)
この世の中には、猫以下のゴミ人間どもが、ゴミのように並んでいる。
汝矣島に行けば人間のゴミが並べられてるんだって、聞いたことがある。
ざまあみろだ!
#7:動物界の覇者ライオンやトラだって
僕たちと同じネコ科に生まれて、あんなに堂々と生きてるじゃないか。
よし。僕もトラのようにほえるんだ。
(トラの真似をして、怖いだろう?と言わんばかりに)ガオー!
#8:猫らしくぐっと伸びをして。
(ねこ体操を披露)よし、縮こまっていないで
堂々と道に出るんだ。
#9:これまで僕は井の中の猫だった。
もうコンテナハウスなんてうんざりだ・・・
僕も生まれて、いつの間にか、はや3か月。
もう、独り立ちして生きていく歳になったんだ。
#10:さあ遠い世界に旅立つんだ!
世界は広く、行くべきところは数知れず。
野良猫の本能がよみがえった気分さ!
ああ、魚の臭いかぐわしき、この野生の風!
THE
END。ご視聴いただきニャーオでございます。
※出演:演技派猫‘ヒボン’(注:人間で俳優のビョン・ヒボン氏では御座いません)
※演出/撮影/台本:dall-lee(即興)
※OST:‘カン’の「僕の人生に春が過ぎて」(ひきょうだなんて言わないで~)
(イ・ヨンハン氏ブログ「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/01/30の記事より)
[1] [2] [3] [4] [5] [6] |