猫ハウスの野良ニャンコ父ちゃん
猫ハウスの屋根に、野良猫が2匹。
僕の家の近所に猫ハウスがある。
その名の通り、猫が住むハウスだ。
このハウスは箱や包装材を保管する資材倉庫兼事務所なのだが、
鉄骨にビニールを施し倉庫として利用しているものだ。
猫ハウスの屋根で、5匹の野良猫たちが暖かな春の日差しを満喫している。
ここに野良猫6匹が住みついている。
全身真っ黒なクロ、三毛、ブチと茶トラ親子3匹だ。
加えて、たまにエサを拝借しにくる野良猫が4匹。
ここが猫ハウスの様相を帯びてきたのは、
2007年の秋も深まった頃。
ビニールハウスで包装容器の事務所を運営している
イ・ジンウォンさんと野良猫との縁は、 2007年の秋に始まった。
もともと飼い猫だったクロ。誰かが捨てていった猫を、
こうしてイさんが拾って育てている。
ある日の夕方。イさんが仕事を終え家に帰ろうとしたところ、
事務所の入口で猫が1匹ニャーニャーと鳴いているではないか。
イさんは不憫に思ってエサをやったのだが、
次の日からその猫は1日と欠かさずハウスを訪れ
エサを狩りに来たそうだ。
出会った当時お腹が大きかったその猫が
寒い冬の日に道端で子を産んだのが可哀想になり、
イさんは野良猫を家に連れ帰ったそうだ。
猫ハウスの屋根で野良猫たちが遊んでいる。
ピョルニム(お星様)と名付けられたその野良猫は
全部で6匹の子猫を産んだが、
イさんの悩みはこの時から始まった。
生まれて6ヶ月ほどの子猫。
事務室に使っているハウスで拾ってきた野良猫6匹を
エサを与えながら放し飼いにしているうえに、
家でも7匹の野良猫を育てていて、
それこそ経済的負担が大きすぎた。
ハウスの中で育てている野良猫6匹と
エサをもらいに来る野良猫4匹、
家で育てている猫7匹まで合わせると、
彼の管理する猫はなんと17匹にものぼる。
2匹のチャトラを引き連れたチャトラの母猫は
少し前から下血をしているが、
捕まえられず治療を受けられていない。
さらにイさんはハウスに住むブチとクロに去勢手術をし、
他の猫も1、2度は動物病院に連れて行ったので、
その間の治療費だけでも結構な額だ。
茶トラ親子がハウスに積まれた箱の上からこちらをみている。
2007年秋から今まで猫17匹にかかった
エサ代だけでも200万ウォンを超える。
ビニールハウスで包装容器業を営む彼には、
野良猫にかけるお金が負担になった。
黒模様のブチも、猫ハウスの家族だ。
仕方なく彼は家で生まれた子猫4匹は里親に出し、
残り3匹も貰い手を探す予定だ。
イサンは家で生まれた子猫3匹、
ハウスの野良猫2、3匹は里子に出すつもりだが、
貰い手が見つからずに困っている。
猫ハウスの住人ではないが、たまにエサをもらいに来る野良猫もいる。
猫と縁を持ったとがで、これまで猫の父親として生きてきた彼。
しかし一人で17匹の野良猫の面倒を見ることなど、できたものではない。
猫ハウスにたまにやってくる野良猫。
1ヶ月ほど前から僕はたまに
猫ハウスに住む野良猫たちに会いに行き、
猫の父親として生きるイさんともいろんな話をした。
僕は世の中にはこんな人もいるのだということを
広く知らせたかったのだが、イさんは遠慮された。
ハウスの位置が知れてしまって、飼い猫を捨てに来る人が
増えることを心配したからだ。
イさんは少し前にクロの虚勢手術をした。
もともと飼い猫だった関係もあり、
ハウスで最後まで面倒を見るつもりだそうだ。
実際に猫ハウスでイさんと一番仲の良いクロは、
かつては家猫として暮らしていて
飼い主に捨てられてしまった捨て猫だ。
そんなクロの傷をこれまでしっかりと包み込んでくれたのも、
やはりイさんだった。
-イ・ヨンハン氏ブログ 「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/04/02の記事より-
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弥生の猫
夏が犬の季節だとすると
うららかな春は、まぎれもなく猫の季節。
花見がてら樂安邑城の民族村を訪れた僕は、
藁葺き屋根の上でゆったりと寛ぐ4匹の猫たちに出会った。
彼らはふかふかの藁の屋根を布団代わりにして
春の日の昼寝を楽しんでいたのだが、
どこからかカシャリという音とともに人の気配がすると
一匹が目を覚まし、きょろきょろとあたりを見回した。
どうやら一匹は母猫、残りは子猫たちのようだ。
目を覚ました子猫は横で寝ている母猫にじゃれついているが、
母猫はすべてが面倒くさいといったふうに
一度開いた目を再び閉じてしまった。
目を覚ました子猫もそのうち疲れて
藁葺き屋根の藁の中に顔をうずめ、再び眠り始めた。
春の日が暖かく藁葺きの屋根はフカフカしていて
なんとも眠たい春の日だった。
-イ・ヨンハン氏ブログ 「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/03/12の記事より-
母猫に捨てられた子猫
道路にぼんやりたたずみ、子猫は誰かを待っている。
美容室の猫、ウェニャンだ。
なんだか寂しそう(韓国語で‘寂しい’=ウェロウォ)にしていたので
つけた呼び名だ。
生後2か月にもならないうちに母猫に捨てられた赤ちゃん猫。
可愛そうなほどやせ細っている。
ウェニャンはもともと野良猫として生まれた。
美容室の主人の話によれば、
約1ヶ月前に黒い野良猫が家の前で子供を4匹産んだのだという。
ところがその後、乳離れもしていない状態で
母猫が子猫たちを捨てていなくなってしまったというのだ。
幼な猫の瞳というには、あまりにも悲しげだ。
普通、野良猫は1ヶ月程度乳をあげた後、
しばらく面倒をみてから子供たちを独立させるのだが、
この薄情な母猫は、生まれたての赤子を残してどこかへ消えてしまった。
そのせいで子猫のうち2匹はすぐに死んでしまい、
残った2匹を美容室が連れていって育て始めたのだという。
こうして階段に座り込んで待っていても、母猫は帰ってこない。
そのうち1匹は貰い手がみつかり里子に出したので、
今はウェニャンのみを飼っていた。
この猫を初めて見かけたのは約10日前のことだった。
町内の商店の前をおぼつかない足取りで歩いていた子猫が、
美容室のほうへちょこちょこと駆けていくのだった。
通りに飛び出して隠れん坊をしたり、写真を撮っている僕に挨拶に来たり。
かと思えば、また美容室の階段に座ってじっとしている。
今日もあの日とまったく同じ格好で、誰かを待っていた。
母親を待っているに違いない。
僕の前でこうして愛嬌を振りまいたり。
子猫にとっては母猫は逃げてしまったのではなく、
しばらくの間いなくなっただけで、
またいつか戻ってくると信じているのかもしれない。
ところが1月経っても母猫は戻ってこなかった。
ウェニャンは捨てられたというショックと
母を失ったという喪失感を同時に感じているようだ。
ツツジの茂みから子猫がこちらを見ている。
ウェニャンの瞳から、すぐにでもぽたぽたと涙がこぼれ落ちそうだ。
長い間そうしてぺたりと座り込み「待ち」の姿勢をとっていたウェニャンは、
ついに道へと飛び出した。
塀の下の草むらで草を噛んでみたり、
階段の下でごろごろと寝転がって愛嬌を振りまいたり。
しかしまた道路にぼんやり佇み、誰かを待っている。
車の下に入り込んで隠れんぼうをしたり、
写真を撮っている僕のところへやってきて僕を知っているそぶりを見せた。
しかし、ウェニャンはすぐに我にかえって道路に佇み、
また「待ち」の姿勢でぼんやり立ち尽くすのだった。
この世に生を受けまだ2ヶ月と経たない子猫は、
こうして今日も待ちの姿勢を学んでいる。
現れない待ち人を待つことほど、無意味なことはない。
だが、現れない待ち人を待つことほど無意味なことはないということを、
ウェニャンはまだ知らない。ともすれば、
捨てられたがゆえに野良ではなく暖かな家の中で育てられることになったのだから
結果的にはむしろ良かったのではないかという人もいるだろうが、
捨てられたという記憶と現れないものを待ち続ける孤独は、
癒せぬ傷となりウェニャンの中に残ることは明らかだ。
-イ・ヨンハン氏ブログ 「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/06/18の記事より-
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海を渡った猫の本
「さよなら、猫よありがとう」著者のイ・ヨンハン先生が
ご自身のブログで日本での出版に関して書いてくださいました。
以下、翻訳させていただきます。
■‘野良猫報告書’より、イ・ヨンハン先生のコメント■
12月に、日本でついに「さよなら猫」シリーズ第1弾である
「さよなら、猫よありがとう」が翻訳出版されます。
これまで日本の猫本が韓国で翻訳出版されたことは数多くありましたが
韓国の猫の本が日本で翻訳出版されることはありませんでした。
日本に渡った韓国の初めての猫の本。
表紙は、映画『dancing
cat』のポスターとしても広く知られている、ヒュジニャンです。
韓国版とは表紙の写真が違うので、なんだか新しい本を見ているようですね。
今回日本で発売される「さよなら、猫よありがとう」は
数多くの猫本が出版されている日本の出版市場に
はじめてお目見えするということだけでも、意味があると思います。
売れ行き如何に関係なく、日本に韓国の野良猫の過酷な現実をお伝えし
韓国にもそんな猫たちに差し伸べる多くの手があるということを
お知らせできるだけでも、私は満足です。
本作はすでに昨年、中国と台湾で翻訳出版されています。
また、映画『dancing
cat』の原作でもあります。
「さよなら猫」シリーズは第3巻を以って完結しますが、
また違うスタイルの猫の本を、今後も制作していく予定です。
■
以上、先生のコメントでした。
韓国のファンの皆さんも、日本での出版をすごく喜んでいらっしゃいます。
>大ヒットしすると良いな!
>日本に猫本はたくさんあるけど、これほどのクオリティーの猫の本はなかなかないですよね。応援しています!
>買います!
などなど・・・。また、
>おめでとうございます!でも、韓国の野良猫のかわいそうな現実を日本に知らせるのが恥ずかしい気もする・・・
というコメントもありました。
実は私もこの本を出すことで、日本の猫好きの皆さんが
「韓国はひどい国だ!」などと変に誤解をしないか、心配をしたのですが
この本を読めば、決して酷い人たちばかりではないとわかってくださると思い、
あえて韓国の現状を批判している部分も変にオブラードに包まず、翻訳をしました。
それが、先生のご希望でもありました。
不良猫の後輩教育
CAT
CINEMA
#1
「おい!何ぼけっとしてるんだよ。エサ出せよ!」
「いや、僕、あの…」
「ないだって?ひっくり返して出てきたらエサ1粒につき一発くらわすぞ!」
「エサなら、あっちのクリーニング屋のほうに…」
「こいつビビリやがって。いいから着てるキジ柄の服、脱いで寄こせや!」
#2
「おい!ぼけっとしてんじゃねえよ!エサ出せよ!」
「ないけど何だよ?」
「ないならいいや!じゃあ代わりにメシつぶは?」
「やだよ。猫缶腹いっぱい食べたからな…うっぷ!」
「うわあ、お前が着てるトラ柄の服、イケてるな!」
「サンキュー!」
-イ・ヨンハン氏ブログ 「雲と鮭、あるいは雨期の旅人宿」、2008/06/19の記事より-
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