2010/06/07 20:37
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory-Reymond-5

Photo

 


  

「ジニョン・・・あーやっと・・出てくれた」

 

何度電話しても、出てくれないことに計り知れない胸騒ぎがずっと私を襲っていた。

落ち着いて考えさえすれば、さほど心配するようなことでもないことなのに
ジニョンという女は私を妙に臆病にする。

彼女がドアを開け姿を見せてくれた時の私の胸の内を上手く表現することができない。

    ただ・・・無性に嬉しかった・・・

    ただ・・・彼女が・・・・愛しかった・・・


そして部屋の奥から現れた肌を露にしたフランクに対して、意も言われぬ
嫉妬の炎が芽生え始めていたことに私はまだ気がついていなかった。

       

   《ジニョンを愛しているんですね》

   どいつもこいつも・・・何を言っている・・・

   愛という言葉など

   私には似合わない

  《なら・・・ジニョンを苦しめたくはないはず・・》

 

   言ったはずだフランク・・・
   
   私の目的は・・・

 

   お前だけ・・・

私は彼にそう言い捨てて、彼らの前から立ち去った。

 


   私はただ・・・

 

   お前が欲しいだけだ・・・フランク・・・

 

   そうだろ?

 

   レイモンド・・・

 

 

「若・・・ライアン陣営から何やらきな臭い匂いが・・・」

「ソニー・・・」

「はい」

「僕の母さんのこと覚えてるか」

私は目の前に立つソニーに向かって、彼の腕にぶら下がって歩いていた
幼い頃のように、顔を見上げて母の思い出を辿った。


「もちろんです」

「そうだったな・・・
 お前は長い間僕達親子を見守ってくれていた」

「お母様をお守りすることができなかったこと・・・
 今でも深く後悔しています」

「しかしお前は僕を守ってくれた・・・
 なさぬ仲の義母の元に連れて来られた時
 周りの大人達は僕からお前を引き離そうとしていた
 しかしお前は必死に父に進言して、僕のそばにいてくれた
 兄達に無意味に苛められていた時も、
 お前が体を張って奴らの刃を受けてくれた・・・
 きっとそれが・・・心配だったからなんだろ?」

「あなたの母上とのお約束でしたから」

「母との?」

「ええ・・・あなたを必ずお守りすると・・・」

「・・・・」

「母上はお亡くなりになる前日、私をお呼びになりました」

「・・・・」

 

     《ソニーさん・・・
      レイモンドを守るのがあなたのお役目・・・
      本当にそれを信じても宜しいですか?》

     《はい》

     《どんなことがあっても・・・レイモンドのそばから
      離れない・・・約束してくださいますか?》

     《はい絶対に・・・》

     《あの子は・・・とても優しい子なんです・・・》

     《存じています》

     《あの子は・・・とても賢こくて・・・》
 
     《きっと・・・りっぱなお子に育ちます》

     《でもあの子は・・・とても・・・とても寂しがりやで・・
      誰かが抱いていてやらないと・・・》

     《早くお元気になられて・・・
      あなたが抱いておやりになるといい》

     《・・・・そんなことが・・・できるでしょうか・・・》

     《できますとも・・・きっと・・・お元気に・・》

     《ソニーさん・・・
      あの方のおそばにいらっしゃるあなたに
      こんなことを言ってはいけないのかもしれません・・・
      でも・・・
      あなたにしか・・・私は・・あなたにしか・・》

     《どうぞ何なりとおっしゃってください》

     《あなたのあの子を見つめる
      兄のような慈悲深いまなざしを信じてもいいですか?
      ・・・どうか・・・あの子を・・・》


「どうか・・あの子を・・・その先は?」

「・・・・頼みますと・・・」

「ふ・・それだけか?・・・
 たったそれだけのことでお前は父に逆らってまで僕のそばを離れなかった?」

「はい」 ソニーは“当然です”と言わんばかりに胸を張った。

「それで?・・・」

「・・・・」

「それで・・・母との約束は守れたか?」

「・・・・」

「・・・私はもうすぐ組織の三代目を襲名するんだろ?」

「・・・・」

「お前は私に頂点まで上りつめる・・・その力を与えた
 その結果が・・・これだ・・・満足か?」

「・・・・」

「どうして黙ってる?」

「・・・・」

「どうして!黙ってるんだ!」

「・・・・」

「何とか言え!」

「何を申し上げれば・・・よろしいでしょう」

僕はソニーにわけのわからない怒りをぶつけながら、知らず知らずに自分の頬を
伝って零れ落ちる涙を彼から勢いよく顔を逸らせることで振りちぎった。

 

「若・・・」

 


  これが・・・母さんが望んだことなのか?


「もういい・・・何も言うな」


  そうじゃないことは・・・僕が一番知っている


それでも・・・

 

どう足掻いたところで・・・逃れられない運命

僕は・・・

とっくに諦めて生きている


「若・・・私は!・・・母上とのお約束を必ず・・・

    

        ・・・お守りいたします」・・・









 


[1]

TODAY 166
TOTAL 597111
カレンダー

2010年6月

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
スポンサードサーチ
ブロコリblog