髪をぴっとつまんで・・
仕事の帰り、いつものようにちょっとけだるい気持ちで、私は電車に飛び乗ったのでした。
と、入り口付近に立った私の耳に、飛び込んできた会話が・・・。
「え?なに、それ?今、BSでやってるんでしょう?それをまた映画館でも見ようっていうわけ?」
「そうだよ。」
平然とした声に、あら?とふりかえれば、20代後半くらいのちょっとかっこいいOL風の女性が、お仲間らしき女性に淡々とした顔で答えているのが・・・。
「それが、髪をぴっとつまんでいてね、昔の人の格好してるの。」
「へえ~」
「かっこいいのよ!」
「へえ~。・・・あの、撮影中に怪我したっていってたのでしょう?」
「そうそう。それでね、そのロケ地に行くツアーがあるんだけどね、それが・・・・」
私がどんな思いで、その話を聞いていたか、おわかりでしょうか。
バッグの中から携帯を取り出して、髪をつまんだかっこいいタムドクの待受け画面を彼女たちに見せたいなどという衝動と、私は必死に戦っていたのでした。
さぞ、あやしいおばさんがいると思ったでしょう。いやいや、もしかしたら、同じカゾクの匂いがしたでしょうか?
ともかく、私は耳ダンボ状態でそこに立っていたんですけど、残念ながら、やがて電車は乗り換えの駅に着いてしまい、私は心惹かれながらも電車から降りなければなりませんでした。
このドラマを見て、若いファンが増えているという話を時々聞いてはいましたが、正直言うとそれってどうなのかなあ・・、なんて私は思っていました。
だって、まだハイビジョンなんてシロモノで、日本のほんの一部の人たち向けに放送されてるだけじゃないですか。私は会社で広報宣伝活動にいそしんでいますが、みんながみんな、そのドラマのことに興味を持ってくれてるわけじゃないし、ドラマのタイトルもそれほど広まっているわけじゃないと思っていました。
だから、思わぬところで、思わぬ会話を耳にして、なんだかすごくすごくうれしかったのです。若い人の中にも、ちゃんと見る目のある人はいるんだなと。当たり前ですけどね。
当たり前のものを、素直に、『いい!』と言える時代じゃなくなってきたような気がして、いろんな意味でこのごろどうなってるのかしらねえ・・、なんて思っていたんです。
4月になったら、春になったら・・、そう思っているのは、きっと私だけじゃないですよね。
タムドクVSホゲに見る一考察~9話から
☆劇場で9話を見てきました。
やっぱり大スクリーンでの9話はすごかった!
ヤン王の死、キハの悲痛な叫び、ホゲとタムドクの対決、カクダンの壮絶な最期、玄武の目覚め、そしてタムドクの涙・・と、息つくのも忘れるほど最後まで一気に見てしまいました。
本当に、9話は短い、短すぎる!
特に気になったのが、タムドクとホゲとの対決シーンです。
タムドクは、できればホゲとの戦いを避けたいと思っていたのでしょうが、一方のホゲはどんな気持ちでいたのかと・・。
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なんだ、これは?
どうして、チュシンの王である俺がこんな目にあわなければならんのだ?!
だいたい、こいつは太子とは名ばかりのひ弱なヤツじゃなかったのか?
俺がちょっと本気を出せば震え上がると・・・。
なのに、『やれよ、・・母の仇を討てばいい。』なんて生意気なことをほざくから、お望みどおりにしてやろうと思ったのに・・・。
そうだ、すぐに仕留めてやれると思った。
最初はうまくいった。
ヤツは馬にも乗っていなかったから、俺は難なくあいつを地面に叩きつけることができたのだ。
なのに、二度目の攻撃のときは、あろうことか、ヤツは馬の脚を狙ってきたのだ!
おかげで、俺は馬もろとも横倒しになってしまった。
まったく、蛇のように悪賢いヤツだ!
俺はチュシンの王たるべく育てられてきた。
血のにじむような鍛錬を重ね、高句麗一の勇者といわれてきた。
なのに、二度、三度と討ちあううちに、ヤツもなかなかの腕を持っていることがわかった。
子供のころは誰にも相手にされず、城内でいつもひとりぼっちでいるのを見かねて、この俺が槍の稽古なんかつけてやったこともあるのに・・。
そういえば、父上はいつだったか言われたことがあった。
油断してはならぬ、おとなしそうな顔していながら、抜け目ないヤツなのだと。
まったく、そのとおりだった。
この俺が、あやうく何度かやられそうになったほどなのだ。
一度は槍で横になぎ払われて、上体をそらせてかわさなければならなかったし、また、足を取られて転びかけたときに、上からするどい切っ先で襲われたりもした・・。
もちろん、俺も何度かヤツを追いつめたが、これは簡単にはゆかぬぞと思った。
ぎりぎりと歯を食いしばり、俺はヤツの動きを読もうとした。
が、どこにも隙はなかった。
ヤツも同じ思いだっただろう。
・・そうとも、俺だって簡単にやられるほどヤワじゃない。
が、ヤツは、おい、かかってこいよ、みたいな顔をして、冷たい目でこっちを見据えて・・。
ふん、そんな手に乗るか、こっちは正真正銘のチュシンの星の元に生まれたホゲ様だ、そう思ったが、次の瞬間、ヤツにもそんな話がついてまわっているのだと気がついて、
どっと冷たい汗が流れて・・・。
そんなところに、あの女たちがやってきたのだった。
そして、あの瀕死の女が言ったのだった、王は反逆者たちに追われたあげく、神官の手にかかって逝去されたと。
それから、その神官の名を口にしたのだ、・・・そう、俺の愛する人の名を、だ!
嘘だ!、信じられないというふうに、ヤツは口走っていたようだったが、
俺は、俺は・・・。
なぜ、あんなにたおやかな人が?嘘に決まってる、そう思いながら、一方ではそれが本当であることを俺は知っていた。
あの人の思い人であるヤツに、わざわざ知らせに来たのだから、嘘であるはずはないと・・・。
そして、俺は思ったのだ。
もし王が亡くなったというのが本当なら、父上も俺も反逆者ということになるんじゃないか、
チュシンの王などではなく、悪に手を貸した者となるんじゃないかと・・・。
そのあとのことを思い出すたびに、俺は恐ろしくなる。
目もくらむような光の帯がどこかからぴか~っと襲ってきて、ヤツを包んだと思ったら!
包んだと思ったら!
俺は、天の怒りに触れてしまったのだろうか。
いや、そもそも俺はチュシンの王ではなかったのか。
もしや、もしや、ヤツが・・?
そんなはずはない!
そんなことがあっていいはずはない!
俺のためにあえて悪に手を染めた父上のために、
そして、命を落とした母上のためにも。
横たわるカクダンにかけられた上着~9話から
☆お久しぶりです。
9話を見ました。
タムドクとホゲの戦いも玄武のめざめも、ヤン王の壮絶な最期も、見ごたえたっぷりでしたが、私はなぜかカクダンのこのシーンが忘れられませんでした。
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そのとき、ご主人様は僕をその人の身体にそっとかけた。
置いて行かないで!
僕は小さな叫び声をあげた。
でも、こっちに向けたご主人様のふたつの目が
ひどくかなしそうだったから、
僕は我慢することにしたんだ。
そうだ、僕は知っていたよ、
その人の固い鎧の下で、
ひそかな熱い思いが息づいていたのを。
冷たい刀をきらめかせて、
力尽きるまで戦ったのを。
王命に従い、愛に従い、
使命を果たそうとここまでやってきたのを。
僕は、ちゃんと見ていたんだ。
そして、今、
冷たくなっていくその人の身体・・・。
僕は必死にあたためようとしたのだけど、
遠いところに逝こうとしている魂は、
とてもじゃないけど止めることはできなかった。
だから、僕はせめてやさしい気持ちで見送ってあげようと・・。
じっとみつめるご主人様の二つの目。
みんなどこへ逝くんだ?
私を置いて!
ご主人様の心がゆらゆらと揺れているのがわかったけれど、
だいじょうぶ、だいじょうぶ、
泣かないで、泣かないで・・。
小さくなってゆくご主人様の背中に
僕はずっと声をかけ続けていたんだ。
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