2010/05/18 16:10
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory -Reymond-1

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mirage-儚い夢-sidestory Reymond 





私はフランク・シンとの接触を持つ最初の日を待ち望んでいた。

  いつ・・・

  どこで・・・

  彼の目との対峙を試みよう

この頃既にフランクの行動は私の監視下にあった。
いつ接触を持っても問題があるわけではなかったが、私はできれば彼とは、
少々劇的な出会いがしてみたかった。

ある日、フランクがしゃれたレストランを予約したことを知った。
どうもジニョンとのデートを楽しむらしい。

≪おもしろい≫

私は事前に黒い存在を彼の周囲に匂わせていた。

そろそろ彼には、私の影を認識しておいてもらわなければならない。

「Mr.フランク?」

「イエス・・そちらは?」

「そちらがお探しのようでしたので、ご連絡を」

目の前に携帯電話を耳に宛がったまま、呆然と立ち尽くすフランク・シンの姿があった。
写真で見るより、幼い印象だった。しかし、こちらを睨み付けた鋭い目は、

≪私とて震え上がりそうだよ≫



そして私は、ここ一番にと、フランクに更なる脅威を与えた。

「ジニョンじゃないか」

「先生・・レイモンド先生・・」

私は更に彼の至近距離に立った。
その時、ジニョンの肩越しに、彼の驚愕のまなざしがあった。

≪この時の君のその表情を、ジニョンに見せられなかったのは残念だよ、フランク≫



「紹介してくれないの?」 私は当然悪びれることなくジニョンに言った。

「あ・・Mr.フランク・シンです
 フランク・・こちらはレイモンド・パーキン先生。大学の講師でらして、
 私のサークルの顧問をなさってるの」

≪そうなのだよ、フランク・・・

  私は既に・・・君の弱みとやらを見つけていた≫




「フランク・シン?・・いったい、そいつは何者ですか?」

「新進のM&Aハンター・・・」

「M&Aハンター?・・・それが?」

「その男が欲しい」

「欲しいって・・・父さんがその気なら、いくらでも方法がおありでしょう・・」

「いや・・それが面白い男だ・・・
 M&Aの手口は冷徹・・非道・・・法にこそ触れないがマフィア顔負けの強引さがある・・・
 しかし、頑としてマフィアが絡むことを拒む」

「金を積んだらどうです?」

「やってみたさ」

「それで?」

「易々と乗らない」

「なら・・潰しますか?」

「いや・・出る杭は打たず、育てて、我が家の柵にする主義だ・・・」

「フッ・・・そうでした」

「奴は最近ホテル業界に狙いをつけたらしい・・・そこでだ・・・
 NYグランドホテルとカナダのプリンスホテルの合併をえさに蒔いた・・・
 きっと乗ってくるに違いない・・・」

「あれはJAコーポレーションの話では?」

「ああ」

「そこは確かジェームスが・・」

「レイモンド・・・あいつの力なんて・・どれだけのものだ?
 お前だって知っているだろ?今は身内だから使ってやってる」

「・・・・・」

「フランク・シンには類まれな才能がある・・・
 きっとジェームスなど足元にも及ぶまい・・・
 私は何としても奴の頭脳をこの手にしたい・・・」

「それほどの男ですか?この・・・フランク・シン・・・22歳・・・
 ハーバード大学院生・・・飛び級か・・・なるほど・・かなり優秀なんだ・・・
 しかし・・まだ若い・・言ってみればひよっこじゃないですか?」

私は父に差し出されたフランク・シンという男の身上書を軽く指で捲りながら
興味なさげに呟いた。

「いや・・私の目に狂いはない・・・奴なら、きっとこの世界でも一流になる・・・
 お前と同じ匂いがするんだ・・・」

「私と同じ匂い?」

「ああ・・冷静沈着・・・いや冷酷・・冷淡・・・ということかな・・・
 そして人間を誰ひとりとして信用していない・・・」
        
「私が父上すら信用していないとでも?」

「違うかな?・・・」

「フッ・・・・」

「まあ・・いい・・・しかし、全てにおいて完璧・・・
 やることには抜かりがない・・・
 法を犯す人間はお前のように頭が良くなければならない・・・」

マフィアの世界などまったく興味すらなかった私を、強引なまでの手段で
自分の思うようにしてきた父の頑として引かない強い眼差しがそこにあった。

 

「褒められてるんでしょうか・・・」

「褒めてるつもりだ」

「有難うございます・・・
 とにかく・・父さんがそれほどに惚れ込んだ男、ということですね・・・
 それで私に何を?・・・」

「奴の弱みを探せ・・・
 用心深く、弱みと言えるものが見つからん・・・」


今からひと月前、こうして父に、“探せ”と命を受けた「フランク・シンの弱み」・・・


   驚いたろうね・・・フランク・・・

   君にこうして面通りする前に・・・

   私は君のその弱みとやらに近づかせてもらっていた


   君の弱みは意外と簡単に見つかったよ・・・


   ソ・ジニョン・・・

   本当に可愛い人だ・・・

   人間を信じない君が彼女を信じた理由が

   私にはわかるよ・・・フランク・・・


   

「やあ・・ジニョン!復学できたのかい?」

「はい!先生・・・また、よろしくお願いします」

当然、ジニョンの復学は私が手を回して叶ったことだったが、彼女の無垢な笑顔は
どういうわけか、私の胸を刺した。
しかしそんなことなど、どうでもいいことだ。

「ジョルジュも・・久しぶりだね」

「レイ・・お久しぶりです・・丁度良かった・・・ジニョン・・サークルだろ?
 俺はこれから、バイトだから・・・
 サークル終わったら、真直ぐ寮に帰るんだぞ」

「うん・・わかった」

「それじゃ・・レイ・・よろしくお願いします
 こいつの面倒見てやってください」
ジョルジュはそう言って、私にジニョンを託した。

≪ジョルジュ・・フランクが君に頼んだことを忘れたのかい?
 どんなことがあっても”ジニョンから目を離すな”そう言われたんじゃないか?≫

「了解・・」

「行ってらっしゃい・・ジョルジュ」  

≪フランク・・・君はひとつ間違いを犯している
 ジョルジュは既に私に心酔している・・・そのことは知らなかったようだね≫

「慌しい奴だな・・・でも君のことがすごく心配なんだね」

「ええ・・今日は何故だかずっと私にくっ付いて歩くんです
 トイレにまで付いて来る勢いで、困ってました・・・」

「はは・・いいね、大事に思われて・・・」

「兄のような存在ですから」

「兄・・か・・・でもジョルジュにとっても・・・君は妹・・かな?」
「・・・・・」 

「ところで・・・どうしよう・・・」

「何がですか?」

「実は・・・今日はサークル、休みなんだ」

「そうだったんですか?このところご無沙汰してましたから、
 知らなかったわ」

「デートでも・・・する?」

「あ・・いいえ・・・私は行くところがありますから」

「寮に真直ぐ帰れと、言ってなかった?ジョルジュ・・」

「ええ・・・」

「嘘ついた?」

「ええ」

「しょうがないね、さて、私が君の嘘の片棒を担ごう」

「えっ?」

「送るよ・・君の愛しい人の元へ」






「ジニョン・・・お帰り・・・あ・・」

フランクは案の定、怒りを露に私を睨んだ。

「やあ・・フランク・・・」

「・・・・どういうこと?」

≪君に鋭い目で睨まれると、不思議と武者震いがする≫

「あの・・先生がここまで送ってくださったの・・・」

「・・・・・」

「先生・・・ありがとうございました」

「いや・・それじゃこれでお役ごめんだね・・・また明日・・ジニョン」

「ジニョン、先に入ってて・・・先生を下までお送りしてくる」

「あ・・はい・・」



フランクはジニョンを部屋に残し、私と連れ立ってエレベーターに乗り込んだ。

「どういうつもりだ」

「どういうつもり?何のことです?」

「とぼけるな」

「女の子の一人歩きは物騒ですからね・・・
 アパートのエントランスでさえ、何が起きるかわからない・・」

「何が物騒なんだか」 

「フッ・・そういう冷たい言い方は止めてもらえないだろうか
 私は結構小心者でね・・・胸が痛くなる」

「忠告したはずだ。ジニョンに近づくなと」

「それは無理な話です・・・彼女は僕の・・・」

「黙れ!・・・いったい何を考えてる・・・
 お前は、ジニョンに・・・ソウルホテルに何をする気だ」

「何を?・・・それは、君次第だと言ったはずですが?・・・」

「覚えておけ・・ジニョンにもし何かあったら・・お前を・・」

「私を・・・どうする?」

「・・・・・」

「仕事のことと・・・ジニョンには何の関係もないだろ?
 ましてソウルホテルに何の関係がある?」

「関係・・・ね・・・確かに何の関係もない・・・
 だから?それが我々に何の関係がある?」  

フランクの手が掴んだ私の胸倉から離れるのを待って、私は身づくろいをした。  

「・・・・・フランク・・・悪いことは言わない・・・
 黙って、我々の敷いたレールに乗りなさい・・・」

「お前達の乗った列車など・・・必ず脱線させてみせる」

「フ・・・それはそれは・・・楽しみだ・・・
 あ、それからご忠告をひとつ・・・ソウルホテルの件・・
 調べるのはいいが、ジニョンに悟られないように気をつけて・・・
 後で君が後悔することになる・・・」

「・・・・・」

「それじゃ・・可愛いジニョンに・・・よろしく・・・」


   その調子だ・・・フランク・・・もっと・・・怒れ・・・ 

 

   それが早い解決の道だ

   それにそうでなければ


       ・・・面白くもない・・・

 


 

   


 




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