2010/05/31 20:34
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-35.守りたいひと

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僕はジニョンを抱きしめていた腕をやっと緩めたかと思うと、今度は突然狂ったように
彼女を激しく求めた。

乱暴に彼女を壁に押し付け、まるで吸血鬼がそうするように、首筋に唇を這わせ、
両手で彼女のブラウスのフロントを力任せに左右に開いた。
そして終には容赦なく、スカートをたくし上げ彼女の怯えたような目を無視した。

僕の指が彼女を執拗に捉え、僕の唇が彼女の左胸の乳房を押しつぶすと、
彼女の微かな震えが伝わって来て、自分を逸していた僕に正気を取り戻させた。   
何も言わず、僕のなすがままに身を任せる彼女が・・・痛々しかった。

「・・・ごめん」

「・・・どうして謝るの?フランク・・・」

僕は彼女の体から離れると、ベッドに腰を下ろした。

ジニョンはそんな僕に近づいてゆっくりとひざまずくと身をかがめて、
うな垂れた僕の唇に自分からくちづけをした。

彼女のその行為に驚いた僕が少し身を引くと、彼女は僕の頬をしっかり両手で挟んで
唇を僕から離さなかった。

彼女の閉じたまぶたの震えが懸命に背伸びをしていることを忍ばせる。
僕はしばらくそんな彼女の睫毛を黙って見つめていた。
そして彼女は次第に自分の体重を掛けて僕をベッドに倒した。

僕達はベッドの上で随分と長い時間、互いの唇を離そうとはしなかった。
息苦しくなると互いの口の中で呼吸をした。

 

「ずっとこうしていたい・・・」

ジニョンがほんの瞬間離した唇を急いで動かしてそう言った。

「ずっと?」

「ええ・・・ずっと・・・あなたとこうしていたい」

「ジニョン・・・」

「・・・・」

「それは・・・無理だ・・・」

「・・・どうし・・・」

「どうしても・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

僕は上にいた彼女を包むように抱いて互いの体を翻すと、彼女の目を見つめたまま、
その頬と髪を優しく撫でて、まず最初に額に小さくくちづけた。
さっきまでの荒々しさと間逆に、彼女をいとおしく愛でながら、唇を彼女の肌にゆっくりと這わせた。
ジニョンの肌が薄く紅をさす様を確認すると僕自身も高揚していくのがわかる。
互いの存在を貪るように求め合い、互いが同時に絶頂に達することに喜びを感じた。
そして僕達はまた・・・この世に存在するものがふたりだけという錯覚に酔う。

 

 


もう少しで夜が明けようとしていたときだった。
抱き合ったまま甘いけだるさに酔いしれながら、深く落ちていた僕達の眠りを突然
何かが妨げた。

それは・・・
ベッドサイドで鳴っていたジニョンの携帯電話の着信音だった。

「は・・い・・・ソ・ジニョンです」

『ジニョン・・・あ~やっと出てくれたね』

「・・!先生・・・どうしたんですか?」

『玄関に出て』 電話の主はレイモンドだった。

「玄関に?・・・何処の?」

『ここの・・・』

「えっ?!」

ジニョンが慌てて飛び起きたのを僕は夢うつつで追っていた。
窓から差し込む薄暗い灯りに、服を大急ぎで着ている彼女が見えた。

「・・・どうしたの?」

「レイが!・・・先生がここに・・」

「どういうこと?」

僕はベッドサイドに置いた腕時計を手に取りながら、怪訝な顔を彼女に向けた。

「わからないわ」

ジニョンは乱れた髪を手で大急ぎで梳きながら、鏡で顔をチェックしていた。

 

 

 

私が玄関に出ると、レイモンドが本当にそこにいた。ガラス張りの扉の向こうで
彼は私の顔を見て、ホッと胸を撫で下ろすしぐさをした。
私は玄関の鍵を開け、彼との境を取り除いた。

「どうしてここが?」

「良かった・・・何でもなかったんだね」 

「レイ・・・どうして?」

「電話の声・・・」

「電話?・・・あ・・」

「でも・・・安心したよ」

レイモンドは本当に安堵したように自分の胸に手を当てて静かに微笑んだ。


「レイ・・・」

私は彼のそんな様子に胸の奥が疼くのを感じていた。

「こんな夜更けに何事ですか?」

私の背後から、無表情なフランクが上半身裸のまま現れた。

「・・・・・」

 



僕はわざと上着を羽織らず彼らふたりの前に現れた。

その時ジニョンは僕とレイモンドとの間で、居たたまれないかのように赤面し俯いていた。

「こんな時間まで・・生徒を探して?いったいどういうつもりなんでしょう
 あなた・・・気でもふれましたか?」

僕が彼を蔑むようなもの言いで言葉を吐くと、彼はさっきまでジニョンに向けていた
優しげな表情をゆっくりと冷たいそれに変えた。
そして、唇を軽く斜めに上げると僕に向かって口を開いた。

「・・・・ふっ・・・気がふれた?そうかもしれないな」

「あなたの目的は、他にあるはずでしょう?・・・何を血迷ってるんです?」

「フランク・・失礼よ」

「確かに私は今・・血迷っているのかもしれない・・・
 目的を忘れて・・・そうだな・・・血迷っている・・・」

レイモンドはまるで自分自身に確認するようにそう呟くと、自分からドアを閉め
僕達との間を隔離した。

 

 

「待て!」 僕は急いで上着を羽織ると部屋にジニョンを残して彼を追った。

「・・・・」

彼は乗ってきた車のドアに手を掛けたまま、僕を待つかのように立ち止まっていた。

「今日は、お付きの人はいないんですね・・・おひとりでここへ?・・・・」

「ひとりで行動することだってある」

「よく探し当てましたね・・・ここは誰にもわからないよう
 細心をはらってるつもりだった・・・」

「フランク・・・私に不可能なことはないと、そろそろ理解した方が利口だ」

「あなたが本当にジニョンを心配してここへ来たのは理解できる・・・
 昨夜、あなたと電話で話していた時の彼女はきっと
 不安でいっぱいだったはず・・・
 それで気になったんでしょう?
 さっきジニョンを確認した時のあなたの目は
 いつも僕に向けているそれとは違っていた
 本当に彼女が心配だったんだ・・・」

「・・・・・」

「ジニョンを・・・愛してるんですね・・・だったら・・
 彼女に辛い思いをさせたくはないでしょ?

 ・・・ソウルホテルから手を引いてくれませんか」

「フッ・・・・」

しばらく黙って僕の話を聞いていたレイモンドが、口の端をわざとらしく上げて、
不適な笑みを僕に向けた。

「何が可笑しい」

「フランク・・君ともあろう男が何を甘ったれたことを・・
 私がジニョンを愛してる?
 どいつもこいつも・・・ジニョンを愛しているのかと聞く・・
 はっきりと答えよう・・私は誰も愛してなどいない
 ・・狙った獲物は決して逃がさない・・・それだけだ・・・
 私が欲しいのは・・・ジニョンじゃなく・・
 フランク・・・君なんだよ・・・」

「・・・・・」

「何なら・・今直ぐ彼女に・・・彼女の事実を告げようか?
 そしてソウルホテルを明日の・・・いいや・・この夜明けと共に・・・
 消し去ってみせようか?」

「・・・!」

「フランク・・・君に残された道は、何も言わず
 我々の配下となって、共に生きることだ・・・
 それが我がボスが望むこと・・・私の望みでもある・・・
 そのためなら、我々はどんな手も使うだろう・・・
 ・・・さあ・・君はどう動く?」

「・・・・・たとえあなた方が・・・どんな手を使って来ても
 僕はマフィアの手先になどならない」

「ひとつだけ・・・忠告しておこう、フランク・・・
 運命には決して逆らえないということを・・・
 君がどんなに足掻こうが、私たちに狙われたら最後・・・」
       
「ジニョンは!・・僕の手で守ってみせる」

 

   この時、僕には正直まだ、勝算があったわけじゃなかった
   しかし・・・
   ジニョンだけは何としても守らなければならない

「そうか・・・わかった・・・楽しみだな
 君のそのひと言で、ジニョンの周りの人々が不幸に陥る
 そしてジニョンも・・・
 彼女は君を・・・許すかな?」

レイモンドは冷たい眼差しと不適な笑みを残して、車に乗り込むと、
まだ薄暗い森の中へと消えて行った。

 

 


「フランク・・・」

部屋でひとり、ジニョンが不安そうな顔で僕を待っていた。


「先生は帰られたよ」

「フランク・・私・・」

「いいよ・・何も言わなくても・・・君を不安にさせたのは僕だ
 あの人は、君のその不安を感じ取ったんだ・・きっと
 それで心配でここを探した・・それだけのことだ」


僕はジニョンをそっと抱きしめた。
彼女の髪を優しく撫でながら、僕はレイモンドに思いを馳せていた。

 

   あの時・・・
   ジニョンと彼が電話で話をしていた後
   僕は自分の携帯に入っていたあいつの声を聞いた

        《フランク!ジニョンと一緒じゃないのか!
         返事しろ!》

   その声は興奮を抑えられないでいるように聞こえた
   きっとその後も、あいつはひとりでジニョンの行き先を
   必死に探していたに違いない

   あいつのジニョンへの想いは本物なんだろう

   それなのに・・・
   あいつのしていることは・・・

   あいつの言動はまるで僕を煽っているような気がした
   
   僕に火をつけて・・・面白がっているのか?

   
   いいや・・・あいつには何か他に目的がある

   それはいったい・・・

 

           ・・・何なんだ・・・
    

      

 






 


 






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