2010/07/04 13:06
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirageside-Reymond-13

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ライアンの配下がジニョンを狙っていることを私はソニーからの報告で知った。
それからというもの私は、自分が受け持った授業が無い日であっても、
できるだけ学校に出向くよう努めていた。

フランクとて、十分気をつけてはいるだろう。
しかし私には、悲しいことに奴らの行動が簡単に読めてしまう。

奴らは決して諦めない
ターゲットが動きそうもないと思うその時間にも、決して気を緩めることなく
周到に見張っているものなのだ。

案の定、ジニョンは寮に戻って誰もが寝静まろうとしていたその時に、突然動きだした。
当然彼女の近辺に張り付いていた輩も『ここぞと』動き出す。

その報告を受けた私は、迷うことなくフランクのアパートの方角へと動いた。

私が駅で彼女を待ち伏せて、そっと後を付け始めるとその後方に彼女に狙いを
定めているらしい数人の男の気配を察知した。

私はその男達よりも先に彼女に近づこうと、彼女の進行方向を予測して、
車で先回りをして待った。

 

  「きゃあっ!」

私が彼女の手首を力任せに掴んで無理やり引っ張ると、彼女が驚きのあまり
大声をあげた。
私はその声を奴らに聞かれまいと思わず彼女の口を塞ぎ、乱暴に腕の中に
彼女を封じ込めると急いで物陰に潜んだ。
      
  「シッ・・・動くな!」

その瞬間彼女は、もがいていた体の動きを私の腕の中でぴたっと止めた。

     《見失ったのか!》

     《確かにここに入ったぞ!》

     《探せ!》

     《何としてもあの女を捕まえるんだ!》

彼らの気配が次第に遠ざかってしまった後も、私は抱きしめた彼女を離せないまま、
時を数えていた。

彼女はまだ私の腕の中で恐怖に打ち震えていたが、気持ちをやっと落ち着けて
静かに口を開いた。


  「離して・・・下さい・・・レイ・・・」

  「・・・・」

  「離して・・・」

  「離さない」

私はそう言うと、彼女を抱きしめていた腕に力を込めた。

 

     何をやってる・・・

     何を・・・言っているんだ

 

     こんな子供相手に・・・
 
     何を・・・

 

  「レイ・・・」

  「どうして、ひとりで歩いてた?フランクにも注意をされたはずだろ?」

  「どうして・・それを?」

  「世の中は・・・君が思うよりずっと物騒なんだよ」

  「フランクも・・・同じことを・・・言います」

  「君は・・・本当に・・・見ていられないほど・・・危なっかしい子だね」

  「だったら・・・見ないで・・・下さい」

彼女のその言い方は決して子供ではなく、ひとりの女のそれだった。

  「・・・・ああ・・そうしたい」

 

     そうしたいさ・・・
     どうしてこうも君に拘るのか・・・自分にも尋ねたい
     私が拘ったのは・・・フランク・シン・・・
     その男ただひとり・・・だったはず

 

  「もう・・離してください」

 

彼女の懇願の声に私は腕の力を緩めると、腕の中で震えていた彼女にやっと
顔を向けることができた。

 

  「あの人たちはいったい・・・誰なんですか?」

  「さあ・・」

 

     奴らが誰なのか・・・
     その先に誰が存在するのか・・・
     君には・・・知られたくない


  「私を探しているようでした」

  「そう?」

 

     ああ・・・君を・・・いや、君の大切な
     フランクを標的にしているやつらだ・・・
     そして君をも犠牲にしようとしている・・・

     私もまた、言ってみれば・・・その一味・・・


  「あなたはどうして・・ここへ?」

  「フランクに仕事のことで用があったんだ・・・」

  「仕事って?・・・あなたはいったい・・・」

  「公園に入るところで君を見かけて声を掛けようとした
   そしたら、あいつらが君の後ろを・・・
   公園なんて静かなところを、女の子がひとり歩くもんじゃない
   君は常識を知らなさ過ぎる」

私は厳しい目で彼女を睨みつけていた。

余りに無防備で、恐れを知らない彼女の無垢が無性に憎らしかった。

 

  「・・・ごめんなさい」

  「送ろう」

  「何処へ?」

  「フランクのところだろ?」

  「あなたが・・フランクのところへ行ったら・・・」

  「フランクが怒る?・・フッ・・アパートの下までだ」


      彼を怒らせるのが私の目的・・・
      しかし・・・君が嫌がるとわかっていることに
      私は何故か今夜は・・・
      少しばかり消極的になっていた


  「・・・・」

  「送らせてもらえないなら、このまま君を車に乗せて
   フランクのいないところへ連れて行くよ・・・ん?」

君の顔を覗きながらそう言うと、君は私の言葉を冗談に捉えたのか、
少しばかりホッとしたようにくすっと笑った。

 

      このまま君を・・・
      フランクのいない所に連れて行くよ

      冗談じゃないと言ったら君は
      どんな顔をするんだろう・・・

私が真顔になったことに少し戸惑っていたはずなのに君はその戸惑いを懸命に
私に隠していた。

  「・・・彼に・・・逢いたくて・・・」

  「・・・愚問だったね」

私がそう言って言葉を途切れさせると、彼女もまた口を噤んだ。

そうして私たちふたり、何も言葉を交わさないまま、しばらくの間、
暗闇の時を一歩一歩刻んでいた。
    

  「私のことが気になるのかい?」

  「えっ?」

  「さっきからずっと・・・見てる」

 

     私は彼女の方を向くことなくそう言った

     さっきから・・・
     君の視線が私に注がれる度に・・・
     頬が無意識に緩む自分を心の中で笑っていた

 

  「い・・いいえ・・何も・・」  
  「着いたよ」

  「あ・・はい・・・ありがとうございました」

  「これからは・・」

  「これからは決してひとりで歩いたりしません」

  「ん・・・じゃ・・」

  「はい・・・」

 

     私のことが気になるのかい?

     何を馬鹿なことを・・・



 

彼女と別れた後、背後にうごめく黒い複数の影に向かって私はおもむろに近づいた。

彼らは私の存在を認めると、少しばかりたじろぐ様子を見せながら後ずさりした。

  「私が何者なのか・・・わかっている顔だな」

その中の兄貴分らしい男の襟首を乱暴に掴んで私は睨んだ。

  「・・・・」

  「お前のボスに伝えろ・・・勝手なまねをするなと・・・
   私に歯向かう奴は、たとえ誰であろうとも・・・
   許さない。・・・今私が言ったことを一字一句間違いなく・・・
   伝えろ。・・・いいな。・・・」

  「・・・・」

  「行け!」

男達は身の置き所に困ったように落ち着きをなくし、そそくさと私の前から消え去った。


  「若・・」

ソニーが私の後を追っていた車の中から降りて来た。

  「見かけない奴らでしたな・・・」

  「ん・・・だから余計に何をするかわからない」

  「手柄を立てて、幹部に取り入ろうとしている末端の奴らだと?
   いかがなさいますか?」

  「しばらくの間目を光らせてくれ・・」

  「若・・・あの子がそれほど気になりますか」

  「・・・・」

  「ま・・聞きますまい・・・あの子はソ・ヨンスの娘・・・
   私も守りたい気持ちは同じです」

  「頼む・・・お前にしか頼めない」

  「承知しました」


     フランク・・・急げ・・・

     お前の大切なものをいつまで守り通せるか・・・

     保障はできないぞ・・・


     いやそうじゃない・・・私のこの気持ち・・・


         保障ができないのは・・・きっと

 


            ・・・そっちの方だ・・・


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