2010/03/06 14:27
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-4.うそつき

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彼女の白くふくよかな胸のふくらみを掌で揉みしだきながら
僕は彼女を深く突き上げてめくるめく快楽の世界へと導く

僕の腕の中で・・・

理知的でいつもは落ち着き払った彼女が華麗に・・・しなやかに・・・
白い海に乱れ落ちていく

そして・・・

彼女と僕の頂点が重なり合った時、一瞬泣いたような顔を見せる
彼女のその憂い顔が好きだった

僕にとって女を抱くという行為に特別な意味はない
愛しているとか、いないとか・・そんな男と女の甘い執着も生まれることはない

しかし他の女を抱くよりも彼女を抱く方が僕は落ち着くことができた
それは何故なんだろう・・・

それは彼女が・・・

決して僕の心を求めないからと知ったのは・・・最近のことだ


17の夏・・・僕は・・・女の肌を初めて知った

   ソフィア・ドイル・・・  

彼女と初めて言葉を交わしたのは大学にスキップした年の翌年のことだった

彼女は僕よりも4つ上で、二学年先輩だった

僕はその頃自分の意思で養父母の元を離れ、奨学金のお陰で
学費の必要は無かったものの勉強以外の時間を生活のための
アルバイトに追われていた

僕はその頃、周りを見る余裕すら無くて、時に孤独に押しつぶされそうに
なったこともあった

まだ本当に子供だったんだ

ある時・・・
そんな僕をいつも誰かが見つめていることに気がついた
決して、近寄らず、遠くから熱い眼差しをくれる美しい人

いつもどこでも彼女の視線を感じることができた。

大学に入学して一年後、僕は更にスキップして、彼女と同じ講義を受けるように
なっていた。

ある日僕はわざと彼女の隣の席に座った。
いつも遠くから僕を見ていた彼女は突然僕が隣に座ったことに驚きを隠さなかった。
彼女は授業の間中、時折僕の横顔に視線を向けながらも僕を意識して無視した。

『僕に何か用ですか?』

『えっ?』

『ずっと、見てた。・・・僕を・・・』

『・・・・・・・・あなたに・・・キスしたくて・・・』 
突然僕に声を掛けられた彼女は一瞬言葉に詰まっていた。そしてやっと口から
突いて出た言葉がそれだった。
彼女は自分のプライドを守ろうと毅然を装っていた。

僕はそんな彼女の様子を面白がっていた。
だから何も言わず、彼女にゆっくりと顔を近づけて当然のようにくちづけた。
授業が終わったばかりの騒然とした教室の中で、まだ多くの級友が取り巻く中で。
“僕がその時表情のひとつも変えなかった”と、後になってソフィアが不平を言った。

その後、気がつくと僕は彼女の手を強引に引いていた。
 
『ちょっと!何処行くの!』

『・・・・・・・・』

『止まりなさい!・・・フランク!』 

『僕の名前・・・』

『あなたの名前?・・・』

『知ってるんだ・・・』

『・・・・・何処に行くの?』

『あなたの行きたいところ・・・』

『私の?・・・私の行きたいところへ?・・・それで・・・何するの?』

『あなたのしたいこと・・・』≪いや、僕のしたいこと≫

『あなたね・・・そんな回りくどい言い方しないで!』

『あなた・・・僕のこと、好きなんでしょ?この半年、ずっと僕を見てた』

『あなたも・・・私のこと好きなの?』

『いいえ』 僕は至って正直に言った。

『はっきり言うのね・・・』

『でも、好きになるかもしれない・・・』 

『気になるの?・・・私のこと・・・』

『ええ』

≪嘘だった。好きになる?・・気になる?・・・
 その感情がどういうものなのかが僕にはわからなかった≫

『だったら・・・いいわ・・・私の行きたいところで・・・
 私のしたいこと・・・して・・・』

そして僕達は・・男と女になった。

学校でもいろんな意味で変わり者扱いを受けていた僕をいつも彼女だけは
一人前の男として、ひとりの人間として扱ってくれた。

その穏やかで慈愛に満ちた優しい視線の持ち主は僕の尖った心にいつしか
休息を与えてくれる存在になっていた。

 

僕はベッドの端に腰を掛けて、煙草をくわえるとジッポの音を鳴らした。
そして、その煙を深く吸い込みながら顎を少し上げると、唇の先から細く煙を
噴き出した。

僕の胸中にはその時何の感情も生まれていなかった。ただその白い煙が
立ち上る先を目で追っていただけだった。

彼女はしばしベッドにうつぶせたまま、鼓動が落ち着くのを待っているようだった。
それはいつものことだった。その間僕達は互いに声を掛けることも触れ合うこともない。

僕はゆっくりと一本の煙草を燻らせたあと、彼女を置き去りにして、
ひとりシャワー室へと向かった。

 
   僕は・・・女の心を求めない          
   いや・・決して・・・誰の心も求めない
   そして求められるのはなおのこと煩わしい

   女は・・・
   時に冷めきった体を・・・
   黙って温めてくれる・・・それで良かった

   人にまとわりつかれることが疎ましかった
   
   抱くだけの女は他にもいた
   そんな中で彼女が特別な存在だということは否定はしない

   しかし、たとえ彼女であっても拭えないこの虚しさに・・・
   僕はこうしていつも・・・喘いでいる

 

≪僕が本当に欲しいものは・・・いったい何なんだろう・・・≫

 

僕はシャワー室を出ると冷蔵庫からミネラル・ウォーターを取り出し
ゆっくりとのどを潤しながら、パソコンを起動させた。
       
そして数時間前に約束したレオナルド・パクへ送るべき資料を
メールに添付する作業を始めた。

その時ソフィアがやっとシャワー室へと消えていった。

 

「フランク・・・仕事の方はどう?」 
ソフィアはシャワー室から部屋に戻った時には既にここへ来た時の服装に
身を包んでいた。

「ん・・・弁護士は確保した・・・
 まずは小さな会社から手を付けていく・・・
 もう着替えたの?」
僕は横目で彼女をちらりと見て、またPCに視線を戻した。

「そう・・・私も・・卒業後の進路を決めたわ・・・」 
彼女は僕の質問に答えることなくそう言った。

「ん?・・」≪進路?≫

「弁護士になろうかと思って・・・」

「検事志望じゃなかったの?」
彼女は大学入学当初から、検事を志望していたと聞いていた。

「止めたわ・・・」 
彼女は頭の後ろに両手を回して、長い髪を後頭部でくるりとまとめてた。
「僕のため?」 僕は一度キーボードから指を離し、彼女を見た。

「何故・・私があなたのために?」 
彼女はそのまとめた髪を大きなピンで留めながら僕に視線を送った。

「ならいいや・・・」 僕はまた手元の作業を再開した。


「コーヒー飲む?」 彼女はキッチンに移動して言った。

「いや・・ミネでいい・・」 僕は手元のミネを持ち上げて見せた。

「そうだったわね・・・」 
ソフィアは自分だけのために、慣れた手つきでコーヒー豆を挽いた。


   
「ね・・・卒業したらここへ来る?」

僕の視線は終始パソコンの画面を追いながら、言葉だけが彼女に向かっていた。

「ここへ?」 彼女は僕の言葉が不思議であるかのように首をかしげていた。

「ん・・」 僕は彼女との視線を交えないまま答えた。

「・・止めとくわ」 ほんの一拍を置いて、彼女は直ぐに答えた。

「そう・・・」 僕はただそう言った。

「・・・・・試したわね・・・フランク・・・」

「何を?」

「私の答えは・・正しかった?」 そう言って彼女は僕の顔を覗きこんだ。

「・・・・・来ればいいさ」

僕の向かいに立ちコーヒーカップを口に運んでいた彼女に
僕はやっと視線を向けながら言った。

「正しかったみたいね・・・・・」

そう言って彼女は僕を見透かしたように優しく睨んだ。

   確かに・・・
   あなたが決してそうしないことがわかるから言ったのかもしれない
   女と暮らすなんて・・・考えたことも無い

   もしも女がそれを望んだら・・・それで関係は終わりを告げる
   ソフィアという女はそれを良く知っていた
  

「遅くなったね・・・どうする?」 僕はパソコンから離れて、ソフィアのそばに近づくと、
彼女が髪をまとめていたピンを抜き、その髪を彼女の肩に落とした。

彼女は僕のその行動を目で叱った。
「その方が素敵だ」

「帰るわ・・・勉強したいこと沢山ある・・・みんな今必死よ・・・
 あなたみたいに余裕がある人間なんてあの学校にはいないわ」

 

   女と朝を迎えない・・・
   そんな僕を知っているのも・・・あなただ

   きっと・・・
   僕自身よりも・・・僕を知っていた


「余裕?僕には生活が懸かってるだけだ・・・学校で遊んでる暇が無いだけ」

「遊び・・ね・・・あなたにかかったら、研究材料も遊びだわね・・確かに・・」

「まあね」
僕はそう言って、片方の口角を上に上げた。

 

     

 

「ジニョン!」 ジョルジュが教室の後方から呼ぶ大きな声に私は振り向いた。

「俺はバイトに行かなきゃならんから、お前は早く寮に帰れ・・・
 いいか、寄り道するんじゃないぞ。」
あの日以来、ジョルジュは自分と一緒で無い日は、必ずそう言って念を押した。


私は最後の授業のあと、ため息をつきながら教材を片付けていた。
≪授業の間中、私はいったい何回の溜息を吐いただろう≫

「わかってる・・オッパ、最近ちょっと心配し過ぎよ」 そう言いながら、
私はジョルジュを横目で睨んだ

「お前が心配させるようなことするからだろ?お前に
 もしものことがあったら、俺はお前の親父に殺されるぞ」

「オーバーね」

「オーバーなもんか・・・もうあんなことするんじゃないぞ!
 俺からたとえ連絡無かろうと、
 一人であんなとこに来るんじゃない・・わかったか?」

「う・うん・・・」 ジニョンは口を尖らせながら、俯いた

「どうした?具合でも悪いか?」

「ううん・・どうして?」

「ため息ついてた」

「大丈夫」

「そうか・・じゃな・・行くぞ・・」

「うん・・じゃ、明日ね・・」

 

 

俺の脳裏にあの時のあの男の眼が焼きついて離れなかった。
俺を睨んだまま決して視線を逸らさなかったあの鋭い眼

    俺はあの時・・・

奴の情熱的なまでのジニョンへのキスに圧倒されて息を呑んでしまった。
心に走った衝撃が俺の声を封じ込め、身動きできなくしていた。

あの瞬間、目眩がしたのは・・・決して熱があったわけじゃない。

ジニョンはあいつのあの激しいキスに本当に気がつかなかったのか?

しかし、あいつがあの男のことを意識したことには間違いない。
男が消えてしまった後、ジニョンは奴の話を一切しなくなった。

   それが・・・

あの男を忘れていない・・・その証拠だ・・・

   だから・・・

俺はジニョンにあの時のことを言わなかった・・・いや・・・
あの光景を・・・悪い夢だったと、思いたかったのはきっと・・
この俺の方だ。

 

 


忘れられなかった・・・

   フランク・・・フランク・・・フランク・・・

私の頭の中にその名前だけが繰り返し巡っていた。
こんなこと・・・今までに経験の無いことだった。

10時間・・・彼といたたったの10時間
でも、ずっとずっと長く・・・一緒にいたような錯覚を覚えた。

無愛想で・・・
鋭いまなざしは少し怖い気さえした。

でも私はあの時・・・彼が一緒にいてくれることを即座に望んだ。
あんなこと・・・後で考えれば、決して私のやれたことじゃない

  それなのに・・・

無意識に彼の袖を引いていた。
何がそうさせたのか・・・わからない・・・

あの日から・・・
私はジョルジュに・・・嘘をついている。

彼のことを何とも思っていないなら笑って話題にするはずなのに

ジョルジュに嘘をつくことなんて今まで一度も無かったのに。

 

 


「今度はいつ来る?」

「わからないわ・・・あさっては学校でしょ?」

「ああ・・でも向こうではこんなことしてる暇が無い・・・」

彼女の背後から、僕が肩に下ろした長いブロンドの髪を片方に寄せ、
彼女の白い首筋を露にすると、そこに唇を這わせながら僕は囁いた。

「ふふ・・校内に缶詰ですものね・・・」

そして腰に回した僕の手を彼女はそっと自分から外して、身支度を始めた。

「ねぇ・・僕をじらしてる?」 

「じらす?・・あなたがそんな言葉・・使うの?」

「あなたにだけだ・・・」

「フランク・・・あなたには似合わない言葉ね・・・」

「どんな言葉なら似合う?・・・帰らないでって・・・言おうか?」

「じゃあ、言ってみて?・・・」

 

「か・・」

“言ってみて・・・”そう言ったはずのあなたの小指が僕の口が動くのを止めた。

「フランク・・・思っても無いことは言わない方がいいわ・・・」

「思ってないわけじゃない」

「預かった鍵・・・ここに置くわね」

「持ってればいいのに」

「鉢合わせはごめんだわ・・・」

「誰も来ないよ」

「・・・・・・・・・フランク・・・何かあった?」

「・・・どうして?」

「・・・・・何となく・・・」

「何が言いたいの」

「嘘はつかないで・・・」

「嘘?・・・あなたに嘘をついたことはない」

「・・・・・さっき・・・ベッドの中で・・言ったわ」

「何を?」

「愛してるって・・・」


「それが?・・・」


「ええ・・・それが」

 


     ・・・うそつき・・・

 

   


 


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