2010/03/20 16:15
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-11.いつの日にか

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「ねぇ・・フランク・・・」

「ん?」

「どうしても駄目?」

「駄目」

「だって・・これ・・・難しいもの・・・ちょっとだけ・・・お休みしない?」

「試験で間違えた問題は理解するまで徹底的にやる!
 そうすると二度と同じ間違いをすることはないし、
 次へのステップの基盤が完成するんだ・・いいから・・やって!」

「え~フランクって、大学の教授より厳しいじゃない。
 せっかく、一週間ぶりに逢えたんだし・・・ねっ!フランクだって、
 私のこと待ってたでしょ?」 そう言って彼女が下から僕の顔を覗きこんだ。


「待ってない。」 
僕は彼女の視線を無視してもくもくと、彼女が試験で間違えてしまったという問題を解いていた。

「うそ・・じゃあ、さっきはどうしてあんなことを?」 更に僕に顔を近づけて彼女は攻め込んだ。

「あれは・・・ちょっと・・その・・間違えた」 

つまらない言い訳をした僕の顔にはきっと、真実味などなかっただろう。

「間違えた?誰と?・・・あぁ・・恋人と?・・・
 ふ~ん・・・そうなんだ・・・ふ~ん・・・・・・」

「ジニョン・・・いいから、ほら・・これだけでもやって・・・」

僕がそう言うと、突然彼女が僕の顔をまじまじと見つめながら、意味有りげににっこりと微笑んだ。

「何!」

「もう一回・・・」 彼女が人差し指を立てて、微笑み言った。

「・・・何を?」

「ジニョン・・って」 

僕が今、彼女のことをそう呼んだことを、僕自身も気づいていた。

「もう一回・・」

「・・・早くやって!」 僕はそれをごまかすように彼女の頭に掌を押し付けた。

「照れちゃって・・・あなたの方が子供みたい・・・」

彼女はブツブツ言いながら、仕方なく難解な問題にしぶしぶと戻った。


問題集を広げるといっぱいになるほどの狭いテーブルで、僕のほぼ真下にある彼女の黒髪が
僕の鼻先を甘くくすぐると、彼女の視線が届かないところで僕の目が彼女を抱きしめていた。

今までの僕ならば・・・女と意気投合してこうしてふたりだけで過ごしていたならば・・・
間違いなく、何の躊躇もなくただ抱き寄せていただろう。
男と女が、肌を寄せ合う理由など、それ以外に何があるという?

その僕が・・・彼女を相手に数式を解いている。

   笑える・・・大いに笑えた・・・

そして自然に彼女の名を口にしていた僕自身の心の変化をも、僕は不思議と
心穏やかに受け入れていた。

ジニョン・・・
彼女が吹き込んだ爽やかな風が僕の心に安らぎを与えるかのように・・・

「出来た!・・・フランク、これでいい?」

「どれ?・・・・・・・ああ、正解だ・・どう?自分の身についた実感あるでしょ?」

彼女は満面に笑みを浮かべて「うん」と頷いた。そのあまりの可愛さに僕は何故か
下を向いて笑った。

「何が可笑しいの?」 彼女は少し不満そうに言った。

「えっ?・・いや・・可愛いなと思って・・」 僕はつい正直にそう言ってしまった。

「可愛いと、笑うの?」 彼女は今度は不思議そうに僕の顔を下から覗いた。

「笑っちゃ駄目?」

「普通は可愛いと思ったら、キスするんじゃない?」 
彼女はそう言いながら、頬を赤くした。
きっとそれは彼女にとっては精一杯の背伸びした台詞だったからだろう。

「して欲しいの?」 僕はからかうようにそう言った。

「・・・して・・欲しい・・わけじゃ・・・ないわ」≪本当に?≫

「そう」 僕はその言葉通りに、彼女に触れなかった。

「・・・・・」

彼女が少しばかり不満そうな顔をして無言で僕を見ていた。
僕はその視線にわざと気づかない振りをして席を立った。       


さっき、彼女が久しぶりに訪ねて来た時、僕は不覚にも無意識の内に
彼女を抱きしめていた。

   わかっている・・・


その行動に一番驚いていたのは・・・


   他ならぬ・・・この僕だ・・・

 

「・・・そろそろ帰った方がいいんじゃない?・・・」

「えっ?・・・」

彼女の不満顔がMAXになって僕に無言で、何かしらを訴えた。

「何?」

「あ・・門限の時間まで・・・もう少しあるわ・・もう少し・・星見てちゃ駄目?」

   知っているだろ?

   今日は星は出てない


「駄目?」

「好きにして。」

「一緒に・・」 彼女は熱いまなざしを僕に向けた。

   そんな目で誘うな


「駄目だ」 僕は懸命に冷たさを装った。

「どうして?」

「どうしても。」

「・・・・・・」 彼女が寂しそうに顔を伏せてベランダに出て行った。
僕はそんな彼女を構わないと決めて、問題集から仕事の書類へと注意を移した。

そうしていなければならない何かが、僕の心を乱していたからだと、その時の僕は
気づかない振りをしていたのかもしれない。


彼女はベランダからなかなか戻って来なかった。

僕はしばらくして仕事の手を休めると、新しいコーヒーをふたり分用意し、
椅子の背に掛かっていた自分のカーディガンを腕に抱えて、両手にコーヒーカップを持った。

そして彼女がもう長いこと佇んでいるベランダに出るとまず、カーディガンを受け取るように
彼女に目で合図した。

「風邪引く」

僕が声を掛けると、彼女はプイと横を向いた≪何を怒ってるんだ?≫

「ほら・・これ着て。」

彼女は仕方ないという顔で僕の腕からカーディガンを受け取り、無言でその袖を通すと、
僕の差し出すコーヒーを受け取った。

「何してたの?」 僕は手摺りに腕を乗せて、コーヒーカップを口元に運びながら言った。

「考えてた」

「何を?」

「フランクが・・・・」

彼女はベランダの手すりに置いた自分の手に自分の顎を乗せて少し口を尖らせた。

「僕が・・何?」

「フランクが・・・どうして私とセックスしないのかなって」

「プッ・・・・」 僕は思わずコーヒーを噴出してしまった。

「私って・・そんなに魅力ないのかなって・・・
 私の体は・・・フランクにとって男としての欲求が沸かない体なのかなって・・・」

「子供の癖に・・・言うことが大胆だね」

そう言ったあと僕はひと口分のコーヒーがのどを通過するのを待った。

「また・・子供扱い・・・それって、凄く不愉快!」
彼女は不満たっぷりの顔をして、僕にではなく、外の景色に向かってぶつけた。

「大人の女はね・・いちいちそんなこと口にしないもんだ
 君はね・・・粋がってるだけ」

「そ・・そんなこと・・ないわ」

「そう?じゃあ、試してみる?」


「えっ?」

僕はコーヒーカップをテーブルの上に置くと無言で彼女にじり寄った。

「フランク・・・そんな怖い顔しなくても・・・」

彼女は自分の緊張をごまかすかのように笑っていたが、僕はそれには応えなかった。

「・・・・・・」

僕はふいに彼女の胸のふくらみをその服の上から鷲づかみにした。
彼女はその瞬間、持っていたコーヒーカップを落とし、その割れる音が彼女の幼い顔を
驚愕にひきつらせていた。

僕は容赦なく壁に彼女の体を押し付け、その首筋に唇を這わせた。
そして瞬時にもう片方の手で彼女の短いスカートの裾をたくし上げると、その手を下から
彼女の中心へと侵入させた。

彼女の体が一瞬にして硬直し唇が戦慄くように震えていた。

それでも彼女が無意識に僕の体を押しのけようとした手を僕は力づくで外して、
壁にそのまま押し付けた。

「止めて・・・」 彼女の顔が青ざめるのを確認していながら、僕は止めなかった。
彼女のブラウスを大きく開いて強く押し当てた唇を首筋から鎖骨へと移動し始めた。

「止めて!」 今度は彼女が凄い力で勢い良く僕を跳ね除けた。

「こんなんじゃないわ・・・」
「君がそうしてと言った。」

「違う・・・こんなんじゃない」
「同じことだ」

「違う・・・」
「何が違う?・・」

二人の間に緊迫した沈黙が流れ、僕は彼女を、彼女は僕を睨みつけていた。

彼女が先に目を逸らした。
僕も彼女の体から手を離してベランダの鉄筋の柵に両肘を付くと広がる夜景に視線を離した。


しばらく冷たいふたりの沈黙が続いた後、僕は背中に彼女の柔らかい頬の感触を感じた。

「ごめんなさい・・・私って・・・変なの・・・
 フランクにそうして欲しい・・・本当にそう思ってるのに・・・」

「・・・・・・」

「・・・フランク・・・怒ってる?・・・」
       
僕はゆっくりと彼女の方に振り返ると彼女の頬に掌を当て、微かな笑みを彼女に向けた。

「君はね・・・きっとまだ・・・心と体の成長が一致してないんだ」

「・・・・・・」

「怯えた目をした女を抱くなんてごめんだ」

彼女のきらきらと輝く潤んだ瞳が、きっと僕に強がりを言わせていた。

結局のところこの僕が彼女の怯えたまなざしから逃避している。その方がきっと正しい答えだ。
それを見透かされているようで一瞬彼女から視線を逸らし・・・そしてゆっくりと戻した。

「どうして・・そんなに急ぐ?」

「だって・・・」

「そんなことをしないと不安なのか?」

「だ・・って・・・」

「急がなくていい・・・いつか・・・」

「いつか?・・・」

「僕はいつか・・・君と・・・」 ≪きっと・・・≫  

「本当に?」

「ああ・・・何故だかわからないけど・・・」 

本当にわからなかった。そうなるのかさえ、真実はわかってはいない。

「・・・・・・・」

「そんな・・・気がする」

僕は彼女の唇に自分の唇をゆっくりと近づけるとそっとささやいた。
        
「君がいつの日か・・・僕を好きだという気持ちと同じくらいに
 君の体が僕を求めたら・・・その時は・・・」

「その時は?・・・」

「抱いてやる。」

「・・・・・・えらそうー」 彼女は真っ赤になった後、やっと笑って僕を見上げた。

「それに・・・」

「それに?」

「いや・・・何でもない・・・」 僕はまた体を翻して柵に手をかけた。

「また、言いかけるの?・・・やな感じ」

彼女は少し元気を取り戻して僕に憎たらしい顔をして見せた。

僕はそんな彼女から視線を逸らしながら、他のことを考えていた。


それに・・・




「ソフィアを見なかった?」

「いいえ・・今日はまだ見てないわ」

「ここんとこ、休んでるみたいだよ」

「そう・・・」

ソフィアと話がしたかった。

話をしなければならない・・・そう思った・・・

   何を?

それはソフィアが・・・
彼女の方がもう気がついていることだと思っていた

僕はこの二日・・・ソフィアを探し歩いた
しかし・・・彼女には一度も会えなかった。
彼女は学校にも現れず、アパートにも戻っていなかった。
 
電話すら繋がらなかった・・・

   そう言えば・・・

僕が彼女をこんな風に探したことが今まであっただろうか・・・

ふとそんなことを思った。

   なかったような気がした・・・それは・・・

   いつも・・・気がつけば彼女が・・・

   僕のそばにいたからだ・・・

 

 

 

ジニョンと出逢ってふた月・・・
彼女が僕のところに現れるようになってひと月が経過していた。
彼女は殆ど毎日のように僕の部屋に訪れていた。

そこには・・・くったくない笑顔を惜しみなく僕に向けてくれる彼女と、いつの間にか
彼女との時間をこよなく楽しむ僕がいた・・・

彼女の訪れを待ちわびる僕がいた・・・

   そして・・・今日もまた・・・

   そろそろ・・・彼女がやってくる・・・

僕はベッドに寝ころびながら、目を閉じた。

   今頃きっと・・・エントランスに入り・・・

   エレベーターに乗り込んで・・・

   僕の元へと急いでいる

彼女の気配が近づくにつれて、僕の心臓の音が間隔を短く刻み始める。 

そして僕は・・・彼女が・・・玄関に近づく足音を待った

   来た・・・

僕は即座にベッドから起き上がると上着を手に取って玄関に向かい、
彼女が呼び鈴を鳴らす前に乱暴にドアを開けた。

「キャァ!・・あーびっくりした!フラ・・ンク・・・?」

彼女は不意に開いたドアに驚いて胸を押さえていた。

「入らないで。」 僕はそう言いながら、急いでドアの鍵を閉めた。

「え~!どうして?」

「出掛ける」

「え~!何処へ~」

「何処でもいいだろ」

彼女が僕を追いかけて文句を言った。

「何処でもって・・何処に行くの~・・せっかく来たのに・・・」

「いつもサンドウィッチじゃ、飽きるでしょ?」

「えっ?」

僕は不思議がる彼女の手を無造作に掴むと、さっき彼女が降りたばかりのエレベーターに
急いで乗り込んだ。

「フランク・・・」

僕は彼女の視線から避けたまま、無愛想な顔を作っていた。

「ねぇ、フランク・・・出掛けるって・・もしかして・・私も一緒に?」

彼女がニコニコしながら繋いだ手を上に上げて見せた。

「これって、もしかしてデート?」

「そんなんじゃない・・ただの食事」

「え~!だって・・・ふたりで出掛けるんでしょ?デートよ~そうよ・・・
 デート・・ね、フランク」

「うるさい」

彼女は嬉々として、いつの間にか僕の腕に手を回し、僕にぶら下がるように寄り添った。

僕はその手を払わなかった。

 

「何をご馳走してくれるの?フランク・・」

   こんな何でもないことが・・・

 

「何を食べたいの?」

   君のその・・・くったくない微笑が・・・

 

「サンドウィッチ以外なら、何でも・・」

   こんなにも愛しい・・・

 

「何処で食べたい?」

   こんな想い・・・

 

「あなたと一緒なら、何処ででも・・」

   本当に・・・初めてだ・・・

 

“あなたとなら何処ででも”・・・君は照れもしないでそう言って微笑んだ。

   僕も・・・きっと・・・

   ・・・きっと、同じ想いだ・・・ 

 

 


 

      






 

 


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