2010/03/23 11:25
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-13.でも・・・

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・・・冗談は止めて!・・・

ジニョンの叫ぶような声が僕の背中に冷たく突き刺さっていた。
彼女が今どんなに悲しい想いで、どれほど悲痛な顔をしているのか手に取るように
僕にはわかる。
それなのに僕は自分の意思で彼女を振り返らなかった。
僕を追う彼女の声をあの男の元に置き去りにしてしまった。

   何故だ!

行き場の無い嫉妬心に駆られていた僕は激しくいらだち、傍らにそびえ立つ樹木に
力一杯拳をぶつけていた。

   どうして、あんなことを・・・

   心にも無いことを・・・言ってしまったんだ


時折後ろを振り返りながら僕は歩いていた。

   何を・・・期待している?・・・

結局彼女は僕を追っては来なかった。追ってくるはずなど無かった。

   君をまた傷つけたのは・・・また・・


   この僕なんだから・・・




 

私はフランクによって気絶しかかっていたジョルジュに肩を貸して、ひとまず近くの
公園へと向かった。彼をそこのベンチに腰掛けさせると、バックからハンカチを取り出した。

「オッパ、待っててね・・・これ、濡らしてくる」

彼のそばを離れようとした時、彼が私の手を力強く掴んだ。

「行くな・・・」
ジョルジュが子供のような目で私を見上げながら止めた。
      
「でも・・その傷・・早く冷やさないと・・・」

「いいから・・・座って・・・」 ジョルジュは私の手を引いて、自分の隣に腰掛けさせた。

私はハンカチを濡らすことを諦めて、彼に従いそこに座った。
「オッパ・・・」

「・・・・・・ざま・・・ないな・・・」 
彼は私が隣に落ち着くと、少しホッとしたように口元に笑みを浮かべ、ポツリポツリと呟いた。

「無理するからよ・・・喧嘩弱いくせに・・・」 
私はいつもと同じに憎まれ口を言う時のように、唇を尖らせてそう言った。

「フッ・・・小さい頃から、いつもそうだったな・・・
 大人たちには“僕がジニョンを守る”そう宣言しておきながら・・・
 実際に守られてたのは俺の方だった・・・幼稚園の頃も・・・小学校の頃も・・・
 お前が俺の前に立ちはだかって、喧嘩をけし掛けてきた奴らに睨み利かせてた・・・」 

彼はふたりがまだ同じ方向を向いていた時のことを懐かしむように宙を仰ぎながら言った。

「そうだった?」

「ああ・・・そうだった。」

「オッパ・・・お坊ちゃんだったから・・・」

「お坊ちゃん・・か・・・よく言われてた・・・気弱で・・・非力な・・・お坊ちゃん・・・
 お前を守れない自分が歯がゆくて・・・強くなりたくて・・・」

「・・・・・・」

「・・・それで・・・家を出たんだ・・・」 

「知ってる・・・だから・・・」 私がそう言うと、ジョルジュは驚いたように私を見つめていた。

「だから・・・追って来たの」 

ジョルジュは変わらず驚いた顔で、沈黙したままだった。

「おじ様に頼まれたの・・・あいつを守ってやって欲しいって・・・」

「おやじが?」

「オッパ・・・跡取りだもの・・・心配してるのよ・・・おじ様
 口では勘当だと言ってても・・・大事な息子なんだから・・・
 私がそばにいれば、道を外すことはないだろうって・・・うちの父と共同戦線張ってた・・・」

「俺はお前の親父に“ジニョンを守るんだぞ”って・・・結局・・・
 お前の方が俺より親父たちに信用あるってわけか」
ジョルジュは呆れ返ったようにそう言いながら、また宙を仰いだ。

「ねぇ、オッパ・・・いつから”俺”って言うようになったの?
 ずっと言おうと思ってたけど・・ちっとも似合わないわ」

ジョルジュは情けないような顔を私に向けて笑った。
「お前を守れる強い男になろうと決めた時から・・・」
ジョルジュはそう言った後、それは冗談だと言わんばかりに大きな声で笑った。

「オッパ・・いいえ・・ジョルジュ・・・私ね・・・小さい頃・・・
 あなたが私の王子様だと思ってた・・・」

「思ってた?・・・・」

「 ジョルジュ・・・運命って言葉信じる?」

「ああ、信じてる・・・俺の運命はお前と生きることだ」

「ジョルジュ・・・・」 私は困ったように彼の顔をみつめた。

「違うのか」 彼は私のその表情の意味をひとつ残らず悟ったかのように、寂しげに呟いた。

「・・・・・私も・・・そう思ってた・・・でも・・・」

「でも・・・何だ・・・」

「でも・・・あの人に出逢って・・・あの人を知って・・・
 最初はね・・・どうしてこんなに気になるんだろうって・・・
 ただ逢いたくて・・・逢いたくて・・・たまらなくて・・・
 一生懸命探したの・・・あの人を・・・
 そして・・・やっと見つけて・・・そしたらね・・・あの人を見つけたとたん
 胸が締め付けらるように苦しくなって・・・・」

「止めろ・・・そんな話・・・」

「感じたの・・・私は・・きっと・・・この人の為に・・・この世に存在してる・・・
 無意識にそう感じたの・・・だから・・・」

「止めろ!
 止めて・・くれ・・・あいつと会ったのはたった二月前だぞ・・・」
興奮したジョルジュから怒りがほとばしり、私の肩に置かれた手の指がそこに食い込んだ。

   痛かった・・・

   だけど・・・ジョルジュ・・・

   ごめんなさい・・・私はもう・・・

   ごめんなさい・・・ジョルジュ・・・


「私ね・・自分でも信じられないの
 ・・・あの人に・・・あんなこと・・・自分のしていることが
 まるで私じゃないみたいで・・・
 でもそれは私なの。・・・彼に向かった私が本当の私・・・
 そうなのよ・・・ジョルジュ・・あなたは誤解してる・・・
 彼が私に何かしたんじゃない・・・私の方なの・・・
 私が・・・彼を勝手に・・・愛して・・・」
       
「違う!」

「ジョルジュ・・」

「違う・・そんなこと!・・・お前の錯覚でしかない・・・
 目を覚ませ・・・ジニョン・・
 さっき、あいつが言ったこと・・お前も聞いただろ?
 ひどい言葉だった・・冷淡な声だった・・・
 あいつは・・あの男はあんな奴だぞ・・・」

「あれは・・彼の本心じゃないわ」

「そんなの・・どうしてわかる!」

「 わかるの!・・・わかるの・・・」
私はジョルジュから目を逸らすことなく自分の想いを告げた。 
  
「お前は!・・・お前は・・・俺の嫁さんになる・・・
 十八年前から決まってることだ・・・」

「それは・・・私達が小さい頃、親たちが決めたことだわ」

「俺はずっと本気だった・・・お前は違ったのか」 

私はジョルジュの真剣な問いかけに、彼の望む答えを返せない自分を十分に悟っていた。

「・・・・・・ジョルジュ・・もう大丈夫よね・・・私・・行かないと・・・」

「行く?・・・何処へ・・・」

「・・・・・・・」

「何処へ!」

「きっと・・・あの人が待ってる・・・」

「待ってる?・・・待ってるもんか!」

「きっと・・・泣いてる・・・だから・・・直ぐに行かないと・・・」

「泣いてる?・・・あいつの言葉・・忘れたのか!」

「ごめんなさい」

「ジニョン!待て!行くな!・・・行かせない!
 俺は・・・俺だって・・・ 」

私は少し足元がおぼつかなくなっていたジョルジュを気にしながらも、彼を振り切るように
その場を走り去った。

「ジニョン!今にわかる!お前は・・・ お前は・・・俺と生きるんだ!
 あいつなんかに渡さない!どんなことをしても・・決して渡さない!」  
   
          ねぇ・・おばさん・・・
          ジニョン・・・可愛いね・・・

                  可愛いでしょ?

          ジニョン・・僕のお嫁さんにしていい?

                  いいわよ・・ジョルジュ・・・その代わり
                  ジニョンを守ってくれる?

          守るよ!きっと守る・・・

                  約束ね・・・

          うん!やくそく!


       お前の母さんと・・・  約束したんだ・・・

   俺だって・・・


       「俺だって・・・」

   泣いてるんだぞ・・・ジニョン・・・

俺は遠ざかるジニョンの後姿をいつまでも追いながら、例え力づくでも止められなかった
自分の弱さが無性に腹立たしかった。


               
ジョルジュの想いは痛いほどわかっていた・・・

   いつかジョルジュのお嫁さんになる・・・

いつの頃からか、私自身も・・・そう信じていたような気がする・・・

   でも・・・どうしようもないの・・・

   彼が・・・フランクが・・・私の心を掴んで離さない

   私が・・・私の心が彼から離れてくれない・・・

   私は自分に正直に生きたい・・・ジョルジュ・・・

   それが例え・・・

   幼い頃から慕ったあなたを裏切ることになったとしても・・・




あれからずっと飲み歩いていた。しかしほんの少しも酔うことができなかった。
夜もかなり更けて、結局僕はアパートに戻った。

部屋のドアにジニョンがもたれて立っていた。
たった今まで、彼女のことを考えながらここに辿り着いていた僕は、その彼女が
不意に目の前に現れてかなりうろたえた。

それでも思わず駆け寄ろうとした自分をやっと制止して彼女に冷たく言い放った。

「何しに来た。」

彼女は僕の言葉を予測していたかのように黙したまま少し呆れたような笑みを浮かべていた。

「僕は人のものに手を出すほど女に飢えてない」

  ああ、何てことだ・・・
  そう言った僕の言葉が呆れるほどにうそ臭い

「帰れ。」 それでも僕は虚勢を張った。

「あなたが待ってるから・・・来たの」 初めて口を開いたジニョンは僕を睨み付けていた。

「ハッ・・・待ってる?ご覧の通り、僕はさっきまで酒飲んで遊んでた・・・
 君を待ってるわけ・・」 ≪無いだろ?≫

「あなたが待ってるから!・・来たの」 彼女はお構い無に、強い口調を僕の言葉に重ねた。

「言ったはずだ・・・他の男と、女を争う気はない。」

「ジョルジュは兄みたいな人・・・そう言ったでしょ!」

「その割には必死に守ってた。」≪そのせいなのか?僕の苛立ちは・・≫

そう言って僕は彼女を睨み付けたものの、彼女の僕を睨んだ目に逆に圧倒されて、
慌てて彼女から目を逸らせた。

     ≪だからあんなにもあいつを打ちのめしてしまった?≫

「あれは、あなたが彼をひどく殴るから!」     

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「やつのところに帰れ」
「本当に?帰ってもいいの?」

「うぬぼれ屋のジニョンさん・・・僕はね・・・
 あまりに君が僕に熱をあげるから・・・ちょっとからかっただけだ
 そんなこともわからないの?本当に子供なんだね・・君は・・・」
僕は彼女に負けるまい、と虚勢を張り続けていた。

「本当に?」

「・・・・・・・」

「フランク・・・嘘をつかないで」
「嘘なもんか」

その瞬間、彼女が突然僕の胸に飛び込んで僕の体を必死に抱きしめた。
僕は自分の両の手に心と逆の指令を出してそのまま宙に浮かせていた。

「離せ」
「離れない」

「離せ!」
「嫌!」

僕は彼女の肩に手を掛け、その華奢な肩を勢いよく自分から剥がすように離した。
そして急いで部屋に入ると即座に内側からロックを掛けた。

「 フランク!逃げるの?!フランク! 」 彼女の声が僕を追いかけてきた。

   ≪逃げる?・・・バカなことを言うな≫

「 フランク!開けて!開けないと! 」 彼女の甲高い声がフロアに響き渡っていた。
僕は仕方なく、ゆっくりとロックを外してドアを開けた。

「うるさい。・・近所迷惑だ・・・開けないと・・何する気?」

「開けないと・・・・・・考えてなかった・・・」

「・・・・・。」

彼女は呆れ顔の僕を強く睨むと、僕にわざとぶつかるようにして部屋に入ってきた。
そして振り向きざま僕に向かって怒鳴った。

「いい加減にして!」
「それはこっちの台詞だ。」

「もっと素直になって!」
「十分素直だと思うよ」

「ひねくれもの!」
「ひね・・な・・」≪何を言ってるんだ!≫

「私のこと好きなくせに」
「好きじゃない。」

「愛してるくせに」
「愛してない。」

「本当は私のこと欲しいくせに」
「・・・・・・」

「抱きたいくせに・・やせ我慢してる」≪好き勝手なことを言うな。≫
「君ね・・いい加減に」

「私は好き。」
「・・・・・・」

「私は愛してる。」
「・・・・・・」

「私は・・・抱きたい。」
「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・どうやって?」

「えっ?」

「抱いてみな。・・・どうやって抱くの?」

「えっ?・・・・・・・」

彼女は僕の前で顔を真っ赤に染めながら、突然僕の胸に自分の体を投げた。
そして両の手を僕の背中に回し力一杯僕を抱きしめた。


「それから?」

「・・・・・・」

「それから・・・どうする?」

彼女はしばらく身動きもせず僕の胸に顔をうずめて、ただ静かに僕の鼓動を聞いていた。

    そうなんだ・・・

    僕の心臓は既に・・・君への愛しさで苦しく高鳴っていた

もうとっくにその高鳴りが彼女に僕の本心を伝えているだろう。

僕はそれまで宙に浮かせていた両の手を今度は自分の心に素直に従わせて
彼女をそっと包み込んだ。

「できもしないことを口にするな」 そう言いながら僕は彼女の髪にゆっくりと唇を落とした。

「・・・・・・だって・・・本当にそうしたいもの
 私の体も・・・あなたが欲しいと言ってる」

「・・・・・・・」

「あなたが好き・・・あなたを愛してる・・・私の心が・・・体が・・・そう言ってる・・・
 あなたも・・・そうでしょ?私・・・一度もあなたからそう言ってもらってない
 あなたの心を・・・言葉で教えて・・・」


    何故だろう・・・

「君って・・・」

「・・・・・・・」

    心が勝手に君に寄りかかる・・・


「うるさくて・・・勝手で・・・」

「・・・・・・・」


    心が勝手に君を見つめている・・・


「我侭で・・・図々しくて・・・」 
「それで?」

彼女が僕の鼓動を解放してやっと顔を上げた。


「信じられないくらい・・・子供・・・・」
「それだけ?」   

僕は彼女との視線を絡めると彼女の頬に触れた。 

「君といると調子狂ってばかりだ」

そして僕の唇は吸い寄せられるように彼女の唇へと向かう。


「それはあなたが正直じゃないからよ」


    ああ・・・君の言う通りだ・・・


「疲れるんだ・・・」 

「・・・・嫌なの?」 


    僕は・・・正直じゃない・・・

   
「鬱陶しい・・・」 

「・・・・そんなに?」


    本当は・・・


「わずらわしい・・・」

「・・・・本当に?」


    とっくに・・・君を・・・


「ああ・・・耐えられない・・・でも・・・・」

僕は震える彼女の唇の振動を自分の唇で感じていた。
そしてそのまま彼女の唇の上でささやいた。

「でも?・・・」

「でも・・・・・」


    たまらなく・・・君を・・・


「・・ちゃんと言って・・・」


「でも・・・・・

 

      ・・・愛してる・・・」




 







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