2010/03/26 00:53
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-14.離したくない

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ジニョン・・・君に・・・
諸手を挙げ降参するしか・・・僕には残されてないようだ・・・

   ああ、君の言う通りだよ・・・

   とっくに君が欲しかった・・・

   とっくに・・・君を抱きたかった・・・
       
   こうして・・・この胸に君を閉じ込めて・・・

   君を・・・愛したかった・・・

   それが僕の本心だ・・・

僕は熱く彼女を見つめ、その手を取りいざなって、彼女をベッドに腰掛けさせた。
そして彼女の前にひざまずき、その白い頬を彼女を見つめたままそっと撫でた。

彼女は自分の頬に触れた僕の手をこの世で一番大切なものを抱くかのように
両手で包みこんでそのまま自分の唇に運び、僕の掌に熱いくちづけをくれた。
それから・・・

僕の手首にそっとくちづけて・・・
僕の頬に小さくくちづけて・・・

彼女は不器用なまでに震えながらゆっくりと・・・
まるで自分の心をひとつひとつ確かめてでもいるかのように、僕へのくちづけを繰り返した。

僕は・・・彼女のなすがままをしばらく黙って見つめていた。

彼女の唇がやがて、僕の唇に到達する頃には彼女の瞳はもう涙でいっぱいだった。

「怖い?・・・」
僕がそう問うと、彼女は涙を性急に飲み込んで大きくかぶりを横に振った。

「・・・あなたに・・・私を・・・」
彼女は言葉にならないほどの情熱を僕の唇に伝えていた。

   わかってる・・・わかってるよ・・・。

   何も言わなくていい・・・

僕は言葉とは裏腹に震える彼女を、愛しさを込めて強く抱きしめた。

その瞬間、彼女の口からまるで今まで息をしていなかったかのような、
切ないため息が宙に向かって漏れた。

そして・・・僕は、彼女の背伸びした幼いくちづけを僕からの熱いくちづけに変えた。

僕の激しいまでのくちづけに、時に息苦しさを訴えるように彼女が僕を押し返し、
そのつど僕は執拗に彼女の手を払いのけた。

少しずつ彼女の体が後ずさりしてベッドの上をすべりゆき、ベッドサイドに接した壁で
彼女が行き止まってしまうまで、僕は彼女の唇から自分の唇を離さなかった。

僕は押さえていた何かを瞬時に解放したかのように、彼女を激しく求めていた。
彼女がまた僕を押し返しても、今度はその手を掴んで壁に貼り付け離さなかった。


   ああ・・・あの日もそうだった・・・

   君に初めて出逢った日・・・

   僕の感情が激しく君を求め、迷うことなく君をむさぼった・・・

   あの時から・・・もう既に・・・決まっていた・・・

   始まっていた・・・

   そうなんだね・・・だから

   君はそれを僕に必死に伝えていたんだ

      あなたはもう私を愛してしまったと・・・

      私たちはもう・・・戻れないのと・・・


   ごめんよ・・・

   僕が素直じゃなかっただけ・・・


   今こうして・・・君に向かう僕の想いを・・・

   君が切なく妖しく受け入れる・・・この日の君を・・・

   僕はずっと待ち望んでいたはずなのに・・・


彼女の濡れた唇の端から、息苦しさとけだるさが入り混じった溜息が漏れて
脱力した彼女の体が僕の唇をすり抜け白いベッドへと崩れ落ちる。

僕の唇が彼女を追い、彼女の耳に・・首筋に・・華奢な肩に・・・
休むことなく・・・余すところなく彼女をついばみ、優しく撫でるように彼女を這った。

そして彼女を包んだベールをひとつひとつ剥ぎ取りながら、彼女の生まれたままの肢体を
碧い月明かりに露出させていった。

彼女は目を薄く閉じたまま、僕の誘導にただ身を任せ、僕の愛を刹那に受け入れていく。

僕の唇が未知の彼女へと向かい、彼女の吐息を少女から女のそれへと変えていった。

「大丈夫・・・力を・・・抜いて・・・」
僕は彼女の耳元に甘くささやき、彼女の心の準備を待った。

彼女のまだ青いつぼみが僕のくちづけに潤い開く・・・その瞬間に・・・
彼女の白い肌が美しい薄紅色に彩を変えた。

そして僕の心には・・・
今までに味わったことのない感動が・・・衝撃が・・・
速く波打つ鼓動の中に生まれていた・・・

≪ああ・・・・愛してる・・・≫ 僕は心の中で叫んでいた

愛してる・・・とは・・・こういうことなのか・・・

それは僕にとって・・・生まれて初めての感情だった・・・
信じられないほどの鮮烈な感情だった・・・

君とひとつになる喜びが・・・
体の芯から頭の先まで突き抜けるような電流となって走った

 

月明かりだけの部屋で、僕は脱力したまま天窓の遥か奥に輝く星を見つめていた。
少しして横を見ると、彼女が僕から顔を背けたまま向こうを向いていた。
僕は体を横にして、その背中をそっと抱いた。

僕はいつまでたっても、いつものように煙草に手を伸ばすことができなかった。

濡れた彼女の体から唇を離せなかった。
彼女との余韻に僕の心がまだ彼女に寄り添ったままだった。

僕は僕の鼻先にあった彼女の濡れた髪の中で深呼吸をした。
それは彼女の甘い香りをひとつ残さず僕の中にしまいこみたかったからだ

「愛してる・・・」
彼女の耳たぶを甘く唇で噛んで、低くささやいた。

「・・・・・・」 彼女は何も言わなかった。

「君は?・・・」 ≪僕としたことが、女に愛の言葉を求めているなんて・・・≫

「・・・・・・」 彼女の答えが無かった。

「どうして黙ってる?・・・もう僕を嫌いになった?」≪ああ、そんなことを聞くなんて・・≫

彼女は黙ったまま頭を振った。

「それじゃあ、どっちなのかわからない・・・
 今のは横に振ったの?縦に振ったの?」 僕は正直苛立っていた。

「・・・・・・」

「ジニョン?」

僕が彼女の乱れた髪を後ろに掻き揚げて覗くと、彼女は静かに泣いていた。僕は彼女の涙に驚いて息を飲んだ。

「・・・・何故・・・泣くの?そんなに嫌だった?」 僕は彼女の涙にひどく動揺した。

彼女はまた大きく頭を振った。

「違う・・違うの・・・・・幸せ・・だから・・・」

そしてやっと外に出せたかのような声を振り絞って僕に答えた。

僕は彼女の頬に掌を当てて優しく自分に向けると、その言葉をくれた彼女の唇に
そっとくちづけながらささやいた。

「僕もだ」

彼女はまるで子猫のように、頭を僕の胸に擦り付けた。

「このまま・・・こうしていよう・・・朝まで・・・」

彼女は返事の代わりに体をゆっくり翻して、僕の胸に顔をうずめた。
僕はまるで宝物のように優しく彼女を抱いた。

    離したくない・・・

    他の誰にも・・・渡したくはない・・・

僕達は静かに更けゆく夜の帳に包まれて、穏やかな眠りの中に互いを確認しあっていた。


・・・そして・・・

心地良い鳥のさえずりの中、目覚めた朝に・・・
自分の腕の中に確かに存在する彼女の感触を実感しながらも、僕はなかなか
目を開けることができなかった。

もしかしたら、昨日のことはすべて夢の中のことで、今、このときもその続きでしかない。
目を開けると一瞬にして、夢から覚めるような恐怖心が僕を躊躇わせていた。

やっと勇気を振り絞ってまぶたを動かすと、彼女が笑ったような寝顔を僕の首に添わせていた。

   夢じゃなかった・・・

   僕の・・・ジニョン・・・

僕は自分でも可笑しいほどに、ほっと胸を撫で下ろして、彼女を思いきり抱きしめた。


        ≪幸せだと自然に笑顔になれるのよ・・・≫

   そうだね・・・ 君の言う通りだ・・・

   僕は今 きっと・・・君の髪に・・・

   この上ない笑顔を埋めている・・・

 

僕の力任せの抱擁に彼女は目を覚ましたらしく、僕の腕の中で彼女が小さくうごめいた。

「ごめん・・・起こしてしまった?」

彼女が声もなくうなづきながら僕の視界から、恥ずかしそうな笑顔を逸らした。
僕は彼女のその気持ちを汲んで、僕の胸に彼女の顔を埋めてあげた。

「今日は何をしようか・・・」

「お仕事は?」 目を輝かせた彼女が僕の首の下から僕を見上げた。

「今日はお休み」 僕は彼女の額に口づけてそう言った。

「本当に?」

「ああ」

「じゃあ、ずっとフランクといられる?」

「ああ・・・ずっと・・・君といる・・・」

「お昼も?」

「何処に行こうか」

「何処でもいいわ!」

「また?何処でもいい・・か・・・」

「だって・・・本当なんだもの・・・本当に何処でもいいの・・・
 あなたと手を繋いで歩ければ・・・それだけで幸せ・・・あなたは?」

「僕?・・・・うーん・・・」

君が目を輝かせて僕の答えを今か今かと待っている。
君の期待する僕の答えをわざとじらして、僕は楽しんだ。

「ねぇ・・・考えないと答えは出ないの?」 痺れを切らせた君が少し口を尖らせた。

「人間には思考が大事だからね」

「人間・・考えすぎてもどうかと思うわ・・・
 感情の赴くままに生きることも大切よ」

「理性がなければ、人間じゃない、ともいう」

「フランク!屁理屈多い!だから、どうなの?
 私といて、幸せなの?そうじゃないの?」 突然君が起き上がって大声を出した。

「・・・幸せ・・・です」

そして君は・・・僕の答えに満足げに微笑んだ。

「ジニョン・・・」

「ん?」

「小さくて可愛い・・・」

そう言いながら僕は起き上がった勢いではだけた彼女の白い胸に、視線を流した。

「きゃあッ!エッチ!向こう向いて!」

「エッチ・・って・・・今更・・・」


   ジニョン・・・

   君をからかう楽しみは・・・やはり止められそうにないよ

   君との戯れが僕に幸せの実感を与えてくれる

   まるで今君が僕に投げたその柔らかいクッションのように・・・

   君の微笑が僕を幸福の波間に沈めていく

   君はいったい・・・何処から来たのだろう・・・

   もしかして・・・君は・・・

   僕に幸せを与えるために神が遣わした・・・

             ・・・天使?

   僕はこうして腕の中にしっかり捕まえて・・・

   この天使を・・・天に帰さなくても・・・


            ・・・・いいかい?


 


その日を境に僕は、彼女との時間を作るために生活のサイクルを全て変えた。
彼女がやってくる時間までに仕事の全てを済ませるようにした。

そう・・・彼女が僕の元にやってくる頃には

   僕は本当の僕になっていたかった・・・

   本当の僕?・・・

   本当の僕・・・

   フランク・シンが本当の僕じゃないなら・・・

   本当の僕は・・・誰なんだ・・・

   

「フランク・・・コーヒー切れたみたい・・・買ってこようか?」 

「ああ・・頼むよ・・・そこにあるお金持ってって」

ジニョンは満面の笑顔を僕に向けて、飛び跳ねるように部屋を出て行った。

「転ぶなよ!」 僕の声が彼女を追いかけ

「は~い」 彼女の明るい声が直ぐに帰って来る。まるで幸せのこだまのようだった。
その瞬間にもまた僕は自分の頬が緩んだのを実感して苦笑いした。

彼女との幸せを誰にも邪魔されたくない、本気でそう考えた。      

レオとの緊迫した仕事上のやり取りも彼女には一片たりとも見せたくなくかった。
今まで味わったこともないこの安らぎのときをいつまでも抱きしめていたかった。

「ボス・・・5時以降連絡をするなとはどういうことだ」 しかしレオは不満を露にした。

「連絡をするなとは言ってない・・・
 メールにしてくれ、そう言っただけだ」

「同じことだ。・・時には即決しなければならないことだって
 出てくるぞ・・・そんな悠長なことで・・」

「忠告はいい。・・・僕は僕のやり方で動くだけだ。
 余計なことを言うな。」

自分の方に非があると、わかっていた。

「・・・・・・」

「その代わり、決して後悔はさせない」

「・・・・・・わかった・・・
 それより、進めていた案件・・全て片がついたぞ」

「そうか・・・それで?」

「20の儲けといったとこだな」

「いつものようにお前の取り分を除いて、残り全て投資に回してくれ
 買い付け先は今送信するリストから・・・選択は任せる」

「了解・・・それじゃ・・」

レオはこの時きっと、言いたいことの半分も言わなかっただろう。

今の僕にとって、何が重要で何がそうでないのか・・・
一秒の油断が大きな損失をもたらす世界に身を置きながら、僕は今・・・
確かにぬるま湯に浸かった精神状態だった。

そんな状態を自分自身が一番杞憂していた。

しかし、例えそれが破滅へ向かう道だとしても、何にも代えられないものを僕は
この胸に抱いてしまった。

   だから・・何だ・・・

   何だと言うんだ・・・レオ・・・

僕は自分の胸にかかったもやを紛らすかのように、煙草の苦い煙を深く吸い込んだ。


その瞬間、玄関で物音がした。     

「戻ったの?・・・丁度コーヒーが飲みたくなったところだ
 早速淹れてくれる?」

「コーヒー?私が淹れてもいいの?」

聞き慣れたその声に驚いて、僕は振り向いた。

「ソフィア・・・・」
ソフィアとの距離が実際よりも遠く感じたまま、僕も彼女も長く沈黙していた。
その沈黙を破ったのはジニョンの声だった。

「フランク!ただいま・・・同じコーヒーなかなか見つからなくて・・
 遠くまで行っちゃっ・・・た・・・あ・・・あの・・・」

ジニョンはソフィアと対面して、彼女が僕の“恋人”であることを即座に感じ取ったのか、
とっさに弁解の言葉を口にしていた。

「あの・・私・・・フランク・・先生に・・家庭教師をしていただいてます
 ソ・ジニョンと申します・・・」

「ジニョン・・・何言ってる?・・君は・・」 僕はジニョンのその言葉に唖然とした。
「家庭教師?・・・フランク・・・あなたを家庭教師にできるなんて
 ラッキーな生徒さんね・・・」 きっとそう思っていないソフィアの声が僕の言葉を遮った。

「いや・・・生徒じゃない」
「あの!先生。・・・私、そろそろ・・帰ります・・・」

そう言って今度はジニョンが僕の言葉を遮ると、買って来たコーヒーをキッチンに置き、
振り向きもせずに慌しくドアから出て行った。

 

       ・・・ 「 ジニョン! 」 ・・・



                        


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