2010/11/30 23:19
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-14.流木の行方

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         collage & music by tomtommama

 

              story by kurumi



      










フランクとジニョンの心はわだかまりを超えて、またひとつになった。

逢う度に、互いを愛しく想う心に震え、10年前に培った互いの愛を
確認しあうように、抱きあい、更に深い愛に燃えた。

「ジニョン・・・」 互いの吐息を幾度も重ねた後に、フランクはポツリと
彼女の名を溜息と一緒に吐いた。

「ん?」 ジニョンはその時夢うつつだった。

「僕がどんなことをしても・・・信じてくれる?」
フランクはベッドの中で彼女を抱きしめたまま、彼女の背中に言った。
彼女は彼の声が夢の中にあるように思えた。

「どんな・・罪なことをするの?」 
彼女は彼の息を背中に感じながら答えていた。

「・・・・君のためなら・・・そして君さえ、
 信じてくれれば・・・
 僕はどんな罪もいとわない」

「・・・・私の為の・・・罪なの?」

「ああ・・」

「何だか・・・怖いわ・・・」

「怖がらないで・・・ジニョン・・・」

「あなたさえいれば・・・怖くない?」

「ああ・・怖くない・・・だから・・・
 ちゃんと僕のそばにいるんだよ」

「ええ・・・あなたのそばに・・・」

「約束だよ・・・」

「ええ・・やく・・そ・・く・・」 
ジニョンはフランクの声を子守唄のように聞きながら、また夢の中へと泳いでいった。




いよいよだった・・・
フランクの計画が大詰めを迎え、エリックとの取引を終結させる時が来た。

しかしそんな折、ホテル側に“シン・ドンヒョク”の正体が発覚することとなった。

その日レオは、フランクに命令された書類を夜通し作成して朝を迎えた。

レオはとにかく慌てていた。

「レオ!遅れるぞ!」 
車の前で時計を睨みながらフランクは声を張り上げた。

そしてレオは大きなミスを犯してしまった。

ふたりが部屋を離れたその後に清掃に訪れたルームキーパーによって、
彼らの部屋に残されていた「ソウルホテル買収」の極秘資料が持ち出されたのである。

そしてその書類は彼女達の手からハン・テジュン総支配人の元へと渡った。

しかしテジュンがその事実を知った時、まず彼の脳裏を過ぎったのは、
ホテルの危機への懸念ではなく、ただ、ジニョンのことだった。

このことをジニョンが知れば≪あいつが傷ついてしまう≫
テジュンは真っ先にそれだけを思った。

テジュンはこの事実が上層部に知れ渡る前にジニョンと話をしなければ、
と彼女を探してホテル内を急ぎ走り回った。


その時、ジニョンは当のシン・ドンヒョクと共にいた。
会議室の前で、和やかに談笑しているふたりの姿を見たテジュンは、
言いようのない怒りを胸にしまいこんで、冷静を装い彼女を目で呼んだ。

フランクはその時のテジュンの表情が気になったが、それは彼の自分達に対する
個人的な感情なのだろうと思っていた。

フランクはジニョンが自分の元を離れる際に、テジュンに見せ付けるかのように
彼女の耳元に囁いた。 「また後で・・・」

ジニョンは少しだけ頬を緩ませたが、直ぐに支配人の顔に戻り、彼に深く頭を下げて、
こちらを伺っていたハン・テジュンの元へ向かった。

フランクは彼女の背中を追いながら、ハン・テジュンと共に非常口へと
消えてしまった彼女に心を残して溜息をついた。






「テジュンssi・・・何?」

「いい気なもんだな・・」

「嫌な言い方ね・・それって、私?それとも・・」
ジニョンはフランクとのことを幾度となくテジュンに話していた。
もともと、テジュンと婚約した覚えはジニョンにはなかったが、彼に対しては、
はっきりとした意思表示をしておかなければと思っていたからだった。


「あいつとは何処で知り合った?」 
テジュンの言葉はジニョンへの返事ではなく、その表情はとても堅いものだった。

「どうしたの?テジュンssi・・・」

「いいから!言え!」
突然テジュンが、階段の踊り場でジニョンの肩を掴むと、彼女の目を睨みつけ、
怒鳴りつけた。

「テジュン・・ssi・・いったい・・何があったの?
 あなたらしくないじゃない・・」
ジニョンは驚いて、言葉が上手く繋げなかった。

「・・・・すまん・・頼む・・教えてくれ・・彼は何の仕事をしている?」
テジュンは少し気持ちを落ち着けようと、一度短く深呼吸をしてそう言った。

「M&A・・・だけど・・」

「それから、お前はその・・彼とはいつから。」

「え?・・」 
ジニョンはテジュンの強い眼差しに押されていた。

「ジニョンssi!」 
そこへスンジョンが階段の下から現れ、声を掛けた。

ジニョンはテジュンの様子を気にしながらも、彼女に視線を移した。

「社長がお呼びよ・・あら、総支配人もいらしたんですか?
 総支配人もいらしてくださいということですが」

スンジョンの言葉に、テジュンは嫌な予感がした。


案の定、社長室に入ると、そこには副総支配人オ・ヒョンマンが
ドンスク社長の隣で不適な笑みを浮かべていた。
そのテーブルの上には、テジュンが先刻情報を棚上げしていた
例の資料が置かれていた。

テジュンは思わず目を閉じた。

ジニョンは自分が呼ばれた理由と、この緊迫した状況が理解できず、
怪訝な顔でドンスクとヒョンマンの顔を交互に見ていた。

「お座りなさい」 ドンスクが言った。
その声にはいつもの彼女の優しさは微塵もなかった。

テジュンはそこに座ったが、ジニョンは座らなかった。

「あの・・何か御用でしょうか」 ジニョンは不満げに言った。
彼女はこんな風に呼び出されたことに対する憤りを隠さなかった。

「御用?・・とぼけるな!ソ支配人!」 
ヒョンマンが突然怒鳴り声を上げた。

ジニョンはその声に一瞬体をびくつかせたが、彼女の目に浮かんだ非難めいた感情は
ヒョンマンにではなくドンスクに向けられた。

「シン・ドンヒョクssiという方をご存知?ソ支配人」
ドンスクはジニョンのその目を無視するかのように、冷静にそう言った。

「あ・・は・・はい・・サファイアのお客様です・・」
突然フランクのことを尋ねられてジニョンは言葉を詰まらせたが、聞かれたことの
事実を答えた。

「お客様が呆れるね」 ヒョンマンが透かさず言った。

ジニョンは、最近ホテル内で広がったフランクとの噂のことを
言われているのだと思い、口を開いた。

「あの・・彼・・シン・ドンヒョクssiとのことは、
 ホテルの支配人として、好ましくないこともあったと、
 反省しています・・でも・・」

「でも?何かしら・・」 社長の目は変わらず刺々しかった。

「彼とは・・その・・」 
ジニョンは一瞬だけその目にたじろいだ。

「彼・・ね」 ヒョンマンが呆れたように茶々を入れたが
「静かに」 という社長のひと言で、彼は渋々引いた。

「その・・シン・ドンヒョクssiとあなたはどういうご関係?」
ドンスクは重ねてジニョンに訊ねた。

「恋人です」
ジニョンは今度こそ、と背筋を伸ばし、即座に迷うことなく答えた。

「恋人?呆れたね!、このホテルの支配人は客と直ぐに
 恋人関係になるのか!」
そう言葉を投げたヒョンマンを隣でドンスクが睨んだ。
「続けて?」

「でも・・納得いきません・・
 個人的な付き合いを、会社で究明されるなんて・・」

「そうね・・・それでも教えて頂戴」 
ドンスクの目は頑強だった。
彼女のこんな様子はジニョンにとって初めて見る姿だった。
ジニョンは不本意ながらもそれに答えるしかなった。

「・・・彼とは・・10年前恋人だったんです」

「10年前?」

「はい・・それで10年ぶりに再会して・・その・・」

「縁りを戻したの?」

「はい・・でも、そのことと仕事は別です・・
 彼と私はその・・・純粋に愛し合っています・・非難されることは何も・・」
ジニョンのその言葉に、社長は驚いたように目を見開き、テジュンを見た。
彼はその視線の先で静かに目を閉じていた。

「社長、これではっきりわかりましたね・・
 彼女が奴をここへ引き込んだんです
 それから、総支配人にはその証拠となる
 この資料を隠した罪がある」

「・・・・何の・・ことですか?」 
ジニョンには目の前で彼らが交わしている話が何ひとつ理解できずにいた。

「ソ支配人・・彼が何のお仕事をしているか、ご存知?」
ドンスクは溜息をついたように言った。

「はい、M&Aです・・企業ハンターだと」

「それも・・・ホテル専門・・・
 そう言ったら、どういうことかわかる?」

「いいえ・・わかりません」

「シン・ドンヒョクssiはハンガン流通が雇い入れた
 M&Aの専門家・・・それでも?」

「ハンガン流通?・・・キム会長の?
 そんなはずはありません・・・
 彼は、私にはそんなこと何も・・・」

「知らなかったと言うの?」

「はい・・でも・・彼はそんな人では・・・
 彼が・・私をだますわけありません・・」

「さぞかし好条件でも出されたか?ソ支配人・・
 買収が成功した暁にはこのホテルの総支配人か?・・
 莫大な金が入るのか?それとも
 男に狂って、奴の言いなりになっただけか?」 
ヒョンマンが悪意を込めた声を張り上げた。

「副総支配人!」 
テジュンが彼に対して嗜めるように声を荒げた。

「大した女だよな・・どっちに転がっても、
 いい条件が待ってる・・そういうことか・・・
 新しい男に庇ってもらって・・いい気なもんだ
 おっと・・どっちが新しい男だ?」
ヒョンマンは、テジュンとジニョンを交互に見て蔑むように言った。


ジニョンの顔は蒼白だった。
言葉が出なかった。それでも少し置いてやっと、口を開くことができた。

「何かの・・まちがいです・・絶対に・・・間違いです・・・
 彼が・・フランクが・・私を・・だますわけ・・
 ホテルを・・彼は・・10年前も・・
 このホテルを助けてくれたんです・・
 私がこのホテルをどんなに愛してるか・・
 知ってるんです・・・だから・・・そんなはずは・・」

「10年前?」 
社長はそう言って、10年前の出来事を脳裏に浮かべていた。「あの時の話?」
ドンスクは10年前に、ホテルが危機に陥った時、ある男にホテルを救われたことを
前社長である夫から聞かされていた。

「確認してきます・・私が・・直接・・彼に・・」 



ジニョンはサファイアへの道を上りながら、自分の膝ががくがくと震えていることに
気が付かないように歯を食いしばって歩いた。

≪違う・・・絶対に違う・・・違う!≫


   - 僕の半身を・・・迎えに来ました -


彼のあの言葉に決して嘘はなかった・・・

≪そうでしょ?フランク≫


   - 愛してる -

何度も何度も、彼はそう囁いた

≪あれは・・・本心よね・・・フランク・・・≫


ジニョンはサファイアヴィラに到着すると、一度大きく深呼吸をして
目の前のドアを睨みつけた。
そして、一度だけ呼び鈴を鳴らすと、部屋の住人に断りもなくドアを開け
中へと押し入った。

部屋へ入るとフランクは仕事の電話中のようだった。
しかし、彼はジニョンの様子を不審に思って、その電話の主に断りを入れると
受話器を置いた。

「ジニョン・・今日はもう家に帰ったんじゃなかったのかい?」

「本当のこと?」 彼女の眼差しからは一時間程前までの柔らかさが消えていた。

「えっ?」

「あなたが・・・キム会長の手先だというのは・・
 本当のこと?」

「・・・・」

「嘘よね・・お願い・・嘘だと言って。」

「誰に・・聞いたの?」 
フランクは、先刻のテジュンの表情を思い浮かべ、納得したように目を閉じた。

「・・・!本当・・なの?本当なのね・・」

「ジニョン・・ちゃんと話をしよう・・・・ここに座って?」
フランクは立ち上がって、彼女に近づいた。

「触らないで!」 
そう叫ぶと同時にジニョンの手がフランクの手を激しく払っていた。

「ジニョン」

「・・・そうだったのね・・最初からそうだったのね・・
 その為に・・・ここへ来たのね
 嘘だったのね・・何もかも・・・」
「そうじゃない」

見る見るうちに、ジニョンの目からぽろぽろと零れ落ちる涙に
ドンヒョクは激しく動揺した。

「私を利用して・・情報を集めてたの?」
「違う」

「私だったら上手く操れると思ったの?」
「違う!」

「何が違うの?・・・・そうよね・・10年も経って・・
 急にやって来るなんて・・
 馬鹿みたい・・普通は可笑しいと思うわよね・・
 でも私ったら・・・あなたに逢えて・・嬉しくて・・
 すごく・・すごく・・心が震えて・・・」
ジニョンは止め処なく涙を流しながら自嘲を繰り返した。

「逢いたかったんだ・・僕も・・
 君に逢いたかったんだ・・・それが嘘じゃないこと
 わかるだろ?・・ねぇ、わかるだろ?」

「目的があったのね・・そんな目的が・・」
「君の為に来たんだ」

「うそつき!・・信じてたのに・・
 今度こそ・・信じたのに・・・
 本当に愛されていると・・・信じたのに・・」

「嘘じゃない・・愛してる・・」 
フランクはジニョンを突然抱きしめた。

「離して!」 ジニョンはフランクの腕の中で激しく抵抗した。
「嫌だ!離さない!離さない・・」

「離して!・・あなたなんか・・あなたなんか・・」
フランクは必死にもがく彼女を離すまいと抱きしめたその腕に力を込めた。
「信じてと言ったでしょ?・・・僕のそばにいてと・・」

「離して!触らないで!私に触らないで!」
ジニョンは興奮し、半狂乱だった。

「聞いて、ジニョン・・僕がここへ来たのは・・」
しかしジニョンは結局彼の胸を強く突き飛ばすようにして、彼から逃れた。 

「もう止めて!」

取り付く島のないジニョンに、フランクはそれ以上の言葉を繋げなかった。

「こんなもの!お金で言うことを聞く女にあげるのね!」 
ネックレスがフランクの頬を掠め、床に落ちた。
「・・・・・」

「あなたは知ってると思ってた・・
 私がどんなにこのホテルを愛してるのか」

「知ってる・・だから・・」

「許さない!絶対に許さない!
 忘れないで!私は決して・・
 あなたなんかの思い通りにはならない」 そう言い捨てて、
ジニョンは泣きながら部屋を飛び出して行った。

部屋にひとり残されたフランクは呆然とその場に立ち尽くしていた。

やっと取り戻したはずの幸せが、もろく崩れ去る音を目の前に見て頭が真っ白になり、
倒れそうなほどの自分を、懸命に支えた。

   ≪ジニョン・・・違う・・・違うんだ・・・

    僕は・・・本当に君のために

    君だけのために・・・ここへ来た・・・

    それは嘘じゃない・・・


        ・・・嘘じゃない・・・≫・・・












 


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