2011/01/07 23:01
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-26.おそれ

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collage & music by tomtommama

 

story by kurumi








 



「今夜は泊まって行ってくれる?」 
フランクはジニョンの唇に唇を軽く重ねたままそう言った。

「・・ここに?」 ジニョンは驚いて、少し身を引くと目を丸くした。

「そう・・・ずっと僕と一緒にいて・・・」
フランクはすがるような目でジニョンを見つめた。

「フランク?」 
ジニョンは困った顔をして首をかしげ、俯いた。

「ね・・・」 フランクは彼女を下から覗き込んだ。

「それは・・・できないわ」

「どうして?」

「どうしてって・・・」

「人の目が怖いかい?」

「・・・・あなたこそ・・・」

「ん?・・」

「あなたこそ・・・何がそんなに怖いの?」 
ジニョンはそう言いながら、フランクの頬を細い指でそっと撫でた。

「僕が?・・」

「ええ・・・」

「どうして・・・そう思うの?」
フランクは頬に触れた彼女の手を取って、自分の唇に持って行くと
その手に優しくくちづけた。

「何だか・・・そう見える・・」

「フッ・・・そうかもしれない・・・僕は・・
 きっと怖がっている・・・
 君が僕のそばにいなかった長い年月は
 僕にとってひどいものだった・・・
 もうあんな世界に戻るのは嫌だ・・・」

「戻らないわ」

「本当に?」

「ええ・・私も・・二度と嫌よ・・
 あなたがいない世界なんて・・いや・・」

「そうだね・・・戻らない・・・決して・・
 でも僕は臆病者になってしまったのかもしれない
 こうして君を・・・自分の手元に置いておかないと
 不安でしょうがないんだから・・・」

「不安?」

「ああ・・すごく・・・」

「さっきまでの強引なあなたは何処へ行ったの?」

「さあ・・・どこかへ消えてしまったようだ」

「ふふ・・あなたが臆病者だなんて、誰が信じるかしら」

「ね・・いいでしょ?」
フランクはジニョンの耳の厚く柔らかい部分を甘く噛みながら囁き続けた。

「ねぇフランク・・・私も・・・あなたとずっと一緒にいたい・・・
 でも・・今は・・・」

「・・・・・」 
彼は無言のまま、唇を彼女の喉に這わせながら真直ぐ下りていった。

「フラン・・ク・・・」 
彼女が嗜めるように呼んだ彼の名は、溜息に混じって聞こえた。

「・・・ジニョ・・ン・・」 彼は彼女から少しの間も唇を離さなかった。

「はっ・・・フ・・ラ・・・」「お願い・・今夜は・・ここにいて・・・」 
「・・ン・・ク・・・・」

「ね・・いて・・」

「・・・だ・・め・・」 ジニョンの抵抗は甘い吐息に消えた。

「許さないと・・言ったら?・・・」


   フランク・・・あなたは・・・

   非情で冷酷な人だと恐れられている

   でも本当は・・・そうじゃないわ・・・

   私は知っている・・・

   強さと・・・弱さを・・・

   いつも背中合わせに抱いている

   私の・・・フランク・・・

   こうしてあなたの心を撫でていると・・・

   私はいつも・・・

   寂しい瞳をしたあなたに出会ってしまう

   そんなあなたを見るたびに

   私の方がずっとあなたを離したくなくなるの・・・

   私の方がずっと・・・あなたと一緒にいたくなるの・・・

   でも今はだめよ・・・それは・・・

   あなたも・・・わかってるでしょ?


    

ジニョンはまだ薄暗い明け方近くにフランクのベッドを下りた。
まさか明るくなってから、この部屋を出るわけにはいかない。
彼女は、急いで身支度を済ませ、まだ眠っていたフランクの頬に
そっとくちづけると部屋を出た。

≪ずっとそばにいて・・・≫

フランクはジニョンを抱きながら、何度も繰り返していた。
そのフランクの声がジニョンの脳裏からいつまでも消えなかった。
ジニョンはそんなフランクがあまりに愛しくて、何度も何度も
サファイアを振り返りながら、坂を下りた。


フランクはジニョンがこの部屋を出て行く音を確認すると、
閉じていた目を静かに開けた。

「・・・うらぎりもの・・・」 そしてそう呟いてフッと笑みを浮かべた。

フランクはわかっていた。
≪これ以上、自分の思いを無理強いしたら、
 ホテルとの板ばさみに彼女はひどく苦しむことになる≫


   信じてくれる・・・

   今はそれだけで・・・良かったはずなのに・・・

   君を手にしてしまったら・・・

   もっともっと・・・欲しくなってしまう・・・

   本当に僕の元にあるのかが不安で・・・

   また君がいつかこの手から零れ落ちそうな気がして・・・

   片時も離れていたくない・・・

   そうだよ・・・

   君の言うとおりだ・・・

   僕は怖くて・・・仕方がない・・・

   君を抱いていないと・・・

   何もかもが怖くて仕方がない・・・






フランクの改革は結果的にはソウルホテルを救うことになる。
ジニョンはそう信じると決めた。

しかしフランクが何を考えているのか、何をしようとしているのか・・・
ジニョンにはまだ本当のところをわかってはいなかった。

テジュンがこの状況を乗り切ろうと懸命になっていることにも
現実にリストラなどの処遇により厳しい境遇にある仲間達のことも
考える度にひどく苦しかった。

「君は黙って見ていなさい」 フランクはジニョンにそう言った。
「心配しないで」 彼女の杞憂を慮ってフランクは更にそう言った。

ジニョンはフランクの声に黙って頷いた。
彼の言葉、全てを信じると誓いながら。



   
「ジニョン・・」

「パパ・・」

フロントにいたジニョンにヨンスが笑顔を向けながら近づいてきた。

「まだ仕事は終わらないのかな?」

「いいえ・・今終わるところよ」

「少し話を・・・いいかい?」

「え・・ええ」

父もまた、リストラの対象となった人々のために、再就職の斡旋など
自分の出来うることに懸命に挑んでいた。
ジニョンはフランクと敵対する立場にある父に対しても、
申し訳ない思いでいっぱいだった。



ジニョンは父を屋上へと誘った。

「ここが話に聞いていたお前の憩いの場所かい?」

「ええ・・一度パパにも見せてあげようと思ってたの」

「このホテルとの付き合いは長いが、ここは初めてだな」

「ふふ、本当はここ立ち入り禁止よ
 だから他の人はめったに上ってこないわ・・
 私の場所なのよ」 ジニョンはヨンスに満面の笑顔を向けた。

「元気そうだね、ジニョン・・」 
ヨンスは彼女のその笑顔に向けて、嬉しそうに言った。

「ええ・・何んとか」  

「何んとか?」 ヨンスはジニョンの顔を下から覗きこんだ。

「な~に?・・・ふふ・・そうね、と・て・も・・」

「そうだろ?何だか、吹っ切れたような顔をしている」
ヨンスはそう言いながら、深呼吸するように空を仰いだ。

「ええ・・そうかも」 ジニョンも同じように深呼吸をして空を仰いだ。

「・・・フランクは元気か?」 
ヨンスは漢江に視線を移して、正面を見据えたまま切り出した。

「えっ?」

「私がこんな質問をするのは以外かい?」

「・・・・あ・・いいえ・・・」
当然、自分とフランクのことは父の耳にも入っているだろうと思っていた。
しかしジニョンはまだ父に話すことはできないと思っていた。

「彼を信じてるんだね」 ヨンスの言い方はとても穏やかで
決してジニョンを非難しているのではないことがよくわかった。

「・・・・ええ」 ジニョンは素直にそう答えた。

「そうか」

「ごめんなさい」

「どうして謝るんだ?」

「どうしてって・・」

「謝るんじゃない。ジニョン・・・それは彼に対して失礼だろ?」

「・・・・・」

「ジニョン・・・もうお前は一人前の大人だ
 あの頃・・・お前はまだ子供で・・・
 私はただ・・神から授かったお前に
 どうしても幸せな人生を送って欲しくて・・・
 彼から引き離してしまった・・・
 お前の幸せは彼の元には無いと信じて疑わなかったんだ
 それが、結果的に神に逆らうことになるとは・・・
 思いもしなかったよ・・・」 
ヨンスは今までの自分の後悔を懺悔するかのように切々と話した。

「・・・・・」

「許しておくれ、ジニョン」 ヨンスはそう言って、ジニョンの頭を撫でた。

「パ・・パ・・」

「私がお前達ふたりの時間を奪ったことに変わりはないが
 お前達は自分達の力で・・・自分達の意思で
 お前達の時間を手繰り寄せたんだね」 
ヨンスはしみじみとそう言った。

「許してくれるの?」

「“彼は必ず私を迎えに来る”・・・
 NYから戻ったお前は来る日も来る日もそう言い続けた・・
 覚えているかい?」

「ええ・・」

「その頃、そんなお前を見るのが私は辛かった
 自分が犯してしまった罪を認めることが怖かったんだ・・・
 だから苦しんでいたお前に目を瞑ってしまっていた」

「いいえ・・パパだけのせいじゃないわ・・・
 私ね・・・フランクをすごく愛してる・・・
 怖いくらいに・・愛してる
 彼がここへ来て・・それがよくわかったの・・・
 だから今すごく後悔してるの・・・私はどうして・・
 待つことしかしなかったんだろうって・・」

「ジニョン・・・」

「だから・・・パパのせいじゃないわ・・・
 私のせい・・・そして・・彼のせい・・
 私達ふたりのせいなの・・・
 そのせいで私達・・今でも苦しんでるの・・・」

「・・・・・」

「でも安心して?パパ・・もう大丈夫だから・・私達・・・」 
そう言ってジニョンはヨンスに微笑んだ。

「そうか・・・大丈夫か・・・」 ヨンスもまたジニョンに微笑を返した。

「彼を・・信じてくれる?」

「彼がしていることは、今までのソウルホテルの有り方を
 根底から覆すようなものだ
 果たしてそれが吉と出るのか・・・今はわからない」

「・・・・・」

「しかし・・・私は信じたい・・・」

「・・・・・」 
ジニョンはヨンスの言葉を聞きながら胸を詰まらせていた。

「彼がここに現れた時・・彼が何をしにここへ来たのか
 直ぐにわかったよ・・・きっと・・
 彼を待っていたのは・・お前だけじゃなかったんだ」

「パパ・・・」

「ジニョン・・・」

「え?」 ジニョンは零れそうになる涙を指で拭いながら父を見上げた。

「もう少し後でいい・・・
 彼に・・・伝えてくれないか・・・」

「・・・・・」

「今度は君と酒を飲みたいと・・・」 ヨンスはそう言って笑顔を向けた。

「ええ・・伝えるわ・・パパ・・・もう少し・・後で・・」
そう言いながらジニョンはヨンスの腕にしっかりとしがみついた。





それから二日後のことだった。

「ボス・・・見つかったぞ」

「ん?」

たった今しがたサファイアに届けられた書類は、
フランクの妹ドンヒの消息を知らせるものだった。

「何処に?」 フランクは緊張した面持ちでレオを見た。

「ソウルだ」

「ソウル?」

「連絡先がある」

レオのその言葉に、フランクは瞬間的に受話器を持ち上げ、
レオに向かって顎をしゃくった。

その連絡先にあった番号は驚いたことにソウルホテルの厨房だった。
フランクは思わず、用件も告げずその受話器を置いた。

「レオ・・ソウルホテル従業員名簿を・・
 厨房で働く人員にアメリカ名は?」

「ひとりだけいる・・・ジェニファー・S・アダムス・・」

「ジェニファー・・・ジェニー?」



≪ジニョンオンニのことは心配しないで!≫

≪ジニョンさんと一緒に住んでいるジェニーと言います≫



      ・・・あの子が・・・ドンヒ?・・・
























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