2011/01/26 22:08
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-36.突然の告白

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collage & music by tomtommama

 

story by kurumi





 

フランクは彼女にくちづけながら、いつまでもこの時が続くようにと祈った。

ジニョンは彼の狂おしいほどのくちづけに、自分がこのまま彼の中に
溶けて消えてしまえばいいと願った。

しかし、時を刻む音はいやがうえにも現実を運んでくる。

それ故に、ふたりは意図して互いの胸の奥に潜む暗鬼に
触れることを避けた。

ドンヒョクが手配したルームサービスのランチを摂る間さえも
まるで一分の不安すらも感じていないかのように、互いに明るく
振舞うよう努めていた。

フランクはジニョンの気持ちを追い詰めることはするまいと決めていた。
≪しかし・・・≫実の所彼は心の奥の自問と戦っていた。
≪もしもジニョンの答えが・・・≫
フランクは小さく首を横に振って、その先の疑念を否定した。

「どうしたの?」 ジニョンが尋ねた時、玄関のチャイムが鳴った。
フランクは直ぐに訪問者がレイモンドだと思い、ジニョンに目で合図した。
彼女は頷いて席を立ち、寝室へと向かった。

フランクがインターフォンで応えず、直接玄関のドアを開けると
そこにはレイモンドの意気揚々とした姿があった。

「随分早いですね」 出迎えたフランクはレイモンドに言った。

「そうか?」
レイモンドは澄ました様子で、フランクに先立って部屋へと向かい
メインルームのドアを開けた。

「やっぱりね」 そして彼は立ち止まってフランクに振り返った。
彼の視線は目の前のテーブルに広げられた用済みの食器に注がれていた。
フランクは彼の言葉の意味を理解しながらも、そ知らぬ振りをした。
「今ジニョンは着替えています」

レイモンドは大きく溜息をついて、フランクを睨んだ。
「確かジニョンは昼過ぎまで、どうしても外せない仕事があるんだったよな」
彼はひと言ひと言を強調してそう言った。フランクはそれには答えず
澄ました顔で席に戻ると、コーヒーカップを口に運んだ。

そこへ寝室からジニョンが現れた。
その瞬間、不満げだったレイモンドの顔が柔らかく穏やかに変化した。

「やあ・・ジニョン・・綺麗だ・・・とても似合うよ」
淡いブルーシルクのワンピースを身に着けたジニョンを眺めながら、
彼は満足そうに言った。

「Hi・・レイ・・プレゼント・・ありがとうございます」 
ジニョンも顔を赤らめながら満面の笑みで答えた。

「ああ、着てくれて嬉しいよ・・君への初めてのプレゼントだね」
そう言いながら、レイモンドはジニョンを愛しげに見つめていた。

「最初で最後にして下さい」 フランクが後ろから冷ややかに横槍を入れた。

「プレゼントまで指図される謂れは無い。」 レイモンドは彼を横目で睨んだ。
「今日は一日付き合ってくれるだろ?」 その睨んだ目を優しく細めて、
レイモンドはジニョンへと移した。

「7時までです」 フランクがすかさず口を挟んだ。

レイモンドはそれには答えず、ジニョンの肩を抱き、玄関へと急いだ。
ジニョンは苦笑しながら、レイモンドに従った。

「7時に迎えに行きますよ」 フランクはふたりの背中に向かって言った。

「何処に?」 レイモンドは意地悪そうな声でその言葉だけを残し
ジニョンとふたりで出て行った。

残されたフランクは不思議と心地良いいらだちを味わいながら、
わざとらしくどかっと椅子に腰を下ろし、呟き微笑んだ。
「何処へでも。」




久しぶりに楽しく笑ったような気がした。

ジニョンはレイモンドを案内し、ソウルの観光スポットを巡っている間
終始笑っていた。

このところ、ドンスクのことや、ホテルのことで心を乱されることが続き
相手が愛するフランクと言えども、心から笑ったことがなかったような
気がしていた。

「アー楽しかった・・」 ジニョンは心からそう言った。

「そうかい?」 レイモンドは彼女のその言葉に目を細めた。

「ええ、とても・・最近こんなに笑ったことなかったわ」

「それは嬉しいね・・フランクにもちゃんと報告しよう」

「レイ。」 ジニョンは悪戯っぽく彼を睨んだ。

「はは・・冗談だよ・・悪い結果が読めることはしない主義だ」

「そう?悪い結果にわざと立ち向かいそう」

「するどい。」

「ふふ・・」

レイモンドとジニョンはフランクが手配してくれたレストランで
少し早めのディナーを楽しんでいた。

「しかし、ディナーを5時半に予約するなんて、あいつ・・
 本気で7時に迎えに来るつもりなんだな」
レイモンドはデミタスカップをソーサーに戻しながら、
フランクに対して軽く悪態をついていた。

「ええ、きっと。」 ジニョンもそれを面白がっていた。

「ここから逃げだすというのはどうだい?彼がここへ来た時には、
 我々は既に夜のソウルへと消えてるんだ」
レイモンドが腕時計を確認しながらそう言うと、ジニョンは
彼の子供じみた言い様に、声を上げて笑った。

「ふふ、レイったら・・
 悪い結果が読めることはしない主義なんでしょ?・・」

「いや、立ち向かう主義。」

「協力してもいいわ。」 ふたりは互いに悪戯っぽい目をして微笑んだ。

「でも・・本当に良かった」 レイモンドはほころぶ程の笑顔から
愛しいものを優しく見つめる微笑に変えてそう言った。

「えっ?」

「やっぱり君はそうやって笑っている方がいい」

「・・・・・・」

「君の悲しそうな顔を見るのは、いつになっても辛いよ」

「レイ・・・」

「フランクもそうなんだ」

「・・・・・・」

「あいつは苦しんでいるよ、ジニョン・・・わかるね」

「・・・ええ・・・」

「君の立場や気持ちもわからないではない、しかし・・
 私は、ドンスク社長のことはよく知らない
 だから悪いが・・・私はやはり奴のことを考えてしまう」

「レイ・・・」

レイモンドは神妙な顔でそう言った後、にっこりと笑った。
ジニョンはレイモンドの言いたいことがよく理解できたが、
さりとて、返す言葉に迷った。

「しかし、君が答えを出す以外にないわけだから・・
 私は・・彼の言うことを信じることにした」

「えっ?」

「私も・・・黙って待つということだ」 
そう言って彼は固い意志を示すように腕組をした。

「レイ、私は・・」
「私はね、ジニョン・・」 レイモンドはジニョンの言葉を遮った。
「どういう因果か、君たちの人生に深く係ってしまった
 いや、私の人生に君たちを係らせてしまったと言った方が
 正しいような気がする・・・その為に君たちは
 十年もの間、離れて生きるしかなかったんだからね」

「そんなことは・・」

「いやあるよ・・・私の生涯における最大の後悔だ・・」

「レイ・・・」

「だから・・・見届けたい」

「見届ける?」

「ああ、君たちが共に生きる姿を見届けたい。」

レイモンドは宙を仰いで、そう言うとゆっくりと目を閉じた。


「君たちの未来を・・・見届けたい」

レイモンドは淡々とした口調でその言葉を繰り返した。
そして彼のその言葉はジニョンの心に切なく染み入った。
この10年の月日をレイモンドもまた苦しんで生きていた。
彼の表情がそのことを如実に伝えていたからだ。

ジニョンはしばらくして、少し熱くなった胸を冷ますかのように
小さく溜息を吐いた。

「レイ・・・心配掛けて・・ごめんなさい」
ジニョンはゆっくりと言葉を繋ぎながら、込み上げるものを堪えた。

「心配はしていないよ・・・私は君達を信じてるからね」
彼は優しい笑顔でジニョンを見つめた。

「私・・・」 
しかしその言葉は今の彼女にとって、決して心地良くはなかった。

「ん?」

「私・・・どうしたらいいのか、わからないの」

「・・・・・・」

「私にとって、フランクは・・・誰よりも・・何よりも大切な人・・・
 それに間違いはないわ・・・でも・・・・・・・」

「確かに・・・」 
レイモンドはジニョンの言葉の先が思うように繋がりそうにないことを察して、
その先を引き取るように彼女の言葉を遮った。

「確かに・・比べられないものはあるよ、ジニョン・・
 人にはそういうものが確かにある・・・しかし・・・・・」
レイモンドは一旦黙して一呼吸置いた後、言葉を選ぶように先を続けた。

「この世に・・・
 愛するものも・・欲しいものもたったひとつだけ・・・
 ひとりの女しかいないという男がいる
 彼女以外は何ひとついらないという男がいる
 その女のためならどんなことでも・・・
 きっとどんな罪でも犯すだろう男だ
 そう・・・どんな罪でもね・・・
 例えその罪ゆえに、欲しいと願う女すら得られない
 そんな辛い結果となったとしても・・・
 その結果が・・・その女の為ならば、それでいい
 そう思う男だ・・・」

「レイ・・」 ジニョンは悲しそうに眉を顰めた。
もちろん、レイモンドが誰のことを言っているのか、
その男が欲するものが何であるのか、ジニョンにはわかっていた。
「何故?」 それでもジニョンはそう聞いた。 

「何故?」 レイモンドもまた彼女に問うた。

「その人は・・・どうしてそこまでするの?」

「さあ・・どうしてだろう」 
レイモンドはジニョンに問いかけるように小首をかしげた。

「彼女もきっと・・・
 彼をとても愛していて・・・ふたりはとても愛し合っていて・・
 それなら、きっと・・・彼女は
 彼に・・・罪を犯してまで望みを叶えて欲しいとは思わないわ・・・
 彼女もまた、彼のことが大切だから・・
 とても・・とても・・愛してるから、きっと・・・」

「そうだね・・・きっとそうだろう・・・
 でも時に愛するもの同士は・・・
 互いを思う余り、互いが望まないことをしてしまうものだよ」
レイモンドは今までの固い表情を柔らかく変えてそう言った。
この時彼は、心の中で自分の父や母のことを思い出していた。

ジニョンは彼のその言葉に悲しげに笑顔を作った。

「しかし私は奴の気持ちが手に取るようにわかる」 レイモンドは続けた。
「ねぇ、ジニョン・・・私はずっと君の幸せを願ってきた・・・
 この10年ずっと・・・」
ジニョンは俯きかけていた顔を上げて、レイモンドを見つめた。
「それは・・・私が君を愛しているから・・・」

ジニョンはレイモンドのその言葉に少し驚いたように瞬きをした

「知らなかったわけじゃないだろ?」
レイモンドはそう言って悪戯っぽく笑って見せた。

「あの・・レイ・・」 ジニョンは困惑した表情でレイモンドを見つめた。

「黙って聞きなさい・・・私は今、君に告白しているんだ
 きっと最初で最後の告白だ」
レイモンドはそう言って、ジニョンの言葉を遮った。
彼のまなざしは彼女を愛しむように熱かった。

「10年前のあの頃・・私は君を愛していた・・


    ・・・いやきっと今でも・・・」・・・
 



















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