2011/01/16 14:49
テーマ:passion-果てしなき愛- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

passion-31.winner

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   drawing by boruneo

music by tomtommama
 

story by kurumi

 

「レオ・・心の準備はいいか」

「ああ、任せておけ・・
 こんな綱渡りは何度もやって来ただろ?」

「ああ・・しかし、今回は泳ぎ慣れたアメリカじゃない
 十分気をつけて、動けよ・・」

「わかってる・・俺はしばらくキム会長側に
 付いていると思わせていればいいんだな」

「ああ、チェーン企業との契約は僕には内密に
 進めていると思わせておいてくれ・・
  できるだけキム会長を安心させておくんだ
 彼を焦らせないよう・・
 まずは株主総会を乗り切らなければ・・」

「お前の取り分だったコミッションは俺が貰うと
 会長に条件を出したら、機嫌が良かったぞ
 完全にお前と仲たがいをしていると奴は思ってるさ」

「油断するなよ」

「了解・・それよりレイモンドの方はどうだ?」

「ああ、順調のようだ・・しかしキム会長の動きを考えると
 少し予定を急いだ方が良さそうだな」

フランクはキム会長が自分に対して抱いていた疑念を
利用しようと考えた。その為にレオは、再三に渡り単独で
キム会長との接触を図っていた。


 

「レイ、そちらの進行状況は如何です?」

「むろん・・抜かりは無い・・私を誰だと思ってる」

「できるだけ早い内に片づけたいのですが」

「いつまでだ」

「早ければ早い方がいい」

「明日が株主総会だと聞いたが」

「ええ・・キム会長の根深い思惑を考えると本当は
 その総会までに解決しておきたいところですが・・
 それはどう考えても無理でしょう、あなたがここへ・・」

「フランク・・今私は何処に居ると思う?」

「何処って?」

「チェジュ島だ」 レイモンドは得意げに言った。

「チェジュ島?」

「ああ・・君からいつ声が掛かってもいいように
 こっちのホテルで仕事をしていた
 総会の開始時間は?・・」

「明朝10時」

「あー10時か・・弱ったな・・こちらで9時に大事な商談がある
 少なくとも1時間は掛かるだろう・・
 その時間にはちょっと無理だな・・だが・・・
 10時半には何んとかなる・・」

「しかしチェジュ島からでは・・」

「任せておけ、奥の手がある・・
 とにかく君はそれまで時間を稼げ」

フランクはレイモンドが何を考えているのか、
直ぐに察知した。

「レイ・・・助かります」

「ソウルホテルが君とジニョンにとって大事な場所なら・・
 私はどんなことでもする・・そう言わなかったか?」

「借りができてしまった」

「借り?今、私がそれを返してるんだ・・君達に」

「レイ・・・」


 
株主総会の当日は雲ひとつ無い快晴だった。

会場となったダイヤモンドヴィラの大ホールには
株主達が次々と現れ、開始10分前には1000もの席も
ひとつ残らず埋まっていた。

議事進行を担ったフランクは開始20分前には着席し、
鍵を握るキム会長を初め、会長側に付いている理事連中の
既に勝利を手に入れたかのように勝ち誇った顔や
逆に、死刑台に引きずり出されでもしたかのように
ソウルホテル社長ドンスクの顔面は蒼白だった。
ハン・テジュンもまた緊張を隠せない様子だった。

それぞれの思惑と決意をひしと感じながら
フランクはひな壇席から彼ら、ひとりひとりを眺めていた。

時計の針が10時を指した瞬間、フランクは口を開いた。

「それでは只今より、ソウルホテル株主総会を
 開催致します。」
彼の声を合図に開場のざわめきはピタリと収まった。



≪10時半頃、屋上のヘリポートにヘリが到着する・・
 君が迎えてくれ≫

株主総会へと向かう直前、フランクがそう言った。

「ヘリ?・・誰が?」

「行けばわかる・・それから彼が到着したら、
 テジュンssiに無線で連絡して欲しい」 
フランクはそれだけ言い残すと、会場へと向かった。

「テジュンssiに?ちょっと!・・ドンヒョクssi?!」

ジニョンは一方的なフランクに口を尖らせていた。
しかしそれでも彼の言いつけ通りに10時半少し前に
屋上に上がると、ヘリを待った。

 

「以上、各議案は承認可決されました。」
フランクの整然とした議事進行は滞りなく、
終焉を迎えつつあった。

「議長!」 
キム会長の隣に着席していたソン理事が挙手をした。

「どうぞ」 フランクはそれを待っていた。

「ここで・・・緊急議案を提議申し上げます・・・
 我々はソウルホテル理事多数の賛同を得て
 ユン・ドンスク社長の解任及び、新社長として
 キム・ボンマン理事を推挙申し上げます」

その言葉に会場全体が一瞬にしてざわめき、
騒然となった。

「静粛に・・」 フランクの声は冷静だった。
「静粛に願います・・・その理由は如何に。」 
そしてフランクはキム会長に視線を移した。

会長は唇を微かに斜め上に押し上げ、
フランクを嘲るように見た。

ソン理事は続けた。

「ソウルホテルの経営状態は悪化を辿る一方であります。
 ご存知のように、銀行融資も差し止められた現在、
 ユン社長の持ち株を持ってしても補えない程の
 膨大な借入金に苦しんでいる以上、ホテル存続は
 難しいと言えましょう。これは同社長の責任が
 多大であると言えます。そこでここはユン社長に
 潔くご退陣頂き、現時点で21%の株を保有している
 キム会長にその任を担って頂くことが最良の策と考えます」

「わかりました・・・この議案へのご意見は・・」
フランクはそう言いながら、ハン・テジュンを見た。

テジュンは大きく深呼吸をして、挙手をした。

「どうぞ」 フランクは頷くように彼に発言を促がした。

「確かに・・ソウルホテルは大きな負債を抱えております
 しかしながら、現在遂行中の21世紀ヴィジョンにより
 経営は大きく変貌を遂げようとしています」

テジュンは当初の緊張も和らぎ、次第に胸を張って
話す様子は自信に満ちていた。

「海のものとも山のものともわからん企画に
 いったい何処の銀行が多額の資金を出すと
 言うんだね」 ソン理事はこともなげに言った。

「銀行からの融資は受けません」 
テジュンは更に胸を張った。

「何を言ってる」 
会場のキム会長側一角がざわめいた。

「静粛に。・・・続けて・・」 
フランクはざわついた会場を一喝した後、
テジュンに視線を向けた。
テジュンは黙って頷くと、キム会長らに視線を戻した。

「ソウルホテルユン社長の持ち株は近日中に
 ある企業に譲られます・・そしてその企業には
 21世紀ヴィジョンの計画実行の統括
 ソウルホテルへの従業員の派遣、各種業務の委託を
 担って頂くことになります、そして・・」

テジュンはここで大きく深呼吸した。

「そして・・・その会社からの条件として・・
 私、ハン・テジュンがソウルホテル社長を
 任命されることになりました。」

「何をバカなことを・・お前ごときが・・社長だと?
 私は21%の株を保有している・・それから・・
 公表は遅らせていたが・・
 他に20%の株も既に私の手にある
 そうだったな、レオ・・・」
先程まで落ち着き払っていたキム会長が
次第に本性を現すかのように語気を荒げ、レオを見た。

レオは一度目を閉じた後、静かにまぶたを上げ口を開いた。
「残念ながら・・・まだ手続きは済んでおりません・・
 現在進行中であると申し上げたはずです」

「なっ・・何をのんびりやってるんだ!」 
キム会長の怒号が会場に響き渡った。

「因みに・・」 フランクがそこで言葉を挟んだ。
「ハン・テジュンssiより提出された資料によりますと
 その企業はチェ社長の株を譲り受けることによって
 ソウルホテル株を42%保有することになる、
 とありますが・・
 それに間違いはありませんか?ハン総支配人」
フランクは余裕ある口調でそう言った。

「相違ありません。」 テジュンは背筋を伸ばした。

「そんなバカな・・何かの間違いだ・・」 

「いや・・今私の手元にあるのは正式な書類に
 間違いはありません・・」 
フランクはキム会長に追い討ちを掛けて言った。

「そんなはずは無い!」

「私が虚偽を申し上げていると?・・
 私、シン・ドンヒョクは中立な立場の議長として、
 申し上げているのですが。」

「・・・・・し・・しかし・・
 まだユン社長の株は動いてはいない・・
 ホテルの資産を銀行に差し押さえられたら・・
 それでこのホテルはお終いだ」
キム会長が同席していた銀行の頭取連中に視線を移すと
頷く彼らを見て胸の内で安堵した。

「これは面白いことになりましたね
 この勝負は・・・
 ホテル側とその企業の提携契約の終結が早いか・・
 キム会長の権利取得が早いか・・
 その如何に依りましょう・・・」
フランクは成り行きを面白がる口調でそう言った。

そしてフランクは腕時計を見た。≪そろそろだ≫

その時社長秘書がテジュンに目配せをした。
「申し訳ございません、緊急の連絡が入りましたので
 失礼を・・」 テジュンはフランクに言った。

「どうぞ」 フランクの視線の端で、テジュンが無線を
使っている様子が見えた。

≪間に合ったか・・・≫
フランクは無表情のまま、心の中で呟いた。

テジュンは無線機を手から離すと、直ちに席へと戻った。
「議長に申し上げます。たった今、この場で
 株譲渡、及び企業提携の契約を執り行うことを
 お認め願えますでしょうか」 
テジュンは声を張ってそう言った。

「今・・ここで?」 フランクは白々しく聞いた。

「はい・・たった今、この度我々と提携する
 企業の代表が当ホテルへ到着致しました・・
 代表が是非に、株主の皆様の御前で今後の
 ソウルホテルの躍進をお約束したいと申しております」

「そうですか・・・株主の皆様、今お聞き及びの通りです
 皆様にとりましても、ホテルの繁栄は望まんとするところでしょう
 如何ですか?」 フランクは出席者に意思表示を促がした。

会場からは一部に対して遠慮がちのまばらな拍手起こった
しかしそれはいつしか、大きな賛同の拍手に変わった。

当然それは、キム会長陣営にとって寝耳に水のことだったが
ここが公の場であるここで、異論を唱える術はなかった。

まるで彼らの歯軋りが聞こえてくるようだとフランクは思った。

「お通しして下さい」 そして彼はテジュンに声を張って言った。


大ホールの観音開きのドアが両側に開くと、二人の男が
支配人ソ・ジニョンに連れられ、入室した。ひとりは
ソウルホテル長男、チェ・ジョルジュだった。その瞬間に
終始青白い顔をしていたドンスク社長の頬に赤みが差した。

そして、長い黒髪を後ろで無造作に束ねたもうひとりの男が
掛けていたサングラスを外すと、その風貌は絵画のように美しく、
凛として少し冷たげな眼差しがその場にいた者を緊張させた。
男は口元に緩い笑みを浮かべ、会場の端から端を見渡した。
そして席へ案内されると、椅子を引いてくれたジニョンに
優しい一瞥をくれ、優雅に着席した。

「ご紹介を願います・・ハン総支配人」 
フランクはその男に一瞥もくれずにそう言った。

「はい・・この方はこの度、ソウルホテルの
 21世紀ヴィジョンにご尽力頂く・・」

テジュンがそこまで言うと、男は席から立ち上がった。
「I introduce myself・・・
 Please forgive a sudden visit.Iam Reymond parkin・・
 I am glad to be able to meet you.」

「Mr.Reymond?Then let's begin it at once・・」 
フランクが手続きを開始する口火を切った時、
キム会長が突然、声を荒げ立ち上がった。

「待ちたまえ!こんな茶番劇など認められるものか!」 

「認められないとは?たった今、多数の株主の皆様より、
 賛同を得られたはず・・・ご覧になりませんでしたか?」
フランクは涼しい顔でそう言った。

「フランク・・裏切るのか」 キム会長はフランクを
睨み付けながら小声で言った。

「私は今、議長として・・飽くまでも中立の立場を
 保持したいと考えます」 フランクは終始毅然としていた。

「・・・・・」 キム会長は力なく腰を椅子に落とした。

「Then let's begin ・・・」 フランクは再びレイモンドに
視線を向けると無表情を崩すことなく、事を進行した。

テジュンが驚いたことには、何もかもが突然のことにも
係らず、この一件の手続きに要する書類が全て
用意されていたことだった。狐につままれたかのような
顔をしたテジュンの視線の先で、まったくの他人のはずの
レイモンドという男とフランク・シンの視線が柔らかく絡んだ
ような気がして、この事実の奥にあるものを納得した。


しばらくして、ユン社長とレイモンド・パーキンの
互いのサインと握手により、ソウルホテルは
大きく変貌を遂げるだろうスタート台に立った。

そして・・・今日この日を境に、ソウルホテルに
「社長ハン・テジュン」が誕生した。


「Mr.レイモンドにお伺いする」 
キム会長は立ち上がるとレイモンドに向かった。
ジョルジュがレイモンドに彼の言葉を通訳した。

「Please talk」 
レイモンドは笑顔を沿えて涼やかに口を開いた。

「あなたはどうして、このホテルを・・
 今にも潰れそうなホテルを手に入れようと
 思われたのですかな?・・お聞かせ願いたい」
キム会長の言葉には諦めと、投げやりな嫌味が含まれていた。

ジョルジュはレイモンドにキム会長の含んだ意味も残さず伝えた。

レイモンドは頷くと、キム会長に向かって満面の笑み
を向け言った。
「It’s sake of the love・・you know?」

「それは・・」と言い掛けたジョルジュをレイモンドは右手で制した。
そしてレイモンドは席を立ち上がると、おもむろに
キム会長のそばへ近づき、彼に握手を求めながら言った。

「ソレハ・・・アイノタメデス」

「愛?」 会長はレイモンドが求めた握手にも応えず
彼の言葉を鼻で笑った。

「Will you be so, too?」 レイモンドは更に笑顔を輝かせた。

「あなたも・・そうですか?・・と」 ジョルジュが間に入った。

「何を・・馬鹿なことを言ってる・・ふざけるな・・
 青二才が・・」 キム会長は吐き捨てるように言った。

「ン?・・」 レイモンドは首をかしげて見せたが、
ジョルジュは黒目を上に上げて、それを訳さなかった。

フランクは俯き笑いを堪えていた。≪レイ、遊ぶのもいい加減にしろ≫
むろんジョルジュが通訳役を“演じていた”ことは言うまでもなかった。

最後にレイモンドは顎を上げ会長に届く程度の小さな声で言った。「We won.」
その顔に不適な笑みを浮かべながら。

キム会長は憤然とした態度を変えられぬまま、出口に向かった。
そしてフランクの席の横を通る時、彼は吐き捨てるように言った。
「これで、済むと思うな・・フランク・・」

「以上を持ちまして、株主総会を閉会致します」 
フランクはキム会長の言葉を背中で聞きながら、悠然と総会を締めた。

 

「ジニョン!」 レイモンドは閉会の合図と共に、席を立つとジニョンに
駆け寄り彼女を強く抱きしめた。「会いたかった・・・」

「私も・・・レイ・・・、さっきは驚いたわ」

ほんの30分前だった。
ジニョンがフランクの言いつけ通り、屋上で待つと、
10時半きっかりに白いヘリコプターがヘリポートへと
降り立った。
そしてプロペラに因って吹き荒れた風の中、そのヘリから
現れ出でたふたりの男がジニョンに満面の笑顔を向けた。

その光景はまるで夢の中の出来事のようだった。

「さっきは急いでいたから、君をこうして抱けなかった
 ごめんよ・・驚かせたかい?・・」

「ホント、意地悪だわ・・言ってくれれば良かったのに」
そう言いながらジニョンはフランクに振り返った。

「彼に頼んだんだ・・ジニョンには内緒にと・・
 10年ぶりだ・・ジニョン・・ああ、何てことだ
 綺麗になったね・・随分と大人になった・・」
レイモンドはジニョンを自分から少しだけ離し、
彼女の頬を両手で挟むと彼女を愛しそうに
見つめながら感慨深げにそう言うと、彼女の額に
優しくキスをした。

「これくらいなら・・許されるだろ?」
レイモンドはそう言いながら、チラリと斜め横に視線を
向けたかと思うと、またジニョンに向き直って微笑んだ。

「まあ・・」
ジニョンも懐かしい人に会えた喜びに心から浸っていた。

「んっ・・んっ!・・レイ・・僕も・・」 たった今、
ドンスク社長やテジュンと挨拶を交わしていたジョルジュが
レイモンドとジニョンに近づいて咳払いをした。

「OK?」 レイモンドは不満げな表情を作って
ジニョンから離れると人知れず出口に向かっていた
フランクに悪戯っぽくウインクをした。

フランクは彼に対して、片方の口角を上に上げると、
無言で会場のドアを押した。

俯き加減の彼のその時の顔は全てに満足したかのように
柔らかく微笑んでいた。

言うまでも無く、キム会長の失敗は、フランク・シンという
男を侮ったことだ。

  どうぞ今はあなた方だけで・・・存分に・・・

 

    ・・・ソウルホテル完全勝利の祝杯を・・・


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