2010/06/07 20:37
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory-Reymond-5

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「ジニョン・・・あーやっと・・出てくれた」

 

何度電話しても、出てくれないことに計り知れない胸騒ぎがずっと私を襲っていた。

落ち着いて考えさえすれば、さほど心配するようなことでもないことなのに
ジニョンという女は私を妙に臆病にする。

彼女がドアを開け姿を見せてくれた時の私の胸の内を上手く表現することができない。

    ただ・・・無性に嬉しかった・・・

    ただ・・・彼女が・・・・愛しかった・・・


そして部屋の奥から現れた肌を露にしたフランクに対して、意も言われぬ
嫉妬の炎が芽生え始めていたことに私はまだ気がついていなかった。

       

   《ジニョンを愛しているんですね》

   どいつもこいつも・・・何を言っている・・・

   愛という言葉など

   私には似合わない

  《なら・・・ジニョンを苦しめたくはないはず・・》

 

   言ったはずだフランク・・・
   
   私の目的は・・・

 

   お前だけ・・・

私は彼にそう言い捨てて、彼らの前から立ち去った。

 


   私はただ・・・

 

   お前が欲しいだけだ・・・フランク・・・

 

   そうだろ?

 

   レイモンド・・・

 

 

「若・・・ライアン陣営から何やらきな臭い匂いが・・・」

「ソニー・・・」

「はい」

「僕の母さんのこと覚えてるか」

私は目の前に立つソニーに向かって、彼の腕にぶら下がって歩いていた
幼い頃のように、顔を見上げて母の思い出を辿った。


「もちろんです」

「そうだったな・・・
 お前は長い間僕達親子を見守ってくれていた」

「お母様をお守りすることができなかったこと・・・
 今でも深く後悔しています」

「しかしお前は僕を守ってくれた・・・
 なさぬ仲の義母の元に連れて来られた時
 周りの大人達は僕からお前を引き離そうとしていた
 しかしお前は必死に父に進言して、僕のそばにいてくれた
 兄達に無意味に苛められていた時も、
 お前が体を張って奴らの刃を受けてくれた・・・
 きっとそれが・・・心配だったからなんだろ?」

「あなたの母上とのお約束でしたから」

「母との?」

「ええ・・・あなたを必ずお守りすると・・・」

「・・・・」

「母上はお亡くなりになる前日、私をお呼びになりました」

「・・・・」

 

     《ソニーさん・・・
      レイモンドを守るのがあなたのお役目・・・
      本当にそれを信じても宜しいですか?》

     《はい》

     《どんなことがあっても・・・レイモンドのそばから
      離れない・・・約束してくださいますか?》

     《はい絶対に・・・》

     《あの子は・・・とても優しい子なんです・・・》

     《存じています》

     《あの子は・・・とても賢こくて・・・》
 
     《きっと・・・りっぱなお子に育ちます》

     《でもあの子は・・・とても・・・とても寂しがりやで・・
      誰かが抱いていてやらないと・・・》

     《早くお元気になられて・・・
      あなたが抱いておやりになるといい》

     《・・・・そんなことが・・・できるでしょうか・・・》

     《できますとも・・・きっと・・・お元気に・・》

     《ソニーさん・・・
      あの方のおそばにいらっしゃるあなたに
      こんなことを言ってはいけないのかもしれません・・・
      でも・・・
      あなたにしか・・・私は・・あなたにしか・・》

     《どうぞ何なりとおっしゃってください》

     《あなたのあの子を見つめる
      兄のような慈悲深いまなざしを信じてもいいですか?
      ・・・どうか・・・あの子を・・・》


「どうか・・あの子を・・・その先は?」

「・・・・頼みますと・・・」

「ふ・・それだけか?・・・
 たったそれだけのことでお前は父に逆らってまで僕のそばを離れなかった?」

「はい」 ソニーは“当然です”と言わんばかりに胸を張った。

「それで?・・・」

「・・・・」

「それで・・・母との約束は守れたか?」

「・・・・」

「・・・私はもうすぐ組織の三代目を襲名するんだろ?」

「・・・・」

「お前は私に頂点まで上りつめる・・・その力を与えた
 その結果が・・・これだ・・・満足か?」

「・・・・」

「どうして黙ってる?」

「・・・・」

「どうして!黙ってるんだ!」

「・・・・」

「何とか言え!」

「何を申し上げれば・・・よろしいでしょう」

僕はソニーにわけのわからない怒りをぶつけながら、知らず知らずに自分の頬を
伝って零れ落ちる涙を彼から勢いよく顔を逸らせることで振りちぎった。

 

「若・・・」

 


  これが・・・母さんが望んだことなのか?


「もういい・・・何も言うな」


  そうじゃないことは・・・僕が一番知っている


それでも・・・

 

どう足掻いたところで・・・逃れられない運命

僕は・・・

とっくに諦めて生きている


「若・・・私は!・・・母上とのお約束を必ず・・・

    

        ・・・お守りいたします」・・・









 


2010/06/01 20:42
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory-Reymond-4

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Reymond

      

「ジニョン・・・泣くのはお止め・・・」

あの時私はフランクがジニョンの元に向かったことを配下の者からの連絡で確認すると、
時間を見計らってジニョンに言葉を掛けた。

案の定タイミング良くその場に現れたフランクが、私のジニョンへのちょっかいに
怒りを露にし、私の背中に鋭い刃のような視線を突き刺してきた。

   そう・・・その調子だ

   もっと・・・怒れ・・・フランク・・・


それが私の目的・・・


しかし彼女の涙が・・・何故なんだろう・・・今度は私を正面から突き刺す


   泣かないで・・・


彼女の俯き濡れたまつげが私の胸を切なく疼かせていた

   いったい・・・どうしたと言うんだ
   彼女に近づいたのは手段に過ぎないはず・・・


それなのに何故か・・・


彼らを乗せた車が走り去るのを私は妙に複雑な気持ちで見送っていた。

   何をそんなに動揺することがある

   レイモンド・・・お前は目的を果たしているだけだ


しかしいつまでも私の脳裏から、彼女の涙顔が離れてくれなかった。

 

 

 

      『フランク?!』

私の電話に出たジニョンが相手も確認しないで、飛びつくような声でフランクの名を口にした。

      「ジニョン・・・どうした?」

      『レイ?・・・先生・・・』

      「フランクと一緒なんじゃないのか?」

 

私が思わずそう言ったのは、彼女のそばにフランクの気配を感じられなかったからだった。

      『・・あ・・一緒です・・
      今・・彼は・・ちょっと出かけていて・・その・・』

 

   そうなんだ・・・

君達ふたりが立ち去った後、君の声を探さずにいられなかった

きっとふたりが一緒だろうとわかっていながら私はこうして君の声を追った

 

      「そう・・」

      『あの・・何か・・』

      「いや・・今日のこと・・謝ろうと思って」

      『何を謝るんですか?』

      「何を・・・そうだね・・何を謝るんだろう」

   そうだ・・・いったい私は何がしたい
   彼女に何を求める

 

      『先生・・・大丈夫です・・・
       私のこと、気になさらないで』

      「それは・・どういう意味?・・
       君に構うなと・・近づくなと?・・忠告かな・・」

私は十歳も下の彼女に向かって、何故だか子供のように絡んでいた。

 

      『忠告だなんて・・・』

      「でも悪いけど・・・それはできない」

      『・・・・・レイ・・・どうして・・』

      「どうして・・それは君が・・」

 

   彼女が何だというんだ・・・
   彼女は・・・ターゲットに過ぎないはず


      『えっ?』

      「いや・・・止めておこう・・それじゃ」

      『あ・・』

      「何?・・」

      『いえ・・何でも・・ありません』

 

   ジニョン?・・・フランクと一緒じゃなかったのか・・・

   今・・ひとりなのか?・・・

 

      「・・・・ジニョン・・・今どこ?
       本当にフランクと一緒?」

      『一緒・・です・・・それじゃ・・おやすみなさい』

彼女は私の言葉を遮るように電話を切った。

 

   ジニョン・・・心細そうな震えた声だった・・・

 

私は直ぐにフランクに電話を入れたが彼の声を聞くことができなかった。

私は思わずその握った電話に向かって、思いに任せて怒鳴っていた。  

 

      「フランク!ジニョンと一緒じゃないのか!
       返事をしろ!」

 

彼の留守番電話にそう残してしまった後、私は一瞬にして後悔していた。

 

    レイモンド・・・

    お前が興奮する理由が何処にある

それでも私は


ジニョンの行き先を必死に探し歩いた

自分の配下にもスパイが存在することを察知して、自分ひとりで動いた。

唯一信用できるソニーにすら打ち明けなかったのは、私自身がきっとこの気持ちを
持て余していたからだろう。

 

数時間かけてやっと
フランクの隠れ家を見つけた時は正直ほっとした

 

    ジニョンがいるとすればここしかない

 

そう信じた私は、夜間にも係らず、そこに向かって無意識に車を走らせていた。

 

あの電話の後から連絡が取れなくなったジニョンの姿を見つけるまでは
私は止まる訳にはいかなかった。

   いや自分を止めることが出来なかった・・・

   しかし・・・それでどうしようというのだろう


    彼女を探して・・・

    彼女を見つけて・・・

       いったい・・・私は・・・

 

        ・・・何がしたいんだ・・・


 


      


2010/05/31 20:34
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-35.守りたいひと

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僕はジニョンを抱きしめていた腕をやっと緩めたかと思うと、今度は突然狂ったように
彼女を激しく求めた。

乱暴に彼女を壁に押し付け、まるで吸血鬼がそうするように、首筋に唇を這わせ、
両手で彼女のブラウスのフロントを力任せに左右に開いた。
そして終には容赦なく、スカートをたくし上げ彼女の怯えたような目を無視した。

僕の指が彼女を執拗に捉え、僕の唇が彼女の左胸の乳房を押しつぶすと、
彼女の微かな震えが伝わって来て、自分を逸していた僕に正気を取り戻させた。   
何も言わず、僕のなすがままに身を任せる彼女が・・・痛々しかった。

「・・・ごめん」

「・・・どうして謝るの?フランク・・・」

僕は彼女の体から離れると、ベッドに腰を下ろした。

ジニョンはそんな僕に近づいてゆっくりとひざまずくと身をかがめて、
うな垂れた僕の唇に自分からくちづけをした。

彼女のその行為に驚いた僕が少し身を引くと、彼女は僕の頬をしっかり両手で挟んで
唇を僕から離さなかった。

彼女の閉じたまぶたの震えが懸命に背伸びをしていることを忍ばせる。
僕はしばらくそんな彼女の睫毛を黙って見つめていた。
そして彼女は次第に自分の体重を掛けて僕をベッドに倒した。

僕達はベッドの上で随分と長い時間、互いの唇を離そうとはしなかった。
息苦しくなると互いの口の中で呼吸をした。

 

「ずっとこうしていたい・・・」

ジニョンがほんの瞬間離した唇を急いで動かしてそう言った。

「ずっと?」

「ええ・・・ずっと・・・あなたとこうしていたい」

「ジニョン・・・」

「・・・・」

「それは・・・無理だ・・・」

「・・・どうし・・・」

「どうしても・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

僕は上にいた彼女を包むように抱いて互いの体を翻すと、彼女の目を見つめたまま、
その頬と髪を優しく撫でて、まず最初に額に小さくくちづけた。
さっきまでの荒々しさと間逆に、彼女をいとおしく愛でながら、唇を彼女の肌にゆっくりと這わせた。
ジニョンの肌が薄く紅をさす様を確認すると僕自身も高揚していくのがわかる。
互いの存在を貪るように求め合い、互いが同時に絶頂に達することに喜びを感じた。
そして僕達はまた・・・この世に存在するものがふたりだけという錯覚に酔う。

 

 


もう少しで夜が明けようとしていたときだった。
抱き合ったまま甘いけだるさに酔いしれながら、深く落ちていた僕達の眠りを突然
何かが妨げた。

それは・・・
ベッドサイドで鳴っていたジニョンの携帯電話の着信音だった。

「は・・い・・・ソ・ジニョンです」

『ジニョン・・・あ~やっと出てくれたね』

「・・!先生・・・どうしたんですか?」

『玄関に出て』 電話の主はレイモンドだった。

「玄関に?・・・何処の?」

『ここの・・・』

「えっ?!」

ジニョンが慌てて飛び起きたのを僕は夢うつつで追っていた。
窓から差し込む薄暗い灯りに、服を大急ぎで着ている彼女が見えた。

「・・・どうしたの?」

「レイが!・・・先生がここに・・」

「どういうこと?」

僕はベッドサイドに置いた腕時計を手に取りながら、怪訝な顔を彼女に向けた。

「わからないわ」

ジニョンは乱れた髪を手で大急ぎで梳きながら、鏡で顔をチェックしていた。

 

 

 

私が玄関に出ると、レイモンドが本当にそこにいた。ガラス張りの扉の向こうで
彼は私の顔を見て、ホッと胸を撫で下ろすしぐさをした。
私は玄関の鍵を開け、彼との境を取り除いた。

「どうしてここが?」

「良かった・・・何でもなかったんだね」 

「レイ・・・どうして?」

「電話の声・・・」

「電話?・・・あ・・」

「でも・・・安心したよ」

レイモンドは本当に安堵したように自分の胸に手を当てて静かに微笑んだ。


「レイ・・・」

私は彼のそんな様子に胸の奥が疼くのを感じていた。

「こんな夜更けに何事ですか?」

私の背後から、無表情なフランクが上半身裸のまま現れた。

「・・・・・」

 



僕はわざと上着を羽織らず彼らふたりの前に現れた。

その時ジニョンは僕とレイモンドとの間で、居たたまれないかのように赤面し俯いていた。

「こんな時間まで・・生徒を探して?いったいどういうつもりなんでしょう
 あなた・・・気でもふれましたか?」

僕が彼を蔑むようなもの言いで言葉を吐くと、彼はさっきまでジニョンに向けていた
優しげな表情をゆっくりと冷たいそれに変えた。
そして、唇を軽く斜めに上げると僕に向かって口を開いた。

「・・・・ふっ・・・気がふれた?そうかもしれないな」

「あなたの目的は、他にあるはずでしょう?・・・何を血迷ってるんです?」

「フランク・・失礼よ」

「確かに私は今・・血迷っているのかもしれない・・・
 目的を忘れて・・・そうだな・・・血迷っている・・・」

レイモンドはまるで自分自身に確認するようにそう呟くと、自分からドアを閉め
僕達との間を隔離した。

 

 

「待て!」 僕は急いで上着を羽織ると部屋にジニョンを残して彼を追った。

「・・・・」

彼は乗ってきた車のドアに手を掛けたまま、僕を待つかのように立ち止まっていた。

「今日は、お付きの人はいないんですね・・・おひとりでここへ?・・・・」

「ひとりで行動することだってある」

「よく探し当てましたね・・・ここは誰にもわからないよう
 細心をはらってるつもりだった・・・」

「フランク・・・私に不可能なことはないと、そろそろ理解した方が利口だ」

「あなたが本当にジニョンを心配してここへ来たのは理解できる・・・
 昨夜、あなたと電話で話していた時の彼女はきっと
 不安でいっぱいだったはず・・・
 それで気になったんでしょう?
 さっきジニョンを確認した時のあなたの目は
 いつも僕に向けているそれとは違っていた
 本当に彼女が心配だったんだ・・・」

「・・・・・」

「ジニョンを・・・愛してるんですね・・・だったら・・
 彼女に辛い思いをさせたくはないでしょ?

 ・・・ソウルホテルから手を引いてくれませんか」

「フッ・・・・」

しばらく黙って僕の話を聞いていたレイモンドが、口の端をわざとらしく上げて、
不適な笑みを僕に向けた。

「何が可笑しい」

「フランク・・君ともあろう男が何を甘ったれたことを・・
 私がジニョンを愛してる?
 どいつもこいつも・・・ジニョンを愛しているのかと聞く・・
 はっきりと答えよう・・私は誰も愛してなどいない
 ・・狙った獲物は決して逃がさない・・・それだけだ・・・
 私が欲しいのは・・・ジニョンじゃなく・・
 フランク・・・君なんだよ・・・」

「・・・・・」

「何なら・・今直ぐ彼女に・・・彼女の事実を告げようか?
 そしてソウルホテルを明日の・・・いいや・・この夜明けと共に・・・
 消し去ってみせようか?」

「・・・!」

「フランク・・・君に残された道は、何も言わず
 我々の配下となって、共に生きることだ・・・
 それが我がボスが望むこと・・・私の望みでもある・・・
 そのためなら、我々はどんな手も使うだろう・・・
 ・・・さあ・・君はどう動く?」

「・・・・・たとえあなた方が・・・どんな手を使って来ても
 僕はマフィアの手先になどならない」

「ひとつだけ・・・忠告しておこう、フランク・・・
 運命には決して逆らえないということを・・・
 君がどんなに足掻こうが、私たちに狙われたら最後・・・」
       
「ジニョンは!・・僕の手で守ってみせる」

 

   この時、僕には正直まだ、勝算があったわけじゃなかった
   しかし・・・
   ジニョンだけは何としても守らなければならない

「そうか・・・わかった・・・楽しみだな
 君のそのひと言で、ジニョンの周りの人々が不幸に陥る
 そしてジニョンも・・・
 彼女は君を・・・許すかな?」

レイモンドは冷たい眼差しと不適な笑みを残して、車に乗り込むと、
まだ薄暗い森の中へと消えて行った。

 

 


「フランク・・・」

部屋でひとり、ジニョンが不安そうな顔で僕を待っていた。


「先生は帰られたよ」

「フランク・・私・・」

「いいよ・・何も言わなくても・・・君を不安にさせたのは僕だ
 あの人は、君のその不安を感じ取ったんだ・・きっと
 それで心配でここを探した・・それだけのことだ」


僕はジニョンをそっと抱きしめた。
彼女の髪を優しく撫でながら、僕はレイモンドに思いを馳せていた。

 

   あの時・・・
   ジニョンと彼が電話で話をしていた後
   僕は自分の携帯に入っていたあいつの声を聞いた

        《フランク!ジニョンと一緒じゃないのか!
         返事しろ!》

   その声は興奮を抑えられないでいるように聞こえた
   きっとその後も、あいつはひとりでジニョンの行き先を
   必死に探していたに違いない

   あいつのジニョンへの想いは本物なんだろう

   それなのに・・・
   あいつのしていることは・・・

   あいつの言動はまるで僕を煽っているような気がした
   
   僕に火をつけて・・・面白がっているのか?

   
   いいや・・・あいつには何か他に目的がある

   それはいったい・・・

 

           ・・・何なんだ・・・
    

      

 






 


 






2010/05/30 22:23
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory-Reymond-3

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Reymond

      

「ジニョン・・・泣くのはお止め・・・」

あの時私はフランクがジニョンの元に向かったことを配下の者からの連絡で確認すると、
時間を見計らってジニョンに言葉を掛けた。

案の定タイミング良くその場に現れたフランクが、私のジニョンへのちょっかいに
怒りを露にし、私の背中に鋭い刃のような視線を突き刺してきた。

   そう・・・その調子だ

   もっと・・・怒れ・・・フランク・・・


それが私の目的・・・


しかし彼女の涙が・・・何故なんだろう・・・今度は私を正面から突き刺す


   泣かないで・・・


彼女の俯き濡れたまつげが私の胸を切なく疼かせていた

   いったい・・・どうしたと言うんだ
   彼女に近づいたのは手段に過ぎないはず・・・


それなのに何故か・・・


彼らを乗せた車が走り去るのを私は妙に複雑な気持ちで見送っていた。

   何をそんなに動揺することがある

   レイモンド・・・お前は目的を果たしているだけだ


しかしいつまでも私の脳裏から、彼女の涙顔が離れてくれなかった。

 

 

 

      『フランク?!』

私の電話に出たジニョンが相手も確認しないで、飛びつくような声でフランクの名を口にした。

      「ジニョン・・・どうした?」

      『レイ?・・・先生・・・』

      「フランクと一緒なんじゃないのか?」

 

私が思わずそう言ったのは、彼女のそばにフランクの気配を感じられなかったからだった。

      『・・あ・・一緒です・・
      今・・彼は・・ちょっと出かけていて・・その・・』

 

   そうなんだ・・・

君達ふたりが立ち去った後、君の声を探さずにいられなかった

きっとふたりが一緒だろうとわかっていながら私はこうして君の声を追った

 

      「そう・・」

      『あの・・何か・・』

      「いや・・今日のこと・・謝ろうと思って」

      『何を謝るんですか?』

      「何を・・・そうだね・・何を謝るんだろう」

   そうだ・・・いったい私は何がしたい
   彼女に何を求める

 

      『先生・・・大丈夫です・・・
       私のこと、気になさらないで』

      「それは・・どういう意味?・・
       君に構うなと・・近づくなと?・・忠告かな・・」

私は十歳も下の彼女に向かって、何故だか子供のように絡んでいた。

 

      『忠告だなんて・・・』

      「でも悪いけど・・・それはできない」

      『・・・・・レイ・・・どうして・・』

      「どうして・・それは君が・・」

 

   彼女が何だというんだ・・・
   彼女は・・・ターゲットに過ぎないはず


      『えっ?』

      「いや・・・止めておこう・・それじゃ」

      『あ・・』

      「何?・・」

      『いえ・・何でも・・ありません』

 

   ジニョン?・・・フランクと一緒じゃなかったのか・・・

   今・・ひとりなのか?・・・

 

      「・・・・ジニョン・・・今どこ?
       本当にフランクと一緒?」

      『一緒・・です・・・それじゃ・・おやすみなさい』

彼女は私の言葉を遮るように電話を切った。

 

   ジニョン・・・心細そうな震えた声だった・・・

 

私は直ぐにフランクに電話を入れたが彼の声を聞くことができなかった。

私は思わずその握った電話に向かって、思いに任せて怒鳴っていた。  

 

      「フランク!ジニョンと一緒じゃないのか!
       返事をしろ!」

 

彼の留守番電話にそう残してしまった後、私は一瞬にして後悔していた。

 

    レイモンド・・・

    お前が興奮する理由が何処にある

それでも私は


ジニョンの行き先を必死に探し歩いた

自分の配下にもスパイが存在することを察知して、自分ひとりで動いた。

唯一信用できるソニーにすら打ち明けなかったのは、私自身がきっとこの気持ちを
持て余していたからだろう。

 

数時間かけてやっと
フランクの隠れ家を見つけた時は正直ほっとした

 

    ジニョンがいるとすればここしかない

 

そう信じた私は、夜間にも係らず、そこに向かって無意識に車を走らせていた。

 

あの電話の後から連絡が取れなくなったジニョンの姿を見つけるまでは
私は止まる訳にはいかなかった。

   いや自分を止めることが出来なかった・・・

   しかし・・・それでどうしようというのだろう


    彼女を探して・・・

    彼女を見つけて・・・

       いったい・・・私は・・・

 

        ・・・何がしたいんだ・・・


 


      


2010/05/30 12:37
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-34.揺れ動く想い

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《ジニョン・・・泣くのはお止め・・・》

その時、そう言って私に慰めの言葉をくれたのはレイモンドだった。
フランクは車で移動する間、私にひとことも言葉をかけなかった。
私もまた、彼に対して何を言えばいいのかもわからず、押し黙ったまま彼の横にいた。

《・・・君がいつか・・僕の元から消えてしまうんじゃないかって・・
 いつも怯えてる・・・》

 

《離れないわ・・・消えたりしないわ・・  
 お願い・・そんなこと言わないで・・ほらね・・私・・ここにいるでしょ?》

 

《フッ・・・まるで・・子供みたいだ・・
 どっちが年上だか・・わかりゃしない・・》

 

《私にはあなただけよ・・ドンヒョクssi・・決して・・離れたりしないわ・・・》


   決して・・・離れたりしない・・・
   


彼が自分の怯える心を吐き出した時、私はどうしようもなく彼を愛しているのだと
胸に刻んだ。

  


僕は自分の目の前で起こっていた出来事に、きっと我を忘れていた。
ジニョンに向かってくちびるを寄せようとしていた男の背中が僕を挑発していた。

   レイモンド・パーキン・・・

   あいつは明らかに僕の存在を意識していた

   奴の目的が何であれ、ジニョンに近づくことは許さない

 

 


「ごめん・・・帰ろう・・今から帰れば門限間に合う  」
僕は吸っていたタバコの火を消すと、車に戻ろうとボンネットから離れた。

「帰るって?・・家はすぐそこ・・」
ジニョンが怪訝そうな顔をして、家の方角を指差した。

「いや・・NYへ帰ろう」

「どうして?フランク・・まだ私のこと怒ってる?」
彼女はそう言いながら、自分の方が怒っているようだった。

「そうじゃないよ・・大事な仕事があるんだ」

「一日くらい・・・駄目?・・・ふたりでいたい」

ジニョンがそう言って、上目遣いに僕の機嫌を伺った。

「無理だ」

「・・じゃあ、あなただけ帰って・・私は・・ここに残る」
僕の冷めた言葉に今度は彼女が機嫌を損ねたような態度をとった。

「どうして・・」

「どうしても」

「・・・・・じゃあ、勝手にして」

「・・・・・」


    ジニョン・・・君が「帰らない」とでも言えば
    僕が考えを変えるとでも思った?

    悪いけど・・・

    今日の僕はそんな君の言葉を
    素直に聞き入れられそうに無い
    いつも君の思い通りに僕が動くと思ったら・・・
    大まちがいだ


僕が無愛想に車に乗り込みエンジンを掛けた傍らで、ジニョンのすがるような眼差しが
サイドミラーに見えた。

「本当にひとりで残る気?こんなところに・・」

彼女の顔をミラー越しに覗いて、少し薄暗くなりつつある周囲を見渡しながら言った。

「ええ!」

勝気な彼女が、こうと決めたら決して意思を曲げないことはよく知っていた。


僕は溜息をこれ見よがしにひとつ落として彼女の目を睨んだ。

「・・・・家は見えてるから・・・送らなくても大丈夫だね」

「フランク・・本当に帰るの?」 彼女が不安を声に現していた

「一緒に帰るなら乗って」

「・・・・いい」

「そう・・・じゃ・・」

僕はそっけなく答えると彼女を振り向くこともなく、車を方向転換させた。
サイドミラーには彼女の不安げな顔が小さく映ったままだった。

僕は一瞬ためらって、それでもそれを振り切るかのように、勢いよくアクセルを吹かせた。

 

 

   フランクは本当に帰ってしまった

         いつもなら・・・

   文句を言いながらも私の言うことを聞いてくれていたのに

         怒ってないなんて・・・
         十分怒ってるじゃない・・・

         フランクの・・・

 「バカ・・・」

 

私も何だか今日は素直じゃなかったかもしれない。
あのままフランクと帰った方が、互いのわだかまりも無くなったかもしれないのに。

私は彼の車が見えなくなっても、もしかしたら、彼が戻ってきてくれるような気がして
いつまでもその方角を見つめていた。

   でも・・・彼は戻っては来なかった


ひとしきり佇んで、私はやっとフランクを諦めると振り返って家に向かった。

車が入る場所には生えていなかった雑草が丁度足首くらいまで伸びていた。

たったの一週間ぶりなのに、すごく懐かしい気がした。
家の中に入ると、それほど広いわけではない部屋が妙に広く感じた。

こうして改めて眺めると、静かな湖畔にポツリと佇むこの家は、ひとりでいるには
少し寂しすぎる。


   怖くないもの・・・

   今までだって・・・

   フランクが帰りが遅かった時・・あったし・・・

   でも・・・

外はうっそうと茂った木々の葉が少しばかり強い風に揺れ、ざわついていた。

 

「今日は風が強いのね・・・で・・でも怖くないもの・・・ひとりだって・・・
 怖く・・・ないもの・・・ひぃっ!・・」

 

急に響いた バタン という音に反応してジニョンは思わず悲鳴をあげた。
今しがた自分が開けたばかりのドアが中途半端に開いていたためだった。
ジニョンは急いで玄関に向かうと、ドアに鍵を掛けた。

 

「フランク・・・フランク・・・怖い・・
 ドンヒョクssi!・・・ドン・・ヒョク・・ssi・・」


   やっぱり・・一緒に帰れば良かった・・・

 

ジニョンは早々とベッドにもぐりこむとブランケットを頭からかぶり、恐怖を堪えた。

 

「いつもそうだったもの・・・」


   フランクが遅い時はこうしてベッドにもぐって・・・

   でも・・いつもは・・・
 
   私が眠ってしまう前にちゃんとフランクが・・・


   この中へ入ってきてくれた


ジニョンは自分の浅はかさが情けなかった。強情を張ってしまった自分を後悔していた。

 

         ヒィ!

 

ブランケットに包まれた狭い空間で電話の着信音が突然ポケットの中に鳴り響いて
またびくついた。

 

「フランク?!」 受話器を取った瞬間に彼を呼んでいた。

『ジニョン・・・どうした?』 その声は彼ではなかった。

「・・・レイ?・・・先生・・・」

『フランクと一緒なんじゃないのかい?』

「えっ?・・あ・・一緒です・・
 今彼は・・ちょっと出かけていて・・その・・」

 

   どうして先生に嘘をつくんだろう

 

『そう・・』

「あの・・何か・・」

『いや・・今日のこと・・謝ろうと思って』

「何を・・謝るんですか?」

『何を・・・そうだね・・何を謝るんだろう』

「先生・・・大丈夫です・・・
 私のこと、気になさらないで」

『それは・・どういう意味?・・
 君に構うなと・・近づくなと?忠告かな・・』

「忠告だなんて・・そんな意味じゃ・・」

『でも悪いけど・・・それはできない』

「・・先生・・・レイ・・・どうして・・」

『どうして・・君が気になるんだろう』


レイのその言葉はまるで自分自身に問いかけているかのようだった。

「えっ?」

『いや・・・止めておこう・・それじゃ』

「あ・・」

『何?・・』
「いえ・・何でも・・ありません」

 

    電話を切らないで・・・

    そう言いそうになった

 

『・・・・ジニョン・・・今どこ?本当にフランクと一緒?』

「一緒です!・・・それじゃ・・おやすみなさい」

私は急いでそう言うと、不自然なほどに慌てて電話を切ってしまった。


    何をそんなに動揺しているんだろう

 

    怖いからって・・・

    寂しいからって・・・

    レイに何を言う気でいたの?・・ジニョン・・・

 

 

「誰と話してたの」


「きゃあ!」

背後から突然声がして驚いて振り返るとフランクが壁にもたれて立っていた。

 


「フランク!・・」

ジニョンは大きく顔をほころばせて、僕に飛びついてきた。

「フランク!帰って来てくれたのね」

「今の電話は・・・誰?」

「あ・・先生が今日のこと気にして・・でも・・どうして?フランク・・・
 大事な仕事があったんじゃ」

「仕事があった方が良かった?」

「・・・・どうして・・・そんな意地の悪い言い方をするの?」

ジニョンが寂しそうな声で小さく呟いた。

「別に・・・」

   僕はまた不機嫌そうに横を向いて
   彼女から笑顔を取り上げる

   気になって急いで引き返したくせに・・・
   いったい何をやってるんだ


「そんなに・・私に怒ってるなら、なんで帰って来たりしたの!」

 

   どうしてなんだろう・・・

 

「・・・・・ごめん・・・
 僕はどうかしてる・・・わかってるのに・・・どうかしてる・・・」

 

   僕はどうしてこんなにも素直じゃないんだ

 

「私の為に戻って来てくれたのよね」

ジニョンは僕の頬を優しく撫でて、うな垂れた僕の顔を覗いた。
僕はそんな彼女の聖母のような眼差しに降参するように「こくり」と頷いた。

「君が怖い思いをしていないか・・心配だった
 君が泣いてないか・・・心配で心配でたまらなかった
 だから・・・」

 

僕は彼女を強く抱きしめた。
本当に壊れるほどに力の限りを込めて抱きしめた。


   フランク・・・お前は何をそんなに

   恐れているんだ

   この手の中にあるものは決して消えたりはしない

 

   どうして・・・それを・・・

 

 

       ・・・信じられないんだ・・・

 






 




 


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