2010/05/20 22:01
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

創作mirage-儚い夢-33.忘却

Photo





      

「離せ・・・」

緊迫した場面に合っても、フランクは決して声を荒げることはなかった。

ただ、私に向けられた目だけが怒りに燃えていた。
いいえ・・・そう見えたのは、レイモンドの突然の行動に身動きすらできないでいた
自分自身のフランクへの後ろめたさだったかもしれない。

その時私はフランクの鋭い目に射られたかのように言葉を失い、知らず知らず
目の前のフランクが歪んでいく中で、ただ彼の視線を避けないでいることがやっとだった。

「ジニョン・・・泣くのはお止め・・・」

そう言って慰めの言葉をくれたのはレイモンドだった。
その時のレイにはもうさっきまでの怖い目をした男の様相はなく、いつもの柔和な表情を
少し困ったように変えて私を見つめるだけだった。

レイの大きな手が私の涙を拭おうとしたその時だった。
フランクが私の手首を力強く掴んで私の体をレイの直ぐ横をすり抜けさせるように
自分の腕の中に移動させた。
そして私はフランクのなすがまま、彼に抱きかかえられるようにその場を離れた。


   

僕は自分の目の前で起こっていた出来事に、我を忘れていた。
ジニョンに向かってくちびるを寄せようとしていた男の背中が僕を挑発しているのがわかった。

  レイモンド・パーキン・・・

  あいつは明らかに背後にいた僕の存在を意識していた

 

「ドン・・ヒョク・・ssi・・・どこへ・・・」

僕は車にジニョンを乗せると、帰るべきアパートとは逆の方角に向かって車を走らせていた。

「・・・・」

  今君と口を利いたら・・・

「・・・・」

  僕は・・・どんなに嫌な男になるだろう・・・

恐る恐る僕の顔色を伺って口を開いたジニョンを僕の無言が彼女をも
苦しい沈黙の世界に追い込んでいた。

その時、僕は湖畔の別荘に向かっていた。
目的の地までの2時間を僕が正面を睨みつけている隣で、ジニョンは僕を避けるように
視線を車窓に向けていた。

 

  フランクが何に怒っているのか分かっていた

  私は・・・どうしてあの時・・・
  直ぐにもレイを跳ね除けなかったんだろう・・・

  あの時・・・もしもフランクが現れなかったら・・・
  私はレイのくちづけを受け入れたんだろうか・・・

  いいえ・・・そんなことは決してない・・・

    ≪ないわ・・・フランク・・・≫

でも、フランクに対して後ろめたい感情を抱く自分が・・・

  すごく悔しい・・・




 「どうしてあんなことをしたんです?父さん。・・私を信じられませんか・・・
 兄さんがやろうとしたことをあなたは何故止めなかった?
 フランク・シンに資金的な余裕があったなら、
 私達は今頃簡単に敗北してる。」

私はデスクに座ったまま目を閉じていた父に向かって、怒りを抑えてそう言った。

「レイモンド!何だ!その言い方は!まるで俺達が奴に負けたような・・
 株は大半を買い戻したんだぞ!」

パーキン家の二番目の兄、ライアンが私に噛み付かんばかりに怒鳴り散らした。

「違いますか?もう少しで彼にしてやられるところだった」

「お前が父さんの意向に反して、なかなか成果を上げないから
 援護射撃してやろうと動いてやったものを」

「余計なことだ」

「何!」

「止めなさい・・・」

「・・・・・」

「レイモンド・・・私は確かにこの一件をお前に任せた
 しかし・・時間が掛かりすぎているのは事実だ
 私はフランク・シンが欲しい・・お前にそう言った
 それと、韓国のソウルホテルは何の関係があるというんだ
 どうして、フランク・シンにそれほどてこずる・・」

「父さん・・この件は俺にやらせてくれ・・
 フランク・シンという男を何とかすりゃあいいんだろ?
 そんなこと、赤子の手を捻るより容易いことだ」

「余計なことをするな」
 
「何?!兄貴に向かってその口の利き方は何だ!
 お前がわざわざ入り込んだ大学にフランクの女がいるんだろ?
 何をひと月以上もかけて遊んでる?そんな女・・・」

「余計なことをするな・・・
    そう言ったのが・・聞えなかったか・・・」

私がライアンの胸倉を掴んで睨みを利かせた瞬間、ライアンの側近が私の背後を
瞬時に取り巻き、私の側近がそのまた背後にぴたりとついた。

その研ぎ澄まされた緊張を父が静かな口調で解き放った。

「この案件は・・・レイモンドに一任している・・・
 以後、レイモンドの指示を無視するな」

絶対であるボスの言葉に、不満を露にしながらもライアンは部屋を出て行った。


「レイ・・・
 お前がどうしてそれほどにこの案件に熱を入れるのか・・・
 いつも醒めたような仕事の仕方しかしなかったお前が・・・
 フランク・シンはそれほどにお前を熱くするのか・・・」

「熱く?・・・そんなに熱くなっているように見えますか?・・・
 私はいたって冷静ですよ・・ボス・・・」

「私はお前とフランク・シンが組んでくれれば怖いもの無しだと思ってる」


「あなたに怖いものなどあるんですか?」 

「・・・・あるさ・・・ずっと恐れているものがある」


「それは・それは・・興味深いな・・・
 この世にあなたが恐れるものがあろうとは」


「レイ・・・今日が何の日か・・・覚えているか?」

「・・・・」

「お前と私にとって・・・大切な人を失った日だ・・・」

「私にとって。・・・です」

「・・・・レイ・・・」

「そして・・あなたが・・・
 その人から私を・・・奪った日でもある・・・」

「・・・・」

「ふ・・・冗談ですよ・・・遠い昔の話です」

「恨んでいるのか」

「恨み?・・・そんなもの・・・
 エネルギーの無駄遣いだ・・・ボス・・・お任せ下さい・・・」

私は忠誠を誓うかのように胸に軽く手を当てて目を伏せ頭を垂れた。

「フランク・シンは必ずや・・・あなたの御前に・・・」







別荘の近くまで車が近づくと、丁度湖畔に夕日が反射してまぶしいほどだった。
僕はあと数分で別荘に到着しようというところでおもむろに車を止め、車外へ出た。
そして車のボンネットにもたれかかると煙草を咥えた。

燻らせた煙が自分の目の前で空気と交わるその向こうに、広い湖畔の水面と空が
オレンジ色の濃淡に輝く様を、僕はしばらく無言で眺めていた。

「出ておいで・・・夕日が綺麗だ」

さっきから助手席に座ったまま、僕の背中を睨んでいるだろうジニョンに
僕は振り向かないまま静かに声を掛けた。

少しの静寂の後、ドアの開く音が聞こえた時は、さっきまでの何処に向けていいか
わからないほどの怒りは不思議と消えうせていた。

「ごめん・・・」 僕はジニョンに言った。

「どうして・・ドンヒョクssiが謝るの?悪いのは・・」

ジニョンは僕の隣に並んで車に寄りかかり同じ風景に視線を送った。

「悪いのは?」

「悪いのは・・わ・・」

「君は何かしたの?」

「な・・何も・・して・・ない」

「なら・・もういい」

「でも!・・・もしドンヒョクssiが来てくれなかったら」

「僕が行かなかったら・・・あいつと何かしてた?」

「し・・しないわ!・・しない!・・・でも・・
 私・・・あの時、本当に・・・動けなかった・・・何故か・・・わからないの・・・」

「わからない・・か・・・君の得意な・・・“わからない”」

「ごめんなさい」

「あやまるな。・・・その方が怖い」

「怖い?」

「・・・そう・・僕は君に対していつも恐れてる」

「どういう意味?」

「・・・君がいつか・・僕の元から消えてしまうんじゃないかって・・
 いつも怯えてる・・・」

「そんなこと・・有り得ないわ」

「幼い頃からの癖なんだ・・きっと・・」

「癖?」

「・・・・・・だから・・何も望まないようにして生きてきた」

「・・・・・・」

「望んでも・・望んでも・・無駄だったから」

「・・・・・・」

「でも・・・君のことだけは・・・望んでしまう・・
 “お願い・・僕から離れないで・・・”いつもそう祈ってる・・・」


「離れないわ・・・消えたりしないわ・・お願い・・恐れないで・・
 ほらね・・私・・ここにいるでしょ?」


ジニョンが僕の手を取って、自分の心臓に僕の掌を宛がうと、母親のような
慈愛を込めた瞳に涙を浮かべた。


「フッ・・・まるで・・子供みたいだ・・どっちが年上だか・・わかりゃしない・・」

「ごめんなさい・・・あなたを不安にさせたのね・・私・・」

「・・・・・・・」

「私にはあなただけよ・・ドンヒョクssi・・決して・・離れたりしないわ・・・」


「ああ・・・わかってる・・・」


    ・・・わかってるよ・・・
   
  

 


 


 

   

    

 





 


 


2010/05/20 08:40
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory-Reymond-2

Photo



mirage sidestory-Reymond-2


      

 

あの時私はフランクがジニョンの元に向かったことを、配下の者からの連絡で確認すると、
ジニョンを探し、時間を見計らって彼女に言葉を掛けた。

案の定タイミング良くその場に現れたフランクが、私のジニョンへのちょっかいに怒りを露にし
私の背中に鋭い刃のような視線を突き刺してきた。

   そう・・・その調子だ

   もっと・・・怒れ・・・フランク・・・


それが私の目的・・・
フランクを怒らせれば、彼は必ずこちらの思う通りに動く


しかし彼女の涙が・・・何故なんだろう・・・

今度は私を正面から突き刺した


   泣かないで・・・

「ジニョン・・・泣くのはお止め・・・」

彼女の俯き濡れたまつげが私の胸を切なく疼かせていた。

   いったい・・・どうしたと言うんだ
   彼女に近づいたのは手段に過ぎないはず・・・


   それなのに何故か・・・


彼らを乗せた車が走り去るのを、私は妙に複雑な気持ちで見送っていた。

   何をそんなに動揺することがある

   レイモンド・・・お前は目的を果たしているだけだ


しかしいつまでも私の脳裏から、彼女の涙顔が離れてくれなかった。




 

 「どうしてあんなことをしたんです?父さん。・・私を信じられませんか・・・」

兄、ライアンがフランクを陥れるべく、裏で動いていたことを知った私は
兄にではなく、父でありボスであるアンドルフ・パーキンに食って掛かった。

「兄さんがやろうとしたことをあなたは何故止めなかった?
 フランク・シンに資金的な余裕があったなら、私達は今頃簡単に敗北してる。」

   そうだ。そのまま沈んでしまえば良かったんだ


「レイモンド!何だ!その言い方は!まるで俺達が奴に負けたような・・
 株は大半を買い戻したんだぞ!」

「もう少しで彼にしてやられるところだった」

「お前が父さんの意向に反して、なかなか成果を上げないから
 援護射撃してやろうと動いてやったものを」

「余計なことだ」

「何!」

「止めなさい・・・」 父がやっと割って入った。

「・・・・・」

「レイモンド・・・私は確かにこの一件をお前に任せた
 しかし・・時間が掛かりすぎているのは事実だ
 私はフランク・シンが欲しい・・お前にそう言った
 それと、韓国のソウルホテルは何の関係があるというんだ
 どうして、フランク・シンにそれほどてこずる・・」

「父さん・・この件は俺にやらせてくれ・・
 フランク・シンという男を何とかすりゃあいいんだろ?
 そんなこと、赤子の手を捻るより容易いことだ」

「余計なことをするな。フランク・シンはあんたには手におえない」
 
「何?!兄貴に向かってその口の利き方は何だ!
 お前がわざわざ入り込んだ大学にフランクの女がいるんだろ?
 何をひと月以上もかけて遊んでる?そんな女・・・」

   そんな女?

「余計なことをするな・・・
    そう言ったのが・・聞えなかったか・・・」

私がライアンの胸倉を掴んで睨みを利かせた瞬間、ライアンの側近が私の背後を
瞬時に取り巻き、私の側近がそのまた背後にぴたりとついた。

私は自分が何に対して熱くなっているのか、その事実に目をつぶるために
ライアンに喧嘩を売っているのかも知れない。そんな思いがふと、胸に過ぎった。


「この案件は・・・レイモンドに一任している・・・
 以後、レイモンドの指示を無視するな」

絶対であるボスの言葉に、不満を露にしながらもライアンは部屋を出て行った。


「レイ・・・
 お前がどうしてそれほどにこの案件に熱を入れるのか・・・
 いつも醒めたような仕事の仕方しかしなかったお前が・・・
 フランク・シンはそれほどにお前を熱くするのか・・・」

「熱く?・・・そんなに熱くなっているように見えますか?・・・
 私はいたって冷静ですよ・・ボス・・・」

   冷静?・・・どこが冷静なんだ?

   確かに私はどうかしている・・・



「レイ・・・今日が何の日か・・・覚えているか?」

   忘れるはずがない



「お前と私にとって・・・大切な人を失った日だ・・・」

   あなたにそんな風に言って欲しくはないよ、父さん・・・



「私にとって。・・・です」

「・・・・レイ・・・」

「そして・・あなたが・・・
 その人から私を・・・奪った日でもある・・・」

   いいや、違う・・・

「ふ・・・冗談ですよ・・・遠い昔の話です」

「恨んでいるのか」

   恨み?・・・

   恨むことであの人が戻るなら

   この世の全てを恨みつくしたさ

「恨み?・・・そんなもの・・・
 エネルギーの無駄遣いだ・・・ボス・・・お任せ下さい・・・」

私は忠誠を誓うかのように胸に軽く手を当てて目を伏せ頭を垂れた。

「フランク・シンは必ずや・・・あなたの御前に・・・」


   そう、私にはもうあなたに沿った途しかない


     何も・・・私にはもう


        ・・・何も無いじゃないですか・・・

 

 
      


2010/05/19 22:29
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage-儚い夢-32.隠された顔

Photo


  

      

「ジニョン・・・おはよう」

「あ・・先生・・おはようございます」

レイモンド先生は相変わらず、優しげな微笑を私に向けてくれていた。

昨日、フランクが先生に対してあまり良い態度を示さなかったことは想像がつく。

フランクはどうしてあんなに先生を嫌っているんだろう

フランクは“焼もち”だと言った

でも本当にそれだけ?

「ん?」 
つい、見つめていた私の視線に気が付いて、先生が私に首を傾げて見せた

「あ・・いえ・・」

フランクの非礼に対する申し訳ない思いが、逆に先生を意識してしまってる

「レイ・・挨拶はジニョンにだけですか?」

「やあ・・ジョルジュ・・おはよう」

「まるで付け足しみたいだな」

「ふ・・すねるな」

「昨日はありがとうございました」

でも、先生の優しさに無頓着に甘えることがフランクの心を騒がせるのなら・・・


「いや・・余計なことしたんじゃないかと・・あの後、少し後悔したよ・・・
 彼はかなりやきもちやきのようだね」

「あ・・あの・・お気を悪くなさらないでください」

「昨日?やきもちやき?・・・何のこと?」

ジョルジュがふたりの会話の意味を探るように私と先生の顔を交互に伺っていた

「ううん・・何でもない」

「・・・・・」

「おっと・・・ここにもいたか・・・やきもちやき」

先生はそう言ってジョルジュにからかうような視線を送った。
ジョルジュは話題の主がフランクであることを直ぐに悟って、さっきまでの笑顔を
私たちの前で瞬時に曇らせた。

「先生・・・」

「レイ・・って・・・」 

「えっ?・・」

「呼んでくれないんだね・・最近・・ん?・・」

先生が私の目線まで頭を下げて下から覗くように訊ねた。
フランクによく似た深い褐色の瞳があまりに近くにあって私は少し動揺していた。

「あ・・あの・・私、次の授業が・・・ジョルジュ・・後でね」

「ああ・・じゃあ、後でな」



ジニョンが急に慌てたようにその場を去った後、俺はジニョンを見送るレイの横顔を
重い気持ちで見ていた。

「・・・・・レイ・・・」

「ん?」

「ジニョンは駄目ですよ・・・」

「駄目って?」

「あいつはいずれ韓国に連れて帰ります」

「連れて帰る?」

「ええ・・・俺の嫁さんとして」

「へ~・・・それは初耳だ・・・でも・・どうして、そんなことを・・・私に?」

「あなたの目」

「目?」

「あなたのあいつを見る目は、一生徒を見る目じゃない・・・そう思って」

「ふ・・・そうか?」

「俺はあなたが好きだ・・・
 だから、あなたとは戦いたくない・・・それに・・・」

「それに?」

「・・・戦うのは・・・ひとりで沢山だ・・・」

俺はフランク・シンを思い浮かべて眉を顰めると独り言でも言うように小さく呟いた。

「フランク・シン・・か・・・」 レイモンドがポツリと言った。

「・・レイ・・彼といつ?」

「んー・・大分前から・・・」

「・・・・?」

「して・・君は奴に勝てるのかな?」

「・・・・・」

「ジョルジュ・・・」

「はい・・・」

「私を好きだと言ったね・・・戦いたくないと・・・」

「・・・・・」

「甘いな・・・いったい君は・・・私の何処を見てるんだ?・・・」

「何が言いたいんです?」
 
「いや・・忠告をしてるだけだ・・・上辺だけで人を判断するなと・・・
 もしかしたら、私は君の将来を脅かす人間かもしれない」

「レイ・・やっぱり、ジニョンを?」

「さあ・・どうかな・・・」

そう言って口の端で小さく笑ったレイの目が一瞬不気味な光を放ったように見えた。
今まで見たことのないようなレイの冷たい視線に得体の知れない何かを感じて
俺の背筋を震えさせた。

 


 

僕は昨夜から、レイモンド・パーキンの発した言葉の裏に何が隠されているのかを
読み取ろうと模索していた。

  ただ、僕を組織の手中に収めたい・・・それだけなのか・・・


奴のことになると、先が読めない自分が情けなく、苛立ちを覚えた。

  あいつの狙いは・・・いったい何なんだ

そのこととは間逆に合併問題はスムーズに運んでいた。このまま行けば、一ヶ月後には
取引も終結し、僕は予定通り、二ヵ月後、ジニョンの父上にお目通りが叶う。

  そうしたら・・・
  何もかも上手くいく・・・
  

「ボス・・・グランドホテルの株価の動きが変だな」

僕の目の前で先刻からPCの画面と睨み合いをしていたレオが苦虫を潰したような顔つきで
そう言った。

「急激に落ちてる・・・大口が売りに出たな・・」

「・・・・・」

「このままでは俺達の損害が大きくなるぞ・・手に入れるのには苦労したが・・・
 ここはひとまず・・・離すか・・・」

「いや・・待て」

順調に上昇していたはずの株価が暴落の動きを見せていた。
このまま暴落が続けばグランドホテル優位に取引が運ばない。
そんなことにでもなったら最後、僕の信用は瞬く間に失墜することになる。


「レオ・・・このままにしておいてくれないか」

「しかし、ボス・・・もし、このままだと
 俺達は一文無しだぞ・・わかってるんだろうな」

「わかってる・・・」

「フランク・・確かにお前はすごい奴だよ・・・しかしな・・
 俺の長年の経験からすれば、今回は俺の勘の方に分がある・・・
 そう思わないか?
 正直、お前はまだ経験が浅いんだ・・・な・・悪いことは言わん」

「・・・・駄目だ・・・いや・・頼む。」 僕はレオに食い下がった。

「・・・・・」

確かに今回はレオの意見が正しいかもしれない。客観的に考えれば彼の言う通りだった。
どうしてだ、と言われても、返す正論すら見つけられなかった。

    それでも・・・僕の中の何かがそうさせた

    自分を信じろと・・・

    迷うなと・・・

 

 


「どうだ?」
「揺さぶりに動じる様子はありません・・・」
「そうか・・・」
「いかがなさいますか」
「買い戻せ」

 

「レオ・・信用取引の上限は?」
「あと20といったところだ」
「すべて使え」
「バカなこと言うな」
「いいから・・・やれ」

 



「ジニョン・・・」

「あ・・先生・・・」

校門近くでばったりとレイに出会った。

「サークルは?」

「い・・いいえ・・・今日は・・」

「・・・ジニョン・・さっきから何だか変だね・・・
 まるで私を避けているみたいだ」

「い・・いいえ!避けてなんか・・・」

「そう?・・・じゃあ・・行こう」

そう言うなりレイが私の手首を掴んで歩き出した。

「先生!・・離して・・・何処へ行くんです?
 先生!・・・レイ!」 レイが私の大声でぴたりと足を止めた。

 

「いったい・・・どうしたと言うんです?レイ・・
 何だかいつものレイじゃない」

「ごめん・・・ちょっと強引だったね・・・
 きっとジョルジュにあんなことを言われたからだな」

「あんなこと?」

「私が君を見る目・・・変なんだそうだ」

「変って?」

「つまり・・・君を愛してる・・・」

「え?」

「そういう目をしてると・・・」

そう言いながら私に近づくレイの瞳は憂いを帯びていて、まるで遠い宇宙に
吸い込まれそうな程だった。
彼のくちびるが静かにゆっくりと近づく様を私はまるで磁石で留められでもしたかのように
身動きできないまま見つめていた。
 
「離せ・・・」

レイの肩越しに恐ろしい目をしたフランクが見えた。
私を睨みつけてでもいるかのような目が私の今までの金縛りを瞬時に解き放った。
レイはフランクの声に驚くでもなく、振り向きもせずに私に向かって薄く微笑んだ。

フランクの登場をわかってでもいたかのようなその不適な微笑みは・・・
決して今まで私に見せていた温和で優しさに溢れた微笑ではなかった。

  レイ・・・今私の目の前にいるあなたは・・・


       いったい・・・



           ・・・誰?・・・

 

 










 









 


 


2010/05/19 00:08
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage-儚い夢-31.沈黙

Photo


 


 


      ジニョンに知られると・・・後悔する?

   どういう意味だ・・・

 

 

僕が部屋に戻るとジニョンがコーヒーを淹れていた。僕が無言でパソコンの前に座り、
仕事を始めてしまったことが、彼女は気になっているようだった。

「あの・・ドンヒョクssi・・コーヒー飲むわよね」

「いらない」

僕は取り付く島も与えないようなそぶりを露に彼女から視線を逸らしたまま、
仕事を続けた。

彼女は僕の顔色を伺うようにデスクを挟んで僕の正面に立っていた。

「あ・・・先生ね・・ジョルジュに頼まれて・・その・・」 

「・・・・・・」

「上までは結構ですって・・お断りしたのよ・・でも・・その・・

  ・・最近は・・アパートの中も物騒だからって・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・ドンヒョクssi・・・ドンヒョクssi?! 」

「怒鳴らなくても聞こえる」

「だったら返事してくれてもいいでしょ?

 先生はご親切に私をここまで送ってくださった・・

 それって、そんなに悪いこと?」
ジニョンは必死に自分の分を取り戻そうと、強い口調で言った。

 

「さあ・・」

「さあ・・って・・・そんな言い方、ないわ」

「じゃあ、どう言えばいい?

 先生に送ってもらった・・それは悪いことじゃないんだろ?

 だったらそれでいいじゃないか・・・

 僕のどんな言葉を待ってるわけ?」

「・・・・そんなに・・怒らないで」

「怒ってないよ」

「怒ってるじゃない!」

「怒ってない!」

「こんなことくらいでそんなに怒る理由がわからない!」

「わからない人間に何を言ったところでどうなる?

 君にとって、男の車に軽々しく乗ることはごく普通のことなんだろ?」

「男って・・・先生よ?」

「男に変わりない」

「ご好意を無下にできないことだって・・」

「もういい!これ以上、話しても平行線だ!」

僕は思わず席を立って、彼女を避けるように窓際に向かった。

 

「フランク!」

「・・・・・・」

「ドンヒョクssi・・・」

彼女が突然、僕の背中にぴたりと体を沿わせ頬をつけたかと思うと
細い腕を僕の胸に回して交差させた。

「ドンヒョクssi・・・ドンヒョクssi・・・ドンヒョクssi・・・  」

彼女の僕を呼ぶ声が次第に小さく涙声に変わる。

まるで・・・フランクと化した僕からドンヒョクを呼び出してでもいるかのように
僕の名を呟き続けていた。

 

  “ドンヒョク”はきっと・・・

  これ以上彼女の震える腕を放っておくことはできない

  それを知ってるんだね・・・ジニョン・・・

 

「怒鳴って・・・ごめん・・・」

「・・・・・・」

「でも・・・嫌なんだ・・・君が・・あいつの視線に触れられる・・・
 それを考えただけでも・・・」

僕はそう言いながら、彼女の右腕を引いて彼女を僕の正面に抱いた。

「妬いてるの?・・・先生に?」

「ああ・・・妬いてる・・・この目も・・この頬も・・この唇も・・・
 本当は・・・僕だけが見ていたい・・・」

「私はあなただけを見てるわ・・それだけじゃ・・・駄目?・・・」

「君はずるいね・・・」

「ずるい?どうして?」

「僕の弱点を握ってる」

「ドンヒョクssiの弱点て?」

「君の涙に弱いこと・・・」

「あなたの怒った顔・・・震えるほど怖いんだもの」

「そう?・・・気をつけるよ」

「もう誰にも送ってもらったりしないわ」

「ああ・・そうして・・・ここへ来る時は僕が迎えに行く」

「うん」

 

   君の困惑が・・・安堵に変わり・・・

   君の涙は僕の胸の中で乾いていく

   これから先・・・

   僕は何度・・・君を泣かせることになるんだろう・・・

   その度にこうして、君の涙を拭っていけるのか

   君を守ることができるのは・・・

   ドンヒョクなのか?

   フランクなのか?

   それとも・・・

 

 

 

 

数日経って、レオの報告が届いた。

「ボス・・・ソウルホテルとソ一家との関係がわかったぞ」
「・・・・・」

「話は19年前に遡る・・・
 ひとりの若い女がある小さなホテルに宿泊した」

電話口で突然語り始めたレオの口調を訝しげに聞いていた。

「何の話だ」

「まぁ聞け・・・
 その小さなホテルとは現在のソウルホテルの前身
 チェ社長夫妻が営んでいた・・・

 宿泊した若い女は訳あり風で当初から夫妻は
 彼女を気にかけていたらしい・・・

 ある日・・・屋上に昇った女を夫妻は慌てて追いかけた
 夫妻のあまりの慌てぶりに女は笑ったそうだ・・・

 まさか、飛び降りるとでも?と・・・

 しかし、女の目が笑っていなかったことを彼らは見逃さなかった

 茶化したように振舞いながらもふたりの誠意を感じ取った女は
 突然真顔になって自分から身の上話を始めた・・・ 

 自分が今身ごもっていること
 体の弱いことを悲観して子供を生むことを躊躇していること・・・

 『生んだとしても満足に育てることができそうもない』

 そう言って泣いたそうだ

 その彼女にチェ夫妻は誠心誠意尽くして       
 生きることの大切さと子供を生む勇気を説いた

 その後、女はそのホテルで働きながら日々を過ごし
 子供もそこで生んだんだそうだ・・・」

レオの話は長々と続いたが、僕には一向に彼の意図が読めなかった。

「話が読めない」

「そうだな・・・先にその生まれた子供がジニョンさんだと
 言えば、先が聞きたいか?」

レオはそう言って、今度は僕の関心を引いた。

「・・・・・それで?」

「女は子供を生んで一年も経たず亡くなった」

「そんなはずはない・・・ジニョンの母上はご健在だ」

「いや・・生みの親は亡くなってる

 ジニョンさんはその後、兄夫婦に引き取られ育った」

「ジニョンはそのことを?」

「知らないそうだ・・・事実を知っているのは
 チェ一家の人間と・・・ジニョンさんの育ての親・・・
 それと、ごく親しい友人らしい・・・」

 

   ジョルジュは・・・知っているわけだ・・・

 

「ジニョンさんの亡くなった母上の遺言で
 子供を兄夫婦の実子として育ててくれるようにと・・・

 本当の親の温もりも知らず育つことなど・・・
 微塵も感じさせない、明るく太陽のような女の子に・・・

 そう残して息を引き取ったそうだ・・・

 だから、違法とは知りながら・・・
 そこにいた人間達で口裏を合わせ、兄夫婦の実子とした」

「そんな秘密がどうしてお前に漏れる」

「彼らの古くからの友人だ・・・
 ソウルホテルの為・・・そう言って口説いたそうだ」

「・・・ソウルホテルを調べるのは構わないが・・・
 ジニョンに知られないように・・・」 僕は独り言を呟いた。

「何だ?」

「レイモンド・パーキンが僕にそう言った・・・
 後で後悔することになる・・・と・・・」

「パーキンが?」

「ああ・・・ということは、パーキンもこのことを知っている・・・

 そういうことになる・・・

 しかし・・・ジニョンに知られてはいけない
 それがこのことだとしても・・・奴がソウルホテルの買収に
 自信ありげなのはどうして・・・・・・・」

僕はレイモンド・パーキンの真意を頭の中で懸命に探っていた。

 

「ボス・・・俺達は今、NYグランドホテルとプリンスホテルとの
 合併問題を抱えているんだぞ

 ソウルホテルのことをこれ以上調べてどうする・・」

 

   僕が今後奴らの言いなりに生きていかなければ

   ソウルホテルを潰す・・・

   ソウルホテルを潰すも生かすも僕次第・・・

   そう言いたいわけか・・・

   しかしソウルホテルは経営上なんら問題のないホテル・・・

   その優良ホテルを潰す手段は強引な乗っ取りしかない・・・

   それにはジニョンの父上が持つ株が必要

   ジニョンの父がそれを手放すとしたら?

   どんな時?

   それは・・・ジニョンの秘密を彼女に・・・

   そう脅されたら・・・父上はどう動くだろう・・・

 

 

 

「ボス・・・ボス・・・フランク!」

「あ・・すまない・・・」

レオの声が聞こえないほどに瞑想を巡らせていた僕が、やっと正気を取り戻して
彼の声を聞いた。

「どうしたんだ?・・・ボス・・・知ってるとは思うがな・・・
 お前の少ない資産はもう今回の案件で底を付いてる・・・

 そればかりじゃない
 信用取引で損益が出たら、俺達はお陀仏だ 

 頼む・・集中してくれ・・・ソウルホテルのことはもう忘れろ

 これを成功させれば・・・しばらく遊んで暮らせる
 それだけじゃないんだ・・お前の今後の指針となる道も開ける」

「わかってる」

「本当にわかってるんだろうな?
 しっかりしてくれよ・・・俺はお前に賭けてるんだぞ」

「・・・・・」

 

 

 

 

 

さっき、ジニョンを送って行った寮の前で僕は彼女の部屋を見上げていた。

 

   今頃もう眠っているね・・・ジニョン・・・

   君とこうして離れていると 

   心が寒くて・・・寒む過ぎて・・・

   本当に涙が出そうだ・・・

 

   君と出逢って・・・

   まだ三ヶ月しか経ってないのに・・・

   今まで君がいなかった時間の方が

   どれほど沢山あったかしれないのに・・・

   ジニョン・・・ 

   君の笑顔を・・・

   僕にくれる太陽のような笑顔・・・

   それを培ってくれた君の大切な人たちを

   この僕が・・・もし・・・

   もし・・・そんなことにでもなったら・・・ 

   君は僕を許してくれる?

   君の笑顔は変わらずに僕に向けられる 

   ジニョン・・・教えてくれ・・・

   僕はいったい・・・

 

 

         ・・・どうしたらいい?・・・

 


2010/05/18 16:10
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage sidestory -Reymond-1

Photo
   




mirage-儚い夢-sidestory Reymond 





私はフランク・シンとの接触を持つ最初の日を待ち望んでいた。

  いつ・・・

  どこで・・・

  彼の目との対峙を試みよう

この頃既にフランクの行動は私の監視下にあった。
いつ接触を持っても問題があるわけではなかったが、私はできれば彼とは、
少々劇的な出会いがしてみたかった。

ある日、フランクがしゃれたレストランを予約したことを知った。
どうもジニョンとのデートを楽しむらしい。

≪おもしろい≫

私は事前に黒い存在を彼の周囲に匂わせていた。

そろそろ彼には、私の影を認識しておいてもらわなければならない。

「Mr.フランク?」

「イエス・・そちらは?」

「そちらがお探しのようでしたので、ご連絡を」

目の前に携帯電話を耳に宛がったまま、呆然と立ち尽くすフランク・シンの姿があった。
写真で見るより、幼い印象だった。しかし、こちらを睨み付けた鋭い目は、

≪私とて震え上がりそうだよ≫



そして私は、ここ一番にと、フランクに更なる脅威を与えた。

「ジニョンじゃないか」

「先生・・レイモンド先生・・」

私は更に彼の至近距離に立った。
その時、ジニョンの肩越しに、彼の驚愕のまなざしがあった。

≪この時の君のその表情を、ジニョンに見せられなかったのは残念だよ、フランク≫



「紹介してくれないの?」 私は当然悪びれることなくジニョンに言った。

「あ・・Mr.フランク・シンです
 フランク・・こちらはレイモンド・パーキン先生。大学の講師でらして、
 私のサークルの顧問をなさってるの」

≪そうなのだよ、フランク・・・

  私は既に・・・君の弱みとやらを見つけていた≫




「フランク・シン?・・いったい、そいつは何者ですか?」

「新進のM&Aハンター・・・」

「M&Aハンター?・・・それが?」

「その男が欲しい」

「欲しいって・・・父さんがその気なら、いくらでも方法がおありでしょう・・」

「いや・・それが面白い男だ・・・
 M&Aの手口は冷徹・・非道・・・法にこそ触れないがマフィア顔負けの強引さがある・・・
 しかし、頑としてマフィアが絡むことを拒む」

「金を積んだらどうです?」

「やってみたさ」

「それで?」

「易々と乗らない」

「なら・・潰しますか?」

「いや・・出る杭は打たず、育てて、我が家の柵にする主義だ・・・」

「フッ・・・そうでした」

「奴は最近ホテル業界に狙いをつけたらしい・・・そこでだ・・・
 NYグランドホテルとカナダのプリンスホテルの合併をえさに蒔いた・・・
 きっと乗ってくるに違いない・・・」

「あれはJAコーポレーションの話では?」

「ああ」

「そこは確かジェームスが・・」

「レイモンド・・・あいつの力なんて・・どれだけのものだ?
 お前だって知っているだろ?今は身内だから使ってやってる」

「・・・・・」

「フランク・シンには類まれな才能がある・・・
 きっとジェームスなど足元にも及ぶまい・・・
 私は何としても奴の頭脳をこの手にしたい・・・」

「それほどの男ですか?この・・・フランク・シン・・・22歳・・・
 ハーバード大学院生・・・飛び級か・・・なるほど・・かなり優秀なんだ・・・
 しかし・・まだ若い・・言ってみればひよっこじゃないですか?」

私は父に差し出されたフランク・シンという男の身上書を軽く指で捲りながら
興味なさげに呟いた。

「いや・・私の目に狂いはない・・・奴なら、きっとこの世界でも一流になる・・・
 お前と同じ匂いがするんだ・・・」

「私と同じ匂い?」

「ああ・・冷静沈着・・・いや冷酷・・冷淡・・・ということかな・・・
 そして人間を誰ひとりとして信用していない・・・」
        
「私が父上すら信用していないとでも?」

「違うかな?・・・」

「フッ・・・・」

「まあ・・いい・・・しかし、全てにおいて完璧・・・
 やることには抜かりがない・・・
 法を犯す人間はお前のように頭が良くなければならない・・・」

マフィアの世界などまったく興味すらなかった私を、強引なまでの手段で
自分の思うようにしてきた父の頑として引かない強い眼差しがそこにあった。

 

「褒められてるんでしょうか・・・」

「褒めてるつもりだ」

「有難うございます・・・
 とにかく・・父さんがそれほどに惚れ込んだ男、ということですね・・・
 それで私に何を?・・・」

「奴の弱みを探せ・・・
 用心深く、弱みと言えるものが見つからん・・・」


今からひと月前、こうして父に、“探せ”と命を受けた「フランク・シンの弱み」・・・


   驚いたろうね・・・フランク・・・

   君にこうして面通りする前に・・・

   私は君のその弱みとやらに近づかせてもらっていた


   君の弱みは意外と簡単に見つかったよ・・・


   ソ・ジニョン・・・

   本当に可愛い人だ・・・

   人間を信じない君が彼女を信じた理由が

   私にはわかるよ・・・フランク・・・


   

「やあ・・ジニョン!復学できたのかい?」

「はい!先生・・・また、よろしくお願いします」

当然、ジニョンの復学は私が手を回して叶ったことだったが、彼女の無垢な笑顔は
どういうわけか、私の胸を刺した。
しかしそんなことなど、どうでもいいことだ。

「ジョルジュも・・久しぶりだね」

「レイ・・お久しぶりです・・丁度良かった・・・ジニョン・・サークルだろ?
 俺はこれから、バイトだから・・・
 サークル終わったら、真直ぐ寮に帰るんだぞ」

「うん・・わかった」

「それじゃ・・レイ・・よろしくお願いします
 こいつの面倒見てやってください」
ジョルジュはそう言って、私にジニョンを託した。

≪ジョルジュ・・フランクが君に頼んだことを忘れたのかい?
 どんなことがあっても”ジニョンから目を離すな”そう言われたんじゃないか?≫

「了解・・」

「行ってらっしゃい・・ジョルジュ」  

≪フランク・・・君はひとつ間違いを犯している
 ジョルジュは既に私に心酔している・・・そのことは知らなかったようだね≫

「慌しい奴だな・・・でも君のことがすごく心配なんだね」

「ええ・・今日は何故だかずっと私にくっ付いて歩くんです
 トイレにまで付いて来る勢いで、困ってました・・・」

「はは・・いいね、大事に思われて・・・」

「兄のような存在ですから」

「兄・・か・・・でもジョルジュにとっても・・・君は妹・・かな?」
「・・・・・」 

「ところで・・・どうしよう・・・」

「何がですか?」

「実は・・・今日はサークル、休みなんだ」

「そうだったんですか?このところご無沙汰してましたから、
 知らなかったわ」

「デートでも・・・する?」

「あ・・いいえ・・・私は行くところがありますから」

「寮に真直ぐ帰れと、言ってなかった?ジョルジュ・・」

「ええ・・・」

「嘘ついた?」

「ええ」

「しょうがないね、さて、私が君の嘘の片棒を担ごう」

「えっ?」

「送るよ・・君の愛しい人の元へ」






「ジニョン・・・お帰り・・・あ・・」

フランクは案の定、怒りを露に私を睨んだ。

「やあ・・フランク・・・」

「・・・・どういうこと?」

≪君に鋭い目で睨まれると、不思議と武者震いがする≫

「あの・・先生がここまで送ってくださったの・・・」

「・・・・・」

「先生・・・ありがとうございました」

「いや・・それじゃこれでお役ごめんだね・・・また明日・・ジニョン」

「ジニョン、先に入ってて・・・先生を下までお送りしてくる」

「あ・・はい・・」



フランクはジニョンを部屋に残し、私と連れ立ってエレベーターに乗り込んだ。

「どういうつもりだ」

「どういうつもり?何のことです?」

「とぼけるな」

「女の子の一人歩きは物騒ですからね・・・
 アパートのエントランスでさえ、何が起きるかわからない・・」

「何が物騒なんだか」 

「フッ・・そういう冷たい言い方は止めてもらえないだろうか
 私は結構小心者でね・・・胸が痛くなる」

「忠告したはずだ。ジニョンに近づくなと」

「それは無理な話です・・・彼女は僕の・・・」

「黙れ!・・・いったい何を考えてる・・・
 お前は、ジニョンに・・・ソウルホテルに何をする気だ」

「何を?・・・それは、君次第だと言ったはずですが?・・・」

「覚えておけ・・ジニョンにもし何かあったら・・お前を・・」

「私を・・・どうする?」

「・・・・・」

「仕事のことと・・・ジニョンには何の関係もないだろ?
 ましてソウルホテルに何の関係がある?」

「関係・・・ね・・・確かに何の関係もない・・・
 だから?それが我々に何の関係がある?」  

フランクの手が掴んだ私の胸倉から離れるのを待って、私は身づくろいをした。  

「・・・・・フランク・・・悪いことは言わない・・・
 黙って、我々の敷いたレールに乗りなさい・・・」

「お前達の乗った列車など・・・必ず脱線させてみせる」

「フ・・・それはそれは・・・楽しみだ・・・
 あ、それからご忠告をひとつ・・・ソウルホテルの件・・
 調べるのはいいが、ジニョンに悟られないように気をつけて・・・
 後で君が後悔することになる・・・」

「・・・・・」

「それじゃ・・可愛いジニョンに・・・よろしく・・・」


   その調子だ・・・フランク・・・もっと・・・怒れ・・・ 

 

   それが早い解決の道だ

   それにそうでなければ


       ・・・面白くもない・・・

 


 

   


 




[1] ... [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] ... [16]

TODAY 447
TOTAL 597392
カレンダー

2024年10月

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
スポンサードサーチ
ブロコリblog