シン・ドンヒョクに会える日
☆これは、『ホテリアー』で堕ちた私の、心のメモです。
【第4話】
月曜にはドンヒョクに会える、
新しい一週間の始まりに、ドンヒョクに会える・・・。
今夜は、第4話、ホテルに到着したドンヒョクがジニョンと再会するシーンである。
もちろん、ほかのもろもろのこともある。
お金持ちのお嬢様危機一髪、かっこいい総支配人さん、女性従業員同士の取っ組み合いの喧嘩、いわくありそうな社長の息子のいらだち・・・・。
ホテルでの人間模様はさまざまな色合いで、それなりに楽しませてくれる。
だが、私はドンヒョクで堕ちた女。
今夜心に残るのは、彼・シン・ドンヒョクと、彼女・ソ・ジニョンの出会いのシーンである。
仕事に追いまくられるジニョン、
一方、宿泊客であるドンヒョクは、彼女との再会をひそかに画策するが、彼女はなかなかつかまえることができない。
ちょっとしたすれ違いの末、ようやくヴィラの前での再会となる。
その後のランチデートが、すてきだ。
庶民的な食堂に連れて行かれ、居心地悪そうにきょろきょろする彼、彼の前に置かれたカルグクスの器に、いそいそと薬味を入れてかき混ぜるジニョン。
そんな彼女を見つめて、ふっと笑うドンヒョク。
あたたかく気遣ってもらえることへの、ほんわかとした思い。
亡き母への憧憬・・・、
いつのまにかそんなものが生まれていたことに、彼は気がついていただろうか?
ランチが終わってヴィラに帰る道すがら、
ひょんなことから「しあわせ」について語るふたり。
いい感じだ、実にいい感じだ・・・。
『私のしあわせはお金では買えません。』
ごくあたりまえの言葉なのに、ジニョンの美しい唇から出るとにわかに命を与えられたようなものになる。
ハーバード出のエリートであるはずのドンヒョクが、はっとしたように彼女を見つめる。
いや、本当のしあわせとは無縁だった彼だからこそ、この表情になるのだ。
ふたりを取り巻く季節は春、
沿道の木々、若葉の芽吹くころ。
新しい何かが生まれでようとしている。
新しい世界、新しい思い、新しい恋!
今まで気がつきもしなかったささやかなものが、命を吹き込まれようとしている。
だが、まだ彼は気がつかない。
ただ、彼女のかけてゆく後ろ姿を見ているだけだ。
おもしろい人だ・・、そう言いたそうに。
その夜、
水割りのグラスを手に、
彼は考え続ける。
本当のしあわせを。
生きている意味を・・・。
だが、それは、ほんの一瞬のことにしかすぎない。
心はすぐに、冷たい氷の世界にさまよい出して行ってしまうから。
それでも、その夜、シン・ドンヒョクは、
やがて彼の心に押し寄せるソ・ジニョンという名のあらしの予兆を
感じていたのかもしれなかった・・・。
タムトクの母⑥完~タシラカ
初めて会ったのは、百済王都攻めのときだった。
降伏するときの恭順の証として、百済王が差し出したものの中に、彼女がいたのだ。
『人質でございまする。』
『なかなか気の強い姫じゃ。
倭との交渉に使えまする。』
家臣たちの言葉に、タムトクは胸に強い痛みを感じた。
王位についてから4年、高句麗は北の強国としての名前をほしいままにしていた。
タムトクは戦場にいることが多く、城を留守にしている間に妃スジニを病で失っていた。
自分にかかわる女人はあまりいい星をもっていないと見える、そんな思いを心の片隅に抱いていたころのことだった。
目の前に引き出された異国の姫は、家臣たちの言葉通りの気丈さを見せた。
『私を利用して、百済や倭ににらみをきかそうとしても無駄というもの。
その時がきたら、自害して果ててご覧に入れます。』
荒くれた武将たちの前で臆することなく言い放った美貌の姫、タシラカ・・・。
思えば、最初に出会ったその瞬間から強く惹かれたのかもしれない。
だが、彼女は敵国の姫、人質だった。
うかつに手を出すことはできなかった。
なによりも、ほかの誰でもない、高句麗王タムトク自身が許すはずもなかった。
それなのに・・、と彼は思う。
批判的なサトの目をかいくぐり、なんだかんだと自分自身に言い訳しながら、
あっという間に、彼女を抱いてしまったのだった。
まったく、どうなっているのだ?!
これは、もしかしたら、私はあの契丹のブタ男と同じか?
私は下劣きわまりない男なのか!
タムトクはその問いを激しく否定したが、自分の中で始まってしまったものの正体を、最初からはっきりとらえていたわけではなかった。
ただひたすら、彼女をそばにおきたかっただけなのだ。
そうだ、やみくもに彼女が抱きたかったわけではない!
だから、抱こうとしたその前に、彼女に了解を求めたではないか!
そう思ってみたが、それもむなしかった。
出陣のときも、戦場にあるときも、彼女の顔が常に胸の中にあったのだから。
そう、彼女がほしかったのだ!
それは確かなのだ!
そうしてタムトクが引き出した答えは、きわめて明瞭だった。
私は、敵国の姫を愛しているのだ・・・。
こうなれば、彼女の心を確かめ、その上で『そばにおく』のにふさわしい処遇を与えればよかった。
頭の固い重臣たちは苦い顔をするだろうが、なに、処遇のことなど、簡単なことだ。
敵国の姫であろうが、なかろうが・・・。
タムトクはさっそく行動に移った。
一番の難敵はサトだと思っていた。
案の定、かつて契丹の城で、タムトクの中の荒れ狂う龍を押しとどめるために体を張ったサトは、冷たく言い放った。
『ですから、最初から申し上げているでしょう。
お気に召したのなら、おそばに召せばよいと・・・。』
相手に強いても、抱いてよいかと事前に了解をとりつけても、王の場合は同じことです、
要するに、妃にさえしなければなんでもいいんです、
そう、サトは言いたいのだ。
そなた、母上のことも、私のことも、よくわかっているくせに!
そう思いながら、タムトクはすべて知りつくしているサトに言った。
『私は王だ。自分にいちばんふさわしいと思う者を妻とする。
敵国の姫であろうがなかろうが、タシラカを妃にするのだ!』
サトは半分あきれ、家臣として心の底から心配しながらも、どうにかこうにか認めてくれた。
『側近としては反対ですが、友人としては心情的に理解できます。
まあ、惚れちまったものはしかたがないってことで・・・。』
それはタシラカを妃にするのにやぶさかではないと、そういうことだな?
そう手っ取り早く出した結論をぶつけると、サトはあわてふためいたが、もう遅かった。
ばかなヤツだ、サト。
側近としても、友人としても、同じことではないか。
サトはサトなのだから・・。
こうして、タムトクは、ともかくもサトを味方に引き込んだのだった。
こうなれば、彼女の気持ちを確かめ、あとは妃にしてしまえばいいと思っていた。
が、彼女はするりと彼の手から抜け出していった。
『妃になどなりたくはありません。
私はこのままでよいのです・・・。』
『ただの男と女としてお会いしたかった・・・。』
最初は、一風変わったところのある娘なのだと思った。
そのうちに、彼女の言っている意味がわかるような気がした。
しかし、高句麗王タムトクがただの男になるとは、非常に難しい問題だった。
そして、戦乱の中、タシラカは倭に帰って行った。
タムトクの子を腹に宿したまま・・・。
。。。。。。。。。。。。。。。
まったく、なんという女人なのだと、タムトクは腕の中で眠るタシラカを見た。
自分が迎えにこなければ、そのままでいいと、そう思っていたのか?
ひとりで息子を育てて、誰にも頼らずに生きていこうとでも・・・?
本当にそんなことを考えていたのか、タシラカ?
そっとつぶやいてみるが、彼女はかすかに身じろぎしただけだ。
そうはいくか!
なにしろ、そなたは、私が妃にすると決めた女人なのだからな、
それに、それに・・・・、ワタルは私の息子なのだからな!
タシラカ、愛しているのだからな!
愛・・・!
ずいぶん遠回りをして、ここまできたのだと思った。
だが、タシラカ、そもそも、そなたはどうなのだと、ふと思う。
そなたは、私を愛しているのか?
それは、裏を返せば、契丹の城で死んだ母への思いにもどることに、彼は気がついていた。
タシラカ、私はそなたに強いたのではないか?
私に抱かれよと、
私を愛せよと・・、そう強いたのではないだろうな?
初めから、そなたも私を愛していたのだろうな?
『虜囚の身ゆえ・・・』
そんな言葉を、彼女は口走ったことがあった。
だが、そんな気持ちで抱かれたのなら!
そう思うと、タムトクはたまらない気持ちになった。
胸の中に生まれた小さなわだかまりは、少しずつ大きくなっていくような気がしていた。
一度ちゃんと彼女に確かめればよいのだ、
そんなことはわかっていたのだが、ちょっと恐ろしいようにも思えるのだ・・。
それは、まったくこの男らしくないジレンマだった。
それに、それにだ、はっきり言って余裕がない。
夜毎彼女をその腕に抱けば、いよいよいとおしいのだ。
せっかくいっしょになれたというのに、そんな時間などないではないか!
しかし・・・、だ。
今夜こそ!
タムトクはそう心に決めた。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
「ひとつ、妙なことを聞いてもいいか?」
タムトクは照れくさそうな笑みを浮かべると、たずねた。
「そなた、私といっしょにいてしあわせか?」
「まあ、何をとつぜん・・?」
タシラカは輝くような笑みを見せる。
タムトクは思わず、目をそらす。
「私といっしょにいるのがいやなら、このまま倭に残っていてもよいぞ。」
「いやだなんて・・、そのように思ったことは一度もありません。
そばにいよ、そうおっしゃったのは、タムトク様ではありませんか!」
タシラカの長い髪が鼻をくすぐる。
むき出しの肩がいとおしい。
「そうだな・・・・」
そうひとりごとのようにつぶやいたものの、タムトクは彼女のあごに手を当てると、その瞳の中をのぞきこんだ。
「タシラカ、私はそなたを縛ったことがあったか?
籠の鳥のように、そなたの自由を奪ったか?
そなたに私を愛せと命じたか?」
「・・・ナカツヒコ様のことですの?
高句麗から帰るときに、ナカツヒコ様がタムトク様にそのようなことを言われたとか・・・。
あとで、何度もあの方から言われました。
腹に子がいながら、俺はなんてことを言っちまったんだって・・。」
タシラカがくすくす笑う。
そうだ、そんなこともあったとタムトクは思う。
だが、そんなことではない・・・。
タシラカ、そんなことではないのだ・・・・。
「私は確かめたいのだ。
この腕の中にいるそなたが、本当にしあわせなのかと・・・。」
胸に手をあてる。
やわらかな張りのあるふくらみは、7年前のものと少しも変わっていない。
「私は、しあわせですわ、・・・タムトク様。
あの、・・・ちょっとその手の動き、・・・止めてくださいませ。
お話ができませぬ・・・。
あ・・、タム・・トク・・さま・・。」
やはり、話はなかなか進まなかった・・・。
彼にとって、そして彼女にとっても、非常にたいせつなことに違いないのだが・・・。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
もう一度、最初から言いなおすことにした。
「そなたに言っておかねばならないことがある。
・・・ずっと以前のことだが、私は、北の異民族の王を憎んだことがあった。
それで、残忍なワザで、ヤツを殺害しようとしたのだ・・・。」
「・・・母上様のことなら、お聞きしたことがありますわ。
ずっと以前にジョフン殿から・・・。」
そうか・・、とタムトクは苦く笑う。
「そなた、私のことが恐ろしくはないか?
いや、そんなことよりも、私は、その異民族の下劣な王と同じだと思うか?
そなたは、無理に、私に・・・。」
「タムトク様!
あなたのことが恐ろしいだなんて!
あなたはそんな異民族の王様とは違います!
私は一度も、そんなふうに思ったことはなかったわ。
そんなに、おやさしいのに・・・。
・・・・タムトク様が私の手足を縛ろうとしていたら、
私は今こうしていませんわ。
ふつうの男と女として迎えにきてくださいなんて、わがままも言いませんでしたわ。
私、しあわせですわ、
タムトク様のお子を生んで、
こんなところにまで迎えに来ていただいて、
真剣なお顔で、タシラカ、いっしょに行こうっておっしゃっていただけて・・・。」
タシラカが、あたたかい腕でタムトクの肩を抱く。
すぐ目の前にある大きな瞳がうるんでいる。
「私ね、タムトク様が王様じゃなければって、何度も思いましたわ。
ふつうの男の人だったらなあって・・・。
私、王様じゃなくても、あなたを愛したと思いますわ。
そうだったらどんなによかったかって、何度も思いましたもの。
遠回りしなくても、もっと早くしあわせになれたのにって・・・。
タムトク様が心惹かれるようなお姿の方だから、
王様っていう身分の方だから、
私、好きになったわけじゃありません。
タムトク様だから、愛したんです。
王様でもしかたないか、
タムトク様だから許してやるかって・・。
母上様も、よくわかっていらっしゃると思いますわ。
きっとタムトク様のこと、りっぱな男の方になったなあって、
そう思っていらっしゃるわ。
私にはわかります、
あなたのことを愛していますもの。」
『龍』たるしるしを持って生まれたタムトク、
常ならざる人であるがゆえに、
天は、彼から母を奪い、代わりに、彼女を与えた。
タムトクの母⑤~復讐
☆失礼します。サークルの創作の続きです。
なぜかわかりませんが、あちらにアップしようとしたら、「禁止語句」とやらではねられてしまいました。何度も直したのですが、だめでした。
で、こちらでアップさせていただきます。この続きもこの後に入れます。
どうぞ、よろしくお願いします。
なお、ここまでがつらいお話です。次回のラストは、あま~い部分もでてきますヨン。
~~~~~~~~~~~~~
高句麗王の火のような思いが兵たちに乗り移ったのか、契丹の城は十日で落ちた。
父王の仇というだけならば、それほどの激しいものはなかったかもしれない。
だが、少年の日に刻み込まれた母への思いは、何年たってもくっきりとあざやかに消えることはなかった。
家臣の止めるのも聞かず、まだあちこち火の燃えている城内に先頭に立って乗り込んでいった高句麗王は、その人の痕跡を探した。
だが、わかっていた。
どんなに周囲を見渡しても、もはやその人の髪一筋残ってなどいないことを・・・。
タムトクは城の大広間らしき場所に立ちつくした。
珊瑚のかんざしを懐にしのばせたまま・・・。
じゅうたんは切り刻まれ、座卓や椅子は倒れたまま、そこここに、飛び散った血のりや泥だらけの足跡が見える。
思わず、ため息が出る。
そのとき、兵のひとりが思ってもみないことを伝えにきた。
「契丹王をとらえました!」
なに!
どこだ?
どこにいる!
激しい足取りでその後についていく。
そこは、城の中庭だった。
集められた10人ばかりの女たちの間に、後ろ手に縛られ老いさらばえた男の姿がひとつ・・・。
女人の衣装に身を包み、太った体を二つに折らんばかりに縮め、おびえた様子でその場にしゃがみこんでいる。
知らず知らずのうちに、タムトクは叫んでいた。
おのれ!
女たちのかまびすしい悲鳴が、中庭に響き渡る。
その声を聞いて、自分の中に、何か黒いものがむくむくと沸き起こるのを感じた。
すらりと腰の剣を抜く。
制止しようとした側近の腕をなぎはらい、駆け寄ろうとしたサトを突き飛ばす。
異民族の王の二つの目が恐怖に見開かれる。
腰をぬかしたらしく尻を地面につけたまま、こちらを仰ぎ見ている。
それにじっと目をあて、ひとこと、
「そいつに剣を渡してやれ!」
家臣たちの間に動揺が広がる。
その中からひとり、サトがつかつかと歩み寄ると、手に持った剣を、『そいつ』の前に置く。
だが、それは、『そいつ』をおびえさせるに十分なものだった。
置かれた剣など手に取ろうともしないまま、口をだらしなく開けたまま、首を小刻みに振る。
このような男が、母上に!
怒りがいっそう燃え上がる。
「戦え!
私は、高句麗王タムトク!
その方がもてあそんだ女の息子!」
ぎりぎりと歯を食いしばり、
剣をふりかざす。
「立て!
契丹王ならば、立って戦え!」
憤怒の声は限りなく低く、中庭の隅々まで響き渡る。
それは、龍のうなり声とも咆哮とも見紛うようなものだった。
女たちはもちろん、高句麗の男たちも、固唾を呑んで呆然と見る。
相手の口から、情けない悲鳴がもれたが、ためらう気持ちは微塵もなかった。
手に持ったそれを振り下ろすと、それは狙いすましたように相手の右腕に!
あざやかに血が飛び散る!
ぎゃあっという男の叫び声!
逃げ惑う、床の上をはいずりまわる音。
女たちの悲鳴。
ふん、一度で死ねると思うなよ!
今度は左だ!
もう一度、ふりおろす。
ぎゃあっ!
一度でとどめをさす気にはなれなかった。
少しずつ少しずつ、母上が味わった苦しみの、ほんの断片でもいい、
そのブタに味あわせてやるのだ!
家臣たちに新たな動揺が走ったのを、タムトクは心の片隅でとらえていた。
「寄るなよ!」
そちらに冷たい声をかける。
が、今や龍の化身とも見紛う主君と、血を流しながら這いずり回るおいぼれた契丹王に近寄るものはいなかった。
ただ遠巻きにしてながめている。
「そこへ、なおれ!
この卑怯者めが!」
そのとき、呪縛を解き放つような大声が・・・。
「タムトク様!」
声とともに、後ろから羽交い絞めにされる。
それが誰のものか、瞬時にわかった。
「サト!はなせ!
王の命だ!」
が、サトの力は思いのほか強かった。
「タムトク様!
もう、そのへんでよいでしょう。
相手は剣も持つ気力もないような男だ。
そのような下劣な男のために、自ら手をけがすことはありませぬ!
あとは、この私におまかせを!」
「ならぬ!
そなた、王の命にそむくつもりか!」
「どうか、お静まりを!
なにとぞ!」
「サト!はなさねば、そなたとて容赦はせぬ!」
「私のことならいかようにも、ご存分に!」
サトは、なおも強い調子で続ける。
「しかしながら・・、しかしながら、タムトク様!
そのようなお姿、王妃様が、・・・お母上が目にされたら、
なんと思われるでしょうか!」
急に力が抜ける。
ふところにしのばせた珊瑚のかんざしが熱くなったような気がして・・・。
「・・・・・」
「そのような下劣なこと、
王と呼ばれる方のなさることではない、
そう、悲しんでおられます。」
そうだろうか・・・。
タムトクは、手の中にあるものに、ぼんやりと目をやる。
そこに、血のしたたり落ちる剣があるのを・・。
それから、それをぽいとその場に投げ捨てると、
高句麗王タムトクは、足音高くその場を立ち去った。
珊瑚のかんざしを懐にしのばせたまま・・・。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
サトは、床の上に無造作に投げ出された王の剣に目をやった。
大きくひとつ深呼吸する。
そして、血塗られた剣をこの上なく貴重なもののように拾い上げると、瀕死の男を一瞥する。
「あとはまかせたぞ。」
高句麗王の側近第一号は、周囲を取り巻いた同僚たちに軽く言ってのける。
それから、心に深手を負ったままの王のあとを追った。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
「どうなのだ?」
声をひそめて、ジャン将軍は言った。
サトも小声で答える。
「おやすみになられました。
かなり強い酒をお持ちしましたゆえ・・。」
ふうむ・・、とジャン将軍はうなる。
「かなりこたえておられるようだな?
ま、無理もないか・・。
ひとつずつ、龍のしるしの扱いを学んでいっていただかねば・・・。」
はあ、とサトはうなずく。
「それに、契丹がわが高句麗の手に転げ込んできたことは大きい。」
「まあ、そうですね。」
「それにだ、もうひとつ得たものがある。
これで、王が敵の女に手を出さなくなるかもしれないってことだ!」
これには、サトが目をむいて、抗議する。
「あの方は、これまでも、女人におかしなふるまいをしたことはありません!」
ちっちっち・・・、と将軍は人差し指を横にふる。
「あま~い。
今まではそうかもしれないが、これからはわからん。
なにしろ、あの男ぶりだ。
たとえば、人質にとった敵国の姫が妙な気持ちを起こして、王に色目でも使ってだな~、
王もその気になって、つい手を出したりしてみろ!
あのご気性だ、先々、面倒なことになるかもしれない。」
「面倒なこと?」
いぶかしげに、サトがジャン将軍を見る。
「そうだよ~。
たとえばだな~、ちょっとした美貌に目がくらんでだな~、
敵との交渉に使わずに、
そばにおきたいとか、
妃のひとりに迎えたいとか・・・」
日本版『ホテリアー』これでどうだ?!
あんた、謹慎中って言いながら、よく出てくるわねって?はい、ごめんなさい、まったくもって、そのとおりでございます・・・。
だけど、これが黙っていられるだろうか!
朝から、「ホテリアー」が日本でリメイクされるということで話題になっているのだ。
こうしちゃ、いられない!
ジニョン役を上戸あ○チャンがやるとかで、それはないだろう!と怒りの声があがっている。
ジニョン役でこうなのだから、ドンヒョク役が発表されたらどうなるのだろう?
怒りのあまり、テレビ朝○前にスクラム組んで座り込みなんてことになるのではないか?!
でも、発表したからには、このドラマは制作に入るのだろう。
というわけで、おせっかいながら、私なりに妥協案を考えてみた。
題して、日本版「ホテリアー」、どんなものなら許せるか?
①まったくの日本版とする。つまり、ソウルホテル舞台のドンヒョクとジニョンのお話とは別物とする。
②①のためにも、ソウルホテル、および、ドンヒョクとジニョンを実在していると思わせる必要がある。
③ならば・・・・、ドンヒョクとジニョンをドラマの中に登場させる。
④ドンヒョクのお弟子くん(?)が、ドンヒョクの指示によって、日本のあるホテルの買収にやってくる。
⑤そこで、あ○チャン扮する女性ホテリアーと恋に落ちる。
⑥悩み、葛藤するふたり・・・。
⑦そこに弟子の様子を見に、ドンヒョクが日本にやってくる(にんまり)。
⑧ドンヒョクは、仕事に集中するよう、弟子にアドバイスをする。
⑨そこにジニョンが、何かの用事でやってきて、彼女がかわいそう・・、ふたりの恋のキューピッドをしてやりましょうよ、なんてドンヒョク(もちろんすでにふたりは結婚していて、ジニョンの夫となっている!)に提案する。
⑩くだらない、ビジネスにそんなものは関係ないね、などと一度は突っぱねたドンヒョクだが、ジニョンの提案なら仕方がないな、となる。
⑪あ○チャンとドンヒョクのお弟子くんは結ばれる。
と、こういうことなら、本物の「ホテリアー」の続編みたいで、許せるのではないだろうか?
もちろん、特別&友情出演:ぺ・ヨンジュン&ソン・ユナということになるわけデス。うふふ・・・・。
こういうの、だめでしょうか?
『太王四神記』公式HPを見て
先日は失礼しました。あたたかいコメントをありがとうございました。
深い海の底に身を潜めているはずだったのに、おそるおそる、こちらには出てきてしまいました。どうぞ、呆れないでください。
私のへこんでいることなどとはまったく関係なく(当然!)、「太王四神記」公式HPが開設されましたね。
いつまでも暗くなっているのも・・・と、そこをクリックしてみれば、やはりこの上なく素敵なお姿が目に飛び込んできました。
そのほかはまだ準備段階ということで、「coming soon」の文字がずらりと並べてありましたが、その中に混じって、いかにもその先を考えてみたくなるようなイントロダクションが・・・・。
それはこのようなものだったと思います。
ある夜、高句麗の人々が待ち望んでいた、天の血を受け継ぐ王が生まれたと、神官(?)から発表があった。
それは、王家以上の武力を誇る第一貴族のヨン・ガリョ(王の次席:太王兄という位にある)と現国王ソスリムの妹との間に生まれたホゲだといわれた。
ところが、時を同じくして、現国王ソスリムの弟オジジにも息子が生まれていたのだった。
その名はタムドク。彼が生まれたのは、天の血を受け継ぐ王が生まれたと公表されたよりも三日あとのことだとされたのだが・・・。
ここからわかることをまとめてみると、次のようになります。
①最初、王家は、天の血を受け継いで生まれたとされるヨン家のホゲによって継承されるものとされてきた。
②だが、実は、王の弟のところにも同じころに息子が生まれていた。これがタムドクだ。
ここからは、勝手な想像です。
③ヨン家のホゲは、王に値しないような邪悪なヤツだった。長ずるに及んで、それがはっきりしてきて、周囲は失望し始める。彼は本当にわれわれが待ち望んできた「王」なのか?国は戦乱によって乱れ、国民は苦しみの中にある・・・。
(または、王としてもそれなりに期待できそうな人物だったが、いかんせん、真の天の血を継ぐものではないことを、自分でよくわかっていた。だが、父をはじめ周囲の期待にこたえないといけないと、それなりに努力していた。)
④一方タムドクは、王の弟の息子としてのびのびと素直な青年に育った。戦乱の中にあって、乏しい武力しか持っていない王弟家であるため、ひっそりと貧しい生活だったが(?)、それなりにしあわせな毎日だった。初恋の姫スジニと出会い、胸ときめかせたり・・・。
⑤だが、タムドクがその資質を開花させるまで、それほど時間はかからなかった。何かのきっかけ(王の前での、槍の試合かなにか?)で周囲にその名を知られることとなる。やがて、もしや、この方こそ約束された王となるべき人なのでは・・・、と人々は期待し始める。
⑥一方、タムドクの存在を知ったホゲは危機感を抱く。
⑦タムドクは、最初、王位などほとんど関心がなかったが、人々の苦しみを知り、国を救わなければならないと決意する。
⑧以下、タムドクとホゲの間に王位をめぐる争いが展開され、それは周囲を巻き込んでいく・・・。
⑨これに、高句麗とは敵対関係にあたる国の姫(ムン・ソリさん?)が登場し、ホゲ方と組んでタムドクを亡き者にしようとする。しかし、タムドクの身辺を探るうちに、タムドクのひととなりを知り、悲しい恋に落ちていく・・・。
と、こんな感じでどうでしょうか?
今まで集めた情報と私の乏しい想像力では、ここまでが限界です。
当然、ヨンジュン:タムドクには、私の想像力をはるかに超えたものを、期待したいと思うし、実際、やってくれるよな~、となるでしょう。
だって、公開された数枚の写真だけでも、私の想像をはるかに超えていましたものね。
あ、最後にもうひとつ。
ホゲの父の位「太大兄(だいおおえ?)」は、王に次ぐ位となっていますが、これは古代日本における「大兄(おおえ)」という言葉を連想させます。「大兄」とは、次の王たるもの=皇太子に近い意味だったと記憶しています。
まったく関係ないかもしれないけど、こんなところにも、この新作ドラマを身近に感じてしまうのは、私だけじゃないと思うのですが、どうでしょうか?
浮上せず~一人だけの反省会
昨夜アップしたばかりの創作を、今朝になって、削除してしまった。
どうしても我慢できない内容だったからだ。
私は、ここ数ヶ月ずっとタムトク関連の創作ばかり書いていた。
ヨンジュンさんの新作が『太王四神記』だからという当初の動機は、もうどこか遠くに飛んでいってしまっていたかもしれない。
それほど、私は古代の高句麗王に心を奪われていた。
なのに、ここに来て、『現代物』の創作を書く必要に迫られた。
例によって、急遽サークルのバレンタイン企画に参加することになったからである。
内容をどうするか、あれこれと考えた。
①やっぱり、タムトクのバレンタインにする。タムトクの時代にチョコレートなどあるはずもなかったから、チョコレートではなく何かほかの献上品の珍味をチョコの代わりに使えばいいんじゃない?とは、あるお方のアイディアだった。
②ほかのキャラを主人公にする。
③参加を断念する。
まず、献上品の珍味として、アラビアから遠く運ばれたコーヒーを考えてみた。
ほら、「むかしアラブのえらいお坊さんが~♪」などという歌もあったではないか・・・。
ササン朝ペルシアとタムトクは時代的に重なるはずだから、それでオーケーじゃないかと考えて書き出してみた。
が、途中まできて、こんなんでええんかいな・・?という思いでいっぱいになった。
次に考えたのが、クリスマス企画のときと同じ、ドンヒョクとジニョンで書くというプランだった。バレンタインにこのテーマなら楽勝よ!なんて安易に考えて、すらすらと途中まで書いた。
だが、いかにも二匹目のドジョウだと思った。
クリスマスに続いて、このテーマでまた書いたりしたら、もうひとつの別のサークルに、いかに何でも義理がたたないではないかと思った。
じゃあ・・・、ということで、冬ソナのチュンサンはどうかと考えた。
ちょうどブログで途中まで書いたものもある。
そう、ユジンがホテルに、ミニョンさんを訪ねていく場面だ。
あれをチョコを渡しに行くってぇのはどうかと・・。
ほんの二行書いて、でもねぇ~と思った。
冬ソナをこんなふうに扱うのは、いかにも安易ではないか!
冬ソナには、みんな、すごい思い入れがあるのに・・・と。
結局、別の、オリジナルキャラで書くことに決め、以前から漠然と考えていた構想で書き始めた。
が、それはバレンタインの、つまり、アップの前日のことだった。とても間に合わなかった。
そうでなくても、心はず~っと大昔に行ってしまっている。
『そなた、私のそばにいよ、よいな。』などという言葉遣い、戦乱の世にいる女のかなしさ、思うままに恋もできない運命・・・、そんな世界にどっぷり漬かっていた私には、かなりきつい、しかも急激な方向転換だったのだ。
それでも、約束したからには・・、と思い、それなりに書いてみたのだが、できばえは何かの焼き直しのようで、やはり不満の残るものだった。
表現などあちこちを手直しして、どうにかこうにかアップしたが、それを読み直すたびに気持ち悪くなった。
内容がない、つまらない!そう思った。
ああ、どうしよう!
一晩悶々として朝になってのぞいてみれば、心のやさしい方がレスを入れてくださっていた。
が、どうしてもだめだった。
ここで目をつむっても、続き物にしてしまったから、この続きを書かなければならない。どう考えても、このあとが続けられそうになかった。
たとえば、タムトクの創作なら、少しばかり不調であってもまだ続けられたかもしれない。このところ、アクセス数もレスの数も減っているが、このお話を書くことがすごく楽しかったからだ。
(読んでくださっている方、ごめんなさい。)
それにひきかえ、これは・・、新しい創作の始まりだというのに、こんなに気のない書き方をすべきではないだろう・・・。
構想自体が不十分だから、内容に乏しいのだ・・・。
そして、私は、この創作を凍結することに決めてしまった。
アップしてから削除するまで6時間ちょっと・・・、そんな短い命だった。
その間に、レスしてくださった方もいる、このお話に目を留めてくださった方も・・・。
そう思いながら、ごめんなさいと、私は削除ボタンを押した。
当分の間、創作に関しては、水面下ふかく、ふか~くもぐっていようと思う。
本当に、ごめんなさい。
『永遠の抱擁』にタムトクを見た
イタリアのマントバ近郊で、5000年前の男女の遺骨が見つかって、ちょっとした話題になっているのをご存知ですか?
それは、その埋葬されたと見られる男女が、抱き合った姿で発見されたからなんです。
え?この写真、ただ、骸骨が二体向き合って並んでいるだけで、ちょっと不気味じゃないのって?
ま、まあ、そうかもしれないけど、それでも、5000年前の二人を取り巻く状況をいろいろ想像してみてくださいよ、ちょっとロマンチックな気分になりませんか?
以下、私の妄想です。(私の勝手なものなので、お許しを。)
①ふたりはどんな関係だったのか?
当然、恋人同士でしょう、それはやっぱり。
それも、運命のいたずらで、この世でふたりいっしょに生きることをまっとうできなかったのよ。
②ふたりはどんな人たちか?
男性は若い王、女性は姫だわね。きっぱり。
え?どうしてかって?そういうのが好きだからよ。
③ふたりはなぜいっしょに埋葬されたか?
これもすぐに答えられるわ。
悲恋に生きた二人に同情した、ふたりに近い人たちが、二人の死をいたんで、いっしょに眠らせることにしたのよ。
④じゃ、ふたりは同時に亡くなったのか?なぜか?
これは難しい。
でもね、きっと姫(女性:向かって左)のほうが先に亡くなったのね。
う~ん、たとえば、攻めてきた敵にやられちゃったとか?
王(男性:向かって右)のほうは、彼女を守って戦っていたんだけど、彼女が命を奪われたことにショックを受けて、自ら毒をあおいで、そして、まだあたたかい彼女の体を抱いて、ふたりいっしょに亡くなった、っていうのはどうかしら?
だって、彼が彼女をやさしく抱いているように見えるじゃない?
これって、まだ、彼の意識がはっきりしていたっていうことね。
で、彼女はっていうと・・・、ああ、そう、彼女もまだほんの少し息があった、それで、彼の腕のぬくもりを感じながら死の眠りについた・・・。
⑤それで、あなたは、なんでここでこんな話をしてるの?
あらあ~、うふふ・・・。
高句麗王タムトクは若くして亡くなったっていうでしょう?
私、その最期はどうだったのかなと、ず~っと考えていたんですよ。
たぶん、生涯ほとんど戦場にあった彼のことだから、敵との戦いの最中に亡くなったのだと思うんです。
でも、実際そうであっても、それじゃ、あまりにもさびしい。
せめて、かたわらには愛する人がいっしょだった、それも、彼女を守るために戦って、いっしょに命の最後の炎が消えるように、抱き合って亡くなったのだと思いたい。つまり、これは私のせつなる希望です。
⑥じゃ、なに?この右側が、タムトク、つまり彼だってこと?
あ、・・そ、それはですね・・、これは5000年前の恋人同士っていうわけで、私はそんなこと、言っていません、ええ、けっして・・・。
でもね、ふたりは運命の波にもてあそばれながらも愛し合った、
しかしながら、人生の半ばで、ともに亡くなった。
それでも、死してなお、愛が残った・・・。
タムトクもそうであってほしい、そう言いたいのです。
確か、聖徳太子は、愛妃と、ほとんど一日か二日違いで亡くなったんですよね。
ふたりとも病死じゃないかといわれているけど、それでも、古代からずっと変わらない永遠の愛の存在を感じます。
それじゃあ、タムトクもそんな最期だったんじゃないかって思うわけですか?
はい、もちろんです。
少なくとも、ヨンジュンさんの演じる高句麗王タムトクとは、ただの冷酷非情な大王なんかじゃなくて、人を愛することにも情熱を燃やすことのできる人だったと、私は思うのです。
亀裂~これってどうなのよ?
何をきっかけにそんなことになったのか、よくわからなかった。
ただ、気がついたときは、もう激しい言葉のやりとりが始まっていた。
「どうして、あんたはいつもそうなの?!」
「そんなふうに、ふつう言うかな~?
自分だって、好きなことやってるくせにさ!」
「私はいつも、ちゃんとご飯作って、お掃除して、仕事だってして・・・」
「だって、いつもパソコンあけてヨン様の写真見たりしてるじゃん!」
「あら、私だって、趣味のひとつくらいあったっていいでしょ!
あんたの場合はいつだって・・・・・」
そんな言葉の応酬が続いた後で、思わず、娘の右足が、壁に向かって繰り出され、
ドシンという大きな音とともに、安普請の自宅の壁には大きな穴が開いてしまっていたのだった。
あっ!
そう叫んだのは、私よりも娘のほうが早かった。
本当にそんなことになるとは思わなかったらしい。
そう、私も思わなかったのだ。
女の子なのに、そんなことで・・・、思わず出てしまいそうになった言葉を飲み込んだのは、私以上に彼女が動揺していたからだった。
「どうしよう・・・」
そんな言葉とともに、しゃがみこんで、彼女は『亀裂』に手を当てる。
厳冬のさなかである。
当然、そこからは冷たい風が・・・。
「どうしようっていったって、どうしようもないよね。
今夜は冷えそうだね・・・。」
元気なくうなずく娘の後ろから、なんだ?とのぞきこんだのは、夫である。
しかられるかと思ったのか、そちらにぼそりと、
「やっちゃったの・・・。」
夫は壁の穴を見てさすがに驚いたようだったが、すぐにかがみこんで『亀裂』の程度を調べる。
それから、すぐ近くにかかっていたままになっていた去年のカレンダーをはがして、その箇所に画鋲で止める。
「とりあえず、これでいい。な?」
にこりともしないで、すましてそんなことを言う。
ええっ!
それを、そういうふうに使うの?!
それって、どうなのよ?
穴の上にかぶせるようにかけられた去年のカレンダー、それは、私がどうしてもとりはずせなかった、憂いに満ちたインスが一面に大きく載っている大きなものだった。
あなたはいつも娘に甘いわね、そして、インスをそんなふうに使うのね・・・、そう思いながら、なんとなく言い出しにくい雰囲気がただよう。
まあ、住宅メーカー勤務の専門家のやることだから・・、とヘンなふうに自分を納得させようとする私。
「そ、そうね・・・。」
そして、もうひとこと、
「ヨンジュンさん、癒し系だからいいかもね・・・・。」
やっとの思いでそう続けた私。
クスリと思わず笑った娘は、私と目が合い、急いで神妙な顔にもどる。
それで、ひとまず小さないさかいは終了し、壁の『亀裂』には応急処置がほどこされ、家の中には平和が戻った。
だが、『亀裂』の上には、依然として、インスの憂いに満ちた顔がある。
娘との小さないさかいの末に生じた結構大きな『亀裂』、その修復に使われたインス。
冷たい風の上にかけられた、憂いに満ちたインスの顔。
胸の中には、依然として複雑な思いがいっぱい詰まっている。
これって、どうなのよ?
そう思いながら、私は、心の中でインスに手を合わせたのだった。
『太王四神記』とは?~王の証
ここに一枚の写真がある。
あるサイトでみつけたきた『太王四神記』の撮影風景のものである。
玉座のようなところに、王らしい人物がすわっているのだが、何の説明もないので、何がどうなっているのかまったくわからない。ともかく、わがタムドックではないことだけは確かなようだ・・・。
これに限らず、作品の内容はほとんど伝わってこない。
これだけ待たされたわけだし、ここまできたら公開されるときの楽しみっていうのもあるから、まあ、いいわ、そう思ってよしとしようと思う。
でも、やっぱりじれったい。ほんとに撮影は進んでいるの?ほんとに五月に放送されるの?と、気持ちは熱くつのるばかり・・・。
でも、だいじょうぶ、少ない情報の断片をつなぎあわせて、妄想の翼をほんの少し広げれば、ほら、この写真の玉座には、いつのまにか、ヨンジュンさん演じるタムトクが座っている・・・・。
というわけで、高句麗王タムトク、日本史の教科書では広開土王と呼ばれるこの人物を、ヨンジュンさんはどう演じるのか、私なりに考えてみた。
今回は【その1】として、タムトク即位にまつわることを書き留めてみた。
《西暦 374年、高句麗王の弟のところに男の子が生まれた。これがタムドックだ。
現国王には後継となる息子がいなかったから、王の死後、王位は弟である、ダムドックの父が継ぐことになった。.
タムドックが13歳になったとき、太子に立てられた。幼いころから抜きん出た資質を示したためだと思われる。
タムドックは太子時代に直接軍隊を率いて、百済などとの戦いに参加した。すでに10代のころから、その勇猛ぶりと知略は隣国にまでに鳴り響いていた。
391年、父王が隣国との戦いの最中に亡くなり、その後を継いで、タムドックが第19代の王となった。18歳のときのことである。》
タムドックは13歳で太子に立てられたとある。これは当時の高句麗でも異例の早さだったようだ。
タムドックが幼少のころから優れた資質があると認められていたためだといわれているが、それだけだろうか?
父である王は、前王の弟にあたり、兄に男の子がいなかったために、その死後王位についたという。
となると、ここにすでに王位をめぐる争いがあってもおかしくないような気がするのだ。
そして、父である王が隣国燕(中国地方)との戦いの最中に亡くなったという。
その死後、タムドックは王位につくことになるのだが、それ派簡単なものではなかったはずだ。
あちこちの史料で調べたところ、この父王の戦いはどちらかというと無謀なものだったようだ。大国に挑んで、戦死したというところだろうか?
どちらにしても、急な死であり、タムドックや家臣たちにとっては深い悲しみというだけでなく、大きな困惑だっただろう。
たぶん、即位の前には、『反タムトク派』のような抵抗勢力との戦いがあったように思う。
たとえば、タムドックよりも年上の男子王族(従兄とか、叔父とか)、国内の有力な大貴族、それから隣国百済王や燕王などが、高句麗の支配をねらってひそかに、またはおおっぴらに動いていたのではないだろうか。
考えてみれば、若くして一国の王位につくということは、並大抵のことではない。
なにしろ、現代の立憲君主制などとは全然違う。
朝鮮半島だけを見ても、三つの国とほかにも小国がいくつかあるという、戦乱の世、・・・もっといえば、国境もはっきりとはしていない頃のことなのだから。
そんな中にあって、18歳のタムドックは、「王たるものの証」を求められたに違いない。
ここで、抵抗勢力と戦う前に、いろいろなエピソードが考えられる。
父の家臣たちや国民たちを前に、何かの奇蹟を見せるとか・・・・。
どんな?
たとえば・・・・、
①マケドニアのアレキサンダーも、父の死を乗り越えて20歳で王位についた。(しかも、王妃、つまりアレキサンダーの母に暗殺されたという説もある)
②イングランドのアーサー王は、王位もままならないような戦乱の世にあって、巨石から剣を抜くという奇蹟を周囲に見せることによって、その王としての証をたてた。(映画『エクスカリバー』で有名。)
③古代エジプトのラムセス二世もしかりである。ヨンジュンさんの愛読書『ラムセス二世』の冒頭部分には、巨大なライオンと対決することによって、父王セティ一世にその後継者として証を立てている。
つまり、この新作ドラマにおいても、『王たるものの証』を証明してみせるシーンがいくつかあるのではないか。
それがどんなものになるのか(岩から剣を抜く、なんていうのでもいい・・・、彼には似合いそうだから。)、それはまだわからないが、これがドラマのひとつの核になって、ここに四神がからんで展開していくのではないかと私は思う。
『王たる証』を見せる・・・、その時、わがヨンジュンssiはどのようなオーラの輝きを見せてくれるのだろうか。
『冬のソナタ』に何を見たか~黄色いポロシャツ
『冬のソナタ』が民放地上波で放送され、ちょっとした話題になっている。
今までファンでもなんでもなかった人が、これを何気なく見て、遅ればせながら、DVDを貸して・・、と来るケースが結構あるのだとか。
実は、昨日ヨンジュンさん関係のちょっとした集まりがあり、例によってこのドラマがについて語り合った。やはり、みなさん、このドラマに対しては特別な思い入れがあるらしい、語らせたら、それはとどまることを知らないような熱いものになった。
ここで、その一部をご紹介したいと思う。
①友人や知人に薦められて何となく見始めたのに、気がついたらとりこになっていた。
②最初見始めたころ、ミニョン、チュンサン自体、それほどすてきだと思わなかった。だから、自分がこのドラマに肩入れするのは、ヒロインのユジンがすてきな女性だと思っているからだ、つまりこの女優さんが好きなのだ、そう思った。でも、実際は違っていた。
③このドラマを最後まで見て、それでも、ぺ・ヨンジュンという俳優が好きなのではない、自分が心引かれるのはドラマ『冬のソナタ』なのだと思った。
これらは、私が聞いた感想の一部である。
で、自分はどうだったかということを、ここで書いてみたいと思う。
なにしろ、熱く語るみなさんの中にあって、口下手の私は思いの半分も話せなかったと思うからだ。(誰だ?『え~!みんなそう思っているんじゃないの?』っていっている人は?)
私がこのドラマをはじめて見たのは、ご他聞にもれず、友人から薦められたからであった。ヨンジュン初来日の前年の年末のことである。
BSで二回目の放送中ということで、すでにこのドラマにはまっていた友人があれこれと話していたのに、なかなかその気にならず、結局最終回というその日、せめてここだけでも見てみて・・、そういわれて見たのだった。いわば、義理が絡んだ上でのこと、ほんのつき合いという程度のものだった。
最終回だけ見て、このドラマをいいと思えるはずもない。(中にはそういう方もいらっしゃるかもしれないが・・・。)
その波乱万丈、大逆転、不幸てんこもりの内容に、私の感想は、ふうん・・・、という程度のものだった。これが噂のどろどろね、と。
そんな中で印象に残ったのが、あの黄色いポロシャツ姿の彼だった。驚いた。
すてきだって思ったのかって?いいえ!テレビに出てくる俳優さんなのに、どうしてこんな服装しているのかと・・・。いくら目が見えないからといっても、これはないんじゃないかって・・・・。
そんな私が一話からちゃんとこのドラマに向き合ったのは、翌年の地上波での放送だった。
そして、なぜ、ヒロインは心が揺れ動いてしまったのか、なぜ、彼は他人の恋人を奪わざるをえなかったのか・・、そのあたりのことに自分なりに納得できるものを見つけたのだった。
で、『黄色いポロシャツ』はどうなったかって?
二度目のこのラストシーンに、これはすごい小道具だと思った。
あれこそが、チュンサンの持つピュアなものの象徴、薄暗い講堂に流れる『初めて』のピアノの旋律とともに、運命に操られたチュンサンという男性を語るときに欠かせないもの、私はそう感じたのである。
目が見えなくなってしまった彼の澄んだ瞳と透明な微笑み、そして、この黄色いポロシャツ・・・、あのシーンで彼は、人生のもつ不思議さ、運命に翻弄されながらもけなげに生きようとする姿勢を、静かに語りかけていたのだろうと今でも思う。
そして、それは、『チュンサン』を通して、ぺ・ヨンジュンという俳優さんの本質を、私が初めて見つけた瞬間だったような気がするのである。
でもね、そうは言っても、冬ソナについては、私も、③だったと思うのですね。
私がはっきり「落ちた」ことを自覚したのは、続いて見せられた『ホテリアー』の、刑務所に入っていくクールなドンヒョクに出会ったときだったのですから。
だから、私はやはり彼の外見からこの道に入ったのです、はい。
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