もう一度13話を観てのメモ(劇場版)
13話について、もう一度語らせてください。
今日、劇場で13話を観てきたのですが、いや~、すごかった・・・。正直いって、これほどとは思いませんでした。
何が?というと・・・、
①チュムチが手下達を引き連れて、山奥に隠れ住んでいるシウ族たちに、いっしょにやろうぜ、などと呼びかけるところがすごい。
チュムチという人物の豪快さ、百済との戦闘に破れてちりじりになっても、野を駆け地べたを這うようにして生きてきた騎馬の民(?)のたくましさがよくわかる。
②キハの悲しみが画面からストレートに伝わってくるのがすごい。
○格子窓のところにすわったキハの素に近い横顔。
大長老が「必要としているのは王家の血を引いている者一人であって、必 ずしもチュシンの王ではない。そして、それを利用して天の力を得た後は、その一人というのも抹殺しなければならない。」などと言うのを聞いて、思わず腹部に手をやる、その絶望的なしぐさと表情がすごい。
○崖から身を投げようとするシーン。これは、もうあえて説明しなくてもいいほどだ。
③キハが崖から身を投げようとするのと時を同じくして、船の中でうなされているタムドク。
その苦悶の表情を真上から、しかも大写しに撮影している。この表情のアップがすごい。
これは、いわゆるヨンサマファンにとってはまさに垂涎物である!
④タムドクに鎧を着せてあげるスジニ。
その後に続くシーンで、タムドクに母の形見の香水を渡され、「これを持って、よけいなことに首を突っ込んだりしないで、必ず無事に戻って来い、いいな!」などとタムドクに言われて、「はい」なんてしおらしく答えるところが、たまらなくかわいい。
スジニ、やるじゃん、と思ってしまう。
⑤やっぱり、出陣を前に兵士達に檄を飛ばすタムドクのりりしさ!
「死ぬな、命を賭けて戦う者などいらない。生きて私とともにあれ。」この台詞を言い放つときの、彼の表情、すっと伸びた鎧姿がすごい。
う~む、これは本当に伝説の大王そのものだぞと納得してしまう。
⑥チュムチ率いるシウ部族と、コ将軍率いる高句麗軍が百済の城に突進していく戦闘シーンがすごい。
BGMは「神々の戦い」、うわあ~~と思わず声が出てしまう。
・・と、まあ、こんな感じなんです。
テレビ画面では、私はそこまで感じ入ることはなかったので、つい長々と、コーフンして書いてしまいました。
13話を観てのメモ
☆おひさしぶりです。本当にたま~にしかアップしないので、ごめんなさい。13話を観ていての感想みたいなものを、ほんの少し書いてみました。
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テサギ13話から、高句麗王としてのタムドクが、いよいよ本格的に行動を開始した。
この13話を観ていて、まず、「王の風格」という言葉が自然に心に浮かんだ。
ヒョンゴ、フッケ、コ将軍ら、付き従う者たちを前に戦いについて、びしばしと指示を出す姿勢、真剣な、でも自信に満ちた表情。
組んだ長い足が素敵なんて言っている暇もないほど、タムドクは王としてのオーラにあふれていた。
以前の弱々しさなどとは比ぶべくもない、などと言いたいところだが、残念ながら、以前も深窓の・・と言えるほどかわいくて素敵だったのだから、やっぱりでれでれしてしまうのである。
ほんと、われながら情けない。
オーラを感じてしまうのは、周囲の女性に対する態度についても・・、である。言うまでもなく、キハ、そしてスジニである。
4歳年上のキハに対しては、まるで姉に対するときのように甘えていたのに、スジニに対しては、おまえは放っておくと何しだすかわからないから、そばにいろ、などと、頭ごなしに言ってのけるのだ。
どなたかが、「兄貴風」吹かせているなんて評していたけど、まったくその通りである。
その上、言われたスジニもいつもの気の強さで言い返すと思いきや、さもうれしそうなかわいい顔で素直に従ってしまうのである。
まったく、この人は・・、とつくづく思う。
考えてみれば、キハに対しても同様で、いつも見えるところにいて、なんて言っていたのである。
そう、どちらに対しても、そばにいてほしいと言っているのである。
これは何も彼女たちに対するものだけではない。
チュムチにもコ将軍にもヒョンゴにもチョロにも、そして当然ホゲにも、タムドクはそばにいてほしかったのだ。
もしかしたら、高句麗の民を救いたいとタムドクが切望しているのは、みんな大好きだよ~ということからなのかもしれない。
だから、タムドクが、この上なく素敵に見えるのである。
みんな大好きだという、周囲への愛にあふれているからだ。
そして、そんな王様が存在するのだと素直に信じられるのも、ヨンジュンさんが演じているからなのだと、私はまたつくづく思うのである。
髪をぴっとつまんで・・
仕事の帰り、いつものようにちょっとけだるい気持ちで、私は電車に飛び乗ったのでした。
と、入り口付近に立った私の耳に、飛び込んできた会話が・・・。
「え?なに、それ?今、BSでやってるんでしょう?それをまた映画館でも見ようっていうわけ?」
「そうだよ。」
平然とした声に、あら?とふりかえれば、20代後半くらいのちょっとかっこいいOL風の女性が、お仲間らしき女性に淡々とした顔で答えているのが・・・。
「それが、髪をぴっとつまんでいてね、昔の人の格好してるの。」
「へえ~」
「かっこいいのよ!」
「へえ~。・・・あの、撮影中に怪我したっていってたのでしょう?」
「そうそう。それでね、そのロケ地に行くツアーがあるんだけどね、それが・・・・」
私がどんな思いで、その話を聞いていたか、おわかりでしょうか。
バッグの中から携帯を取り出して、髪をつまんだかっこいいタムドクの待受け画面を彼女たちに見せたいなどという衝動と、私は必死に戦っていたのでした。
さぞ、あやしいおばさんがいると思ったでしょう。いやいや、もしかしたら、同じカゾクの匂いがしたでしょうか?
ともかく、私は耳ダンボ状態でそこに立っていたんですけど、残念ながら、やがて電車は乗り換えの駅に着いてしまい、私は心惹かれながらも電車から降りなければなりませんでした。
このドラマを見て、若いファンが増えているという話を時々聞いてはいましたが、正直言うとそれってどうなのかなあ・・、なんて私は思っていました。
だって、まだハイビジョンなんてシロモノで、日本のほんの一部の人たち向けに放送されてるだけじゃないですか。私は会社で広報宣伝活動にいそしんでいますが、みんながみんな、そのドラマのことに興味を持ってくれてるわけじゃないし、ドラマのタイトルもそれほど広まっているわけじゃないと思っていました。
だから、思わぬところで、思わぬ会話を耳にして、なんだかすごくすごくうれしかったのです。若い人の中にも、ちゃんと見る目のある人はいるんだなと。当たり前ですけどね。
当たり前のものを、素直に、『いい!』と言える時代じゃなくなってきたような気がして、いろんな意味でこのごろどうなってるのかしらねえ・・、なんて思っていたんです。
4月になったら、春になったら・・、そう思っているのは、きっと私だけじゃないですよね。
タムドクVSホゲに見る一考察~9話から
☆劇場で9話を見てきました。
やっぱり大スクリーンでの9話はすごかった!
ヤン王の死、キハの悲痛な叫び、ホゲとタムドクの対決、カクダンの壮絶な最期、玄武の目覚め、そしてタムドクの涙・・と、息つくのも忘れるほど最後まで一気に見てしまいました。
本当に、9話は短い、短すぎる!
特に気になったのが、タムドクとホゲとの対決シーンです。
タムドクは、できればホゲとの戦いを避けたいと思っていたのでしょうが、一方のホゲはどんな気持ちでいたのかと・・。
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なんだ、これは?
どうして、チュシンの王である俺がこんな目にあわなければならんのだ?!
だいたい、こいつは太子とは名ばかりのひ弱なヤツじゃなかったのか?
俺がちょっと本気を出せば震え上がると・・・。
なのに、『やれよ、・・母の仇を討てばいい。』なんて生意気なことをほざくから、お望みどおりにしてやろうと思ったのに・・・。
そうだ、すぐに仕留めてやれると思った。
最初はうまくいった。
ヤツは馬にも乗っていなかったから、俺は難なくあいつを地面に叩きつけることができたのだ。
なのに、二度目の攻撃のときは、あろうことか、ヤツは馬の脚を狙ってきたのだ!
おかげで、俺は馬もろとも横倒しになってしまった。
まったく、蛇のように悪賢いヤツだ!
俺はチュシンの王たるべく育てられてきた。
血のにじむような鍛錬を重ね、高句麗一の勇者といわれてきた。
なのに、二度、三度と討ちあううちに、ヤツもなかなかの腕を持っていることがわかった。
子供のころは誰にも相手にされず、城内でいつもひとりぼっちでいるのを見かねて、この俺が槍の稽古なんかつけてやったこともあるのに・・。
そういえば、父上はいつだったか言われたことがあった。
油断してはならぬ、おとなしそうな顔していながら、抜け目ないヤツなのだと。
まったく、そのとおりだった。
この俺が、あやうく何度かやられそうになったほどなのだ。
一度は槍で横になぎ払われて、上体をそらせてかわさなければならなかったし、また、足を取られて転びかけたときに、上からするどい切っ先で襲われたりもした・・。
もちろん、俺も何度かヤツを追いつめたが、これは簡単にはゆかぬぞと思った。
ぎりぎりと歯を食いしばり、俺はヤツの動きを読もうとした。
が、どこにも隙はなかった。
ヤツも同じ思いだっただろう。
・・そうとも、俺だって簡単にやられるほどヤワじゃない。
が、ヤツは、おい、かかってこいよ、みたいな顔をして、冷たい目でこっちを見据えて・・。
ふん、そんな手に乗るか、こっちは正真正銘のチュシンの星の元に生まれたホゲ様だ、そう思ったが、次の瞬間、ヤツにもそんな話がついてまわっているのだと気がついて、
どっと冷たい汗が流れて・・・。
そんなところに、あの女たちがやってきたのだった。
そして、あの瀕死の女が言ったのだった、王は反逆者たちに追われたあげく、神官の手にかかって逝去されたと。
それから、その神官の名を口にしたのだ、・・・そう、俺の愛する人の名を、だ!
嘘だ!、信じられないというふうに、ヤツは口走っていたようだったが、
俺は、俺は・・・。
なぜ、あんなにたおやかな人が?嘘に決まってる、そう思いながら、一方ではそれが本当であることを俺は知っていた。
あの人の思い人であるヤツに、わざわざ知らせに来たのだから、嘘であるはずはないと・・・。
そして、俺は思ったのだ。
もし王が亡くなったというのが本当なら、父上も俺も反逆者ということになるんじゃないか、
チュシンの王などではなく、悪に手を貸した者となるんじゃないかと・・・。
そのあとのことを思い出すたびに、俺は恐ろしくなる。
目もくらむような光の帯がどこかからぴか~っと襲ってきて、ヤツを包んだと思ったら!
包んだと思ったら!
俺は、天の怒りに触れてしまったのだろうか。
いや、そもそも俺はチュシンの王ではなかったのか。
もしや、もしや、ヤツが・・?
そんなはずはない!
そんなことがあっていいはずはない!
俺のためにあえて悪に手を染めた父上のために、
そして、命を落とした母上のためにも。
横たわるカクダンにかけられた上着~9話から
☆お久しぶりです。
9話を見ました。
タムドクとホゲの戦いも玄武のめざめも、ヤン王の壮絶な最期も、見ごたえたっぷりでしたが、私はなぜかカクダンのこのシーンが忘れられませんでした。
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そのとき、ご主人様は僕をその人の身体にそっとかけた。
置いて行かないで!
僕は小さな叫び声をあげた。
でも、こっちに向けたご主人様のふたつの目が
ひどくかなしそうだったから、
僕は我慢することにしたんだ。
そうだ、僕は知っていたよ、
その人の固い鎧の下で、
ひそかな熱い思いが息づいていたのを。
冷たい刀をきらめかせて、
力尽きるまで戦ったのを。
王命に従い、愛に従い、
使命を果たそうとここまでやってきたのを。
僕は、ちゃんと見ていたんだ。
そして、今、
冷たくなっていくその人の身体・・・。
僕は必死にあたためようとしたのだけど、
遠いところに逝こうとしている魂は、
とてもじゃないけど止めることはできなかった。
だから、僕はせめてやさしい気持ちで見送ってあげようと・・。
じっとみつめるご主人様の二つの目。
みんなどこへ逝くんだ?
私を置いて!
ご主人様の心がゆらゆらと揺れているのがわかったけれど、
だいじょうぶ、だいじょうぶ、
泣かないで、泣かないで・・。
小さくなってゆくご主人様の背中に
僕はずっと声をかけ続けていたんだ。
新しい「ヨン様」を感じてほしい
元旦を過ぎてから、夫と二人で温泉に行った。
特に話すこともなく、あれこれとひとりで考えていたら、夫がポンと新聞を投げてよこした。
「マンガ、見てごらん。」
マンガ?
それは、社会面に掲載されている4コママンガだった。
初老の夫婦がお雑煮を食べようとしている。
妻「今日のお雑煮は・・・」
夫「キムチが入っている!」
妻「キムチ雑煮!!」
そして、最後に、「ヨン様をしのんで」という妻の言葉のすぐそばには、「いまだにヨン様」という作者のひとことがある。ハートマーク付きで。
夫(マンガじゃなくて、私の、)が言いたいことはわかっている。
世間様っていうのはそんなものなんだよ、でも、いまだに君は『ヨン様』の真っ只中にあるんだね、と、そういうことなのだ。
そう、夫も含めて、そんな認識なのである。
そして、この『いまだヨン様』からはいろんなことがわかる。
① ぺ・ヨンジュンとは過去の人という認識。
実はこれは、最近よく耳にすることである。
昨年年末に出会った知人も、目を丸くして、
「そういう人がまだいたんだ~。
いえね、この間ね、友達と話していたのよ。
あの、ヨン様って騒いでいた人たちって、どこに行っちゃったんだろうって・・・。」
私はなんと返事していいか、わからなかった。
ヨンジュンファンは、まだまだ熱いわよ、なんて答えることはできたが、そんなものではとてもすませることはできないものがあったからだ。
私が『テサギ』の完成を待ちながら、仕事に家事にと平凡な日々を送っているうちに、その日常世界はいつのまにかそんな流れになってしまったのかと思ったのだ。
②『ヨン様』に冬ソナのイメージだけを見ている人々。
冬ソナが、彼を私たちの元に連れてきてくれたことは間違いない。
だから、一般の人々は、ぺ・ヨンジュンに、冬ソナ(または、マフラーを巻いたチュンサン)のイメージを見ている。
そして、5年たった今でも、その傾向が強いことは否めない。
けれども、その間、私は『スキャンダル』のウォンを知り、『四月の雪』でインスを知った。もちろん、冬ソナ以前の作品においても・・。
そんなさまざまな素敵な「彼」が、ぺ・ヨンジュンという俳優の中に内在しているのだということを、私は知っている。
が、巷では、いまだに、ぺ・ヨンジュン=チュンサンなのだ。
「いまだにヨン様」という言葉は、実は、このマンガを書いた作者に、私の知人に、そして当然私の夫も含めた巷の人々に向けたいものなのである。
だから、頼むよ~、と巷の人々に私は言いたいのである。
テレビや映画で放映されている『テサギ』に、ほんのちょっとでも目を向けてほしい。
そこで、タムドクという、まったく知らなかった「ヨン様」を見つけることができるから。
孤独な王子が荒波と戦い、どんなふうに大王となってゆくのか、その心の繊細さ、ふところの深さを感じてほしいから。
それが、ヨンジュンさんの中にある、ひとつの分身にちがいないのだから。
【創作】タムトクの恋・番外編~初春
王都の初春は、静かだった。
奥まった中庭にも、冬のやわらかな陽射しが差し込んでくる。
さっきまで凍った地面をおぼつかない足取りで歩いていたユナは、今はタムトクの膝の上にちょこんと座っている。さすがに疲れたらしい。
時折こちらを見上げてはにっこりと笑い、小さな手を伸ばしてくる。
うっすらと伸びた父の顎鬚が気になるらしい。
娘の指が髭をなぞるのをそのままに、タムトクは中庭の木々に目をやった。
蕾はまだかたかったが、これから芽吹こうとしている命があるのだと思った。
半月前までは、戦場(いくさば)にいた。
ふりそそぐ陽射しの中で幼い娘を抱いていると、そんなことも嘘のようだった。
義のためとはいえ人と人とが殺しあう戦場とは、いったい何なのだろうと思う。
限りなく、むごくもやさしくもなれる人間という生き物。
幾多の兵士たちの命を、直接的にも間接的にも奪ってもなお、今ここであたたかな陽射しを浴びている自分とはいったい何なのだろう・・と。
だが、それでもなお、この手の中にある愛、静けさ、あたたかさ、
触れればこわれそうなほど頼りない小さな命・・・、そんなものすべてが、タムトクはいとおしかった。
そんなものたちを守るためなら、自分はどこまでもむごくもやさしくもなれるだろうと、タムトクは心の中でつぶやいた。
「ユナ・・」
タムトクは、こちらを見上げている娘の髪に触れた。
こちらにまっすぐに向けられている丸い大きな瞳。
その透明感。
あたたかさ。
女の子とは不思議なものだと、つくづく思う。
ワタルはもちろん、チャヌスとも異質なものが感じられるのだ。
何よりも、腕の中でぽやぽやとあたたかく触れてくるものが心地よい。
それに、つややかなばら色のほほも小さな口元も・・。
そして、きわめつきなのが、大きな黒い瞳である。
じっと見つめられるとせつない気持ちになるではないか。
タシラカそっくりなのだから当然なのだろうが、そればかりではないらしい。
何か、同じ血のつながりを感じるというか・・・。
とにかく、いつまでも膝の上に座らせて、そのあたたかな存在を確かめていたくなるのだ。
だいたい、王は姫に甘すぎます、そう断言したのは、あのサトだった。
そんな不遜なことを言われても、タムトクはふんと鼻先で笑って返した。
サトも、タムトクよりも8ヶ月早く、父親になったばかりだったのだ。
『そなたに言われたくないな。
息子といっしょにいてやりたいなどと、ここ数日、城に顔も見せなかったではないか。』
『そ、それは・・、それは、ちゃんとご連絡したでしょう!
ジヌが熱を出して、アカネ一人では心配ですから、と。
王も、それなら・・、と王室付きの薬師を差し向けてくださったではないですか!』
『そうだ、だから、そなたも小うるさいことを言うな!』
あのときのサトとのやり取りを思うと、いつも笑ってしまう。
はっきり言って、あのサトとそんな話をするようになるとは思わなかった。
それも、ムキになって、だ。
子供の頃からの遊び友達で、いつもいっしょにいて、王になってからも側近中の側近として自分をささえ、いつも生真面目そうな顔で、タムトク様、それはなりませぬ!などと言っていた、あのサトとである。
お互いに父親としての第一歩を踏み出したのだと、タムトクは思う。
「なにか、たのしいことでもありましたの?」
いつもの声が聞こえて、軽い足音が近づいてきたと思ったら、すぐに肩越しにタシラカの顔がのぞき込んだ。
「そろそろ、眠くなる時間ですわ。」
「そうかな?」
「ええ、そうですわ。
タムトク様も、そろそろお城にお戻りになる頃ではないですか?
お迎えの方も見えるのでは?」
ああ・・、と生返事をして、すぐ横にあるタシラカの顔を見返す。
にっこりとやさしい笑顔だ。
こっちはちょっとどきどきするが、向こうはユナに気をとられているらしく何とも思っていないらしい。
さっと、彼の腕からユナを取り上げてしまう。
なんだ、つまらん、そう思いつつ、タシラカの腕の中を見れば、なるほどユナは指しゃぶりを始めている。
「そなたの声が聞こえたからだぞ。
今までは機嫌よく遊んでいたのだ、
そうだな、ユナ?」
「はい。
ユナはお父様が大好きですものね。」
タシラカが笑顔で返してくる。
悪い気はしない。
そう、タシラカに勝てるはずもない。
だが、さあ、あちらでお昼寝しましょうね、などと、くるりと背を向けてしまわれるとなんだかちょっとつまらない。
彼女の肩越しに、『つまらんぞ』の意味を込めて言ってみる。
「チャヌスの手習いはどうだ?
もう、終わったのか?
そなたが見ていたのだろう?」
ええ、とタシラカがふりかえる。
「ちちうえに見ていただくんだなんて、張り切ってましたけど、半時続けるのがせいいっぱいですわ。
でも、まだやっと二歳になったばかりですもの・・。
ワタルもあの年頃のころはすぐに飽きてしまっていました。
男の子はそんなものです、体を動かすほうが好きですもの。」
なだめるようなやわらかい笑顔。
タシラカ・・。
出産後体調をくずしていた正妃スヨンが亡くなったのは、半年前のことだった。
あとに残された一歳半のチャヌスを、この屋敷に引き取ってはどうかと言い出したのは、タシラカだった。
タムトクがためらいつつもこれを受け入れたのは、ほかにそれ以上適切な道が思い浮かばなかったからだった。
第一に、タムトクが戦続きで城を留守にすることが多かったのにもかかわらず、城内の奥向きのことを取り仕切る能力のある女官長がいなかった。
さらに、ただひとりの妃タシラカは出産後体調がまだ十分回復していなかったし、生まれたばかりのユナの世話もあった。
それに、チャヌスには乳母や侍女たちが取り巻いていたが、その世話に十分目が届くというわけでもなさそうだった。
スヨンの後ろ盾となっていたハン一族は、スジムの事件以来すっかり没落していたからである。
結局、タシラカの提案をタムトクが受け入れたとき、当然、各方面から反対の声が上がった。
城内の古くからの家臣たちは、高句麗王家の正統な血を引く唯一の王子チャヌスを倭の女人などの手にゆだねてよいのかと言い立てた。
その一方、タシラカの後ろ盾である長老家からは、なさぬ仲の王子を引き取って、もし何かあったら痛くもない腹をさぐられるなどと、心配する声が上がったのだった。
そんなものを押しのけての決断だった。
それから半年、周囲の不安をよそに、ともかく何とかここまでやってきた。
チャヌスの世話は乳母や侍女たちにまかせているようだが、彼女の指示で、日に二度の食事は皆でとるようにしている。
自然に、子供たちは仲良くなったようだ。
それもこれも、タシラカの手によるものだとタムトクは思っている。
チャヌスや乳母たちとの距離のとり方に戸惑いながらも、できることには手を差し伸べようとする姿勢があるのだろう。
10日前に戦場から帰ってきたとき、どうだ?とたずねたタムトクに、タシラカは鎧の帯を解く手を一瞬止めて、こんなことを言った。
『なにごともございません、なんて言ったらウソになります。
これだけ大所帯で、子が三人もいればいろんなことがありますわ。
でも、タムトク様のお顔を見るたびに、
ああ、こたびもご無事で帰ってきてくださったわ、子供たち三人も元気だわ、よかったわって、そう思ってしまいますの。
・・それなら、もう2,3人、他の方にお子をつくらせてもいいかですって?
それは、だめですわよ、もちろんですわ。
私、もう手一杯ですから・・・』
あのときのタシラカの眉をつり上げた顔を思い出して、タムトクはまたくすくす笑った。
タシラカはユナを抱えたままちょっと怪訝な顔をしたが、すぐに、彼のくすくす笑いを彼女なりに理解したらしかった。
「タムトク様だって、小さいころは手習いを抜け出して遊びにいらっしゃったことだってあったでしょう?
サト殿を上手に言いくるめたりして・・・」
「ああ、そうだな、そうだったよ。」
「チャヌスも同じですわ。
今も、ワタルとふたりでお父様を待っていますわ。
手習いが終わったら、凧揚げをする約束だとか?
あら、もう、そんな時間はないかしら?」
「城の文官どもは待たせておけばよいが、ワタルもか?
10歳にもなって、凧揚げなんてするのか?
棒術の初稽古はもう終わったのか?」
ワタルに対しては厳しすぎるとわかっていながら、つい強い口調になる。
タシラカはやわらかく返してくる。
「ワタルだって、凧揚げくらいして遊んでもいいでしょう?
父上が帰ってこられらって、うれしくて仕方がないんですから。
それに、棒術の先生は先ほど帰っていかれましたけど、
そろそろもっと手だれの方を探していただきたいとぼやいていましたわ。」
ふむ、とタムトクは苦笑する。
そなた、何でもわかっているのだな、
私が戦場で駆け回っている間に・・。
タシラカの腕の中では、どうやらユナが眠りに落ちたようだった。
タムトクは妻の肩を抱く。
あら・・、とふりかえった彼女の口元に、そっと唇を押し当てていった。
城の文官どもは、もうしばらく待たせておこう。
子供たちは・・、どうするかな・・?
年の始めに、深い意味はありません
あけまして、おめでとうございます。
そして遅ればせながら、ヨンジュンさん、MBC演技大賞受賞、おめでとうございます。
昨年は大賞受賞で、うれしい締めくくりとなりました。
長いつらい撮影に耐えて、それが正当に評価された後の、ヨンジュンさんの晴れやかな笑顔、心の底からおめでとうと言いたいです。
私も、パソコンの小さな画面でながめながらあたたかいものがあふれてきて、しあわせな気持ちで年越しをすることができました。
ただ、ちょっと気になったのが、スジニ役だったジアさんの表情が固かったことです。
新人でありながらこの一作でスターになってしまったからか、とても緊張しているようでした。
そのためなのか、ヨンジュンssiと並ぶといっそうぎこちなく、見方によってはよそよそしく見えてしまって・・・。
ベストカップル賞を受賞して、ふたり並んでステージに立ったときも、何となく一線を引いていて、必要以上近寄らないというように見えました。
でも、テサギ撮影のときはずっといっしょにいたわけで、ジアさんが蜂に刺されたときもヨンジュンさんが救急車呼ぶなんてこともありましたし、彼女自身もヨンジュンさんはプロらしい気配りの人だと言ってました。
それに、ドラマの中でも、息の合った演技を見せていましたね。
なのに、この授賞式で何となく????の雰囲気に見えたのは、ほかの要素が働いているのでしょう、たぶん・・。
いつだったか、韓国のどこかの新聞で、ジアさんが『ヨンジュンさんとの熱愛』をきっぱり否定し、個人的にはいっしょに食事をしたことがない、なんてコメントしているのを読んだことがありました。
彼女は、そんなひとつずつの身辺の変化に、ナイーブになりすぎているのかもしれません。
スターとしてみんなが自分を見ているときに、どんな動きをしていいのか、わからないのかもしれません。
そんな彼女を、芸能界の先輩であり所属事務所のオーナーでもあるヨンジュンさんは、あたたかく見守ろうとしているんでしょうね。
私には、彼のまなざしのあたたかさが見えるような気がします。
ただ、ですね、こんなことを言うと叱られるかもしれませんけど、授賞式のふたりに、つい、私は、中学生か高校生のころのことを思い出してしまったんです。
『あんた、○○クンが好きなんでしょう?』なんて友達にからかわれて、
『ちがうわよ!なんで、そんなこと言うのよ!』なんて、どぎまぎと否定したりして・・。
なんでもないことなのに、後からすごく自分が嫌になったりして・・・。
そんな経験、ありませんか?
私は、そういうの、すご~~くいっぱいあるんですよ!
今の私を知ってる人には、想像もできないでしょうけど。
さらに言いますと、そのときの噂のカレの態度が、ヨンジュンさんと似ているような気がするのも、なんだかおかしくて・・・。
・・・失礼しました。
はるか昔の話はこれでおしまいにしましょう。
大賞を受賞して席を立ち上がったヨンジュンさんに、隣の席のジアさんが何か話しかけたそうにしていたのが、私には、妙に印象的に見えました。
おめでとうございます、ってちゃんと言いたかったんでしょう、お世話になった先輩に。
でも、そのときは、彼はフィリップ君にささえられながら、ステージに向おうとしていたので、気がつかなかったみたいでした。
そして、そんなものなのでしょう、はじまりは・・。
え?また何が言いたいのかって?
いえ、べつに深い意味はありません。
ただ、私は、このふたりに、タムドクとスジニを重ね合わせてみたいだけなのです。
だって、その方が、ドラマを見るにもはるかに楽しいに違いないでしょうから。
NHK地上波放送決定に
いや~、NHKさん、やってくれますねえ・・。
来年四月に、いきなり、テサギを総合テレビで放送してくれるなんてねえ・・。
待ち続けた日々を思えば、ほんと、感無量ですよ。
いや、じつはですね、そんな噂を小耳にはさんでから数日後、やっぱり一度直接聞いてみようっと、と、直接電話で問い合わせたんですね。
以下がそのときのやりとりです。
「あの~、太王四神記を見ている者なんですけど・・・」
「(うれしそうに)はい。」
「あの~、来年、地上波で放送されるって聞いたんですけど、本当ですか?」
「(急に慎重になって)それは、総合テレビで、ということですか?
まだ、決まってません。」
「(え??)あ、そうなんですか?
ぜひ、みんなが見られる総合テレビでやってください、
みんな、期待してると思うんですよね。」
「・・ご意見があったということはお伝えいたします。」
「よろしくお願いします。」
以上です。
正直言いますと、『まだ、決まってません』と言われたときに、私は、おんや?と思いました。
だって、HPには、『来年4月からBS2で放送予定』って書いてあるじゃないですか。
ふつうなら、そういう答えが返ってくるはずでしょう?
なのに、『決まってません』だった・・・。
あら、これはやる気なんだわ、なんて、わたしゃ、そのとき確信したんです。
で、うふふ、とほくそえんだわけ。
ほんと、来年は、今年にもまして、いい年になりそうですね。
【創作】タムドクの復活~24話の後に(その2)
☆心痛むあまりに、『24話のあとに(その2)』の代わりに、こんなお話を書いてしまいました。いわば、自分の気持ちにけじめをつけるためのお話です。
はっきり言って、まだ不十分なところが多々あります。たぶん、手直しすることになると思います。
・・・たとえば、『パイレーツ・オブ・カリビアン』も、死んだと思われていた主人公の海賊さんを復活させましたよね。
となれば、愛するタムドクについても、こんな感じにしてしまってもいいんじゃないかと思うんです。
ご不快に思われた方、ごめんなさい、スルーしてくださいませ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
扉を開けると、ほのかな灯りの中に寝台の上に、その人がすわっているのが見えた。
「遅くなってごめん。おなかすいたんじゃない?」
声をかけると、かすかな笑みを浮かべる。
「アジクは寝たのか?」
「うん。
親子そろって、ほんとに手がかかるんだから。」
わざとそんなことを言ってみると、その人は恥ずかしそうな顔になった。
「すまない、俺のことを一番よくわかっているのは、やっぱりおまえだから。」
「あ・・、そんなつもりで言ったんじゃないの。
イングニムは、いばってていいんだからね。
スジニ、おれは空腹だ、もっと早く夕餉を運んで来い、とかさ・・。」
あはは・・、と笑ってみせたけど、やっぱりその人は、無精ひげにおおわれた端整な顔に、さびしそうな笑みを浮かべただけだった。
元気になるまでもうちょっとかな、
スジニは手に持った盆を寝台近くの座卓に乗せた。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
アブラム寺の決戦の日から二か月近くがたっていた。
あの日、黒朱雀に変身した姉のキハといっしょに眩い光の中にタムドクが消えていったとき、スジニはキハの子アジクを腕にかかえたまま、声の限りに叫んでいた。
イングニム~!と。
それを聞きつけたのか、まずクァンミ城主チョロが、次に斧を片手にチュムチが駆けつけてきたのだった。
すぐに何か大変なことが起こりつつあるのを見てとったふたりは、ためらう様子もなく、鮮烈な光の向こう側に飛び込んでいった。
ふたりが死んだように動かないひとつの身体を抱えて引き返してきたのは、それからしばらく経ってからのことだった。
『取り返して来たぞ!』
チュムチの焼け焦げた顔がにっと笑い、確かめるようにふり向いたスジニに、ちりちりになった長い髪を振り乱したままチョロが黙ってうなずいた。
そばに寄ってのぞいてみると、それは、鎧や胴着などあちこち焼けただれていたが、確かに彼だった。
いつものようにきれいな顔で、静かに眠っているように見えた。
『ほんとに、帰ってきてくれたんだよね?』
あとからあとから、ぽろぽろと涙がこぼれて仕方がなかった。
イングニムはただ眠っているだけだよね、すぐに目を覚ますよね、と。
本当は、「もうひとりの人」のことについても、どうしたのかとちゃんと聞きたかった。
でも、なぜかそれはとても聞いてはいけないことのような気がした。
そうでなくても、いつのまにか目を覚ましたアジクがわあわあと泣き喚いていたからだ。
スジニが姉のことを聞いたのは、あれから何日も経ってからのことだった。
尋ねてもいないのに、誰にともなくクァンミ城主チョロが、ぼそりと言ったのだった。
「結局、大神官はみつけられなかったんだ。」
やっぱり・・、とスジニは思った。
姉貴はイングニムをこっちの世界に追い返して、そうして、ひとりで逝ったんだ。
私はだいじょうぶ、と。
なぜなら、イングニムが姉貴のかなしみをひとりで引き受けようとしていたのがわかったからだ。
だって、イングニムのことをいちばんわかっていたのは、姉貴だったもの。
そして、イングニムだって・・。
だいたい、イングニムはやさしすぎるんだ。
だから、姉貴をひとりで逝かせられなくて、
だから、あのとき、天弓で射ることができなくて・・・。
もしかしたら、イングニムが天弓を破壊したのは、もっと別の理由があったのかもしれないと、スジニは思った。
でも、どっちにしても、姉貴は帰ってこない、それがすべてだ・・・。
こうして、やっとスジニは自分の中で区切りをつけたのだった。
そしてともかくも、タムドクは、生きて国内城に帰ってきたのだった。
火傷のあとはあちこちにあったが、不思議なことに致命傷となるようなものはひとつもなく、まさに奇跡だ、さすがチュシンの王だと人々は噂しあった。
本当のところ、それから何度か危険な状態になるときもあったのだ。
だが、そのたびに、生き残ったコムル村の人々や城内の人々の手厚い看護と、それからタムドク自身の驚異的な体力で、それを乗り越えたのだった。
とはいえ、タムドクが心に受けた衝撃はかなりなものがあったようだ。
横になって一日のほとんどをすごすという日々が、まだ続いていた。
以前の快活さは陰をひそめ、必要なこと以外は話す気になんかならないという顔でいる。
あのとき、なぜ、光の向こうに行こうとしたのか、そこで何があったのか、周囲の者たちは気遣って彼に尋ねようとしないし、彼も何も語ろうとしないままなのだ。
元通りに政務が取れるようになるまで、まだ時間がかかりそうな気配だった。
そんな中で、タムドクは、食事の世話やら着替えやら身の回りのことについては、何かにつけてスジニを側に呼びたがった。
スジニとしてもそれがうれしいのだが、どうしても他の用事で呼ばれてもすぐに駆けつけることができないこともある。
それに、キハの子アジクの母親代わりを務めなければならない。
チョロの目も気になる。
「おまえは忙しいのだから、ほかの女に頼めばいいだろう?」
スジニの男でもないのに、おせっかいにもそんなことを言ったりする。
普段はすごく口数の少ない男なのだが。
だが、それはまだいい、
クァンミ城主はまだ聞き分けがいいのだから。
問題は、ほかの女たちなのである。
「スジニはアジク様のことで手が離せないので、代わりに私が参りました、なんて言っても、全然だめなのよ。スジニの手が空いてからでいい、なんておっしゃるんだもの。」
ほんと、しょうがないイングニムだねなんてあきれたふりをしながら、スジニは胸がどきどきするのだった。
姉のことを思えば、そんなことさえうしろめたい気持ちになるのだけど。
その一方で、このごろになってだが、タムドクは師匠のヒョンゴを呼んで、長い時間ふたりだけで話し込んだりするようにもなった。
イングニム、なんだって?などと、周囲の者たちが期待に満ちた顔で尋ねると、ヒョンゴは、いつものように本気とも冗談ともつかない口調で答えるのだ。
「ああ~、
王が生きてここにおられるのは、まさに天の神のなせるワザというものだ、
とかなんとかいう話をしたんだ。
・・・王よ、あなたは光の中でご覧にならなかったか、
天の神が、おごそかに現れたのを。
そして、神はこうおっしゃったのではないか、
・・タムドク王よ、そなたはまだこちらに来てはならぬ。
下界でやるべきことがまだ残っているはずだ、なんてな。
あ~、つまり、人は生きて何をなすべきなのか、
まさにそういったことをだな、尊い神がお決めになっておられる、そういうことだな。」
そうかなと、その時スジニは思った。
もしそういうことをイングニムに言った人がいるとしたら、それは姉のキハじゃないかという気がしたからだ。
でも、とスジニは思い返す。
誰でもいいけど、そういうことをほんとにイングニムに言ってくれた人がいたのなら、あたしは、その人にこう言うよ、
ありがとうございます、
ほんとに、ありがとうございますって。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。
ともかく、生きて帰ってきてくれたんだから、
それに、このごろ、ちゃんとお粥も食べてくれるようになったんだから。
ほのかな灯りの中で、スジニは、タムドクが粥を口に運ぶのを見ていた。
「おいしい?イングニムが食べるんだからって、腕によりをかけて作ってもらったんだからね。」
「ああ、そうだな。
・・そういえば、昼間、アジクがここへ来たよ。」
「え?!
そうだったの?
知らなかった、いつのまに・・?」
勢い込んで聞くと、やわらかな笑みが返ってくる。
「手習いを見せてくれた。
お前が教えているのか?なかなかよい字を書いていたぞ。」
ああ、とスジニはうなずいた。
誰かに教えられたらしく、アジクはいつのまにか、イングニムと皆が呼んでいる人が、自分の父だということを知っていたのだった。
父上に見せるんだと言っては、一生懸命に、習いたての文字の練習をしたり、棒術の稽古に取り組んだりしている。
それはそれでいいのだが、油断していると部屋中墨だらけにしたり、額にコブを作ったりする。
なにしろ、ワンパクざかりなのだ。
しかたがないだろう、このタムドク王の血を受け継いでいるのだから。
スジニはそう思って、くすりと笑ってしまった。
「なんだ?」
「なんでもない。すごくいいことを思いついたんだ。」
スジニはそういって、またくすりと笑った。
このおだやかな日々が続いて、イングニムが元気になって、またみんなで楽しく笑えるときがくるといい。
姉貴もきっとそう思ってるよ、きっとさ・・・。
★読み返してみたら、あんまりな箇所がたくさんありましたので、あちこち修正しました。つくづくいやになりました。読んでくださった方に申し訳ないです。
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