2008/06/04 23:45
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

イベントでのつぶやき

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 タムドクに会いに、ドームに行くのだと、ず~っと思っていました。なのに、そうではありませんでした。そこで出会ったのは、長髪をなびかせ、口元に微笑を浮かべたヨンジュンさんでした。

 いいえ、けっしてそれが不満だというのではないのです。
 ただ、鎧を着たタムドクの姿をしっかりとこの目に焼き付けたかっただけ・・・。

 ある方から譲っていただいたその席は、ステージからはそう遠いものではありませんでした。でも、そこは、正面から左半分は見えにくい位置にありました。
 ああ、これは見逃したら大変かも・・、そう思っていたときでした。
 いつのまにか、ステージ上には四神が居並んでいました。
 はっとした時、中央あたりの壁がするすると開いたような気がして、そこから見覚えのある鎧姿が!
 あっ!そう思ったとき、彼はすでにそこに立っていました。
再び、ああ~っと、私は小さな悲鳴を上げました。
ひとつはその圧倒的な存在感に。
そして、心の準備が不十分なまま、すごく大事な瞬間に出会ってしまったことに・・・。
 
 テサギの世界は、私からは遠いところにありました。それは、ドライアイスの作り出した魔法の霧のかなたにかすんでいるように見えました。
いや、そんなものではないのでしょう。
テサギの世界はちゃんとそこにあったのですから。
タイムトラベルしようとして、時空間が少し斜めに傾いていたためにそこに到達できなかったのは、この私のほうなのですから、たぶん・・・。

ヨンジュンさんは長髪を切らないまま、足の痛みをこらえながら20キロの鎧を身につけていたというのに・・。

 
 でも・・、それでも、彼は確かにそこにいました。
 タムドクではなく、ぺ・ヨンジュンその人として。

 車に乗って場内一周する彼は、思いがけないほどすぐ近くにいました。
 あちらこちらに手を振り、にこやかな笑顔を向け、会釈し、なにごとかを話しかけ、カメラでパチリパチリと・・。
 そして、くるりとふり向いたその瞬間、眼鏡の奥の視線がこちらを向いたような気がして・・・。
小首を傾げてにっこりと笑ったような気がして・・・。
ああ~っと思ったのは、私だけじゃありませんでした。
周囲数メートルがどっと沸き、今、目と目が合ったわ!と口々に。
しあわせな一瞬、しあわせな数メートルの輪。
ほんわかとしながらも、やっぱり私よ、とひそかにつぶやいたりして・・。


 そして、ステージ上で彼が最後に残した言葉は、『皆さん、愛してます』でした。
愛してます・・、そんな深い言葉を、いとも簡単に口にしてしまうなんて!
そう思ったとたん、それはすごく自然な理のように、すーっと心に染み込んできて、私は、う~むとうなったのでした。

 『皆さん』と語りかけているのだから、それは確かに、そこにいる35000人、いえ、全国から熱いまなざしを注いでいる人たちを入れれば40000人に、いえいえ、もっともっと多くの人たちに向けられたものなのです。

でも、それを耳にしたとたん、つい、個としての自分自身を感じてしまって・・・。
そんなはずはないと思いながら・・・。

 そう、そんなはずはないと思いながら、私がぼ~っとしている間に、ヨンジュンさんはテサギの世界を締めくくったのでした。

 


2008/05/31 09:24
テーマ:【創作】短編 カテゴリ:その他(その他)

【創作】女神の系譜(後編)


「・・おおきみ、おおきみ、・・ははうえ、母上、お疲れのようですが、目をお開けください・・」
 突然の声に女帝は呼び戻された。
仕方なしに目を開ければ、葛城が覗き込んでいた。
「・・今のをお聞きになりましたか?・・吉報です、蘇我から火の手が上がったとのことです!」
『そが』から・・、と女帝は小声でくり返した。
 なるほど、部屋の中はさっきまでとだいぶ様子が違うようだ。くすんだ顔をした男達の大半が外に出て行ったらしく、部屋の中はがらんとしている。内庭では、ばたばたと駆け回る兵士達の足音や興奮した声、馬のいななきも聞こえる。
 ぶんぶん声はどうしたのだ、と思ったとたん、それはすぐ近くにかしこまっていた。
「鎌足、謹んで申し上げまする。蝦夷の動向はいまださだかではございませぬが、屋敷から出て行った気配もございませぬゆえ、恐らくは自害したものかと・・。」
 そうか、あの、えみしが・・、と覚醒しきれない頭で、女帝はつぶやく。品の良い白髭の横顔が目に浮かぶ。優柔不断などと陰口をたたかれていたが、息子の入鹿とは異なり、書を好むおだやかな人物だったと思う。
が、葛城はそんなことは気にもとめない様子で、次なる一手を繰り出そうとしていた。
「早計に判断してはなりませんが、ここは、母上の、いえ、大王のお言葉が必要です。」
 その言葉が終わるか終わらないかの内に、鎌足が大きくうなずくのが見えた。
「さようでございまする。いまだはっきりしない東漢直の動きを封じるためにも、ここは大王の詔がいただきとうございまする。」
女帝は、『みことのり』と小さくつぶやいたが、そのとたんになにか違和感のようなものを感じた。なにかおかしいような・・。
ぶんぶん声は話を進める。
「はい、詔の内容としましては、一同、混乱を収拾するため葛城皇子様の元に結集せよ、ということでよろしいかと存知まする。この鎌足、すでに原案は用意してございまする。」
 ああ、やはり、そういうことか、と思った。体の中がざらざらしたものでいっぱいになる。
 要するに、何も変わらないのだと女帝は思った。初めからずっと同じようにくりかえしてきたことなのである。きらびやかな衣装を身にまとい王冠をかぶっていても、彼女が自ら考え行動することなど何も求められていないのだ。
 たとえば、厩戸皇子の子、山背大兄皇子(やましろのおおえのみこ)の上宮王家が襲撃されたときも、それから昨日の騒動も、である。コトが起こってから、実はかくかくしかじかなどと知らされる始末なのだ。目の前ですでに血が流れているというのに、である。
すべてがうっとうしくてたまらなかった。
女帝は立ち上がった。
「私は帰る。」
きっぱりと言ってのけると、胸がすっとした。ああ・・、と思った、ひどく意外だった。
 葛城やら鎌足やら、周囲を取り巻いていた者たちがいっせいにこちらを見た。
 一瞬の沈黙の後で、強い口調で言ったのは、やはり葛城だった。
「母上には、もうしばらくここにいていただきます!」
口元にうすら笑いを浮かべながら、鎌足がなだめにかかる。
「大王にはどちらへ行かれるとおっしゃるのですか?板葺宮は昨日のままの状態でございますれば・・・」
もごもごと、大極殿には死体がごろごろしたままだの、警備する兵もいないなどと続ける。
「そもそも大王ともあろうお方が、ご自分のお気持ちのままに、どこかへ行かれたりなさるものではございませぬ。大王のおわすところが宮でございますれば、民の混乱を招くものかと・・」
 女帝は鎌足のしたり顔などには興味はなかった。そなたに大王の心得など説いてもらおとは思わぬとばかり、まっすぐ視線を向けたままで言った。
「ならば、退位する。」
今度は胸がすっとしただけではなかった。目の前が明るくなった。
 周囲が息を呑むのがわかった。
「母上、本気でおっしゃっているのではないでしょうね。」
「このようなことを戯れに口にできようか。」
ふふ・・、と笑うと、葛城は小さくため息をついた。
「此度のことを事前にお知らせしなかったことで気分を害されておられるかもしれませんが、私はただ、コトが露見したときに母上を巻き添えにしたくないと思ったのです。ですから・・・・。」
そうか、それが、そなたなりの気遣いというものなのだなと、女帝は笑みを浮かべた。
 昨日飛鳥寺に同行せよと求めた時点で、十分、巻き添えにしているではないかと思ったのだ。あの時点では、コトの成否は誰にもわからなかったのだから。それをはっきり口に出して言ってやるべきかと思ったが、やめておいた。そういうことは自分で気づくべきものだからである。
「もう、決めたのだ、私は大王をやめる。葛城、そなたが即位すればよい。」
「しかし、母上・・」
冷静沈着と評判の小作りな葛城の顔に、はっきりと戸惑いの色が浮かんだ。
「そうはまいりませぬ!」
突然鎌足が大声を上げた。
「今、宝女王(たからのひめみこ)様が退位されて皇子様が大王位につかれましたら、それこそ敵の思う壷、大王位がほしくて、入鹿めを屠ったと陰口をたたかれまする。」
なにを今さら・・、と女帝は高らかに笑った。
「ならば、何とでも画策すればよい。そなた、かまたりとか申したな、そのようなことは、得意であろう。私が退けば大王位に誰をつけるか、そなたなりにすでに考えていることがあろうが。たとえば、古人大兄皇子(※2ふるひとのおおえのみこ)あたりに即位の話をほのめかし、その出方を探るとか、たとえば、わが弟の軽(かる)を引っ張り出すとか・・・。」
 もう一度にっこりと笑ってみせたが、鎌足は今度は返事をしなかった。ただ、細い目をいっそう細めて彼女を見た。いや、見つめていたのは、彼女ではなかったのかもしれない。その背後にいる誰かの気配を感じ取っていたのかも。
 周囲は白けた雰囲気に包まれていた。十数年そばで仕えている女官長までがおろおろしている。
それが小気味良いというわけではなかった。ただ、このざらざら感を、彼女は少しでも早く脱ぎ捨てたかった。
「ともかくだわね・・」
と女王(ひめみこ)はさばさばと言ってのけた。
「私はこのうっとうしいものを脱ぎ捨てることにしたのよ。だから、あとはそなたたちの好きなようにやればいいわ。」
 女官長を促し、じゃあ、私はこれで失礼するわと、女王は部屋の外に一歩足を踏み出した。
醜きことは嫌だ、もっと心のままに鮮やかに生きてみたい、女王は遠い空に目を向けて、そんなことをつぶやいていた。

                            

※2、古人大兄皇子・・・田村大王の第一皇子。母は蘇我馬子の娘。蘇我本宗家は、この皇子を大王候補と考えていた。

 


2008/05/31 09:21
テーマ:【創作】短編 カテゴリ:その他(その他)

【創作】女神の系譜(前編)


☆ヨンジュンさん、いえ、タムドク様が来日され、どきどきする土曜日をお迎えのことと思います。私も落ち着かない気持ちでいます。

 そんなときに、彼とは関係ないお話をアップしようと思ったのは、私的な理由からです。昨夜、このパソコンが調子が悪くなり、これはダメかも・・、とひやりとさせられたのです。幸いにも朝になってどうにか復調しましたが、マイドキュメントに保存してある創作をどこかにアップしておかないと大変なことになるかもしれないと思い立ったからなのです。

 ここにアップしますお話は、7世紀後半の古代日本が舞台になったものです。そう、あの大化改新のころのこと、主人公は時の女帝・皇極(宝女王:たからのひめみこ)です。このあとに続けて、女帝の息子・大海人皇子(おおあまのみこ)や、額田王らも登場させる予定ですが、今回はまだそこまでいたっていません。彼を想定できる人は出てきません。ごめんなさい。

 あくまで緊急避難的なものでおもしろくないかもしれませんが、とりあえずこちらにおかせてください。

 

      ~~~~~~~~~~~~~~~

 

  宝女王(たからのひめみこ)。敏達天皇の曾孫。初め、渡来系の王族・高向王(たかむくおう)の元に嫁すが、離別、田村大王(舒明天皇)の皇后となる。その死後、大王として即位(皇極天皇)。乙巳(いっし)の変(大化改新)の際に退位、実弟の軽皇子(孝徳天皇)に大王位を譲るが、その後、再び大王の位につく(斉明天皇)。
高向王(たかむくおう)との間に一子、漢皇子(あやのみこ)、田村大王との間に、葛城皇子(かつらぎのみこ)(中大兄皇子:天智天皇)、大海人皇子(天武天皇)、間人皇女(はしひとのひめみこ)(孝徳天皇皇后)がいる。
異説あり。
         ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 飛鳥板蓋宮(いたぶきのみや)の大極殿で、権勢を極めていた蘇我入鹿(そがのいるか)が、葛城皇子、中臣鎌足らによって斃されたのは、皇極4(645)年のことだった。
後の世に言う、乙巳の変である。
 その時、突然の襲撃者になすすべもなくうろたえた入鹿は、大王位にあった宝女王に助けを求めたと言う。事の次第を知らされていなかった女帝が、実の息子である葛城皇子を問いただしたところ、大王位を狙っていた入鹿の罪は明らかですと一言の元にはねつけられ、女帝はなすすべもなく退席したという。入鹿は殺害され、切り刻まれた無残な体は蘇我本宗家の前に放り出された。
 葛城皇子らは、宝女王とその実弟、軽皇子(かるのみこ)を伴い、飛鳥寺へと移動した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「なんといっても義はわれらにござる。それゆえ、今も、葛城皇子様にお会いしたいと、阿倍内麻呂殿が西の部屋にてお待ちになっておられる。また、大伴長徳(おおとものながとこ)殿もまもなくこちらに駆けつけてこられると申しておられる・・・」
 うなるような低い声が続いていた。ぶんぶんと虫が鳴いているようだと、宝女王は思った。
飛鳥寺の中庭に面した二十畳ほどの部屋には、押し黙った男達が十数人、いずれも武装を解かないまますわっていた。戦いの興奮も醒めて、一様に黒くくすんだ顔をしている。 
 その中には、息子、葛城皇子の小柄な姿もあった。ぶんぶん声に耳を傾けながらも、時折、神経質そうに眉根を寄せているのがわかる。綿密に計画して実行したのに、ここまで来てコトが思い通りに進んでいないと、いらいらしているのかもしれない。お若いのに頭脳明晰かつ沈着冷静でいらっしゃるなどと人は言うが、要するに、これはまだ子供なのだと女帝は弱々しい笑みを浮かべた。
 そして、ぶんぶん声は、その右隣に陣取った男から発せられているのだった。
 蛙を思わせるずんぐりとした身体、厚ぼったい一重まぶたの下から細い目をのぞかせて、どこぞの下級役人といった風情だ。ひとりくどくどと戦況報告なるものを行っている。
 ぶんぶん声、名は何と申したか・・・、そう、かまたり、とか。
 葛城によれば、三代前は百済の貴族だったということだった。百済貴族というのは真実ではないだろうが、そんなことはどうでもよかった。気に入らないのは、この声音だ。この粘り気のある語調とくどくどしさはなんだろう?耳に触れるだけで気分が悪くなるではないか。


 前日起こった騒乱はすでに一区切りがついて、事態は次の段階に移ろうとしていた。
 問題は、屋敷の前に放置された入鹿の無残な姿を目にして、その父、蘇我蝦夷(えみし)がどう動くかということだった。渡来系の東漢直(やまとのあやのあたい)一族という大軍団を擁している蘇我本宗家が、このまま黙って引き下がるとは思えなかった。
 蘇我本宗家のある甘樫(あまかし)の丘は、飛鳥川の対岸にある。今のところそこはいつもと変わらない静けさを保っていたが、すでに目には見えない何かが漂っているように思えた。
 そして、大豪族達が固唾をのんで推移を見守っているのは明らかだった。


 「・・すでに東漢直にはわが手の者を忍び込ませてござる。蝦夷のヤツがあの蘇我のイヌどもを動かそうとするやもしれぬ。が、なんといっても、わがほうには大王がおられる、それゆえ・・・」
ぶんぶん声はまだ続いている。何げない顔をしているが、かまたりとやらは、騒動の後で疲れの見えてきた武将達の引き締めを図ろうとしているのかもしれない。まあ、それはどうでもよいが・・、と女帝は思った。
 自分はここで何をしているのだろう。
 さっきから、何かひどくたいせつなことを忘れているような気がしていた。それが何なのか、女帝にはおぼろげにわかっていたのだが、そこに目を向けるつもりはなかった。ほんのちょっとでもそれを見てしまったら、自ら手を差し伸べねばならなくなるからだ。


 『いっしょに来ていただきます!』
前日、葛城が言うままに板葺宮をあとにしたが、なぜ行かねばならないのか、どこに行くのか、納得して従ったわけではなかった。だいたい、昼間起こったことさえも、事前にはまったく知らされていなかったのだから。
 それでも息子の指示めいた言葉のままに宮をあとにしたのは、そこが黒いもので満ち満ちていると感じたからだ。
 そこまで考えて、前日目で見、耳で聞き、心の奥底で感じ取ったモノの片鱗を思い出し、さすがに肌がぞわりとなった。
 見てはならぬ!
女帝は目を閉じた。今は、身をかわさねばならなかった。

 宝姫と呼ばれた頃から、醜いもの、不快なものは嫌いだった。
それから逃れるのは簡単だった。目を閉じ、遠く水の匂いのする場所に意識を飛ばしてしまえばよかった。それは、幼い頃から彼女が得意とするワザだった。
 とりわけこんな朝はたやすい、・・こんな朝とは、ほとんど眠ることができなかった夜のあとは、ということだ。倒れそうな身体とさえざえとした頭脳、この微妙な組み合わせがよいのである。半分は覚醒し半分は眠っているような状態、・・周囲からはうつらうつらしていると見られる領域に、その身をおけばよいのである。
 もしかしたら子供のころからそばで仕えていた女官長は気がつくかもしれないが、そんなことを、この場にいる葛城や他の男達にわざわざ話してきかせるような心配はまったくなかった。
逃れる場所は、たとえば、さらさらと流れる飛鳥川の川辺の湿った草の葉陰か、そうでなければ、寺の西門を出て百歩のところにある、雨をたっぷり吸った槻の木のはるか上方あたり・・。
 そうだ、と女帝は笑みを浮かべた。雨の匂いの残るこんな日は、あの老いた大木の上がいい。茂った緑の葉の間に身を隠して、くだらない迷いごとに大騒ぎしている者たちを覗き見るのがいい。
 目標がさだまれば、あとは容易なはずだった。
 が、なぜかうまく行かなかった。
 目を閉じた暗闇の先で待っていたのは、血しぶきをあげて、どうと倒れる男の姿だった。
 すぐに後悔したが、すでに遅かった。
『それ』は、右手を伸ばしてこちらに救いを求める。恨みがましい二つの目、みるみる失われていく生の光、どうして、なぜだ?と問いかける苦悶にゆがむ口元・・。
 私は少しも知らなかったのだ、少しばかり言い訳してみたけど、この世ならぬモノにそんなものが通用するとは思えなかった。
 仕方がない・・、女帝は小さくため息をついた。

 大臣だったこの男を、憎いと思っていたわけではなかった。かといって、好ましいと思ったことは一度もなかった。この男とのことをあれこれと噂する者がいることを女帝は知っていたが(その中には、葛城もいた!)、すべて無視することに決めていた。当然である、大王ともあろう者が、このような者を男として相手にするはずもない。
 最初の夫と別れ、ひっそりと子を育てていた彼女を、先の大王の皇后に据え、その死後、大王として即位させたのは、蘇我蝦夷である。
『後継者争いを避けるため、・・誰の血も流れぬようにするためでございます、ここは、水を司る水拠姫(※1みずよりひめ)の流れを汲む女王(ひめみこ)様に大王となっていただき・・・』
などと言って引っ張り出したのだ。それを真に受けた自分も、ずいぶん未熟だったと思う。
 蝦夷の後を継いだこの男にも、確かに世話になった。時には、苦手な「まつりごと」において、有用な助言をしてくれたこともあった。
 だが、大王たる彼女をさしおいて、この男が政務をとりしきることが多かったのも事実だ。
『女王様には何もご心配召されませぬよう。万事は、この入鹿におまかせを・・・。』
わけのわからない「まつりごと」で心を煩わせることもなかったのは、この男の働きによるものだが、それが、葛城の言う『専横なるふるまい』になるのかもしれなかった。
 そうだ、息子の言うように、この男は大王になりたかったのかもしれないと、女帝はじっとそれに目を当てた。大王の位などそれほど未練はなかったが、天孫の流れを汲む者でもない男に、それを譲るわけにはいかなかった。
 そして、どちらにしても、この男が大王になるということは消えうせたのだと女帝は思った。
「いかにすべきかなどと言われても、私にはどうすることもできぬ。そなたの父蝦夷に尋ねてみよ。」
手負いの獣のようなその男に、女帝は静かに言い放った。

 

※1、水拠姫・・・息長水拠姫(おきながのみずよりひめ)のこと。第9代開化天皇の皇子の妃。琵琶湖の水神の娘で、息長氏の祖先のひとりとされる。息長氏は近江を拠点とした古代の有力豪族で、大和朝廷との婚姻を通じて力を伸ばした。神功皇后も息長氏の出として名高い。ここに登場する皇極、天智、天武ら、いずれも息長系の天皇である。

 


2008/05/22 20:19
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

BSテサギが残したもの

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 BSのテサギも終わってしまいました。さびしくなりました。

①スジニとの再会と『おまえのいるところが宮だ』

②わが子とは知らずにアジクを見つめるタムドクのやさしいまなざし

③フッケやコ将軍の壮絶な死とタムドクの涙

④ホゲとの最後の対決の後にタムドクが見たもの

⑤大長老との最後の対決

⑥黒朱雀になったキハから、身を挺してスジニとアジクを守るタムドク

⑦自ら天の力を天に返そうと、天弓を壊し、光の中へ向かうタムドク

見所といえば、こんな感じでしょうか。

 私が一番心奪われたのは、③です。意外でしょうか?

 どこかでどなたかが書かれていたけど、タムドクと周囲の男達とのからみ、すごく好きなんです。

 それと関連して、戦いを前に味方の兵士達の檄を飛ばした後、兜をかぶり、すらりと刀を抜き、馬を駆けさせるシーン、あれ、いちいちきゃ~~~と声をあげちゃうくらい好きでした。

 皆さんはいかがですか。

 

☆追記:イベントのサテライト中継、決まったようですね!今度は映画館だって!

 

 


2008/05/13 20:48
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

ありがとう!


こちらで、『抽選はずれてしまいました・・』なんて書きこみしましたが、
譲ってくださる方がいて、どうにか、イベントに参加できることになりました。
タムドク様にお会いしてきます。
お気遣いいただいた方々、
ありがとうございました!
たくさんの方々とつながっているんだと、あらためて思いました。
まだチケットを手にされていない方もいらっしゃるのに、
ごめんなさい、
どうしても、ここで、ひとこと、お礼を言いたくて・・・。
どうぞ、これからも仲良くしてくださいね。

 

☆今日は、コメントはいただかないということにしたいと思います。また、来て下さいね!



2008/05/01 19:59
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【テサギチケット】花散りぬ・・・


タムドクさま、抽選はずれました。
あはは・・、お会いしたかったのにね(涙)。


ほんと、私ってば、全員オッケーだと思っていましたの。
そうしたら、こんな結果に。


まったく、タムドクさまってば!
千年の恋も、一気にさめるかと思いきや、
全然そんなことはなくて、
つらい思いはつのるばかり。
まあ、そんなものですよ、私のやることなんて。


つきましては、甘い見通しついでに、
言ってみちゃったりしますが、
できましたら、新たなタムドクイベント企画、
考えていただけませんか、なんてね・・・。


いえいえ、ゼイタクは申しません。
この際、太王、四神うちそろって・・などとは申しますまい、
はい、そうです、
タムドクさま、
あなたお一人でのご参加でも、
いっこうにさしつかえございませんので。
どうぞ、よろしくご検討のほどを。


2008/04/22 22:05
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

20話から~落ち着け、私、テサギを見よう

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 ☆先週金曜から、ともかく落ち着かない。何をしているのだろう、どうなっているのだと思う。
 よく考えてみれば、いや、考えてみなくてもわかる。
 金曜日のイベントチケット先行予約のことなのだ。

 何か、すごくたいせつなことを忘れているような気がする。
いやいや、金曜までは何もすることがない、ともかく落ち着け、なんて自分に言い聞かせて今日まで来たけど、今日火曜の夕方になって、すごくすごく重要なことに気がついた。私は土曜朝早く実家に出かけて、帰ってくるのが日曜の夜になるということだった。
つまり、いちばん大事なときに、パソコンの前にすわることができないのである。
 
 そう、よく考えてみれば、明らかだ。
金曜は仕事だから、ネットを使って予約できるのはその日の夜だけということになる。
予約開始間際がどんな状態になるか、誰にでもわかる。何度トライしてみてもつながらないということになるだろう。
電話でも申し込みできるけど、そっちのほうがもっとつながらないに違いない。

 というわけで、だいじょうぶか、私?と、今の今になって思った。
ヨンジュンssi来日!などと、ただ舞い上がっているだけの私がいたのだ。

 でも、それでも、ともかく落ち着け、私。
そして、テサギを見よう。
土曜の3話もよかったけど、やっぱり心揺さぶられたのは、月曜の20話である。
 以下、私が勝手に解釈した、タムドクのせつない心が語る言葉である。

 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 眠れぬ夜、ほのかな灯りの中に、香水壜ひとつ。
目を閉ざせば、思い出すのは泣きぬれた彼女がきれいに微笑む姿。
「王様の背中はいい匂いがするんです、知ってました?」
何のてらいもなくそんな言葉を口にして、それから、ひとつおじぎをして行ってしまった・・。
ただ、吹きすぎて行くさわやかな風のように。

手にとればぬくもりがかすかに残っているようで・・。 
くり返し思い出してみても、もどらないあの時。

 考えてみれば、そうだ、母の形見の香水壜、あれを返されたそのときに、彼女の決意に気がつくべきだった。
いや、その前に、背中から抱きつかれたあの時に、いやいや、そうではない、
あんな、いかにも『おんなおんなした』衣装を身につけて現れた時から・・・。

 いつも、うっとうしいほど付きまとっていたあいつ。
男の子みたいにくるくるとよく動き、がはがはと大きな口を開けて笑い、男顔負けに酒を飲み、妙ちくりんなヤツだと思った。
でも、仲間、それも意外と頼りになる存在になるまで、さほど時間はかからなかった。
いくつもの危機をふたりして乗り越え、いくつもの楽しい思い出も共有して、・・そうだ、戦いの最中にも楽しいこともあったのだ。
いつもいっしょだったのだから。

 ほんとうのことを言うと、あいつがどんな気持ちでいるのか、ちゃんと気がついていた。
私の中に棲み付いている女人がいると知って、それが気に入らないといって、怒ったり悲しそうな顔をしたり。
・・あんなに素直で、まっすぐでわかりやすいヤツはいない、
だから、私はちゃんと気がついていたんだ。
なのに・・・。

 自分の心のありかはどこなのか、わかっていると思っていた。
どんなにその人が罪にまみれていても、私は自分の心がさまよい出ていくのを止めることができなかった。
どんなに苦しくても、どうしようもなかったのだ。

 そんな私のつらさに気がついて、それをじっと見つめていたあいつ。
そのまっすぐな心に映った『それ』は、たぶん許せないというものだったのだろう。
「どうして、王様は!」
そんな言葉を幾度となくくり返したあいつ。
そのたびに涙ぐんでいたあいつ。
自分が傷つくことよりも、私のつらさをしっかりと受け止めて、私のために泣いていたあいつ。

 そんな彼女を、私はちゃんと知っていた。
知っていながら、
「・・それでも、私は忘れられないんだ、だから、あの人のことは言うな。」
などと、そのたびごとに激しい言葉で返したりして・・。

 甘えていたのは、私の方だ、たぶん・・。


 思い返してみれば、戦に出向く帆船の中で、あの香水壜を手渡して、おまえが持っていろよとあずけたあの夜に、私は気がつくべきだった。
自分の心がどこにあるのか、どんな色をしているのかを。

 さわやかな風のように私の前から去って行った彼女。
そう、おまえの言うとおりだ、私は愚か者だ。
愚か者だったよ、スジニ。

 

 


2008/04/03 20:55
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

あの夜のことを覚えていますか?~17話から

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 これまで、17話では派手な斬り合いのシーンでの雄々しいタムドクに目を奪われてきました。
でも、あらためてテレビの画面で見ると、このほかにも、もっと見過ごしてはならないシーン、大切なものものがあったような気がします。

 今夜ここに書きたかったのは、もうひとつの17話の見どころ、神堂でのキハとのやりとりについてです。


「あの夜のことを覚えていますか?」

「あの夜のことは忘れた。」


 この会話に、私は胸をつかれる思いがしました。
そんなこと言われたら、キハ、あなたはつらいよね、自然にテレビ画面に向かって、そんなことを口にしていました。
彼女のお腹には彼の子がいるのですが、今となっては、そのことを彼に告げることもできないのですから。

 はっきり言って、私は、大神官と副神官を手にかけた時点で、キハという女性を見限っていました。
どんな理由があろうと、何の罪もない、否、彼女の育ての親とも言うべき大神官らの命を奪うというのは、人間として許されないと単純にそう思ったからです。
 
 でも、あまりにも重いものを背負って生きて行くしかないこの女性に、この17話で、また別の一面を見つけたような気がしたのです。
それは、彼女がお腹の子に託した一筋の夢のようなものです。

 これからの展開をほんのちょっとは知っている者としては、それは、夢と呼ぶにはためらわれるような黒い色をしたものかもしれません。
それは多くの人々の血にまみれていて、そして、善なるもの=天を否定することから始まるものなのですが。
 それでも、彼女は自分が罪をすべて引き受けることによって、生まれてくる子の未来を切り開こうとしているのだと思います。
そこに、ある意味、聖母の姿に似たものさえ感じられるような気がするのです。

 一方、そんなことを言い放ったタムドクに対しては、何て男なの!などと、咄嗟に私は叫んでしまったのですが、これはちょっと早まった判断だったようです。


『まだ、未練があった、でも、これで終わりだ!』と歯を食いしばるように言い切っているところを見ると、もしかしたら、これは自分に向けての言葉だったのかもしれません。
この日を境に、彼女と永遠に決別すると、キハに心を残す自分自身に言い聞かせていたのかも・・。

 それが、あの神堂を出るときに、張られた綱を断ち切るという行動になって現れたのだと思います。
そんなタムドクに、チュシンの王というよりはむしろ限りなく人間的なものを感じるのは、多分私だけではないのでしょうね。

 天を否定するキハにある種の聖母的なものを、チュシンの王であるタムドクに人間的なものを感じてしまうなんて・・。

これも、バランスを取ろうとする監督の意思、いいえ、「天の配剤」のようなものといったら、言い過ぎでしょうか。

 


2008/03/29 12:17
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

今、ふたたびの『冬のソナタ』


つらいことがありました。

一歩下がって、
じいっとよく見てみれば、
ごくつまらないような・・・。


それでも、
あれこれと思い返しては、
どうして?と憤ったり、
胸が痛んだり、
思い迷ったり・・・。

繰り返される失敗と戸惑い。

私の心の中にある
朱雀の部分。
どうしようもない思い。

でも今は、また別のスタートを切れそうな気がします。
勇気を出して、
新しく翔んでみようと。
彼と出会えなかったら、
絶対にそんなことはありえなかったのだから。

どきどきしたことも、
痛みを感じた部分も、
みんなみんなさらりと脱ぎ捨てて・・、
いいえ、それを心に抱いたまま。

彼がくれたたいせつな宝物だから。

 

~~~~~~~~~~~~

 


 「アニメ冬のソナタ」が作られるのだそうですね。
 しかも、チュンサンの声をヨンジュンさんが担当されるのだとか・・。
最初、え?そうなの?彼は確かタムドクじゃなかったの?などと思いました。
でも、夕方のニュースで流れてきた『ユジナー』に、ああ・・、と・・。たったひと言なのに、一気にあの時のことを、あの心ふるえる時のことを思い出していました。

 私の人生を変えたドラマ『冬のソナタ』。
 このドラマについて、いろいろな人がいろいろなことを言っています。
遠くに忘れてしまった初恋を思い出した、さびしさが癒された、これは再生のドラマである・・・、etc.
改めて見直してみれば、冬ソナとは、そのときの気持ちをしっかり受け止めて、そこからもう一度歩き出すための、心に効くドラマだと思いました。

 韓流ドラマには、似たようなものもありますし、冬ソナが持て囃されるのは、それが最初に日本に紹介されたからだ、などと言う人もいますが、それは明らかに違うと思います。
 ヨンジュンさんが演じたからこそ・・、などと言うと、それはあなたが彼のファンだからでしょうなどと言われそうですが、それともまたちょっと違う・・。
 彼が演じたチュンサンとジウさん演じたユジンには、画面から伝わってくるストーリー以上の、何か特別なものがあると思いました。
 それが何であるかはうまく説明できませんが、少なくとも今の私にとっては心に処方された漢方薬のような感じがしました。
ほら、痛くないだろう?なんて、じわじわと染み込んで傷口をふさぐような・・。
 ささいではあるけれど、私にとっては深刻な問題から立ち直らせてくれました。
 キハも、『冬のソナタ』を観れば、そんなふうに深く引きずることもなかったのになどと、思ってしまいました(笑)。

 ヨンジュンさん、ありがとう、なんて言いません。
このドラマとの・・、あなたとの出会いについて語るには、あまりに軽すぎる言葉だと思うから。

 


2008/03/14 22:58
テーマ:ひとりごと カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

寄り添っていただけるよう・・~孫さんへ


春は別れの季節だといいますが、
ヨンジュンさんのお隣には、いつもIMXの孫社長の姿があるものと
そう、私、思っていました。
それが、急にこんなことになって、びっくりしています。

私が孫社長に間近でお会いしたのは、四月の雪公式ツアーのときのことでした。
孫さんは、コンサートリハーサルが行われる会場の隅に立っていらっしゃいました。
すぐ側には、ヨンジュンさんのファンの方々がいて、
いっしょに写真など撮っていらしたのですが、
とても照れくさそうに、・・というよりも、むしろ、
お顔がこわばっていらっしゃるように見えました。

ああ、この方はやっぱりこういう方だったのだなと、
そのとき私は思ったのですけど、
私もちょっと気後れするタイプですので、
そのにぎやかな輪の中に入っていくことはいたしませんでした。

それが、後にも先にもただの一度だけでの「接近」でした。
今、思えば、とてももったいないことをしました(笑)。

ただ、これからは
ヨンジュンさんの所属事務所の社長さんという立場ではなくなるわけです。
もう少し気楽にお会いして、・・そう、たとえば
サークルのオフ会などでおしゃべりなどさせていただければなあ・・、なんて
勝手なことを考えている私です。

そして、ですね、これからも今までと同じように、
ヨンジュンさんの心に寄り添っていっていただけるよう、
日本での彼のお仕事をささえていただけるよう、
そうです、これはもう私などが言わなくてもいいことなのでしょうが、
私はどうしてもそのあたりのことをお願いしたいと思うのです。

それにしても、ですね、
彼とご兄弟だったとは、
私、ぜんぜん知りませんでした・・・

 

☆昨夜のことですが、このごろ、本当についていないというか、ろくなことがないなんて思って、
ちょっとビールなぞ飲んだりして、グチグチとつまらないことをここに書いてしまいました。
アップしてから読み直してみれば、いかに「ひとりごと」みたいなものといっても、
あんまりかっこ悪いような気がしてきて、10分後くらいに削除してしまったのです。
そのときは、まだ、どなたもコメントされていなかった(ようだった)ので、
それこそばっさりとやってしまったのですけど・・・・。
ごめんなさい、runriさん、あなたが書いてくださっていたなんて、知りませんでした。
きっとタッチの差だったのね。
今後気をつけます。
これに懲りずに、またいらしてね。
 


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