2010/10/08 23:31
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirageside-Reymond-22

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「若!・・ライアンが直接動き出しました」

ライアンの元に進入させた配下の者から、私とソニーそれぞれに連絡が入っていた。

「一時間もすればそっちへ到着する」

「しかし・・」
電話口のソニーの声は、現場でなければわからないだろう緊迫を伝えた。

「・・・わかった・・動け。」

そして私はソニーに彼らふたりの運命を託した。

 

私が現場に到着するとほぼ同時に、上空からヘリコプターが降り立った。
そして機内から数人の男達が降りたかと思うと、その内の二人が私の車へと向かって来た。
身構えた私に向かっていたのは私と手を組んでいたFBI捜査官ユイ・コールドと
モーガンだった。

「どういうことだ」 私はモーガンに向かって怪訝に問うた。

「若・・」

「どうして・・」

「話は後で・・まずはライアンを食い止めましょう」

私は疑問をさておき、モーガンの言葉に従いフランクたちの元へと急いだ。

私が入り口に出向いた時には既に、先に到着していたモーガンの手のものと
FBI捜査官らがライアンの配下たちを取り押さえていた。

その時だった。私達が建物の中に入った瞬間、奥の方から一発の銃声が轟いた。
私は胸騒ぎを押さえながらその音の発信源に向かって必死に走っていた。

そして、やっと彼らの元に辿り着いた時、そこにはフランクとジニョンを狙い
銃を構えていたライアンが見えた。

私は迷わず胸ポケットから銃を取り出し、ライアンのその手に狙いを定めた。


「無傷で返す!
 そういう約束じゃなかったか!ライアン!」

私に右手を打ち抜かれたライアンが、私を睨みつけながらFBIに捕らえられた。
その傍らにいたフランクとジニョンが横たわり身動きしていなかった。
私は急いでふたりに駆け寄ると堅くジニョンを抱きしめていたフランクを彼女から
やっとの思いで離すことができた。

「止めて!」

ジニョンはうな垂れたまま私の腕に抱えられたフランクを、まるで奪い取るかのように
彼を抱きしめ離さなかった。

「ジニョン!離しなさい・・救急車に乗せるんだ!」
「いや・・いや・・連れて行かないで・・ランク・・フランク・・・私の・・フランク・・」

「怪我をしてるんだ!離しなさい!」

ジニョンは尋常ではない出来事を目の当たりにして、間違いなく錯乱していた。


「ジニョン!しっかりしろ!」
   
     君を・・・こんな目に遭わせてしまった私を・・・

     許してくれ・・・ジニョン・・・

     フランクは・・君の・・フランクは・・・

     もう大丈夫だ・・だから・・・大丈夫だから・・

     しっかりしろ・・・ジニョン・・・

     お願いだ・・・・しっかりしてくれ、ジニョン・・・


そしてジニョンもまた、私の腕の中でフランクを抱いたまま、気を失ってしまった。
私はジニョンの髪に祈るようにくちづけた。


     どうか・・・これ以上傷つかないでくれ・・・

     ジニョン・・・私の・・・・・・


彼女の脈を取った救急隊員が、私に向かって“大丈夫”だと頷いて見せた。
私は脱力していく自分を辛うじて持ち堪えていた。

「ソニーは・・」

「大丈夫です・・打たれていますが・・命に別状はありません」

もうひとつの気掛かりをモーガンのその言葉に救われて、私は再度胸を撫で下ろした。

「若・・・決して銃を持たない・・あなたの信念はどうされました?」

モーガンが笑みを浮かべながら、私が今しがた、とっさに使った銃の出先を問うた。
私はそんな信念など、人に話したことなど一度も無かった。

「知っていたのか」 それでもモーガンは知っていた。

「ええ・・とっくに・・いつも胸ポケットに入れている振りをなさっていたことも・・・」

「フッ・・・・あれは・・母さんのだ・・・」

「?・・・母さん・・・ですか・・・」 
モーガンは、今現在レイモンドが母と呼べる人を想像して、ただ頷いた。

「ああ・・」

「しかし・・それは私がお預かりしましょう
 あなたがそういうものを持っていてはいけません」

そう言ってモーガンは手を差し出し、私の手から銃を受け取った。

「それより・・モーガン・・どうして・・ここへ?」
予測していなかった彼の出現を、レイモンドはやっと問うた。

「ボスが・・いえ・・
 あなたのお父上が私に命令を下されました」

「父が?」

「はい。これが・・最後の命令だと・・・
 レイモンドの思うように・・・レイモンドの指示に従えと・・・
 ・・ですから・・ずっと、我々はあなたの動きを追っておりました」

「それで・・どうしてFBIに?・・・」

「あなたが望まれていたことですから。・・・そうではなかったですかな?」

「・・・そうだったな・・・」

「・・・・」

「モーガン・・・・」

「はい」

「どうか・・許してくれ・・
 あれほど・・大義名分を掲げながら・・

 お前達の意に反して・・・お前達を窮地に追い込むことなどに
 何の迷いも無かった私が・・・

 最後は・・・
 たったひとつのものを救うことしか考えていなかった・・・
 結局私は・・・それだけの男・・・
     
 もしかしたら・・・
 全てをライアンに奪われていたかもしれない・・」


事実そうなっていたかも知れない。
もしかしたら、その愛しいものさえ、失っていたかも知れない。

「いいえ大丈夫です・・・あなたはそんなことはなさらない。
 たとえ・・一時的にそのようなことが起きたとしても・・・
 必ず・・あなた自身の信念に立ち返る・・・あなたは・・そんなお方だ・・・

 私は・・父上と同様に・・罪を償いましょう・・」

モーガンは潔い表情をまっすぐにレイモンドに向けた。

「モーガン・・・」

「そしていつしか許されるなら・・また・・あなたの元で・・・」

「ああ・・必ず・・・私は・・・
 お前達が生きていける場所を必ず・・・築いてみせる」

「はい」

モーガンの表情は清々しかった。
レイモンドの意に沿うということが、どのような結果をもたらすか、その全てを覚悟した
そんな顔だった。


  父さん・・・


  最後は・・・あなたが下したんですね


  28年前・・・

  本当はあなたがそうしたかったことを・・・

  結局あなたが決断を下された


  父さん・・・笑ってください・・・僕は・・・

  たったひとりの愛しいもののために・・・

  危うく信念すら曲げようとしていた・・・

 
  あなたの決断がなかったら・・・

  あなたの勇気がなかったら・・・


  しかし、私は愛しいものを一に考える

  そんな男でありたかった

  それだけなんです


  父さん・・・礼を言います

  そして・・・力を貸してくださった


  あなたの思い・・・決して・・・


 

      ・・・無駄にはしません・・・
     

    



























 


 
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